俺は古参プレイヤー   作:サンデイクローズ

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みんな大好き




快速のタリスマン

 あの一件から、いつも揺光とペアで行っていたダンジョン攻略にクビアも参加するようになった。本人が言うには一緒に攻略して絆を深めよう、という何とも胡散臭い理由だった。

 そしてクビアが一緒に回るようになってから揺光さんの御機嫌がナナメになりつつある。……8割がたクビアが揺光をからかうせいなんだけど。

 

「……あぁもう、うっさい!私はこんなチャランポランの事なんてどうとも思ってないの!良い!?この事でこれ以上詮索するのは無し!コイツが許しても私は許さないからっ!」

「えー、いいじゃんか。これも仲間のことを詳しくするキッカケってやつでしょ?昨日欅にそう聞いたんだけどなー?」

 

「あんのガキのせいかぁぁぁぁ!!!」

 

 

 多分凄腕のハッカーだと思うぞーなんて事は言わない。火に油を注ぐような真似はしたくない。と言うか月の樹の欅様をガキ呼ばわりできるのは今のところ揺光ぐらいなもんだ。

 逞しく育ったなぁ……。

 

 

 そう気を抜いていたせいか、二人のプレイヤーが近づいてくるのに気がつかなかった。

 

「君たち、今欅様の悪口を言っていたようだが月の樹になにか不満でもあるのかね?」

 

 メンドクセェ……こいつほんと面倒くさくて嫌い、クビアと揺光のせいだし俺関係ないよな?帰ろ

 

「あぁ、それ言ってたのコイツらなんで、俺無関係なんで関係者だけで仲良くお話でもお茶でも何でもしてて下さい。……それじゃ、アデュー!」

 

 そうカッコよく走り去ろうとしたら揺光に足を引っ掛けられ、盛大に転んでしまった。……こんな所までリアルに作らんでも良いじゃ無いっすか?

 

「む、キミは確か欅様を強引にギルドに入れたとかいう……確か、ライだったか?」

 

 うっわぁマジかよコイツ俺の名前知ってやがったよ!正直月の樹の連中に会ったら欅の件で何されるか分かったもんじゃないから気を付けてたんだけどなぁ。

 

「ハハハその節はどーも、それじゃ僕たちこれからレベリングしないとなんで」

「あれ?ライ、僕ら別にレベリングする必要も無いでしょ?」

 

 ウカツ!こいつには月の樹の「榊」がいかに面倒なヤツでThe World内である意味注意する必要がある奴だと説明するのを忘れていた。

 

「ふむ、どうやらそこの少年が言っていることの方が正しいようだな。何故、欅様をギルドメンバーにしたのかもついでに聞かせて貰おうか?」

 

 あーあ。こうなったらやりたくないけどアレをやるしかないか。……揺光と目を合わせ、互いに頷き合う。

 

「こっちは何も話すことないんで、今度こそ失礼させてもらいますわ」

 

 

 

 

 

 

 

 まったく『快速のタリスマン』は最高や。移動速度25%アップは普通に強い(確信)

 

「あっ、そう言えばあいつのこと忘れてない?」

「あっ……まぁクビアはきっと強い子だから、大丈夫大丈夫ヘーキヘーキ」

 

 

 

 

「もうっ、ヒドイなー二人共僕を置いて走って行っちゃうんだから。お陰で僕、あの人のつまんない話聞かなきゃになったんだよ?」

 

 クビアが合流したのはそれから10分ほど経ってからだった。今日は割とあっさり目に榊さま(笑)の説法は終わったみたいだ。

 

「もう少しで僕、彼のこと殺しちゃう所だったよ〜アハハ」

 

「いや、笑いどころじゃないだろそれ。まぁ今回で学んだな?あいつは関わっちゃいけないって」

「うーん、僕としては彼から必死に逃げるお兄さんを見るのも楽しいんだけどなぁ。……そう言えば揺光ちゃんはどこに行ったの?おトイレ?」

「あぁ、揺光はな……」

 

 噂をすればなんとやら、獣神殿の方から揺光が走ってくる。

 

「宝物取りに行ってたのよ!アンタほんとにデリカシーってもんがないわね!」

 

 クビアに向かい怒鳴っている揺光の姿からあぁ、これは長くなるやつだなぁと思い、今度コイツらと来る時は草原とか景色を楽しめるステージにしようと思った。ちなみに手持ち無沙汰の時間は実に10分にも及んだ。

 

 

 さて、マク・アヌに戻ってきたわけだけど、何しよう。

「で、これからどうするの、リーダー?私的にはショップとかいって消費アイテムの補充とかしたいんだけど?」

「んー、じゃあ揺光案採用で。いいか、クビア?」

「僕は君たちと居られればそれで良いよ」

 

「……お前恥ずかしいことサラッと言うよな」

「うん、コッチが恥ずかしくなるんだけど」

「ヒドイなー二人共。僕はいつだって正直なんだけどなー?」

「八相」

「分かんないなーwww」

 

 クッソ、こいつ絶対おちょくってやがる。……ん?ゲートの前に懐かしい奴がいるな。

 

「おーっす、ハセヨ!元気してたか?」

「あ゛ぁっ?……なんだアンタか。つーか何してんだ?」

 

「ハセヲが反抗期になってる……。ううっ、初心者の頃の可愛らしいヘタレなハセヨはもう居なかったんだ……」

「あぁ、気にしないでいいよ。コイツ今ちょっとテンションおかしくなってるだけだから」

 

 ゲート前でのの字を書いていじけてる成人男性を無視して高校生同士の会話が始まってしまって、そろそろ落ちようかなとか本気で考えはじめたところで揺光さんから手を差し伸べられた。

 それはまるで女神のような──

 

「女神さまっ!」

「はぁ?何言ってんのよ。頭でも打ったんじゃないの?」

 

 

 

「あぁ、そうだライ。俺とメンバーアドレス交換してくれないか?」

「……もう持ってたよな?」

「なんか意味分かんないけどあいつにやられたら“初期化”されちまったみたいでよ、全部消えてるんだわ」

「初期化!?それはご愁傷さまとしか言えねぇな。……ま、レベル上げする時は手伝ってやんよ。主に回復役として」

「……アンタまだあんな鬼畜なことしてんのかよ。まぁ、気が向いたらな」

「それよりも戦った相手について聞いてもいいか?」

「あぁ、俺が戦った相手はトライエッジだ。やっと見つけた志乃の仇だったんだけどな……」

 

 そう言い残し、ハセヲはタウンの方へと消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

「揺光、俺のレベル上げってそんなに鬼畜か?」

「鬼畜なんてもんじゃないわね、修羅よ修羅。普通トドメだけ刺させたりするのにアンタずっと後ろで回復しかしないじゃない」

「えっ、だってそんな事したらプレイヤースキル上がらないじゃん」

「確かにね。まぁ少なくとも私は感謝してるわよ。……ライのお陰で強くなれたし」

 

 

「おぉっ!お兄さんのことを名前で呼ぶだけで照れるなんて、揺光ちゃんはホントに初心なんだねぇ〜」

 

「やっぱコイツ、〆る!」

 

 

 

 後ろの方でタウン内なのになぜか金属音がしてる気がするのはこの際置いておいて、ハセヲのデータが初期化されたこと。それが近頃ウワサのトライエッジによって引き起こされたようだと言う事。……そして一説には伝説の『.hackers』のリーダーカイトと同じ見た目をしているっていう話もある。

 何にせよ、眉唾物だった噂話がここに来て若干怪しくなってきたってところか。このことについては後でBBSにでも書き込んでおいた方が情報は集まるだろう。

 

 




お気に入り登録ありがとうございます(挨拶)

Xthフォームってただのチートじゃね(実際チート)って思いながら今回は書き上げました

榊さまのキャラが作者の中でふんわりしてるのが文章から伝わったかと思います。
そんな榊さま、ゲームでは榊派なんていう派閥を作り上げている小学生です。ショタです。もう一度言います、ショタです。


.hackのメインキャラって年齢層低めで不安になる


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