「はぁ、やってらんねぇ」
「ちょっと、帰ってきたと思ったら急にネガティブな事言わないでよ」
「いや、だって八咫に呼ばれて行ってみたらアレだぜ?急に警告されたんだからしょうがねぇだろ?」
「ハァ?八咫って誰よ。それに警告なんてされるような事……最近増えたわね」
つい一時間ほど前、八咫からのメールを受け取り@HOME前で待っていたところに、パイと名乗るパイオツカイデーなチャンネーが出てきて@HOMEに連れていかれたわけだ。
「ねぇ、そのおっぱいの情報いる?てゆーか死語まみれなんだけど」
「いるだろ。男の子なんだから。……続けるぞ?」
んで、もちろん怪しく感じた俺は走って逃げたわけだ。そしたら目の前からクーンがちょうど良くやってきたから姉ちゃんのことを口説かせて時間稼ぎでも、と思ったんだけどそのクーンに捕まって、姉ちゃんの前に連行されたんだよ。なんと二人はグルだったって訳だ。
それからまぁ半ば無理やり@HOMEに入れられて、そこで八咫と再会したんだよ。
「……ちょっと待って別に今のくだり要らないわよね?」
「えー、クーンがあいつらの一味だったっていう大事な情報が入ってるのに?」
「私、そんな奴しらないし」
「マジすか揺光さん。クーンさんはそれなりに有名人だぞ?女にすぐちょっかいかけるって」
「……そ、で続きは?」
クーンに厳しいなこの子。で、続きだったな。そっからまぁ何だ昔のよしみで知識の蛇とかいう管理者エリアに入れてもらったんだけどな。もうね、ヤバイのどこもかしこも監視されてるの。かくれんぼしたら絶対負けない感じでね、もうね、凄いの。で、そこで「自分の身の振り方には気を付けろ」って言われたんですねぇ、おしまい。
「ちょっと待って、急に話飛んでない?なんでアンタの知り合いがThe Worldの管理者なのよ?普通そういうのってCC社の社員とかがやるんじゃないの?」
「うーん普通そう思うよな。でもアイツはリアルでCC社の筆頭株主だったりするから、アレだよ多分株主特権的な感じだよ。……俺も株主何だけどなぁ」
「そういうこと。……で、なんで警告なのよ?管理者ならその、邪魔になったらキャラクターデータ消してそれで終わりになるんじゃないの?」
「いやー、それがな八咫としてはそれも吝かじゃなかったらしくて俺のキャラクターデータを消そうとしたそうなんだけど、何回やってもデータを消すことは出来なかったらしいんだよ。……そこら辺はモニターの情報見てたからあんま良く覚えてないんだわ」
「アンタって相変わらず大事なところで役に立たないっていうか、自分のことは無頓着っていうか……。で、取り敢えずこのままなら何もされないの?」
「ん、そういう事だろうな。多分、きっと恐らくそういう事だ、うん」
「まぁ、ライを消そうとするなら私も手助けぐらいはするわよ。……あとの二人が強すぎる気がするけど」
「あぁ頼む。つーか警告されたのってもしかしてあの二人のせいじゃねぇか?………なんちゃってー」
「……それ笑えないわよ」
あれから揺光が素材系アイテムが欲しいと言うので手伝い、明日は土曜なのに学校があるとかで早めに切り上げることになった。
「土曜なのに学校って、もしかして頭悪いのか?教えてやろうか?」
「その誘いは嬉しいけどね、違うわよ。なんか全員参加の補習よ、補習」
「ありがとね、手伝って貰っちゃって」
「別にやることもなかったしな。……じゃあおやすみ、揺光」
「ん、おやすみ!」
揺光別れてから、特にすることもなくログアウトしてBBSを流し読みしていた。
途中、『来たれ!トライエッジ!』と書かれたものがあり、何となく気になった俺はグリーマ・レーヴ大聖堂へと足を運んだ。
最近、ここに来すぎだと思うんだよ、俺は。そして来なきゃ良かった。うすうす嫌な予感はしてたんだ、うん。とんでもないモノが出てくる感じがしてたんだがまさかぴろしが出てくるとは。
「鈍き俊足のドーベルマン、ぴろし3!只今、推参!」
あ、ハセヲ君が引いてる。だよねー、そうなるよねー。なんか気も削がれたからとっとと寝るか。
「むっ、その赤髪、貴殿もしやライか?」
あーあ、気付かれちゃったよ。嫌いじゃないけどこれから寝ようってタイミングだと目が冴えちゃうから見つかりたくなかったんだけどな。
「あぁ、そうだよ久しぶりだなぴろし3?」
「うむ、久しい友に会うとは今日は良き日だ!……そうだ!貴殿もプロジェクトG・Uに入らないか?」
「プロジェクトG・U?……まさかグラフィック、上手いとかいう意味じゃないよな?」
「むっ?よくぞ気付いた!そう、我がギルドプロジェクトG・UはThe Worldの超流麗凄艶究極グラフィックを楽しむことを目的にしているのだ!……しかし最近トライエッジとかいうグラフィックに傷をつけるような輩が出てきたのだ!その犯人を突き止めるのが今の目標であ〜る!」
「ハハァ……。相変わらずグラフィックに命かけてんな、お前。……なんか疲れたから落ちるわ。お疲れ」
「うむ!また会おうぞ友よ!」
『ぴろし3のメンバーアドレスを入手しました』
相変わらず熱い男だったな、アイツ。うん、何も変わらないようで若干安心した。それにしてもぴろしの言い方だとトライエッジに付けられた傷跡は結構色んなところにあるっぽいな。
──寝る前にいつもの様にメールチェックをしていた時、俺は思いついてしまった。そう、俺の手元にはグリーティングカードなんていうおもしろアイテムがあることに。
『リーダー志願』……はもうギルマスになってるからあんま送る意味無いよな?『フラワーギフト』……これなら不自然じゃないよな?うん、大丈夫なはず。うん、これを揺光に送って寝るか。
あと、クビアと欅には『ごきげん伺い』でも送っておこうか。
明日は揺光来るまでクビアとレベル上げにでも行こう。そうしよ、ガーディアン系の仕様外モンスターが出ても対処出来るような強さは必要だろうし。……まぁ、キャラデータ初期化とかアホみたいなことされたら詰むんだけど。
強硬手段をとる八咫さま
管理者権限で腕輪保持者が消せないのは.hack//XXXXに描写されてたはず。
この作品は揺光単独ヒロインものです(自分に言い聞かせる)
この先を考えるとなんか志乃さん落としそうでヤバイヤバイ。ま、親愛は愛情じゃないし、多少はね?