ウルトラ姉弟(笑)の黒一点~胃痛と戦え!ウルトラセブン!~ 作:三途リバー
宇宙警備隊本部、その直上。
「燃やせ!殺せ!憎きウルトラ族共を根絶やしにせよ!」
「「「グルォォォォアッッ!!!」」」
宙を埋め尽くす超獣の大群に檄を飛ばすのは、一体のロボット超人……いや、そこに憑依する異次元人の怨念だった。
その異次元人はかつて、エースが守護する地球を付け狙い、卑劣な侵略作戦をもって幾度となく彼女を追い詰めてきた。
実体を粉砕され、思念体と成り果てた今もエースを筆頭にウルトラ戦士への怨みは消え去っていない。
どころかこれまで以上の憎悪と執念をもって、暗黒宇宙人連合の中核として光の国へ侵攻したのだ。
彼が目を血走らせて探すのは、無論怨敵。自らの野望を打ち砕き、遂にはその身体までも滅した憎き戦士…。
「エース…ウルトラマンエース…!!奴だけは楽には殺さん…四次元空間に閉じ込め、ジワジワと嬲り殺しにしてくれる!そしてその死体を地球に晒し、あの憎き輝刃の心をへし折る!!出てこい、ウルトラマンエース!!ヤプールの力に恐れをなしたか!!……ヌゥッ!?」
その時、挑発に応えるかのように、一発のギロチンが超獣の肉壁を切り裂いた。真っ赤な血で空を染めながら、ギロチンは
「温いわ!」
しかし、左手に備え付けられた鉤爪でギロチンは容易く弾かれた。
「キンキンと耳障りな……貴様のその汚い声も聞き飽きた。いい加減地獄に落ちろ、異次元の亡霊…!」
目にも留まらぬ速さで肉薄した血化粧の姫君は、怯むことなく実体化した長ドスを叩き付ける。
その斬撃をも擬似ウルトラスパークで受け止め、鉄仮面を歪めんばかりにヤプールは嘯いた。
「待っていたぞエース…我ら四次元人の怨み、身をもって思い知れい!!」
「スクラップにされたガラクタに乗り移ってまで蘇るとは…潰しても潰しても湧いてくる、四次元人とは夏場の蝿か何かですか!」
「ほざけ小娘ェ!!」
火花を散らして斬り合う2人を他所に、ジャックとゾフィーがウルトラ戦士達を督戦する。
「エースに続け!ウルトラの星を、銀河の希望を守り抜け!」
「ここを押し返せば戦局は傾きます!皆さん、踏ん張り所です!」
「「「「「おぉぉぉぉぉっっ!!!!」」」」」
光線が煌めき、斬撃が飛び交い、エメラルド色の空は一瞬にして戦場へと姿を帰る。
暗黒宇宙人連合の襲撃依頼、最大の激戦の火蓋が切って落とされた。
■
同時刻、銀十字軍本部も一大勢力の襲撃を受けていた。
ジョーニアスを筆頭に戦士達が防衛線を張るが、戦力差は明白。雪崩のように襲い来る怪獣軍団に、1人、また1人とウルトラ戦士が倒れていく。
「ハァ、ハァ……流石に…限界か…」
「見事
荒く息を吐き、地に四足を突くジョーニアスの首筋に、バルタン星人バレルが刀を突き立てている。
U40最強の戦士と言えど多勢に無勢、撃破した怪獣が三桁に上ろうかというあたりで遂に体力の限界が訪れた。
「だがこれまでだな。安心めされよ、拙者はヤプールとは違う。貴殿の首級は粗略には扱わぬ。U40の妹君に届けることを約束しよう」
「ハッ、トドメも刺さずもう勝った気か?侍を気取るにしちゃ……まだ青いッ!!」
刀が振り下ろされる寸前、全身のバネを使ってジョーニアスが飛び上がる。
「プラニウムナックル!!!」
残り僅かなエネルギーを、光線として打ち出すのではなく右手に纏わせたまま全力でぶん殴る。
起死回生の一撃は、ジョーニアスの在り方そのものを体現したかのような拳だった。
しかし…
「ぐぅっっっ!?!?!?」
「生憎だが、拙者らは侍ではなく忍者だ」
その全霊の拳ごと、ジョーニアスの右腕が宙を舞った。
いつの間に抜いたのか、バレルの二振り目の刀のカウンターが炸裂していたのだ。
「貴殿が万全であればこのような芸当は到底出来ぬが……これも戦の習い、卑怯卑劣とは言わせぬぞ」
言葉と同時に、今度こそ刀がジョーニアスの腹を突き抜ける。
ヘッドギアの隙間から大量の血を噴き出しながら、ジョーニアスの体から急速に熱が抜け落ちていった。
「ぐぶっ!!がっ、は………は、はは…あぁ、そうだな…恨みつらみは言いっ子なしだ……」
「む!?」
「だからよぅ、オメェも文句垂れるんじゃねぇぞ!!」
突きささった刀が抜け落ちぬよう、残った左手でその刀身を掴みながらジョーニアスは笑う。その額のランプには、白熱化したエネルギーが収束している。
「まさか、最初から右腕を犠牲に…!?」
「星雲、最強は……伊達酔狂じゃないってことさね…!正真正銘最後の一撃、受け取りな!」
プラニウムナックルは
「アストロ、ビィィィィィム!!!!!!!!」
「ぬぉぉおぉあぁぁぁッッッ!?!?!?」
大爆発が巻き起こり、周囲の怪獣ごと光がバレルを呑み込んだ。
その威力はまさに絶大。余波だけで怪獣が融解し、銀十字軍本部も戦士達がシールドを重ねがけしていなければ無事では済まないほどだった。
「畜……生…逃がしちまったか…」
その爆発の中心点、アストロビームを放ったジョーニアスの傷は尋常のものではない。
怪獣との激戦、バレルとの死闘、そして自爆……幾重にも刻まれた傷から光の粒子が立ち上り、彼女の命の灯火は今まさに消えかかっている。
「だが……仕事は、しただろ……後ァ、頼んだぜ……ウルトラ…姉弟………」
閉じられる視界の端には、憎悪に顔を歪めるバレルと……真っ赤に燃える、
■
「ぐぁっ!?」
警備隊の本部における決戦は凄惨を極めていた。
超獣軍団と警備隊員達が激突する中で、エースキラーがウルトラ姉弟を追い詰める。
「ゾフィー姉さんっ!」
「私に構うなッ!次が来るぞ!」
スペシウム光線がゾフィーを襲い、慌てて助け起こそうとするエースにエメリウム光線が撃ち放たれた。
「しまっ──」
「させません!」
翡翠色の熱線がエースを穿つ寸前、ジャックのウルトラディフェンダーがそれを阻み、威力を倍加して打ち返す。
だがその直撃を受けても、エースキラーの身体には傷一つ付いていなかった。
「厄介な…」
「ふははははは!!このエースキラーMark.IIの装甲をなめるなよ!さぁどうするエース、ジャック、ゾフィー!
下卑た高笑いを止めたのは空を裂いた流星。
隣にいたエースが目で追えぬほどの、光速の一蹴りだった。
「今…なんと言ったのですか……」
一撃でエースキラーを吹き飛ばし、ビルへと叩き付けたジャックが震える声を絞り出した。
「ぬぅ…貴様にこれほどの力があったとは、想定「今!なんと言ったのかと、私は問うているのです!!」
普段からは考えられぬ激情と共に、再びジャックが大地を蹴った。
エースキラーごとビルを蹴り抜け、転がった異次元超人を無理やり立たせて
「ごっ!がっ!?ぐぉっ!?」
「答えなさい!兄さんに何をした!兄さんは今、どうしている!?」
明らかに返答を挟む余地がない猛攻を浴びせ、トドメとばかりに頭と腰を引っ掴んで飛び上がる。
「ウルトラ投げ!」
投げのスペシャリストと謳われた姉に太鼓判を押された必『殺』の一撃は、周囲数百メートルに渡ってクレーターと地割れを巻き起こした。
「セブン兄さんにもしものことがあれば……許しません。絶対に、私達はあなた達を許さない」
嫋やかな女郎花と評されるウルトラ姉弟随一の穏健派の姿はそこにない。
あるのは、愛する兄を想う妹の…いや、女の激情。
ランスを宙でくるりと回し、その切っ先を向けながらジャックは絶対零度の視線でエースキラーを見下ろす。
「待っていてください、兄さん。今度は私が、兄さんを助けに行きます。何があろうと、絶対に……」
暗殺宇宙人に、そして目の前の異次元人に囚われたジャックを、セブンは自らの危険を顧みず救い出してくれた。一度ならず、二度までも。
(だから今度は、私
「面白い!再びセブンの目の前で、貴様ら姉妹を十字架にかけて処刑してくれ……ごぉあぁぁぁぁ!?!?!?」
「ほう……マイナス宇宙でもあるまいに、我らを捕らえるだと?玩具を新調した程度で随分調子に乗ったものだな、ヤプール」
「あのような醜態はっ……セブン兄さんの枷になる無様は、二度と晒さない!
ヤプールは誤った。
ウルトラ姉妹を嬲ろうと、その心を甚振ろうとするあまり越えてはならない一線を踏み越えたのだ。
──蹂躙が、始まる…。
失踪期間も含め、この小説も開始から5年以上経ちました。
見返してみるとかなり見苦しい部分があったり、自分で違和感を感じる部分があったり……。
本気で丸ごとリメイクを考えている今日この頃です。
リメイクしたとして、どの時期のセブンが見たい?
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5姉弟時代
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6姉弟〜レオ指導時代
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メビウス時代
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ゼロ誕生以降、ベテラン時代