ウルトラ姉弟(笑)の黒一点~胃痛と戦え!ウルトラセブン!~   作:三途リバー

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中途半端な終わり方ですが、取り敢えず期間が開きすぎたので投稿します。本格的な修行は次回から…



気付いたらお気に入りが500突破していました。まさかこんなに沢山の方に読んで頂けるとは思ってもいなかったので、本当に嬉しいです!!ありがとうございます!!


師匠始めます

殺人戦法…警備隊の新人が、俺がブチ切れた時の戦いを見て口にした一言だ。

元はと言えば、俺はただの観測員。正攻法(ストロングスタイル)なんて知らないままに戦っていた時期が長い。それもかなり濃密な、激闘と言って差し支えないレベルで。警備隊に異動してからは戦闘訓練もしっかり受けたが、如何せん我流というか喧嘩じみたやり方が染み付いているらしく、ゾフィーからは何度も注意された。最近は正攻法にも慣れてきて、いっぱしの武官らしい戦い方ができるようになってきたが…。

 

「はぁ…」

 

土壇場では『殺人』と揶揄されるほどの喧嘩戦法が出てしまう。

そんな俺が、キレイな拳法を学んだレオの長所や特性を潰さずに鍛え上げる事が出来るだろうか。

ぶっちゃけ、メトルの手前啖呵切ったはいいんだが今になって不安になってきた…

 

『スイッチが入る入らないで、兄さんは見違えます。入った時の兄さんは…その…ヒーローと言うかむしろ悪役(ヒール)…す、すみません!!』

 

なんてジャックに言われる位だしな、俺…。

だが、言い訳をさせてもらえばヤプール(クソ野郎)共のせいだと声を大にして言いたい。

姉妹人質に取られたりブロンズ像にされたりしたら誰でも荒れるに決まってんだろ。戦い方もそりゃあ殺人戦法になるわ。今でもヤプールとヒッポリトの面見たら理性を宇宙の彼方にポイして殴りかかると思う。

 

話が逸れた。とにかく、そんなこんなで俺は今更レオの修行について心配になり、深夜のベッドの上で悶々としているわけだ。

 

俺がレオを鍛える上で、無視出来ないのがやはりあいつの宇宙拳法。何千年もかけて練り上げたのだろう、構えが体に染み付いているのは遠目でもハッキリ分かった。

だが、グロリアにそれは通じなかった。それは、奴が拳法を用いるレオの土俵に上がってこなかったからだろう。

達人は土俵だの何だの言う前に敵を技術で圧倒するが、レオのそれはそこまでのものではないようだ。かえって応用がきかなくなり、実戦では足枷となりかねない。

 

それだけでなく、時間の問題もある。例えば、俺の妹達。

 

ジャックは元々戦いが得意でなく、シルが技術を叩き込んだ。それからあいつが警備隊のトップに上り詰めるのに要したのは40年ほど。

()()()()()鹿()のように時速800㌔越えの速射光線を持つ訳でもないのに、あいつの光線の命中率は100%だ。訓練生時代から外した所を見たことが無い。それはひとえにあいつの驚異的な動体視力が為せる技だろう。

あの長槍(ウルトラランス)を近接だけでなく投擲武器に、しかも驚異の正確性を誇る必殺技にしている部分でもその才能を感じる。

 

また、タロウも才能を持っていた。

あいつは言わずもがな、光の国最強の父親の遺伝子を引き継いだ子だ。ゾフィーのシゴキに耐え、どころか近頃はアイツを凌駕するほどの力を見せ始めたその潜在能力は恐ろしいの一言に尽きる。正面からの殴り合いで勝てる気がしない。

ま、まぁ?俺の持ち得る小細工(念力)をフル活用すれば兄の面目程度は立つと思うけど?

べ、別に負け惜しみなんかじゃないんだからね!

 

…また逸れた。とにかく、あいつらには才能があった。

その才能を持ってしても、ここまで強くなるに時間がかかったんだ。

この短時間で、レオをあのレベルまで持っていくことが出来るだろうか…。

 

また胃が…。

あ。待って。コレ俺帰った時ヤバくない?

傀儡化使ったら変身出来なくなりました〜ってあいつらに言うの、俺?つかそもそも帰れんの?

 

メトルに胃薬貰おう…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「成層圏への突入を許しました!現在勇士司令部のメンバーが迎撃に入っていますが、状況は芳しくありません!」

「メディカルセンターの防御体制を固めろ!銀十字がやられたら終わりだぞ!」

 

「馬鹿言うな、警備隊の主力が半分もいないのに手を回せるか!本部落とされちゃ仕様がねぇよ!」

 

「ゾフィー隊長から通信!負傷者多く撤退せざるを得ないとの事!」

 

「ジョーニアスさんからも来ました!撤退する程でもないが救援が欲しいと言ってます!」

 

「幹部の回復はまだかよ!?」

 

「エースさんが出るってよ!あと10分ほどでジャックさんも!タロウさんとシルさんは傷が深いらしい!まだだ!」

 

「クッソ、セブンさんが居れば…!」

 

警備隊本部はまさに混沌といった様子だ。

誰もが慣れない襲撃に慌てふためき、人手不足も相まって一方的な侵攻を許している。

 

「狼狽えるな!ゾフィーには慎重に退けと伝え、ジョーニアスの部隊には80達を向かわせろ!U40の戦士にはメディカルセンターの防衛を任せ、直上の敵はプラズマスパーク兵器で応戦!私は元老院にウルトラベルの使用許可を願いに行く!!」

 

『はいっ!!』

 

警備隊本部の真上からは超獣の大軍、他の場所からは改造されたと思われる怪獣達。新人の80達を引っ張り出さねばならぬほど、我々は追い込まれている。

 

『無様だなぁオイ、ここは一つ俺様が芸術的用兵ってヤツをみせてやるよ!』

 

『お前は言うほど上手くはないだろう。私が出よう、お前達2人は切り札だ。』

 

…私も、疲れているな。

私の背中を叩き、勇ましく吶喊する彼女も…

冷静な智略で我々に絶対的な安心を与える彼も…もういない。

しっかりしろ、ウルトラの父。

今は、私がこの星を守らねばならんのだぞ。

 

愛する者達を守るため、彼が遺した想いを貫くため、そして道を踏み外した彼女に示すため…!

 

「宇宙警備隊の力を見せよ!この星は落ちん!!」

 

私は、我々は勝つ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「じゃあ、僕も行ってくるよ。先輩達の足を引っ張らないよう気を付けないとね、ははは…」

 

「…」

 

光の国王宮前庭にて、2人の男女が向かい合う。

青年の方は明るく笑っているが、向かいの少女は不安の色を隠そうとしない。

彼女は今にも泣き出しそうな顔で、黙って青年の手を取った。

 

(硝子細工みたいな、綺麗な手だ…)

 

青年…80は緊張感の無い感想と共にそれを握り返す。儚い芸術品が壊れてしまわないよう、そっと優しく…

 

「80。」

 

「なんだい、ユリア…!?」

 

呼びかけに答える暇はなかった。

唐突に襟を引っ張られたと感じた時には、彼の唇は目の前の、背伸びをするひどく可愛らしい少女のものと触れ合っている。

しかし、感じたのは驚きを容易く塗り潰す程の温かさ。じわじわと、彼の体中が火照っていく。

 

 

 

 

 

どれだけの時が経っただろうか。脳が蕩けると言う事態を身をもって体験した80の腕の中には、彼の胸板に体を預けきる少女の体があった。

 

「これが最初で最後だなんて、絶対にイヤ。お願い、無事に戻ってきて…愛してるわ、私の80…。」

 

「当然だよ。僕だってもっと君を抱きしめたい。もっと君を感じたい。…君との時間を、必ず掴み取ってくる。僕は必ず君の元へ帰る。待っていてくれ、僕のユリアン…愛してるよ。」

 

光の国の王女(ユリアン)…最愛の存在にそう伝え、青年はゆっくりと空へ昇っていく。

 

身分や立場を超えた愛…後に光の国に様々なドタバタを巻き起こす事になる熱い恋物語が、幕を開ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…あとついでに80の初陣も。

 

 

 

 

 

 

 

 

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「はぁ…」

 

セブンさ…んん、弾さんの病室に向かう途中でもため息が止まらない。

自分の情けなさやら弾さんへの申し訳なさやらで押し潰れてしまいそうだ。

 

目を覚ました日、こんな私に「助かった」なんて言葉を掛けてくれて…嬉しかった反面、猛烈な情けなさが私を襲った。

弾さんが眠っている間、ブラックギラスとレッドギラスと戦った私は完膚無きまでに敗北したのだ。

先の戦いでかなりのダメージを負ったはずの奴らなら、どうにかなると思っていたが…甘かった。拳や蹴りは当たっても、決定打には全くならない。必殺(と言っても威力はしれているが)の飛び蹴りは回転攻撃の前に弾き返され、光線が撃てない私は火炎放射を受けて簡単に変身が解除された。

あの時は留美さんが必死になって助け起こしてくれ、相手が引いた事もあってなんとかなったけど…

 

「駄目だ…このままじゃ、弾さんを安心させられない…!」

 

誓ったんだ、私は。代わりには慣れずとも、この星を守ってみせると…第二の故郷を、今度こそ失わな「きゃっ!」

 

「すみません!考え事をしていて…大丈夫ですか!?」

 

ま、間抜け過ぎる、私…。ぼーっとしていたら弾さんの病室から出て来た黒髪の女性とぶつかってしまった。慌てて謝り、手を差し出すが…

 

「ん?」

 

弾さんの病室から?留美さん以外女の人が?

 

なんだろう…こう、なにか胸がザワつくと言うか…

 

「こちらこそすみませんっ、しつっ、失礼しますぅっ!」

 

その女性は猛烈な勢いで頭を下げると、かわいらしい走り方で駆けて行ってしまった。ここ病院じゃ…。

 

セミロングの黒髪が綺麗だったなぁとか、なんかゴスロリっぽい服だったなぁとか、彼女の面影をしっかり脳内に刻みながらも、私は病室へ足を踏み入れた。

 

 

 

 

 

 

 

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メトルがに持ってきてもらった大学ノートに修行のあれこれを書き付けている時、ふと俺は違和感を感じた。

ある筈の無いものがそこにあるような…無理に溶け込んでいるような、そんな感覚。

敵か…いや、そうだとしても今の俺はろくに戦えない。出来ることと言えば…

 

「ウルt「デュワッ!」あうっ!」

 

声が聞こえた方…影の中目掛け、念力を込めたボールペンを投げつけた。只の投擲とは違い、軽く見積ってプロ野球選手の投球ほどのスピードがある筈だ。

見事にヒットしたそれは俺の手元に戻り、影は頭部?を押さえてうずくまる。

 

「あ、あうぅぅ…痛いぃぃ…」

 

影は段々とボヤけていき、もやが取り払われるようにその()()の輪郭がハッキリしてきた。完全に影が消えた時、そこにいたのは…

 

「ぺガッサ!!」

 

「ひゃいっ!」

 

ゴスロリの様な服に、肩まである整えられた黒髪。気弱そうな涙目は、喧嘩別れしたあの時と全く変わっていない。

 

「なんで…!?」

 

ぺガッサシティの破壊は、今でも悔いている。

どれだけ叫んでも、俺の声は届かなかった。

築けたと思った友情は貫けなかった。

あの悔しさが、メトルを助けた一番の理由でもある。

 

『話が分かりそうな奴とぐらい、話し合ってみたい。』

 

ぺガッサシティの悲劇を、悲しいすれ違いを繰り返したくない。だから俺は武力だけに頼った正義を忌み嫌う。本当に俺がウルトラマンになったのは、もしかしたらこいつと出会ってからかもしれないな…。

 

「ウ、ウルトラセブン…その、あのっ…お見舞い品はここに置いておきますから!さようなら!」

 

「ちょっ、待―ッ!?」

 

その時唐突に、頭を鈍器で殴られたような痛みがやって来た。視界が白熱し、閉じた瞼の奥では火花が散っているようだ。

あの程度の念力で…

 

「大丈夫ですか!?」

 

鈴を鳴らすような綺麗な声に、俺は少しずつ目を開ける。

 

「頭が痛いんですか!?えと、熱は…!」

 

するとそこには、俺の額に手を当てて慌てふためくぺガッサの顔があった。

 

「大丈夫だ、発熱じゃない…。そ、それとぺガッサ…その、顔が…」

 

「へ?顔…。!?!?おだ、お大事にぃっ///!!」

 

今度こそ駆けていくぺガッサ。

あ、帰りは出入口から行くのか…。

 

まだ痛む頭を押さえていると、彼女が置いていった見舞い品が目に入った。

 

「…また、会えるよな。」

 

いや、違う。

会うんだよ、探しだして。

俺の口から、心から、謝らなきゃいけない事がある。伝えなきゃいけない事がある。

 

「次は、名前を聞きてぇな…」

 

「失礼します…おはようございます、弾さん。新聞買ってきました。」

 

「お、ありがとう。おはよう、梨奈。」

 

入れ替わりに入ってきたレオ…大鳥梨奈に声をかけ、俺は手元のノートをちらと見やる。

過酷な道だろう。俺は鬼にならなければならない。そうでもしなきゃこの星は勿論、梨奈自身も守れやしない。

 

「早速だけどな、梨奈…」

 

「はい、なんですか?」

 

「お前に、修行をつけたいと思う。」

 

 

 

この俺の一言が、俺達2人の師弟関係…そして、苦しい戦いの始まりだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オマケ

 

薩摩7子さんから頂きました、セブンと姉妹のイラストです。番外編にて、地球に飛ぼうとするセブンに食らいつく(物理)姉妹の図。

7子さん、ありがとうございます!!メチャ嬉しいです!!

 

 

 

 

【挿絵表示】

 




初登場でユリアン王女とイチャつきだすとか80先生マジリア充。

ぺガッサさんは擬人化計画のイメージです。


お遊びで、別口でウルトラマンSTORY0のキャラクター設定を短編投稿しました。と言ってもまだ3人しか書いてませんが…よろしければそちらも併せてご覧下さい。

リメイクしたとして、どの時期のセブンが見たい?

  • 5姉弟時代
  • 6姉弟〜レオ指導時代
  • メビウス時代
  • ゼロ誕生以降、ベテラン時代

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