プチファンタジー・ストーリー   作:クリステリアン

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第14話 老エスパーからの依頼

 次の日はいく先を話し合った。

「この町のギルドにも石化攻撃を使う悪魔の話はないということだ。今度は別の町だな。ここが一番近い」ユードーは地図の北のほうの町を指差した。そこはこの港町より内陸にいったところにあった。

 

 サンクたちは町で少し買い物をして次の町を目指し、歩き出した。石畳の道はすでに町の出口に差し掛かっており、右側には海が、左側には草原の向こうに山々が見える。

 

 すると、遠くのほうで誰かがなにか悪魔のようなものから逃げ回っているのが見えた。その人は、たまに手に持った棒でなにか攻撃しながら必死で逃げているようだ。

「大変だ!誰かが悪魔に襲われてるらしい!」

「すぐ助けにいこう!」

「テレポートでいったほうがはやいわ!みんなわたしにつかまって!」フィリナはみんなを光のオーラで包み込んだ。

 

 そして、気がつくと、草原にテレポートしていた。

 サンクたちはあたりを見回す。すると、「あっ!あそこに!」

 1人のおじさんが木の棒を必死で振り回して追い払おうとしていたが、悪魔はあまりダメージを受けず、おじさんは悪魔になぐられたり体当たりされていた。

「ひぃ~っ!」

 3人はそこに駆けつけ、おじさんの目の前に立ちふさがった。

「たぁ~っ!」ユードーは悪魔を殴り飛ばし、サンクは、「ポロ!体当たりだ!チビドラ!火を吐くんだ!」と攻撃させた。フィリナも「ホワイトブラスター!」と杖で悪魔に技を放った!

 悪魔はそれらの技を受け「グエッ」と煙のように消えてしまった。

 

「ふう」「おじさん!だいじょうぶですか?」3人はおじさんのもとへいった。

「いや、ありがとう、なんとかだいじょうぶだ」おじさんは立ち上がった。「ちょっと届け物をして帰る途中に悪魔に襲われてしまった。普段は付き人を頼むんだが、きょうはたまたま1人でな、襲われてしまってまいったまいった~」

 そしておじさんは、「きみたちは冒険者かい?」ときいた。「ハイ」と3人。「だったら、村に帰るまで一緒についてきてもらえないかい?またなにか出たらと心配で」

 

 そこでサンクたちは、おじさんを村まで送っていった。

 

 

 

 草原を通り、森を抜けると、小さな集落があった。小さすぎて地図にも載っていないような村だった。これまでの道のりは何事もなく無事だった。

 

 村に入ると、何人かの村人が、「お帰り、ルドさん」「ちゃんと届けてくれたかい?」などと声をかけていた。そして彼らはわいわいしゃべっていたが、後ろにいるサンクたちに気づき、「おや?その人たちは?」ときいた。

「わしが悪魔に襲われていたところをこの3人が助けてくれたんだ」とおじさんは紹介した。

「ほぅ!冒険者かい?」「あぁ!とても強かったんだ!」「専門はなんなんだい?」ときかれた。

「おれは格闘技を」「おれは、剣とか魔物を使って戦ってます」「わたしはエスパーです」と答える。

「なに!?エスパー!?」1人のじいさんが前に出てきた。

「そうか、うむ、確かにエスパーじゃ!実はわしもエスパーで若かりし頃は冒険者としてバリバリ活躍していたんじゃ!いまはもう引退しておるがな」

「そういえばミルビンじいさんは昔は強いエスパーだったらしいねぇ」

 

 また村人たちはいろいろ話しだし、やがて先ほど助けたおじさんが「ここまで送ってくれてありがとう」とお礼をいい、村人たちは歩いていってしまった。3人も、「戻ろうか?」と、村を出ようとすると、まだ残っていた先ほどのミルビンじいさんが、「実はきみたちに個人的に頼みたいことがあるんじゃが」といった。

「頼み?」

「そう、ここじゃなんだからわしの家へさぁ」と3人はミルビンじいさんの家に入れてもらった。

 

 

 

 じいさんの家にはよくわからない杖やら図形やら大釜やら不思議な感じのする道具であふれていた。

「これはなんですか?」とフィリナはきいた。

「いま研究中のエスプを込めたいろんな薬をつくる道具じゃ」

 じいさんはたまに趣味でエスプに関連した薬を研究してるらしい。

「さまざまな素材の組み合わせでエスプ効果を発揮する薬を作ることができるのじゃ。まだ成功していないが、わしの知り合いのエスパーなんかは錬金術という研究をしていて、素材の組み合わせによって金を作ることができるとか……」

「そんなことが……」フィリナはびっくりしていた。

 サンクは、「ところで、おれたちに頼みたいことってなんですか?」ときいた。

 じいさんは、「おぉ!そうじゃ!」と思い出した。

 

「実は、きみたちにとってきてほしいものがあるんじゃ」

「どういうことです?」

「この村をまっすぐ西にいくと滝がある。その滝の下にはある洞窟がある。その洞窟のなかにしか生えていない水晶ゴケというコケがほしいんじゃ。ただし、その滝には近頃悪魔が住み着き、洞窟にいくにはまずその悪魔を倒さねば入ることはできん。そこできみたちに頼みたいんじゃ」とじいさんはいった。

「う~ん、引き受けてやりたいのは山々だが、その悪魔がどんな悪魔かもわからんし、少し大きすぎる頼みだなぁ」とユードーは考える。

「もちろんただとはいわん。もしきみたちが悪魔を倒し、水晶ゴケを持ってきてくれたらいい物をあげよう」

 サンクたちは顔を見合わせて「どうする?」「一応引き受けてみるか……」と話し合い、引き受けることにした。

 じいさんは喜び、「水晶ゴケというのは透き通った水色をしてキラキラ光るコケなんじゃ。それをこの袋いっぱいにとってきてくれ」と小さな袋をくれた。

 

 

 

 こうしてサンクたちは西の滝目指して歩いていった。

 生い茂った草や歩きにくい岩の谷間を歩き、ようやく一本の滝が見えてきた。

「あれだな!」

「悪魔がいるっていってたけどどんなのだろう……」

 

 サンクたちは滝の近くにきた。すると、滝のそばに、1つの洞窟があるのが見えた。

「あの洞窟は!」

「きっとあのなかに水晶ゴケというのがあるんだな!」

 洞窟へは少し回り道すれば歩いていけそうだ。

「いまのところ悪魔らしき姿は見えないな……もしかしたら悪魔と戦わずに洞窟に入れるかもしれないぞ!」

「それはいいや!」

「いってみましょ!」

 

 3人は洞窟のほうへと走った。そして水辺の近くまできたときのこと、水のなかでなにかが光った。すると、突然水のなかから悪魔が現れた!からだの長い巨大なイモリのような悪魔であった。

「うわぁぁーっ!!」

「やっぱり出たか!」

 悪魔は「シャアァ……」と口をあけ、鋭い牙を見せている。

 悪魔は3人に噛みつこうとからだを伸ばしてきた!

「わっ!」3人はあわてて飛びのく!

 すると今度は悪魔は水を口に吸い込み、その水を3人めがけて発射してきた!

「キャア!」3人はあわててよけた。

「やったな!いけ!ポロ!チビドラ!」サンクはポロを噛みつきにいかせ、チビドラに火を吐かせにいかせた。

 悪魔は「ウォゥ!」とダメージを受けたが、チビドラとポロに水を吐き、反撃してきた!

「ワゥーッ!」「ギャアッ!」2匹は遠くに飛ばされた!

「ポロ!チビドラ!」サンクはあわてて走る!ポロはだいじょうぶだったが、チビドラは完全にのびていた。

「くっ……チビドラ、水に弱かったのに戦わせてごめん……」サンクは謝る、そして、「あっ!そういえばきのう仲間にしたアカザカナならいいかもしれない!」

 サンクはバッグからアカザカナを取り出し、「いけっ!アカザカナ!」と水に入れ向かわせた!

 ユードーが水に入り、「うぉぉぉ!」と悪魔にパンチをしていた。フィリナも「ハアッ!」鞭でバシーン!と叩いていた。

 ユードーは悪魔にまたがり、押しつぶそうとした。だが、「わっ!」悪魔のからだはヌルヌルしていてユードーはつるっと滑り落ちてしまった。

 アカザカナは悪魔に突進した。悪魔は飛ばされ、後ろの岩にぶつかる。すると悪魔は口からなにか白いものを吐いた!それは見る見る広がりあたり一面霧となった。

「これじゃどこになにがあるかわからんぞ!」

 3人は戸惑った。すると、「うわっ!」突然ユードーの悲鳴がし、ユードーがそばの地面に落ちる音がした。「ユードー!!」サンクとフィリナは音のしたほうに駆け寄った。近づくと相手の姿が見えた。

「だいじょうぶ?」

「跳ね飛ばされたらしい」

 すると、近くで「シャァァ……」「ピルーッ!」という声と水音がした。どうやらアカザカナが悪魔と戦っているらしい。

 3人はその音のほうへ近づいていった。

 

 しばらくの間、悪魔とアカザカナは戦っていた。「がんばれ!アカザカナ!」

 しかし、アカザカナは悪魔に跳ね飛ばされ、「ピルーッ!」と叩きつけられた音がした。「あっ!アカザカナ!」

 サンクは音のしたほうへあわてて駆け寄ると、そこではアカザカナがのびていた。

「よくがんばってくれたな、ありがとう」サンクはアカザカナをかばんに戻した。

 

 ユードーとフィリナは霧のなか悪魔の姿を探した。すると、大量の水がまるで滝のように2人のもとへ飛んできた!「うわあっ!」「キャッ!」2人は水に飛ばされ倒れ込んだ。

「おのれ!そこか!」ユードーは水の飛んできた方向を目指し向かった!水に飛び込み、悪魔を見つけた。そして悪魔と殴りあう!悪魔も噛みつこうとしたり、尻尾で叩こうと攻撃してきた!

 サンクとフィリナには霧が濃くてなにが起きているのかわからない。ただ、音のするほうにユードーと悪魔がいるのはわかった。「あっちにいるみたいよ!」「ようし!」サンクとフィリナも水に入った。するとうっすらユードーと悪魔の姿が見えてきた。サンクたちも駆け寄った。

「ハァァッ!」ユードーのパンチ!「悪魔めーっ!」フィリナは鞭でバシィッ!と叩いた。サンクは剣を取り出し、それで「たあっ!」と叩いたり、ついてきていたポロに向かわせたりした。

 悪魔が尻尾を振り回し、飛ばされた3人!「うわーっ!」「キャアッ!」フィリナは大ダメージをうけた。

「だいじょうぶか?」「えぇ……ヒール!」フィリナは自分に回復技をかけた。「お前はあまり近づかんほうがいい」とユードー。

 近づかないと霧で見えないとはいえ、物理攻撃を頻繁に受けるのは危険なのでフィリナは少し後ろに下がって戦うことにした。

 

 その後もユードーやサンクやポロが前衛で戦い、フィリナはエスパー技で攻めた。悪魔は体当たりしてきたり、水をぶつけてきたりする!敵の物理攻撃をサンクは必死で剣で受け、ユードーも(こぶし)で敵の攻撃を防ぎ、跳ね返した。

 2人がそんなふうに敵を抑えている隙にフィリナは「ブライトボール!」「ダークインパクト!」「ホワイトブラスター!」次々とエスパー技を叩き込んでいく!

 そして、ついに悪魔は「グワフッ」仰向けにひっくり返り、シュウッと煙のように消えてしまった!

「やった!」3人は喜んだ。

 

 水からあがる。

「しかし、辛い戦いだった」「服もぐしょぐしょだわ」と服を絞る。

 

 向こうにいたチビドラのところへいき、フィリナは回復してあげた。

 

 「それじゃ、水晶ゴケとやらを取りにいくか」と洞窟を見るユードー。洞窟は滝のすぐ横にあった。

 サンクたちは、そこまで歩いていきついに洞窟の前にきた。なかに入ってみるとそこには光り輝く淡い水色のコケがそこらじゅうに生えていた。

「これが水晶ゴケか!」「よぅし!もって帰ろう!」

 3人はじいさんに貰った袋にコケを詰めて洞窟を出た。

 サンクは、「これで、今回のクエストもクリアだ!」「正確にはクエストではないがな」

 

 

 

 3人は村のほうへ戻っていった。そしてミルビンじいさんのところにきた。

 

「じいさん!いわれたコケを取ってきたぜ!」とユードー。

「おぉ!とってきてこれたか!どれ」

 じいさんはコケを確かめ、「おぉ!確かに水晶ゴケじゃ!ありがとう!」とお礼をいった。「これでまた研究がはかどる」と喜ぶ。

「あの悪魔を倒してこれたんじゃな?大変ではなかったかい?」

「あぁ!結構強くて倒すのにかなり苦労したぞ!」ユードーはむすっとしていった。

「ワハハ、それはすまんかったな。あぁ、それに服もぐしょぬれではないか。着替えたほうがいい」

 

 3人はじいさんに部屋を借りて替えの服に着替えた。

 もう時刻は夕方近く、今日中に次の町にいこうと思っていたのに予定が狂ってしまった。じいさんは3人に、今夜はうちに泊まっていけばいいといってくれた。

 

 

 

 3人はじいさんから昔の話をいろいろ聞かせてもらった。じいさんが旅をして活躍していたときの話や、どこでなにを見たか、どんな悪魔と戦ったか、などなど……。そのいささか誇張も入った昔話を聞いた。サンクはついでに人を石化させる悪魔のこともきいてみたが、あいにくその話は知らないとのことだった。

「だが、人を石化させるだけの力を持つ悪魔じゃからさぞかし強いんじゃろうなぁ」とじいさん。

 そしてサンクたちは一晩そこで泊めてもらいやがて朝となった。

 

 

 

 サンクたちは出発の準備を整え、また次の町へと出かけることとなった。

「いや、きみたち、きのうはありがとう。それからこれはきのういったお礼じゃ」

 じいさんの手には3本の短い棒があった。

「なんですか?コレ」

「火のロッドと氷のロッドと雷のロッドじゃ。わしが若いときに使っていたもので、それがあればエスパーが属性攻撃できるようになる」とフィリナにロッドを手渡した。

「ほんとですか?」フィリナは驚いている。じいさんはうなずき、「ちょっとそれを持ってなにか技を出してみるといい」

 3人を外に連れ出し、フィリナにロッドを使わせた。

 フィリナは試しに火のロッドを持ちライトアタックを出してみた。すると……「キャアッ!」ロッドの先からボワッと火が飛び出した!

「すごいわ!」

 サンクたちも驚いていた。

 続いて氷のロッドも使ってみようとする。じいさんが、「氷のロッドは持つところにスイッチがついとるじゃろ」

「これ?」

「氷を出すときはそのスイッチに念を送りながら技を出すのじゃ」といった。

「こう?」フィリナはスイッチを押しながら技を出してみた。すると……パキパキパキッと氷がロッドから出てきて地面を凍らせた!フィリナもサンクたちもびっくり!キャアキャア騒いでいた。

「すごいわ!氷が出たわ!」フィリナは地面の氷を確かめたりしてはしゃいでいた。

「でも、この氷はどこからくるの?」とフィリナはきいた。

 じいさんは、「氷のロッドのなかに氷が封じてあるのじゃ」と答えた。

「じゃあ氷を使い尽くしたら?」

「冷気だけが出る」

 フィリナは雷のロッドも取りロッドの先から電気を出し驚いていた。「おもしろいわ!」

「そのロッドにはそれぞれ火のパワー、氷のパワー、電気のパワーがこめられていて、強力なエスプを出せばそれに比例してそれぞれの属性の強力な技ができるんじゃ。引退したわしの代わりに、きみがそのロッドを役立ててくれ」とじいさんはいった。

 フィリナは振り返り、「ほんとにいいんですか?こんないいものいただいちゃって」

 じいさんはうなずき、「あぁ、わしはもう長いこと戦っておらんから、どうせそれを使ってもたいした力は出せんのじゃ」とさびしそうに笑った。そして、「いいかね、きみ、戦い続けていなければすぐに力は衰えてしまうぞ」と同じエスパーのフィリナにいった。

 

 3人はじいさんに世話になったお礼や別れの挨拶をして手を振った。じいさんも手を振り3人を見送った。

 

 

 

 フィリナはロッドを手にすることができて、これからは敵の弱点をつく攻撃ができるようになったのだ!

「これがあれば戦いでぐっと有利になるわ!」と嬉しそう。

 3人は次の町を目指し歩いた。

 そして夕方ごろ町に着いた。小さな町であった。ギルドにいくのはあしたにしてその日は宿屋でゆっくり休んだ。

 


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