2人は町を後にし、また旅立った。サンクは新しく仲間になったドラゴンを見て、「この魔物、どんな魔物なんだろう?」といった。「わたしもよく知らないわ。でも火属性ブレスが得意みたいね」
フィリナは、「この子の名前、どうするの?」ときいた。そして、「イグナカリタンなんてどうかしら?」といいだした。サンクはフィリナのよくわからないセンスにぎょっとしながら、「小さいドラゴンだからチビドラでいいよ」といった。「つまらないわ」「いいんだ!」
そして2人は次の町に着いた。2人は町をいろいろ見てまわり、ギルドにいった。そしてまた悪魔を討伐するクエストを受けたのである。今度の場所は山ひとつ向こうのさびれた村らしい。なんでも村に悪魔が現れ、村中を寒くしているらしい。その村には毎年その悪魔が発生しているとか。
「少し寒いところだが平気かい?」「だいじょうぶだいじょうぶ!そのくらいへーきです!」とサンクは安受けあいした。
「じゃあよろしく頼むよ。あの村の悪魔を倒すのはうちのギルドの毎年恒例なんだ。悪魔を倒さないと農作業もできないからね」
2人はその村まで歩いていった。わざわざ山を越えなくてもちゃんとトンネルがあったので、村へいくのはそれほど大変ではなかったが、その場所に近づくたびに空気が冷たくなっていくのがわかった。そしてトンネルを抜けると、そこは一面の雪景色で……。
2人は寒さに震えた。「こっ、こんなに寒いとは思わなかった」「とても我慢できないわ」フィリナはバッグからケープを取り出しはおった。「あっ!」サンクは、「ずるいぞ!フィリナだけ!おれは半そでなのに!」「いやだわ。寒冷地用の服をもっていなかったの?」とフィリナ。「フィリナも脱げ!」とケープを引っ張り、「やーよ!寒いもの!」とフィリナは嫌がった。
2人が取っ組み合って騒いでいると、村の一軒の家のドアがそっと開き、サンクたちの姿を見た。
「もう!こんなことしてる場合じゃないでしょ!早く依頼された悪魔を倒してこの村を出るのよ!」とフィリナ、「あっ、そうだった」サンクはフィリナから手をはなした。
2人が歩くと1人のおばさんがきて、「もし、あなたがたはもしかして、悪魔を倒しにギルドからきたのではないですか?」といった。2人は振り向き、「はい、そうですが……」「おばさんは?」といった。「この村のものです。われわれはあの悪魔に困っています。よければどうぞうちへ。暖かいものをご馳走しましょう」
2人はおばさんの家に入った。家のなかには暖炉がありおばさんのほかに、おじさんとおばあさんと、それに小さな女の子がいた。
「わたくしたちは毎年のようにアイスデビル──この村のものはそう呼んでいます、氷の悪魔ですから──に苦しめられているのですよ。町のギルドから退治しにきてくれるのを待っていたのです」
「そうらしいですね」
「もちろんかつて村のものもあの悪魔を退治しにいったこともあったのですが、あいにくこの村には戦えるだけの力を持つものがいなくて、退治しにいった村人はかわいそうにあの悪魔に凍死させられてしまったんですよ」
2人はそれを聞いてせっかくあったまったからだにまた寒気を感じた。おばさんは2人にスープをつぎ、「これを飲むとからだが温まりますよ」とおわんを渡した。2人はスープを飲むと、本当にからだが暖かくなった。なんでも特殊な野菜のスープらしい。
「とにかく、あの悪魔がいなくならないことにはわれわれはなにもできません。悪魔の討伐をよろしくお願いしますね」と2人にいった。
2人は悪魔の居場所を聞き、サンクはおじさんから服を貸してもらい悪魔の討伐に出かけた。
家の人間が、「今年はずいぶん若い人がきたのねぇ」「だいじょうぶかな?あの2人」と話していた。
「わたしのより暖かそうだわ」「へっへー!」2人は雪の降るなか悪魔のいるという村はずれの山のふもとまできた。
「どこにいるんだ!?出てこい!悪魔!」
すると、水色をした物体が目の前に現れた。宙に浮いていて、前に戦ったスピリットに姿は似ていたが、今度は
「出たな!退治してやる!」サンクは剣を持つ。すると、その悪魔は口から凍えるような冷たい息を吐いてきた。
「キャッ!」フィリナもポロもチビドラもあまりの冷たさに退いた!なかでもチビドラは寒さに弱いようで大ダメージを受けていた。
「あっ!チビドラは冷気に弱いのね!」フィリナは「ねぇ、サンク」とサンクを見るが、なんとサンクは「やだ!凍ってるわ!」フィリナはびっくりした。
「チビドラ!サンクに火を吐くのよ!」チビドラの火でサンクの氷は解け、また動けるようになった。
「ハッ!おれ凍ってたのか!?」「この悪魔の氷技は強烈だわ!バリアーを張るわよ!」フィリナは全員をライトバリアーで覆った。また氷技を吐く悪魔!サンクたちは退いたがさっきほどはダメージを受けなかった。
「ヒーリングオール!」フィリナは全員を回復させた。
「ポロ!そいつに体当たりだ!」ポロは悪魔に体当たりをした。「チビドラ!悪魔に火を吐くんだ!」チビドラは悪魔に火を吐いた。「ギャアァ!」悪魔は大ダメージを受けているようだ。
「火の攻撃を使った……」サンクははじめて属性攻撃を効果的に使うことができて、感動していた。これまでになかったバトルのよろこびだった。そしてサンクも剣で「ハアッ!」と攻撃!フィリナも鞭でバシィッとたたいた!悪魔は退いた。
サンクは、「チビドラ!火を吐いて攻撃だ!」チビドラの火の息、そのフィリナにはできない炎の属性技は、フィリナのエスパー技よりも悪魔に大きなダメージを与えていた。その後、何度か敵の氷の技も受けたが、チビドラの火の攻撃のおかげで敵のHPをどんどん削ることができ、ついに「クアアッ!」悪魔は煙のように消えてしまった。その下にはぽとりと魔石が落ちた。
サンクは魔石を拾うと、「やったぜ!今回の依頼もクリアだ!」とよろこんだ。サンクはチビドラを見て、「特にチビドラはよく活躍してくれたな!ありがとう!」といった。「ギャッ!」チビドラもサンクを見上げよろこんだ。
「思ったより楽に倒せてよかったな!」「ええ。これからも一緒に悪魔をやっつけまくりましょう」
2人はその場を去り、町のほうへ戻った。心なしか、悪魔が消えて、町の寒さが和らいだようだった。
もうあたりは暗くなってきていて、「どうする?きょうはこの町に泊まっていこうか?」と宿屋を探してみた。宿屋はあり2人は泊まろうとしたが主人に、この町の宿屋はもう人が泊まることもないので部屋が管理されておらず、とても泊まれる状態ではないといわれた。そこで2人は町を出ることにし、借りた服を返そうとさっきの民家をたずねた。
「すいません、この服を返しにきたんですが」
さっきのおばさんは2人を見ると、「まぁ!あなたたち!アイスデビルをやっつけてくれたのね!村の寒さがおさまったからすぐわかったわ!」
おじさんも、「うむ、まさかきみたちがあいつをやっつけてこれるとはな!驚いたぞ!」とよろこんでいた。
そして2人をなかに入れ、夜ご飯をご馳走してくれた。ついでにうちに泊まっていくようにいわれ、2人はありがたく好意に甘えることにした。
次の日の朝、2人はお礼をいってその家の人たちと別れた。
「ほんとにあの悪魔を倒してくれてありがとう。これでこの村の冬もようやく終わり、やがて春がくるでしょう」とおばさん。
2人は手を振り、村を去った。
そして町へ戻りギルドへいく。魔石を渡して2人は報酬を受け取ることができた。