提督になったし艦娘ぶち犯すか   作:ぽんこつ提督

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プロローグ

 俺は提督だ。

 そう、あの提督だ。

 艦娘を束ねる者であり――同性愛者以外の、地球上すべての男にとっての憧れ。

 だが提督というのは、誰にでも務まるわけじゃあない。提督になるには――妖精が見えなくてはならない。

 

 俺が妖精を初めて見たのは、社会人になってからだった。

 このケースは珍しく、普通は小学生低学年――遅くても高校生になる頃には、才能が開花するらしい。そうして才能が開花した者は、海軍に所属し、幼い頃から厳しい訓練を受ける。それでエリートになってから、提督として着任するというわけだ。

 しかし俺の場合は、もう社会人。慢性的人不足やら教育機関の都合やらなんやらで、いきなり鎮守府に着任することになった。

 今にして思う。

 海軍からすれば、俺は捨て石だったのだろう。新しい提督が見つかるまでの、ほんの場つなぎ。死んでもなんの損害もないし、ちょっと活躍すれば万々歳。そんな感じだ。

 当時の俺はそんな事つゆ知らず、こんな事をのんきに思っていた。

 

 ――提督権限を使って艦娘をぶち犯す。

 

 だってあの艦娘だぜ?

 全員美少女な上に、年齢的にも属性的にも下から上まで揃っていやがる。

 しかし、童貞で口下手な俺には口説くなんてできない。

 かといってマトモな教育を受けてない俺じゃあ、武勲を上げて尊敬されて云々――みたいなのは無理だ。

 だから俺は、上司の権限を使って艦娘をぶち犯す事にした。

 

 

 ――初日。

 艦娘達は俺の為に大歓迎会を開いてくれた。

 次から次へと艦娘が来て、にこやかに話しかけてくれる。

 こんなお祝いムードをぶち壊すなんて真似チキンな俺には出来ない。それに、あんなに愛想良くされるとどうにも……。

 良し、今日は見送ろう。

 この鎮守府にいる艦娘を品定め出来ただけでも良しとする。

 大丈夫、時間はまだたっぷりあるんだ。

 

 

 ――二日目。

 深海棲艦からの急襲があった。

 もしかしたら役に立たない新任の俺を狙ってのことかもしれない。

 一日中深海棲艦の対応に追われた。

 がむしゃらに指示を出したが、素人の浅知恵が向こうにとっては予想外だったのか、なんとか追い払う事が出来た。

 今日は疲れた。

 何もせずに寝る事にする。

 

 

 ――一週間後。

 あの日から毎日、毎日。

 深海棲艦は攻撃を繰り返して来た。

 今頑張って活躍すれば、犯罪を犯しても、憲兵が見過ごしてくれるかもしれない。そんな打算もあり、俺は身を粉にして頑張った。

 だが、それも今日で終わりだ。

 

 「この辺りが怪しいな……」なんて神妙な顔で言いながら、俺は長門の部隊をテキトーな海域に送った。

 いい加減性欲の限界で、今日艦娘をぶち犯そうと思ったのだが、秘書艦である長門が邪魔だったのだ。あいつも文句なく美女なのだが、襲ったら逆にボコボコにされるだろうし、何より正義感が強い。ああいうタイプは上司の圧力に屈しないだろう。だというのに、あいつは一日中俺の周りをうろちょろしてやがる。俺の目的に勘付いてるに違いない。まったく、邪魔な奴だ。

 故に俺は長門を左遷した。

 

 その日の夜。

 俺は遂に大淀を執務室に呼び出した。

 大淀を選んだ理由は、まず普通に可愛い事と、脅迫したら従ってくれそうだったから。そして何より……メガネだ。俺はメガネ萌えなのだ。

 そしていざ事に及ぼうとした時――長門から緊急の伝令がきた。

 なんとあいつは、本当に深海棲艦のボスを見つけたのだ。

 「提督、まさかこれを読んでいたのですか……」大淀は震えながらそう言った。俺は一切知らなかったのだが、大淀は連合艦隊指揮艦としての能力が高いらしい。彼女は俺が連合艦隊を出撃させる為に大淀を呼び出したと勘違いしたのだ。

 こうなってしまっては仕方がない。

 俺は連合艦隊を出撃させた。

 

 そしたらなんか普通に勝った。

 ボスを倒したから、もう明日からは攻め込んで来ないだろう。

 明日こそ、明日こそ艦娘ぶち犯す。

 

 

 ――次の日。

 俺は表彰された。

 どうやら今回倒したボスは、相当大物だったらしい。

 大層な賞を三つも貰った。

 しかもそれがマスメディアの目に止まり、俺は『民間上がりの英雄』として報道された。まあ悪い気はしない。

 だけどそんなに持ち上げられると、なんかちょっと……悪い事をし辛いなあ、なんて。

 いや、俺は艦娘をぶち犯すぞ!

 

 

 ――式典を終えた次の日。

 式典を終えて都会から帰ると、艦娘達が総出で出迎えてくれた。しかも敬礼しながら。

 こんな雰囲気では艦娘をぶち犯すなんて出来ない。

 俺が「楽にしていい。今日は無礼講だ」と言うと、艦娘達は楽しそうに大祝宴を始めた。無礼講って言ったけど、宴会をしようとは言ってないんだがな……。

 しかも最後には、加賀が「僭越ながら、貴方を讃える歌を作りました」とか言いながら歌を歌い始めた。それを聞いた艦娘達は立ち上がり、泣きながら敬礼した。

 えぇ……。

 

 

 ――一ヶ月後。

 助けて。

 本当に助けてくれ。

 何故だ……どうしてこうなった?

 俺は一体どこで間違えた?

 

 

 ――一年後

 私は貝になりたい。












次話から基本的に他者視点になります。

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