ウルトラ姉弟(笑)の黒一点~胃痛と戦え!ウルトラセブン!~   作:三途リバー

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本日10月1日、ウルトラセブンは放送開始50周年を迎えます。稚拙ながら、

『うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!セブン、おめでとぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!やっほぉぉぉぉぉ!!!』

という荒ぶるお祝いと喜びの気持ちを込めて執筆した番外編です。
本編や今後の展開とは全く関係ない代物ですので、後々矛盾点など数多く出てくるのと思われます。それらについては案の定かるーく流して下さると幸いです。

若しかしたら1番登場が期待されていたかもしれないキャラ…初お披露目ッ!

セブン誕生50周年、本当におめでとうございます!!!

⚠今回、馬鹿みたいに長いです。初の15000字越え…



ウルトラセブン放送開始50周年記念番外編

「「「「「……」」」」」

 

その日、宇宙警備隊本部には凄まじい殺気が吹き荒れていた。一般隊員は無論のこと、たまたま顔を出していた大隊長ですら冷や汗が止まらない。

 

発生源たる5人の女性に囲まれ、遠い目をして胃のあたりを抑える男性…と、その膝から降りようとしない笑顔の少女。

 

「…確認するぞ。」

 

長い長い沈黙を破り、最年長の女性が口を開いた。

 

(((ッッー!?)))

 

一言発しただけで、空間が歪むのではないかと思える程の圧が辺りを支配した。

 

どうにかして下さいとベテラン隊員が大隊長に目配せする(ウルトラサインを送る)が、帰ってきたのは涙目と左右への首の反復運動。流石のケンも、自分の娘2人を含めた母星最強の女性陣に歯向かう無謀は出来ないらしい。

大隊長の威信が脆くも崩れ去る中、5人の会話は続く。

 

「お前はこの小娘に心当たりはない…そうだな、セブン?」

 

「イェス、マム。」

 

長女の声は実態を持つかのように、隊員達の体へねっとりと絡みつく。

自分が非難されている訳ではないのだが、生物としての本能が危険信号を発しぱなしだ。

聞かれた本人など口から半分魂が見えている。

 

「そして貴様は…」

 

「こむすめじゃない!おれはゼロ、ウルトラマンゼロ!セブンのむすめだ!なんども言わせるな!ついでに、オヤジのしょーらいのおよめさんだ!」

 

地球人に見立てるとするならば7歳ほど。そんな可憐な少女が放った特大の爆弾で、光の国最悪と語り継がれる事になる1日は本格的に幕を開けた。

 

野次馬….と言うより、その場に遭遇してしまった被害者達の取った行動は三つに分かれる。

 

「あばばばば…」

 

第1に、ゼアスを筆頭とした気の弱い組が泡を吹いて意識を手放し。

 

「幸運を祈る!」

 

第2に、大隊長を始めとする『弁えている』者達が膨れ上がる殺気を感知して全力で逃走し。

 

「隠し子!?マジか!?お前真面目そうな顔してヤルことヤッてんじゃん!デキ婚すんの!?相手は!?結婚式のスピーチ俺やろうか!?」

「と、とうとう兄貴が身を固めるだとォッ!?」

 

最後に、レジアや筋肉達(馬鹿共)が好奇心に負けて自殺行為を起こした。

 

当然の如く、今日も今日とて警備隊本部は爆発に見舞われるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「クソッ、何がどうなってやがる!?」

 

「おぉ〜!さすがゾフィーのえむ87こうせん!すげぇいりょくだぜ!まーオヤジほどじゃねーけどな!」

 

悪態をつきながら全力で本部から距離をとるセブン。その腕には、年不相応の感想を漏らして楽しそうに笑う茶髪の少女が抱かれていた。

ゾフィーのM87光線がレジアを撃ち抜き、余波で大爆発が起きる寸前にテレポーテーションで窮地を脱したセブンは、取り敢えず暴走を始めた姉妹からこの自称:自分の娘たる少女を守るべく走っている。

 

え?レジア?あぁ、あいつはいい奴だったよ。

 

「親父だと!?俺が!?エイプリルフールにはまだ半年あるぞクソッタレぇぇぇぇ!!」

 

悲哀と困惑が綯い交ぜになった男の叫びが、光の国の空に響き渡る…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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兄さんに…娘、さん…?

どういう、事ですか…私達の知らない間に、あの人は女を作って…あまつさえ子供を…?

 

「落ち着け…なんて言わないわよ、エース。あの馬鹿見つけ次第拷m…尋問して事の次第を聞き出す。」

 

「ふふ、ふふふふ…」

 

「本人に心当たりがないなんて…もしや他の星の女と遊んだ時に出来た子供!?妊娠を知らずにセブン兄は女の元を去り、また他の女と…!」

 

「タロウは昼ドラの見過ぎだ、幾ら何でもセブンはそこまでクズではない…と信じたい…。まぁともかく、我々がする事に変わりはないな。」

 

「ふふふふふふふ…」

 

「そろそろ言語機能回復しなさいよジャック。」

 

兄さん…いや色欲魔。

しっかりと話は聞かせてもらいますよ…?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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二時間前…………

 

「次元の歪み?」

 

「えぇ、一瞬ですが。この星のほぼ直上と言って差し支えありません。ただ…少し普通とは違う、とヒカリ博士が。」

 

ジャックの報告に目を瞑って考え込むセブン。

次元が歪むなど、どこかのドジっ子が全力で必殺光線を使用でもしない限り発生しない。

自然発生か、それとも…

 

「ヒカリはどこが違うって?あいつの見解を聞かない事には何も分からん。門外漢だからな、俺達は。」

 

「規模が極端に小さかったそうです。まるで、誰かが通り道を作ったかのような…人が一人通れるかどうかという所だ、と仰っていました。もし仮に、別次元から侵略者が兵器や軍団を送り込む為に作った物だとしたら完全に欠陥品だと言うのが、今の所解析班の結論で《ビーッ、ビーッ!!》!?」

 

ジャックの言葉を遮ったのは、執務室に鳴り響く緊急事態発生の警報だった。

弾かれたようにセブンが立ち上がり、緊急回線を入れて状況把握を始める。

 

「状況知らせ!何処で何が起きた!誰かもう向かってるか!」

 

普段は割とのんびりしているセブンではあるが、こういう時の彼は素早い。

 

『先ほどの歪み付近から何かが落ちてきます!到達予測地点は2ー4地区!4分後には成層圏に突入の見立て!レジア殿が出られました!』

 

「2ー4…近いな、念のため俺とジャックも向かう!レジアと出張ってる奴らには撃ち落とすなと伝えておけ!」

 

『!?宜しいのです「伝えろ!」はっ、はい!』

既にジャックはスーツを纏って支度を完了している。

頷きを一つくれると、セブンも赤いバイザーを目にかざした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「セブン!テメェあれ撃ち落とすなたァどういう了見だ!」

 

有事に備えて布陣を完了している勇士司令部の中から、鋭い声が飛んだ。まだ距離がすこしあるが、セブンも通信機越しに怒鳴り返す。

 

「敵と分かったわけじゃない!」

 

「あいっ変わらず甘ぇんだよお前は!」

 

「るせぇっ、テメェが単細胞なだけだ!」

 

「やんのかハゲてめぇ!!」

 

「上等だコラ、今日こそボコにしてや「あの…」すまん…」

 

そうこうしているうちに2ー4地区の墜落予想地点に到着。お互いの顔を見て、再び下らない口論が巻き起こりかけたがジャックの声に鎮圧された。

 

「で?撃ち落とさないって言ってもどうするんだ、アレ。」

 

「人か、怪獣か、どこかの宇宙船か…全くわからない。取り敢えずは安全に保護だ。俺が飛んで念力で受け止める。もしヤバそうなモノだったら叩き落とすから、そっちで処理頼むぞ。」

 

確かにセブンの念力ならば、触れずに物を動かす事やその逆の事など朝飯前だ。しかし…

 

「危険すぎます!兄さんの念力の強力さは知っていますが、いくらなんでも宇宙から降ってくるスピードの物を受け止めるなんて…!」

 

634m…東京スカイツリーの高さから1円玉を落とせば、容易く人を頭から貫通するという。

星の外から降ってくるものなど、それは言わずもがなだ。セブンと言えど、安全に止められる保証はどこにもない。

 

「いざとなったら傀儡化でも使ってどうにかする。反重力装置引っ張り出す時間はない、行ってくる!」

 

言葉の終わらぬうちに、彼は飛び上がっていた。

その姿は徐々に小さくなっていき、あっという間に赤い影すら見えなくなった。

残された2人は最早、嘆息するしかない。

 

「兄さんのバカ…」

 

「あいつ、まず間違いなくこの星で1番アホだろ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…マジかよ」

 

地上1600m程で落下物を待ち受けるセブンだが、その口からは思わず呆けた声が出た。

それもそのはず、超視力で確認したのは宙から降ってくる子供だったのだから。しかもスパークアーマーらしき鎧で全身を覆っている。

 

「親方、空から女の子が!…いやまだ女の子と分かった訳じゃないか。」

 

少なくとも、観客が誰もいない中で一人漫才をする程度にはセブンは混乱していた。

だがボケっとしている時間はない。何としても、ここで受け止めねばあの子供の命はないだろう。

 

「ハァァァァァ……」

 

基本的に、セブンは精神を集中させなくとも強力な念力を発生させられる。どころか、誰かと会話する片手間に隊長殿を吹っ飛ばす位の芸当は楽にやってのける。

そのセブンが、チャージ時間を必要としている。

緊急事態も緊急事態だ。

 

能力を使わずとも、影が視認できる範囲に入った。そこからはもう、一瞬で事が決する。

 

「ッ…止まれェッ!!!」

 

セブンの周囲の景色が、ぼやけた。

可視化出来るほどに圧縮された意志の力(念力)が、落下してくる子供を包み込む…が。

 

「流石に殺しきれないか…!」

速度はほとんど相殺したものの、落下自体を止めるには至らなかった。

 

こうなればもう力技しかない。子供の真下へと回り込み、覚悟を決め「ん…オヤジ…?」

 

「え?」

 

気づいた時にはもう遅い。

子供が落下しながら意識を取り戻した事、そして父と呼ばれた事に対する驚きで体がコンマ数秒硬直した。そしてその結果。

 

「ってうぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

「「セブン(兄さん)!?」」

 

踏ん張りきれず、子供諸共落下して義妹に救出される事態となるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、警備隊本部に場は移る。

 

「ふーん…珍しいわね、セブンがトチるなんて。」

 

「まさか意識があるとはな…驚いて固まっちまった。それにしても、なんであんな小さい女の子が落ちてきたんだ?マジで天空の城か?」

 

「おー、ラ〇ュタ懐かしい。地球が恋しくなるなぁ。」

 

「私はも〇のけ姫やらゲ〇戦記の方が好みですがね。」

 

「あははは…エースちゃんらしいね…」

 

「それとなく私とジ〇リ馬鹿にしてます?」

 

警備隊トップ6人が集まり、報告とこれからの対処の協議が行われている最中だがその空気は緩い。

元から実の姉弟、もしくはそれ以上に心を通わせあった者達がそれぞれ出世して出来上がったのが現行体制である事を考えれば、それも当然かもしれない。

 

そして、その中心にいる黒一点。彼自身も気が付いていないが、その存在は計り知れない程に大きい。彼の笑顔が、何気ない一言が姉妹の原動力とすら言っていいだろう。

誰よりも優しく、同時に誰よりも痛々しい青年を中心として歯車は回っている。

 

「…ん?」

 

だが、裏を返せばこうも言えるだろう。

 

「足音が聞こえないか?走ってこっちに向かってるような…」

 

 

何かの調子で歯車が外れれば。

 

 

「うん、確かに聞こえるね。音の間隔からして歩幅が小さい…子供かな?」

 

「おぉ…!タロウが理性的な見解を!成長したな!お兄ちゃんは嬉しいぞー!」

 

「わわっ!もうっ、ボクは子供じゃないって!皆の前で撫でないでよね!」

 

「じゃあやめ「やっぱり続けて!」はいはい、仰せのままに。」

 

「うぐぐ…!私だって、私だってぇ!」

 

「いいなぁ…」

 

「ちっ、末っ子特権を…!」

 

「偶には私も……いやいやっ、私は何を!」

 

 

 

一瞬にして、全てはバラバラに。

 

 

 

 

 

 

 

 

バタンッ!

 

 

 

 

 

 

「「「「「「?」」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

「みつけたぞ!()()()()()をほうっておいてきょーだいとイチャイチャとはいいどきょうだぜ!もうにがさねぇからな、()()()ー!」

 

セブンの膝へと飛び込んできた、1人の少女…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、物語は冒頭へと戻る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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…あれ?俺、生きて…る?

 

「…ジアくん!レジアくん!?」

 

「んあ…ネオス…?」

 

「もうっ!心配したんだから!」

 

目が覚めてまず飛び込んだのは、二つのやわそうな丘。

誠にありがとうございます。

 

そして、次に目がいったのはその持ち主(ネオス)の顔。本当に心配そうな顔でこちらを見つめてきて…

 

「いつ見ても綺麗だなァ…」

 

ぼけーっとしたまま、ありのままの感想が口をついた。

まだ寝ぼけているというか…思考がふわふわしてるというか…。とにかく、その時の俺はマトモな状態ではなかった。

 

「きれっ…///!?おっ、起き抜けに何言ってるの!もう、人が心配してるのに!」

()()()()()ビンタ?というよりむしろ叩き落しで意識がようやく覚醒し始める。何が起きて俺は臨死体験したのか、今どういう状況なのか、そして………ちょっと待ておい。

真上から?ビンタが?あん?そもそも目に写ったのが男のロマンだと?それってもしかして…

 

「ネオスの膝枕ァ!?」

 

「ひうっ!?何なのもうっ!レジアくん大丈夫?」

 

ふ、ふふふ…警備隊(ウチ)で二枚目、モテる男と言えばセブンだったが…とうとう我が世の春が来たぁ!!

学生時代、後輩のネオスに一目惚れしてから早数千年!俺は先輩と後輩、そして上司と部下の垣根を破る事に成功したぞぉぉぉ!!見てるかセブン、お前が隠し子騒動で死ぬ目にあっている今、俺は幸せの絶頂にいる!

 

「いやー悪い悪い、助けてくれたのか?」

 

「う、うん。マリーさん呼んできて、レジアくんとスコットくんの治療頼んで…あ、や、貸しを押し付けようとかそういうんじゃないよ!?ただ本当に心配で…」

 

お前がそんな安い女じゃねぇことくらい分かってるよ。

なんせ俺が本気で惚れ込んだやつだからな!

 

「大丈夫だよ、その程度分かってら。…なぁ、もう少しこのままでもいいか?」

 

「うん、いいよ。……ベスちゃんが凄い写メ撮ってるけど。」

 

「!?!?」

 

「あっははははははは!レジア先輩のマヌケ面、セブンさんに送っておきますねー!」

 

「おいベステメェぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「レジアさんが女の子の膝枕で寝てんのに!俺はどうしてチャックの膝の上なんだよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

「うるさいぞ、静かに寝てろ。ちなみに寝心地はどうだ。」

 

「硬すぎに決まってんだろクソッタレ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「なぁ!お前ら聞けって!話を!俺の弁解を!」

 

「ボク達に黙って女を作るセブン兄になんて聞く耳持たないよ!スワローキック!」

 

「うぉぉぉ!あぶっ、危ねぇっ!本当に知らないんだって!心当たりがないんだよ!つか女作るにしてもわざわざ報告は…「M87光線!」前から思ってたけどお前隊長の自覚ある!?ないよね!街中でそれぶっぱなすとか絶対自覚ないよね!」

 

「見損ないました、兄さん!スライスハンド!」

 

「ひぃぃっっ!ジャック落ち着け、お前だけが希望なんだ!頼むから俺の話を!」

 

「バーチカルギロチン。」

 

「ぎゃあぁぁぁぁ!!エースだぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「なんですかその反応!」

 

「止まりなさいそこの女の敵!ウルトラ水流!」

 

「いやシルの技絶対おかし…冷てぇ!!おまっ、冷てぇ!女の敵も何も、本当に知らないんだって!お前ら肉体言語以外にも話し合いの手段を持とうよ!!」

 

「オヤジもててるな…じつのむすめとしてはふくざつだぜ…。」

 

「ゼロちゃん君は黙ってようか!」

 

さ、流石にあいつらに見つからずに逃げるってのは虫が良すぎたか!当たり前だがこいつらのコンビネーション、絶妙過ぎるんだよ!それに相も変わらず話し合いという言葉が辞書に載ってねぇ!

ジャックとならどうにか話が出来るかと思ってたが…誤算だよこんちくしょう。

 

「べーだ!オヤジはだれにもわたさねー!」

 

「「「「あ''あ"!?!?」」」」

 

「頼むからお口チャーーーック!!!」

 

足に力を貯め、圧縮した念力をバネにして思い切り地面を蹴る。スーツを装着せずとも、これならば優に200mは飛び上がれるし移動できる。

後はNinjaみたいにビルを飛び移ればなんとか行ける!

…蹴った後地面がめり込むけど。くそっ、給料からいくら天引きされんだ!

 

 

「っ…おぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

「おーーー!!とんだ!オヤジがとんだ!すーつつけてないのに!」

 

「!」

 

この子、やっぱりスパークアーマーを知っている!光の国の出身なのか?いやそもそもなんで俺が父親役!?

 

「なぁ、ゼロ?」

 

「ん?」

 

「お前、お母さんは?」

 

「へんなオヤジ。うちにおふくろはいないじゃねーか。だからオヤジがおれをしっかりそだててくれるって、約束してくれたじゃん!」

 

…おいおいどんなハードストーリーだそれ。まさかの父子家庭設定。おままごとにしちゃリアルすぎ…待て。

 

「う、うっかりしてたよ。変なこと聞いてごめんな?」

 

「むー…ばつとしてあしたのばんめしはおやじのてづくりハヤシライスをよーきゅーする!」

 

「っ…分かった、楽しみにしてろ!だからもう少しいい子にな!」

 

「よっしゃー!」

 

さっきゼロはゾフィーの光線の名を言った。そして今、偶然かもしれないが俺の得意料理を作ってくれと…。しかも仕込みに1日かかるという事も理解していたようだ。まぁこれは単なる知識かもしれんが。ともかく、俺の行動方針は決まった。

 

「賭けだ…でも仕方ないよなぁ…」

 

「?」

 

不健康マッドサイエンティスト、頼むぞ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「ふふふ、いい度胸じゃないかセブン。私もゾフィーから連絡を受けてね、丁度今君を狩りに出かけようと思っていた所だ。飛んで火に入る夏の虫とはこの事だな。」

 

見事にフラグを建て、あえなく撃沈。

一縷の希望を賭けたヒカリの研究室への特攻だったが、案の定失敗に終わっていた。

 

「お前もそっち側かよぉっ!」

 

容赦なく振るわれる光剣を既の所で躱し、セブンはゼロを自分の背中に回らせて守る態勢に入る。

剣はセブンの背後の壁を切り裂き、流石のゼロも顔を引き攣らせているが、セブンは大丈夫だと言うように彼女の肩に手を回した。

 

「その態度を見るに実子のようだな。いつの間に女を作って…」

 

「だからなんであいつらもお前もそこに行き着くの!?と言うかまずは俺の話を聞け!お前に頼みがあるんだ!」

 

「その子の母になってくれという頼みなら聞かんぞ。何が悲しくて他の女との間に出来た子供を育てねばならんのだ。」

 

「だからまず聞けって言ってんだろ!?て言うか、それだと俺がお前にプロポーズしてるみたい…ごめん分かったから剣喉元に突きつけんのやめて。…んん!俺が本当にやらかしててお前らから逃げようとしてるんだったら、とっくのとうにスーツ使ってる。取り敢えず話を聞いてくれよ、頼むから!」

 

必死の説得が功を奏したのか、ヒカリのナイトビームブレードが右腕のブレスに収納されていく。続いて、光の粒子となって消えたヘッドギアの下から唇を尖らせた顔が現れた。

 

「…まぁ、この状況下で わ た し を 頼ろうとした英断に免じ、話だけは聞いてやろう。」

 

「「た、たすかった…」」

 

同時に息をつき、顔を見合わせて笑う2人。しかし、そんな2人を見るヒカリの目はどこか寂しげな色を宿していた。

 

「まず言っておく…前にゼロ、あのおっかないお姉さん達が来ないか、そこのベランダから見ててくれないか?もし来たら、俺を呼んでくれ。重大な任務だぞ、分かったか?」

 

「シルたちのことか?まかせとけ、オヤジ!きじんの娘のちから、みせてやるぜ!」

 

花が咲いたような笑顔を見せ、トテトテと駆けていくゼロを目で追いながらセブンは続けた。

 

「…見ての通りだ。あの子は、ゼロはシル達の事を知ってる。」

 

「のようだな。君が教えたのではないのか?」

 

「何度言えば…ってお前には初めてか。本当に心当たりがないんだ。俺が作った子供じゃない。」

 

真っ直ぐ、真剣な眼差しを向けるセブン。

数秒、互いの視線が真っ向からぶつかる。

 

「…はぁ、分かった。取り敢えずはそういう事にしておこう。君が自ら姉妹を傷付けるような「ありがとうヒカリぃぃぃぃぃぃぃ!!!」ななっ、何をしているっ///!?年甲斐も無くみっともないぞ!」

 

先に視線を外したのはヒカリだった。

多少の疑念はまだあるが、という顔をしてタバコに火をつけようとした矢先、セブンの全力ハグを喰らう。慌てて引き離そうとするが、涙を流さんばかりの様子で喜びを爆発させる彼を見て、彼女の中のナニカがくすぐられた。

 

(…これはこれで…アリだな…)

 

にへら、という表現が相応しい緩んだ表情には、しかしセブンは気付かない。

 

「やっと信じてくれる奴が…!やっと話が通じる奴がぁぁ!やっぱりお前の所に来て良かったぁぁぁ!」

 

「く、くすぐったいから…!は、離れ…ひゃっ///!?」

 

「いやすまんすまん。嬉しくてつい…。まぁそれより本題だ。ゼロについて俺なりに考えたんだが……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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セブンの隠し子が発覚(?)し、警備隊が大混乱に陥る中で続々と市街地の被害情報がケンの元に集まってきていた。

 

M87光線が原因だと思われる大爆発、長ドスを振り回す女性、燃えている人が街を走り回っているなどなど…。

 

平たく言えば、ウルトラ姉妹大暴走である。

 

本来ならばすぐにでも部隊を出動させ、事の鎮圧を図らねばならないのだが…

 

『え?セブンさん絡みで五姉妹がご立腹で暴れてるからを鎮圧しろ?それなんて無理ゲー?』

 

という理由で誰も出動したがらない。

 

「ふふふふふふふふふ…見つけましたよぉ、ご主人様の位置!こっそり服にGPSを仕込んでおいたのが奏功しましたね!」

 

「引くわー、ドン引くわー…。まぁそれより、知らないうちに家族が増えてたとか意味分かんないんだけど。え、なに、ウチのご主人様ってクズな感じ?」

 

「ご主人様とられたぁぁぁぁぁ!!」

 

唯一元気に(殺気立って)捜査に当たっているのはセブンの家族である3匹。

仮にも主と呼ぶ者にその対応は如何なものかとケンが具申したところ、彼の姉から

 

『殺れ。』

 

というありがたいお言葉を頂戴しているらしい。

 

ケンは諦めた。ウルトラマンにも不可能はあるのだ。

ゾフィーの声を聞いた時、ケンの脳裏には若い時分の記憶がフラッシュバックしていた。

 

ケンを間に挟み、威嚇し合う女性が2人。

1人はケンの右腕を取り、ニコニコと笑みを浮かべているが、その目は全く笑っていない。

もう1人は敵意を隠そうともせず、反対の女性に対抗してケンの左腕を取る。

にらみ合いは次第にエスカレートし、ケンの腕を介した綱引きが始まった当たりで彼の記憶は途切れている。当時の彼が自ら記憶を抹消する程の恐怖体験をしたのか、それとも引っ張る力に耐えられず意識がフェードアウトしたか…。今となってはもう分からないことであるが、これだけは確かだ。

 

「セブン、生き延びろよ…」

 

色事で女性にかなう男性など、存在しない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「別次元の存在だと?あの子が?」

 

「いやまぁ仮説だって。だけどタイミングが良すぎないか?ウチの直上に現れた1人用の次元の歪み…いや、狭間と考えた方がいいかもしれない。その直後に降ってきたのは俺達を知っている謎の少女。どうだ?」

 

「多次元宇宙論、か。アナザースペース…パラレルワールドのお前の娘か、彼女は?」

 

「俺達の名前だけじゃなく、俺の得意料理まで知ってたんだぞ?」

 

「興味深い考察ではある。だがあんな少女に可能か?」

 

問題はそこだ。あの次元の歪み、もしくは狭間を少女が自分の意思で超えてきたとは到底思えない。

 

「…次元を超えた後の障害現象が今の姿、とは?」

 

「!!!君で言う所のX態か!それならば幾つかは説明が付く… !」

 

X態。通称ではあるが、セブンの状態の一つ…と言っても、強化状態ではない。かつて無理矢理、自分の力だけで別次元へ飛んだセブンがなった形態だ。

 

スーツはより鋭角的なデザインになり、基礎身体能力が向上。その代わり光線や念力の力が著しく低下し、アイスラッガーも心做しか切れ味が落ちる。そして何より、一定期間記憶が封じられてしまう。

原理は不明で、完全なるブラックボックス…すなわち、謎の形態X。

 

それと同様の状態がゼロに起こっているのだとすれば。

 

「記憶が曖昧になり、ここを自分の次元だと思い込んでいる…。落下から1時間以上メディカルセンターで眠っていたのも、力を使い果たしていたからと考えられるな。」

 

「仮説としては充分アリだと思うんだが…これ聞いてあいつら納得すると思うか?」

 

「十中十一無理だな。そもそもそれが合っていたとしてどうすると言うんだ。ゼロが記憶を取り戻すまで待つのか?君は完全に記憶が戻るまで3ヶ月かかったと聞いたが。」

 

「ですよねー…。チッ、手詰まりかよ。あいつらそろそろここに来てもおかしくないし…ヤベェどうしよう。」

 

本格的に状況が絶望的になり始めた時、ゼロの声が響き渡った。

 

「きたぞぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

「うがぁぁぁ!サンキューゼロ、こっち来てくれ!逃げるぞ!ありがとなヒカリ、話聞いてくれて助かった!じゃあ迷惑かからないうちに俺達は「待て。」なんだよ!?」

 

完全に記憶が戻るまで3ヶ月…そこに思考が至った時から、ある考えがヒカリの胸中に燻っていた。しかし、それを口にするのが怖い。

若しかしたら、若しかしたら彼との関係を崩してしまうかもしれない。でも、それでも…

 

じっとりと汗ばんだ手を握りしめ、ヒカリは覚悟を決めた。

 

「その子が元に戻るまで…私と共にその子の面倒を見な『おいコラ青科学者ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!』!?」

 

言葉を遮って、壁に大穴が開く。ド派手な爆発音と共に耳に入ったのは聞き覚えのある5人の声だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「ヒカリ貴様、それで良いのか!?」

 

同期の科学者に向け、私は怒鳴る。

 

「あんたが後妻ポジを狙ってくるとは予想外だったわ…!」

 

「つ、妻///…じゃなくて、違うっ!私はそういう意味ではなくてだな!」

 

我々の思いはシルの一言に集約されているだろう。いくらセブンの子とはいえ、何処の馬の骨ともしれぬ女との間の少女を育てるなど、貴様正気か!?

 

「…兄さんがいいと言って下さるなら…私はそれでも….」

 

「ちょっとジャック姉!?」

 

とと、忘れていた。我々の本来の目的はそこで白目を向いているメガネにある!

 

「兄さん…大人しく去〇されて下さい。節操なしの■■(ピー)は私の手で切り落として差し上げます。」

 

「分かった、一旦落ち着こう。そして俺の話を1回でいいから聞いてくれ。」

 

「幼なじみとして、私が引導を渡してあげるわ。背負い投げと地獄車、どっちがいい?」

 

「お前ら本当に俺の話聞いてくれないのな…」

 

「なんでですか、兄さん…!私は兄さんの頼みであれば、多少、その…えっt…んん!不埒な希望にも沿いましたのに…///」

 

ジャック!?!?

 

「何を言ってくれてんのジャックさん!?」

 

そ、それは同意だ!まさかジャックがそんな…そういうのはタロウの受け持ちでは…!?

 

「セブン兄の莫大な欲望を受け止められるのはボク「黙れ」ねぇなんでボクだけガチトーンで応対するの!?」

 

様式美だな…なんて和んでいる場合ではない!

 

「セブン…私達もウルトラアカデミーからの付き合いだ。隊長として、姉として、そして友として。私が貴様を屠ってやる。」

 

「頼む!この通りだ、話を聞いてくれ!俺は本当に子供どころか女も作ってない!誓っていい!」

 

そう言って何人の女を泣かせてきたのだセブン!

私達の想いにも気付かず、鈍感でヘタレで、そうかと思ったら馬鹿みたいに優しくて、傷付いた時には何も言わずに寄り添うような気遣いが出来て!つまり何が言いたいかというとだな!

 

好きだ!!

本当はアカデミー生の頃からずっと!お前の事が好きだった!その真っ直ぐな瞳が、優しい心根が何より好きなんだ!

何も知らない奴らに派閥争いなどと言われ、私がどれだけ悲しんだか!

お前には分かるまい!

 

 

 

 

…………………………

 

違ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁう!!!!!!

 

これではただの告白ではないか!?

 

うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!

 

 

「何1人で悶絶してんのよあんた…」

 

 

 

 

 

 

 

 

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

 

ちっちゃい頃から…気づいたらあんたが隣にいた。隣でいつも、私に笑いかけていた。

初めて出会ったあの時も。

一緒にアカデミーに入学した時も。

毎日毎日、夜遅くまで遊んだ時も。

私が警備隊に所属すると伝えた時は…ちょっと苦い顔してたけど。

 

でも、その後もジャックに特訓つけてた時も、任務に行く時だって。

いつもセブン、あんたが私の隣にいたのよ?

 

だから勘違いしちゃったのかもしれない。

 

『セブンはいつまでも、私と一緒。』

 

そんな事は無かった。あんたには別に大切な人がいて、子供まで出来てて…。

悪いのは安心しきって勘違いしてた私。そんなの分かってる。でもやっぱり…

 

「その子の母親がどんな人か…ゆぅっくり聞かせてもらいましょうか?ねぇ、セブン?」

 

あんたの好みを知りたい。あんたが惚れるような女になりたい。

だって私は、あんたが好きだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

 

憧れ…そんな言葉では語りきれません。

兄さん、私は貴方をお慕いしています。

好かれている女性がいようと、お子さんがいようと…私は貴方を諦められません。

 

訓練生時代、いえ、それこそ子供の頃から兄さんは私の標でした。優しくて大きくて、本当の兄のような人。

心が折れかけた時、敵に敗北し辱められそうになった時…兄さんは私を救い、こう言ってくれましたね。

 

『ジャックは頑張り過ぎだ、もう少し甘えてもいいんだぞ?』

 

私のわがまま…幼い頃からの夢。通させて下さい、兄さん!

 

私は貴方を『セブンさん』と、夫として呼びたいんです!!

 

 

「兄さん!ゼロちゃんと今後の生活について、ゆ、ゆっくり2人きりでお話しませんか!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

 

私は、兄さんに魅せられました。

血飛沫が舞い、悲鳴が上がる中で一瞬たりとも止まることなく敵を切り裂いていくその姿に。

 

美しい。

 

それが、私が()()()感じた兄さんの魅力。

 

教えを乞うようになり、こんな可愛げのない私を大切にしてくれる兄さんに夢中になるのに、そう時間はかかりませんでした。

でも一緒に過ごすに連れて感じたのは、絶対に埋めることの出来ない壁。

 

シル姉さんとジャック姉さんは幼なじみで、ゾフィー姉さんとも学生時代から交流があったそうです。しかもタロウとは従兄弟姉妹(いとこ同士)

 

私が一番、兄さんと過ごした時間が短い。他の皆が分かる兄さんの趣味嗜好から特技まで、全て教えてもらう側だった。

だが、だが。それがどうしたというのだ。私は私だ。私は兄さんの事が好きだ。その一事だけで充分ではないですか。

 

女がいる?子供がいる?

今までもハンデならありまくりです。

伝えてもいないこの気持ちを、兄さん本人以外に否定されてたまるものですか。他者の存在だけで諦めてなるものですか。

 

「今なら片腕切り落としで済ませます。大人しく左腕を出して下さい。」

 

でもやっぱり少しだけ…ほんっっっっの少しだけ頭に来たのも事実です。かるーくお仕置きですよ、性欲魔人。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

 

昔から何度も伝えてるんだけどなぁ…。

 

『セブン兄、ボクセブン兄のお嫁さんになるー!』

 

初めて言ったのはいつだっけ?あはは、小さすぎて覚えてないや。でも、その時セブン兄が嬉しそうな顔をして、こう言ってくれたのは覚えてる。

 

『俺よりいい人が絶対にいるさ。こんなに早く決めると後悔するぞ?』

そんなことは無かった。やっぱりボクにはセブン兄だけだよ。幾つになっても、他の星に行っても、セブン兄より素敵って思える人には1人も会えなかった。

だからいつもいつも言ってるのに…セブン兄のバーカ。

鈍感。女ったらし!子供まで作って!エロエロ大王!!

 

でも、悔しいけどそんなセブン兄が好きだ。たまらなく好きなんだ、ボクは。

今更諦められないよ。

 

「他所の女より、ボクの方がセブン兄のことずっと好きだもん!!」

 

ぜぇぇぇぇぇっっったい!!セブン兄のお嫁さんになる!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□

 

怒りに燃える姉妹達を前にして、セブンが出来ることは何もなかった。テレポーテーションをしようにも、ウルトラブレスレットから妨害電波が発せられているのが分かる。どうせ無駄だろう。

しかし、ウルトラアイを使ってスーツを纏う事だけはしたくなかった。抵抗とみなされどんな酷い目に遭うか知れないし、何よりも誤解からとは言え力を彼女達に振るいたくはなかったのだ。

 

「がるるるるるる…!」

 

セブンの腕におさまり、全力で威嚇しているゼロの行動も事態の激化に拍車をかけていた。

ゼロが威嚇→姉妹怒る→ゼロがまた威嚇…とまさに負のスパイラルだ。

 

「待て君達、セブンの話を聞いてやっても…」

 

唯一の味方がどうにか姉妹を宥めようとしてくれるが、エースの本気睨みが炸裂してあえなく沈む。命は大切という事だろう、こちらを向きながら口パクで

 

『ごめん、無理ぽ』

 

ときた。

 

「最後に地球に1回行きたかったなぁ…」

 

「アンヌか!?あのアンヌとかいう地球人が母親か!!」

 

「ちょっと!誰それ私知らないんだけど!」

 

「おい君、それについては私も話を聞く側だぞ。」

 

絶望的に話を聞かない。

 

全てを諦めたセブンが、ふとゼロに視線を向けた、まさにその時。

 

「あれ?おれ、ひかってる…?」

 

『!?』

 

お姫様抱っこされている少女の体が輝きだし、その光は一瞬にして辺りを完全に包み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、なん…!?」

 

光が晴れ、まずセブンが感じたのは驚きだった。

腕の中に感じる重さが、一気に増えた気がした。幼子を抱えていた筈が、いつの間にか大人を抱き上げていた…そんな感覚。

 

まだチカチカと明滅を繰り返す目をなんとか開き、下を向いてセブンは己を驚かせたものの正体を確認する。

そしてそこに居たのは…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うん…?なんだ、温か…!?なっ///!?ななっ、なんで外でだっこしてんだよこの馬鹿親父!!家以外でやるなって言ってんだろぉぉぉぉぉ///!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

綺麗なアッパーを繰り出してくる、高校生ほどに成長したゼロの姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

 

「……………で。そのガk…こほん、少女は()()()()()()ご主人様のお子様だと言うのですか?」

 

「おぉぉ…ウインダムがわりと粗暴だ…アギラに聞いてた通りだな。」

 

「僕の事も知ってるの?」

 

信じられないな…。

目の前の女の子、ウルトラマンゼロはウインダムの言葉通りの存在らしい。

 

「だから俺は違うって言ってんのに、お前ら人の話を聞かねぇからさぁ…」

 

「「「「「ごめんなさい…」」」」」

 

なんでもこの子は次元を自由に行き来する能力を持っており、別次元から自分の元居た次元に帰ろうとしたそうだ。そんな時敵の襲撃にあい、時間を操る攻撃で撃退したものの自分の力を抑えられずに不完全な状態で次元を移動。おかげで時間軸はズレるわ自分は子供になって記憶が飛ぶわで踏んだり蹴ったりだった…

 

大まかな説明はこうだ。

いや、取り敢えず言わせてくれるかな?

 

「多芸過ぎない?次元超えて時間操る?それなんてチート?」

 

「ふふん!俺はウルトラセブンの娘だぜ?そんくらい朝飯前って奴だ!」

 

こんなにオラオラしてる女の子がご主人様の子供って…

 

「マジで俺の娘か…。てっきり別次元から来たもんだと思ってた。」

 

「いやー、それでも流石だな親父。状況証拠だけであそこまで推理するなんて。」

 

ご主人様はあぁ見えてわりと考える方だからね。頭に血が登るとスグに突っ込むけど、普段はちゃんと冷静だし。

 

()()()()のせいでひでぇ目に遭ったけどよ、まさか過去に戻れるとは思ってなかったな。そう思えば感謝の気持ちも湧くってもんだ。にしし、こんなフランクな口調の親父とか貴重過ぎるぜ♪」

 

「え?未来だと違うの!?」

 

「おうともよ。これぞ武官ってカンジの堅い喋り方だ。マジギレした時以外くずれねーし、顔は仏頂面だし、クールだし、光の国随一の硬派って評判なんだぜ?まぁ自慢の親父だけどな!」

 

えぇぇぇぇ…に、似合わない…。

ご主人様がザ☆武官的な口調とか…お堅いイメージが全くないよ。

 

「ねぇねぇ、未来のソイツの事とか聞かせてよ。自分の事は聞きたくないけど…」

 

「いや本人の前で辞めてくれません!?」

 

「うーん…まぁ、未来に影響を与えない程度ならいっか。そうだな、親父は今や警備隊最恐の名を欲しいままにしていてだな…『え?キングジョーが硬くてアイスラッガーじゃ切れない?だったら鈍器みたいに使って殴ればいいだろ。相手を壊せりゃそれでいいんだから。』とか素でやらかす。」

 

「何が起きた未来!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□

 

本来の姿に戻ったゼロは、体力の回復を待ち次第元の時間に戻る事となった。無事に帰れるのか危ぶむ声もあったが、『シャイニング』、『ウルティメイトイージス』と呼ばれる力を併用すれば問題ないとのこと。

 

そして今、姉弟とヒカリ、短い間ながら交流を深めたカプセル怪獣達が飛び立つ彼女を見送りに来ていた。

 

「まぁ色々ゴタゴタはあったけど…会えてよかったよ、ゼロ。」

 

「そりゃあ俺のセリフだぜ。姉妹に追っかけられる親父の気持ちが少しは理解できたかな?」

 

「お前、幼児化してた時の記憶あるのか?」

 

「親父だってX化してた時の記憶はあるだろ?それと同じだよ。」

 

「の割には元に戻った瞬間アッパー繰り出してきたんですがそれは…」

 

「あ、あれは俺を抱っこしてる親父が悪い!しかも色んな奴らの前で!恥ずかしいだろ!」

 

「抱っこて…言い方…」

 

姉妹の頭に、他人の前でなければ良いのかという疑問がふとよぎったが、そうしているうちにも親子の()()()会話は弾んでいた。

 

「でも、俺の未来も捨てたもんじゃないな。嫁さん貰えて、こんなに可愛らしい娘までできて…胃痛もその頃には収まってるといいなぁ…。」

 

「かわ、いい…!?」

 

「ん?」

 

「な、なぁ、親父から見てよ…その、俺、女らしいかな…?」

 

粗暴な言葉遣いではあるが、顔を赤らめ、指先を弄んで父の答えを待つ姿は十二分に年相応の少女らしかった。

 

「あぁ。俺には勿体ねぇくらいの可愛い娘だ。」

 

「そっか…俺、可愛いか…へへ、えへへ……………あ。」

 

『?』

 

顔を緩ませ、父の言葉を噛み締めていたゼロが突然呆けた声を出した。気付いてはいけない事に気付いてしまった…まるでそんな声音だ。

 

「いや…あの…こ、これは言っていいのか…?」

 

「…母親の事?」

 

「ギクッ!」

 

シルの指摘に、ご丁寧に口で擬音を表現するゼロ。

確かに、ここに集まったメンバーに取っては文字通り死活問題であろう。今まで敢えて聞かなかったのは、未来に影響を及ぼす恐れがあったためと、やはり怖かったからだ。

しかし、ここまで来たら最早聞くしかない。

女性陣、満場一致の感情であった。

 

「じゃ、じゃあ俺そろそろ元の「ここのUポートにジャミングを仕掛けてある。話さねば帰れんぞ?」…ヒカリぃぃぃぃ!お前昔からマッドなんだな!」

 

「うーん…聞きたいような聞きたくないような…」

 

(お、親父。逃げる準備はしといた方が良いぜ?)

 

「え?」

 

念能力会話…思った時にはもう、ゼロが口を開いていた。

 

「その、だな…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「親父、結婚歴ないんだよな…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「「「「死ね!!」」」」」」」

 

「嘘だろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?!?」

 

響き渡るは胃痛持ちの叫び。そしてそれを追いかける女性達…いつもと何ら変わらない光景が、既にそこに顕れていた。

 

「し、心配すんな親父!幸せな生活だぞ!俺と親父の2人暮しで、毎日俺が背中流してやってるし、布団は一緒で仲良く寝てるし…悲観すんな!」

 

「セぇぇぇぇブぅぅぅぅン!!!」

 

「何よ!結局婚外子じゃない!!他所で作った子供じゃない!」

 

「死ね!死ね死ね死ね死ね!!」

 

「どうしよう…に、兄さんが他の女に誑かされる前に、私がゆーわくを…」

 

「ジャック姉と最近キャラが被りつつあるのは気のせいかな?な?」

 

「やはりあの時斬っておけばよかった…」

 

「ご主人様がそんなケダモノだったなんて!」

 

「ねぇ、ちょっと待ってよご主人様。お話しようって。」

 

「?追いかけっこ?ミクラス達が鬼?」

 

「ゼロぉぉ!!言わなくて良いって、そんな事!マジでやめろ!!」

 

舌を出し、てへへと笑うゼロを尻目に、生死をかけた追いかけっこは続く。

やがて、ゼロの体から青い光が迸り始めた。

この時代に別れを告げる光に包まながら、ゼロは呟く。

 

「はは、口癖もこの頃からだったんだな。俺が一番聞き慣れてる親父の言葉…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「胃が痛い!!!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

『自業自得だ(です)!!!!!!!』

 

「じゃあな親父、生き残れよ!5900年とちょっと後にまた会おうや!!」

 

 

こうして、歴史に残る激動の1日…『セブン隠し子騒動』幕を閉じた…わけではなく。

 

「帰った!?アイツ爆弾残して帰りやがった!?親不孝者ぉぉぉぉ!!」

 

第2部が今、幕を開けたのである…。

 

 

 

 

 

ウルトラセブン誕生50周年記念番外編、了ーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

 

 

 

オマケ

 

ナイス「ウルトラマンナイスの!ベリーナイス・ラララジオ!今日は特別編ですッッ!!」

 

ウインダム「いぇーーーい!!」

 

ナイス「ウルトラセブン放送開始50周年スペシャルー!!本日のゲストは同じく誕生50周年!カプセル怪獣ウインダムさんです!!」

 

ウインダム「ご主人様の記念日に私がゲストに呼んで頂き…感無量ですっ!」

 

ナイス「なんと言っても、まずは全宇宙のセブンファンの皆様!おめでとうございます!!」

 

ウインダム「おめでとうございます!もう50年ですよ50年!半世紀も多くの人に愛されているご主人様…素敵…!」

 

ナイス「このアホな小説がここまで続いているのは、ひとえに原作人気のおかげだと言えますね。雑な描写に申し訳程度の文章力、本来なら即失踪間違い無しなんですが…。今回の特別編も、長い上にオチが中々つかなくて半泣きになってましたからね、作者。」

 

ウインダム「それを言っては…ま、まぁ今日はお祝いですからね!楽しくやっていきましょう!」

 

ナイス「それもそうですね。では、今日はリスナー(読者)の方々から頂いた支援イラストを紹介していこうと思いますっ!トップバッターはこちら!!」

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

ウインダム「アンギラスの息子さん作、影絵風タイトルロゴ!大分前に送って頂いたのですが、使うのが遅くなってしまい申し訳ありません…」

 

ナイス「そんな事言ったら他の方もそうでしょう…息子さん、原作を彷彿とさせるロゴ、ありがとうございました!」

 

ウインダム「続いてらこちら!ファイヤーへッ…ゾフィーさんとご主人様のイラスト!劣兵さんから頂きました〜!」

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

ナイス「セルフて…隊長(笑)」

 

ウインダム「後で塵にされますよ…」

 

ナイス「な、仲睦まじい様子ですね!劣兵さん、まさかのイラストありがとうございましたー!続きまして、薩摩7子さんからのイラスト!どうぞ!!」

 

 

【挿絵表示】

 

 

ウインダム「チラリと見える鎖骨が魅力なヒカリ博士!うぎぎ、あれで私のご主人様を誑かそうと言うのですか!」

 

ナイス「いや本人はそのつもりないと思うんですけどね…。本編では設定以外出番ナシ、しかし番外編での出演数はレギュラーに劣らず!作者のお気に入りキャラの1人、ヒカリさんの魅力が詰まった1枚!薩摩7子さん、ありがとうございました!」

 

ウインダム「そして!ラストは筆者も考えていなかったご主人様のビジュアル画像!北岡ブルーさんより頂きましたーーー!!」

 

 

front

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

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【挿絵表示】

 

 

 

ウインダム「あぁ…いつ見ても素敵です、ご主人様…!」

 

ナイス「眼鏡やアイスラッガーなど、難しいパーツを妥協すること無く描きあげて下さいました!長袖やロングコート風の衣装は寒さに弱いという原作設定を反映しているとの事です!」

 

ウインダム「こんな素晴らしい絵…感謝の言葉もありませんっ!ブルーさん、ありがとうございましたぁぁぁ!!ふふふ、今夜のオカズはこれで決まりですよ…!」

 

ナイス「…大丈夫かなぁ、このカプセル怪獣…。さてさて、嬉しいニュースはまだ続きますよー!」

 

ウインダム「遂に物語は若き世代へ!」

 

ナイス「新たな三次創作、『STORY OF NEW GENERATIONS~始まる新たなる伝説~』、護国と魔王さんの手により始動!!!」

 

ウインダム「いやぁもうウルトラマンという作品の人気の高さを感じますね。」

 

ナイス「全くその通りですね。筆者はギンガ以降無知と言って差し支えないので、エックスとオーブを主役に据えた本作はワクワクだと話していました!」

 

ウインダム「設定の兼ね合いが中々上手くいかず、護国さんにはご迷惑をおかけしてしまいました。この場を借りて、お礼とお詫びを申し上げます。」

 

 

 

ナイス「さて、お別れの時間が近づいて参りましたが…ここでリスナーの皆様に重大なお知らせがあります。本作、『ウルトラ姉弟(笑)の黒一点〜胃痛と戦え!ウルトラセブン!~』は今話を持ちまして、暫く更新をストップさせて頂きます。理由としましては筆者の多忙が9割9分、残りはスランプ…と言った所です。年末から2月にかけては本気で受験勉強を始めると筆者が言っておりまして…。加えて、(読了して頂き、感じられた方も多いとは思いますが)最近筆者の下手な文章に益々違和感が生じる事態となってしまい…少ない時間で慌てて書いても皆様にご満足頂ける作品は出来ないとの判断から、この度休載の運びとなりました。」

 

ウインダム「本編が中途半端な段階での更新停止、本当に申し訳ありません。更新再開は2月~3月と予想されます。重度のセブン狂である筆者ですので、失踪はないと断言できますが、楽しみにして下さっている皆様にはご迷惑をおかけしてしまいます。重ね重ね、お詫び申し上げます。」

 

ナイス「息抜きとか言ってたまーに投稿するかもしれませんが、その時は生暖かい目で見守って下さると嬉しいです。」

 

ウインダム「また来年、皆さんにお会い出来るのを楽しみにしています!」

 

ナイス「ウルトラマンナイスのベリーナイスラララジオ、本日はこの辺で!ウルトラセブン放送開始50周年、本当におめでとうございました〜!」

 

 

 

 

 

 

 

 

ベリーナイス☆スペシャルサンクス

 

 

イラストを下さった皆様

 

三次創作を書いて下さっている皆様

 

いつも感想を下さる皆様

 

全宇宙のセブンファンの皆様

 

この小説を読んで下さっている全ての皆様!

 

 

 

 

 

リメイクしたとして、どの時期のセブンが見たい?

  • 5姉弟時代
  • 6姉弟〜レオ指導時代
  • メビウス時代
  • ゼロ誕生以降、ベテラン時代

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