ウルトラ姉弟(笑)の黒一点~胃痛と戦え!ウルトラセブン!~   作:三途リバー

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ア…ア…


ライザーのはなし

 

「ゼットライザーのプロトタイプ…でございますか?」

 

「あぁ。この間年末の大掃除で家から出てきてよ」

 

光の国宇宙警備隊本部、その食堂にて。

口の端に米粒を付けながらカツ丼をかっ食らう少女、ゼットとその師匠(非公認)たるゼロが何の気なしに会話を繰り広げていた。

 

「師匠が使ったんです?」

 

「誰が師匠だこのタコ。いや、オレも初めて見る型だった。メダルも2枚しかはめ込めなかったし、そもそもアクセスカードの挿入口すらなかった。相当初期の代物か、誰かの為のワンオフか…」

 

ご無体なとへこたれるゼットを尻目に、ゼロは物思いに耽った。

ゼットライザーは開発思想の段階からヒカリの話を聞き、テスター選別まで付き合ったものである。そのゼロが見たことも聞いたこともないようなプロトタイプなど、不思議でしょうがない。

しかもそれが自宅から出てきたとなれば尚更だ。

 

「ほう、いい線を行っているな」

 

「ヒカリ博士!」

 

「やぁゼット、ゼロ。師弟水入らずの所悪いが、相席いいかね?」

 

真っ黒な隈にボサボサの髪、煙草の香りを漂わせながら現れたのは当の開発者、ヒカリであった。その右手には宇宙麻薬もかくやと言わんばかりの覚醒効果を秘めたコーヒーが握られている。

 

「し、師弟…!是非ともご一緒しちゃって下さいませ!!」

 

「こんな三分の一人前、弟子でもなんでもねぇよ」

 

「そんなこと言って、この間嬉しそうに話してたじゃないか。まだまだ青いが見どころのあるガキだとか、たまには戦士らしい顔するようになってきたとか…」

 

「えっウルトラときめいちゃう…師匠すき………」

 

「だぁぁぁぁぁあぁ!!!!言ってねぇ!言ってねぇからなそんなこと!!寝惚けて夢と勘違いしてんじゃねぇのか!?」

 

「でもすいません、ワタクシにはハルキという心に決めた地球人が…グヴォエ!!」

 

「オレにそっちの趣味はねぇよ!!と言うかお前アイツとそういう関係なのかよ!」

 

「ワタクシとハルキの絆をなめてもらっちゃ困ります!地球では身体を(合体的な意味で)重ねて激闘の日々を駆け抜けたものでございますよ…。今もワタクシとハルキは一心同体、おはようからおやすみまで(合体的な意味で)一緒です!」

 

「えぇ……最近の奴は進んでんなぁ……も、もしかしてタイガとかも…?いやだとするとオヤジ達の世代はとんでもねぇ行き遅れ集団に…?」

 

「何やらとんでもない誤解が生まれた気がするが…まぁ良い。ゼットライザーのプロトタイプ……ガンマライザーの話だったな」

 

迷走を始める2人をよそに、ヒカリがゆっくりと語り始めた。

その視線は遠い過去を、痛ましい記憶をなぞるかのように静かで儚いものだった。

 

「ゼットライザーの開発コンセプトはウルトラ戦士の力をメダルとして形あるものに凝縮し、ライザーを通してそれを解放、使用者のスパークアーマーを強化するというものだ。ここまでは良いな?」

 

ゼットライザーはそもそも変身アイテムとして制作されたものではない。自身のスーツを持つウルトラマンが、更に歴戦の勇士の力を上乗せして強化するための『自己強化型汎用後付兵装』である。

 

通称ジードライザー…光の国にて正式採用されることはなかった前進のアイテム、正式名称シグマライザーに武器としての機能を足したものがゼットライザーになる。

 

「ガンマ…?」

 

「α、β、γ、∑…シルのベータカプセルを順次発展させていった、と言えば分かりやすいか?」

 

「なるほどな…αシステムはスパークアーマーの根幹を。βカプセルは携行を、γ、∑で強化をってわけか。」

 

「飲み込みが早いな。その通り、ガンマライザーはベータシステムの発展型という名目で、とある馬鹿が技術局に開発依頼をかけたものだ。自ら被験者に立候補することで、最初から私用する気でな」

 

そこで溜息を吐くと、ヒカリは眉間の皺を揉みほぐす。

 

「ここまで聞けば大体の察しは付くだろう、ゼロ。そんな代物がなぜ君の…いや、君達の自宅にあったのか」

 

「まさか…」

 

「まさかって何がですか?ワタクシにも分かるようにお願いいたしますよぅ」

 

ゼロの脳裏に浮かんだのは、1人の戦士。

無骨で、口下手で、しかし誰よりも思いやりの心を持った男の姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

所は変わって、ウルトラコロセウム第48訓練室。

その場所には、先日のジュダ軍団、ベリアル・トレギアの並行同位体との連戦を経て入院処置が取られた筈の男が佇んでいた。

 

「デルタライザー…いや、ゼットライザー。完全に俺のワンオフに成り下がったガンマとは流石に天と地の差だな。まぁあの時は俺の体調が最悪だったのもあるが」

 

その手に握られているのは、ゼットライザーとアクセスカード、そして3枚のメダル。

全て、宇宙警備隊で正式採用された量産品である。

 

「それにしても傀儡化使っただけでウルトラアイ没収はおかしいだろ…全く、これからゼロの修行も始まるのにベッドで寝ていられるか」

 

 

『Dan Access Granted』

 

 

認証音声が鳴り響き、続いてメダルがスリットへと組み込まれる。

 

 

『SIL』

 

『JACK』

 

『ACE』

 

 

展開し、掲げられたライザーから異様なまでの光が放たれ、部屋中を包み込んでいく。その光の中心で男が…諸星弾が独りごちる。

 

「俺は二度と失わない。倒れない。家族も、星も、宇宙の平和も……何一つ取りこぼしはしない」

 

 

 

 

 

 

 

「俺は、不倒の輝刃(ウルトラセブン)だからな」

 

 

 





ア………ア…………………ライザーの開発系統は…ド捏造です…

リメイクしたとして、どの時期のセブンが見たい?

  • 5姉弟時代
  • 6姉弟〜レオ指導時代
  • メビウス時代
  • ゼロ誕生以降、ベテラン時代

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