提督になったし艦娘ぶち犯すか 作:ぽんこつ提督
私――金剛型三番艦『榛名』は海軍学校を首席で卒業しました。
先に言っておきますと、恥ずかしいんですけれど、私は頭が良いわけでも、運動能力が優れているわけでも、ましてや何か特別な力があるわけでもないんです。
そんな私がどうして首席になれたのか、と言いますと。
うーん、簡単にいえば『努力』です。
私は努力しました。
寝る間も惜しんで勉強して、娯楽を断ちひたすらに身体を鍛えて、毎日毎日二十四時間という時間全てを有効活用したんです。
だから私が首席になれた理由は、努力以外の何物でもないんだと思います。
――どうしてそれほどまでに首席に固執したのか、ですか?
日本には現在、数多くの鎮守府が存在していますよね。
卒業した時、私達新米艦娘は鎮守府の中から一つを選んで、そこに着任するんです。でも、当たり前ですけれど、みんながみんな望む鎮守府に入れるわけじゃありません。鎮守府にも定員がありますから。
そして肝心の――どの鎮守府に入るのかを選ぶのは、早い者順なんです。成績の良かった人から順に、早い者順。
私が入りたかった鎮守府は――はい、
鎮守府の定員は三隻。
間違いなく、最上位者三隻がその席を取ってしまうと私は思いました。だから私は努力したんです。とっても、ね。
私はどうしても行きたかったんですよ。
『英雄』の住まう鎮守府に。
◇
首席の榛名。
次席の鈴谷。
三席の曙。
榛名の読み通り、最上位者三隻はこの鎮守府を選んだ。
それも当然の事だろう。
成績が優秀であればあるほど、この世界の情勢と、それから戦いの厳しさを知っているということになる。それはつまり――ここに住む『英雄』の偉大さを知る、という事と同義なのだから。
それならば、この鎮守府を志望しないわけがない。
「よく来た。私は『第一艦隊』旗艦長門。よろしく頼む」
鎮守府の巨大な扉の前で、長門はそう言って彼女達を出迎えた。
――強い。
榛名が抱いた第一印象はそれだった。
これまで見て来たどの『長門』よりも間違いなく、この長門は強い。海軍本部で見た元帥の『長門』も強かったが、これはそれ以上だ。
しかし、特別な驚きはない。
むしろ、ここにいる提督のことを考えれば、それくらいは当然だろう。
「歓迎しよう――と言いたいところだが、それはまだ出来ない。
君達は海軍学校で優秀な成績を収め、尚且つ本部の人間に推薦されて来たのだろう。しかしそんな物は、ここでは何の意味もなさない。
何故か?
理由は二つ。
一つ。ここにいる艦娘は全員、その程度の事は当たり前にこなしているからだ。それは最低限のスタートラインに過ぎない。
二つ。ここの全ての裁量権は、提督がお持ちになっている。つまり海軍本部や私がいくら君達を認めようと、あの方が「NO」と言えばそれは全く意味をなさなくなる。
つまり君達は、まだこの鎮守府所属の者ではない。分かったか?」
それはつまり、逆を言えば、他の者がどれだけ榛名を貶そうと、提督が認めてくだされば、榛名はここで働けるという事だ。
それでいい。
あの人に認めてさえもらえれば、それでいい。
「分かったなら良し。それでは、ついて来い。あの方――提督との面会だ」
◇
執務室の前。
重厚な木製の扉の前には、天龍と吹雪が直立不動で立っていた。
「長門だ。新着の艦娘を連れて来た。提督にお目通し願いたい」
「あい、あい。聞いてるぜ」
「天龍さん! 新人の前ではもっとしっかりして下さい! あっ、私は吹雪って言います。困ったことがあったら、何でも相談して下さいね!」
「へー、へー」
「そういうとこですよ、天龍さん!」
天龍は吹雪の小言を受け流しながら、榛名達を軽く見回した。
「ん、武器は持ってねぇな。通っていいぜ」
まさか、見ただけで?
榛名はそこの所を詳しく聞きたくなったが――直ぐにそんな事は記憶の彼方へと飛んで行った。
なにせ、今から会えるのだ。
本物の『英雄』に……。
自分でもハッキリ分かるほど、榛名は緊張していた。海軍学校で習った『緊張をほぐす方法』が、少しも意味をなさない。
(あっ、鈴谷さんと曙ちゃん――それから長門さんも?)
しかし、流石に首席といったところか。
榛名は若干の余裕を取り戻し、辺りを見渡した。
すると、自分と同じ新米である鈴谷と曙はもちろん、榛名が今まで見た中で最も練度が高く、また毎日顔を合わせているはずの長門までもがわずかに緊張しているのがわかった。
そう、緊張しているのは榛名達だけではない。
長門もまた、確かな緊張を帯びていた。
長門と提督の付き合いは、実に一月になる。
一月。
短いようで長い。
何故ならここは数ある鎮守府の中でも、最前線に位置している。日本で一番危険な場所、といっても誇張表現にはならないだろう。当然、一日の濃度は他とは比べ物にならないほどに濃い。
しかし、それでもまだ長門は提督に
それは恐らく――彼の『底』が見えないからだろう。
常に広く、遠くを見ている彼は、今一体何を見て考えているのか。長門にはそれがまったく分からない。
故に、歴戦の長門といえど、緊張する。
そういう場所なのだ、ここは。
「提督。新任の艦娘をお連れした」
「ご苦労、長門」
長門は深く一礼すると、提督の右後ろについた。
(……噂は本当だったのですね)
提督の後ろで控えているのは、長門だけではない。
長門・陸奥・赤城・加賀・大淀の計五隻が提督の後ろに、秘書艦として控えていた。
これは彼にまつわる逸話の中でも、有名な物の一つだ。
本来一隻しかつかない秘書艦が、彼には五隻ついている。
それは単純に――そうしなければ、彼の業務速度に追いつかないからだと言われている。
彼は戦況を見ると、ほんの少しだけ考えた後、即座に派遣する部隊と戦略を考えつく。
これは他の提督ではまずありえない事だ。艦娘を出撃させるには必要となる資材の細かい計算や、出撃させた艦娘がいない間の近海防衛など……とにかく様々な事を思考し、秘書艦や大本営と擦り合わせなくてはならない。
だが、それらを全て、彼は一瞬の内にやってのける。
それが一体どれだけ化け物じみた事なのか、首席である榛名にはそれが分かる。分かってしまう。
「――ようこそ」
『英雄』が声をかける。
その瞬間、榛名は凄まじいまでの『圧』に襲われた。
提督から目を離したら、次の瞬間には襲われ、絶命するかもしれない――そう榛名に錯覚させる。
「高速戦艦榛名、着任しました。至らない所もあると思いますが、本日よりよろしくお願いします!」
それでも榛名は、堂々と挨拶した。
何のことはない。
提督から感じるプレッシャーよりも、彼に会えた喜びが優ったのだ
榛名が提督を知ったのは、わずか一月前のことだ。
救国の英雄として注目されていた彼だが、大本営と反艦娘派との軋轢を緩和したとして、メディアに大きく取り上げられた。
民間の出自であり、また艦娘を助けに単身他国に行った彼は、瞬く間に国民の憧れとなっていった。いや憧れたのは、国民達だけではない。海軍学校に所属する艦娘達も、彼に特別な感情を抱いた。
堂々と指揮を執る提督。
そして彼に全幅の信頼を置き、己の持てる力の限りを尽くす艦娘達。
彼等の間には強い信頼があるのだと、テレビから見ているだけでもすぐに分かった。
――憧れた。強烈に。
彼の元で戦う事は、一体どれほど名誉なことなのだろうか。
歴史に名を残したいとか、武勲を上げたいとか、そういった事ではなく、もっと崇高な名誉が得られると、榛名は思った。
横須賀鎮守府に着任したいと、強く、強く、本当に強く願った。
そして榛名は努力した。
わずか一月という短い間に、上の下程度だった成績を、首席に押し上げるほどに。
そうまでして会いたかった『英雄』が今、目の前にいて、そして自分に話しかけているのだ。
嬉しくないわけがない。
……こうして、榛名の鎮守府での生活が始まった。
『英雄』が住まう鎮守府での生活が――
久しぶりの投稿なのに、感想や評価を入れてくれる人が沢山いて嬉しかったです。
嬉しさのあまり最新話を速攻で書き上げました。
ただ問題なのが、集まったほとんどの人が変態ということです。
というか見事に変態しかいません。ハーメルン界隈の変態が勢揃いしてます。このssは変態に支えられてるんだなって実感しました。本当にありがとうございます。みんな変態です。