ウルトラ姉弟(笑)の黒一点~胃痛と戦え!ウルトラセブン!~   作:三途リバー

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グロリアさんが活躍し始めると言ったな、あれは嘘だ。

はい、すみません。なんかグロリアさん登場よりひでぇ展開になったかもしんないっす。



悲劇へとひた走れ

「チッ…!」

 

紅い閃光が疾り、幾重もの断末魔が重なる。目にも留まらぬ速さ、というのはこの事を言うのだろう。

右手に握ったアイスラッガーは、既に刃こぼれが酷い。半ば鈍器と化したそれを振るいながら、セブンは頭の片隅に1人の少女を思い浮かべていた。

 

(あん時の女の子…宇宙人だったな。)

 

何故地球を訪れ、地球人と共にいるのかは分からない。だが、こんな時にも関わらずセブンはその事実に喜びを感じてしまう。

 

(見たかよ…地球人だの宇宙人だの、そんな小さい事に拘らねぇ関係がここにはある…。俺が求め、憧れた姿が地球(ここ)にはあるんだぜ?)

 

自問し、自答し、独りごちて満足そうにバイザーの下で微笑う。

 

(まだまだ、くたばれねぇよなァ…)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「消えろ…消えろ、消えろ消えろ消えろ消えろ消えろぉぉぉぉぉぉぉぉっっ!!」

 

「ボク達の、邪魔をするなぁァァァァァァァァァァァァっっ!!!」」

 

「塵となれ!!」

 

「燃え尽きろ!!」

 

「ウルトラギロチン!!!」

 

「ウルトラダイナマイト!!!」

 

 

 

「…私が来る意味、あったか?」

 

「あ、あははは…えーっと、エースさんもタロウさんも、その、ハッスルしちゃってまして。オレら一般隊員は間合いに入る事すら出来てません。」

 

宇宙の地獄か、ここは。

光の刃と無尽の炎が次々とマグマ星人の艦隊や怪獣を駆逐していく。敵もさぞや驚いている事だろう。なにせ目の前の味方が裂け、燃えはじめた頃には己が体も真っ二つだ…

 

「!あの一際大きい船は旗艦か!」

 

「えっと…うえ!?デッカ!?!?」

 

タロウの天をも焦がす炎が米粒に見える程の巨体。アレを壊すのは骨だろう。ふっ、ようやく私の出番が

 

 

 

ドガァァァァァァン!!!!!

 

 

 

 

ん?…んん!?

見間違いか…?今あの戦艦が一瞬にして四等分になった気がしたんだが…

 

「ゾフィー姉さん…これで、これで地球に行けますか…これで、兄さんの所へ行けますか!?」

 

「あー…まぁ、うん、不可能じゃないんじゃあないか…?」

 

ジャック…まさかお前、ウルトラスパークでアレを斬ったのか…えぇ…片手サイズのスパークで?アレを?

 

「はいっ!エース!タロウ!続いてください!地球へ向かいます!!」

 

「言われずとも分かっていますよ、そのくらい!刻みたりない…まだ、まだ、まだ…!」

 

どこで育て方を間違えたんだろうなぁ…

 

「ジャック姉がボク達の事呼び捨てにするくらい怒ってる…でも、分かるよ…ボクだって、気を抜いたら今すぐ爆発しそうだよ…!」

 

それなんて取り扱い危険物?

 

「隊長っ!やられました!この宙域、丸ごと罠です!さっきのどデカイ戦艦が起動スイッチだったようで、次元障壁内に閉じ込められました!!」

 

まだ手を残していたのか、マグマ星人…!先の先を見据えて手を打っておくとは恐るべき策略家だ…。別次元を擬似的に作り出し、その中に宇宙警備隊主力を閉じこめる。()()()()詰みの、絶望的状況…。

 

だが。

 

「全員私の後ろへ下がれ。下手をすると巻き込まれるぞ。」

 

「総員、隊長より前に出るなよぉっ!!消し飛ぶぞぉっ!!」

 

唯一の失策は…

 

「貫け…M87光線!!」

 

私の力を、見誤った事だ。

 

突き出した右腕から放たれた87万度の光波熱線は、進むだけでその跡の次元を捻じ曲げていく。

 

周りの星星や味方にも被害が出るからな、普段は使用を極力控えているのだが…。今はジャック、エース、タロウの3人がバリアを重ねがけしている上、近くに星もない。なんの問題もなく、私は力を振るえると言うことだ。

 

「…破れたな。本部にウルトラサインを送れ。シルの出動を認め、地球に向かえ!」

 

「はいっ!」

 

 

う…しまった、少々はしゃぎすぎたな。残存エネルギーのほとんどをぶち込んでしまった。

 

「ジャック、全権を預ける。私はこの辺りにまだ敵がいないか見て周り、自然回復を待って追う。セブンを助けてやれ。」

 

「はい!」

 

頼もしくなったものだ、あの泣き虫が。

それに、エースの切れ味も、タロウの自分をセーブ出来る冷静さも、元を辿ればあの馬鹿に行き着く、か。

 

「死ぬなよ、セブン…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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ったく!ゾフィーのヤツ、思いっきり殴りやがってぇ…

後であったらやり返してやろ。

 

今私は、1人だけで地球への最短ルートを飛んでいた。超緊急事態だし、無論光の球化して光速移動。

 

「あれは…っ!?きゃあああっっ!!」

 

何!?黒い球が見えたと思ったら、いきなり!

…まともに食らったわね…クソ、こっちは急いでるってのに!

 

「礼儀知らずねぇっ!」

 

両腕を胸の前で水平に合わせ、スペシウムエネルギーで光輪を形成する。

新技、追尾型ウルトラスラッシュ…お披露目よ!

 

「セイッ!」

 

二つに分かれた光輪は黒い球を追い、避けられてもすぐにその後を着いていく。

フフン、アイスラッガーに対抗できるよう編み出したこの技からそんな簡単ににげきれるもんですか。出会い頭に女を吹き飛ばした罰ね、裂けなさい!

 

ガキッッ!!

 

「な!?」

 

ウルトラスラッシュが、砕けた!?当たって砕けたならまだしも、空中で突然…!あいつ…中々凄腕っぽいわね。まさかグロリアが仕向けた刺客?

だとしたら…

 

「余計にぶっ飛ばしたくなったわ!!その面見せなさい!」

 

ウルトラアタック光線で1点を狙い撃つ。私はセブンとかエースみたいに器用じゃないから技は少ないけど…コレはその中でもかなりの上位技!カスリでもしたら大怪我よ!

 

「ウグッ…!」

 

ざまぁ見ろ!

勢いを失った球がフラフラと近くの星へ落ちていく。木星か…今はセブンの所へ行くのが最優先ね。放っておきましょうか。

 

「待ってなさいよ馬鹿眼がn…がハァッ!!!」

 

ぐぅぅぅっっ !?!?あぁぁっ…背中、がぁぁっっ…

 

「おいおい…ちょっかいかけた女にはっ倒されてそのまま逃げられるなんざ御笑い種だぜ。姉ちゃん、もちっと付き合えよ。」

 

こ、いつ…!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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超救援欲しい。

 

ヤベェ、冗談でも言ってねぇとマジでやってらんねぇ。

もう100体以上倒したけど、正直体が限界だ。光線技の使用を控え、アイスラッガーだけで持久戦に持ち込んだ作戦は良かったと思うんだが…。如何せん数が多すぎる。念力も体力使わない訳じゃねぇし、ブーメランナイフとは言えぶっ続け4時間も振ってりゃあ腕もイカれてくる。

これ、俺じゃなかったらやばくなかったか?基本的に地球での活動時間は3分の奴が多いからな。カラータイマーが無いのをこれ程有難く思ったのは初めてだぜチクショー。

 

「ぐっ…!」

 

体の動きも鈍くなってきた…いつもなら避けられる筈の単純な攻撃をまともに食らう。パンドン戦以来だよ、こんな感覚!

 

灰色の怪獣が大きく距離を取った。熱線か!?

 

「ゼェらァ!!」

 

一瞬速く横に飛び、火炎をやり過ごすと同時にアイスラッガーを投げつける。流石に対応し始めた敵は体を無理矢理崩しながらもそれを躱す。

 

だがまぁ、予定通りなんだなぁ。

 

「ぐぎっ!?」

 

素早く飛び掛り、既に半分近く感覚のない腕にありったけの力を込めて首を締め上げる。馬乗りになって絞殺ってどっちが悪役か分かんねぇな…だがもうこの際んな事言ってられるか!

 

 

「ごひゅっ…がっ…が…」

 

「苦しませて、悪いな…」

 

口から泡を吹き、動かなくなった怪獣の上からどいてアイスラッガーを手に呼び寄せる。さて…

 

「そこのアベックは3倍速いとかそう言う仕様?」

 

視線の先には、これまでの奴らとは大きく違う2体の怪獣。

頭や背中の突起物は従来の2倍。ご丁寧に赤と黒の色分けまでしてくれちゃって。只の亜種…だったら良いんだけどなぁ…。

 

「グルォォォォォォォォォォォォォォォォォォッッ!!」

 

 

 

 

 

………シルーーーーーーー!!!!救援まだァ!?!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「何っ、この気配!?」

 

「おぞましい…こんなにどす黒い感じはテンペラー以来です。」

 

一方、ジャック率いる警備隊主力は木星付近で謎のエネルギーを感知していた。

タロウ、エースと言った実力者が思わず身震いするほどの濃密な闇。

 

「兄さん…。でも、こんな物を放っておく訳にも…!」

 

と、その時。

 

 

ドォォォォォォン……

 

 

 

「今の爆発は、シル姉さんのスペシウムエネルギー!」

 

光線技のスペシャリスト、エースが即座に断言する。

かなり遠いここからでもキノコ雲が見える程の爆発だった。

 

「ジャック姉!ここはボクが行ってくる!ボクは指揮とかあんまり得意じゃないし、1体1の方が力を発揮できる。ジャック姉はエース姉と一緒に皆を地球へ!」

 

「タロウちゃん…1人で大丈夫?」

 

「うん、シル姉もいるっぽいし。今はセブン兄を助けるのに人手を割かなきゃ。」

 

「分かりました…総員、このまま地球へ向かいます!タロウちゃん、くれぐれも無茶をしないようにね。もし本当に危ない敵だったシル姉さんを連れて撤退して。」

 

「タロウ、ヘタを踏んだら幹竹割りにしますよ。とっととあの駄姉を連れてこっちへ来なさい。」

 

「シル姉によく伝えとくよ!そっちも気をつけて!」

 

 

1人は、木星へ。

2人に率いられる者達は、地球へ。

 

いずれも、悲劇へと続く道だとは露知らず、光の戦士達はそれぞれの役目を果たすべく飛び立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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なんだろう、このイヤな感じ…胸騒ぎが止まらない。木星に近づく度にどんどん強くなっていって、吐き気までしてきた…。

でも、シル姉はボク達姉弟の中でもずば抜けた作戦家で、同時に勇敢な戦士。相手が誰であろうとそんな簡単にやられるわけがない。

 

「……ぁぁぁぁぁぁぁ………!」

 

「っ!?!?」

 

今、のはっ…。200㌔は、離れてる。けど、確かに聞こえた…。聞こえちゃった…。シル姉の、苦しそうな叫び声っ!

嫌…嫌だ、嫌だよ…そんな、嘘だ、嘘だっ!

 

「シル姉ぇぇぇぇぇぇぇぇっっ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………

 

「あ……あ、あ、…」

 

「ん?あ、もしかして嬢ちゃんもウルトラ戦士?いやぁ丁度良かったぜ。この姉ちゃんにちょっかいかけたらえらく嫌われちまってよぉ…。まぁ俺としては激しいのも嫌いじゃないからさぁ、姉ちゃんのやり方に付き合ってたらちょおっとやりすぎちまって…。()()()()()って、お願いできる?」

 

黒と金の、禍々しいアーマーに身を包んだ男がおどけた口調で話しかけてくる。

 

 

 

 

その左手に、血塗れのシル姉の髪を引っ掴みながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





初代好きの方、すみません。
でも最後の人は今後重要キャラになってくるんで、大目に見て下さいっ!次回、次回こそグロリアさんを…

リメイクしたとして、どの時期のセブンが見たい?

  • 5姉弟時代
  • 6姉弟〜レオ指導時代
  • メビウス時代
  • ゼロ誕生以降、ベテラン時代

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