俺は古参プレイヤー   作:サンデイクローズ

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本日二本目

特にストーリーは進まない

やっと初日が終わります。

5/26修正


魅惑の恋人

 クビアと名乗った少年が消えてから、何となく大聖堂に居る気もなくなり揺光が居るであろうルミナ・クロスへと向かった。

 

 ルミナ・クロスといえばアリーナ、アリーナといえば宮皇、宮皇といえば、イコロであり、イコロに所属出来るものは各宮皇のみであり、チャンピオンでなくなった時点でこのギルドから追放されるといえ話だ。そのせいか内部は結構ギスギスしているらしい。

 

 今日は揺光のタイトル防衛戦で相手はエンデュランス……?とかいう奴だ。まぁ、揺光が負けることはないだろうし、観客席でゆっくり試合を見ることにしましょうか。

 

 

 

 ──突然、試合が動いた。それまでは決定打を出せないものの、じわじわと揺光が相手の出血を強いる戦いをして、このまま行けばタイトル防衛って感じだったんだが。

 何が起こったか目に見えない間に、揺光が倒れ、紅魔宮の新チャンピオンが誕生した。

 あの時、揺光が倒される瞬間、また昔の感覚が湧き上がってきた。もう、あんな思いはしたくない、自分の意識がなくなるなんて経験は……。

 

「お兄さんの知り合いの子、倒されちゃったね〜。それにしても一般人相手に『マハ』を使うなんて彼、結構えげつないねぇ〜」

 

 ふと、隣の席から先程別れたはずの声が聞こえる。……さっきまで他のプレイヤーが居た気がするんだけど、それは置いておこう。今はコイツが言った『マハ』って単語だ、聞き間違いじゃなければカイトさん達が倒した八相と同じ名前だ。

 

「……なぁ、今『マハ』って言ったか?聞き間違いじゃなけりゃ言ったよな?」

「うん、彼は魅惑の恋人『マハ』の碑文使いさ。……あれ?そう言えばお兄さんって『マハ』のこと知ってるんだ。何だかますます楽しくなりそうだね!」

 

 隣でクビアが何か喜んでいるが、そんなことを気にしている場合じゃない。下手したら揺光が未帰還者に成ってしまうかもしれない!選手控え室へ向かおうと立ち上がった俺の出鼻を挫くように、クビアが口を開く。

 

「あぁ、お兄さんが心配してることは起きないよ。揺光ちゃんはちゃんとリスポーンしてるし、リアルの方もちゃんと意識はあるから。どう、安心した?」

「……あぁ、安心したよ。その代わりお前が何者なのか気になり始めたけどな」

 

「やだな〜そんな怖い顔しないでよ〜。僕も、なんで今ここに居るのか分かんないんだしさ。創造主の意思も介在してないみたいだし?……まっ、今は生を楽しむってことにしたんだ。それに、キミみたいな一緒に居れば退屈しなそうな人もいる事だしね?」

 

 そうカラカラと笑うクビア。会って数時間しか経たないが今分かった。コイツは関わっちゃいけないタイプの人間だ。それも、とびきり厄介な奴だ!

 

「あっ、今厄介な奴だって思ったでしょー?心外だなー、僕何もしてないのになー」

「何かしてる奴は決まってそう言うんだぞ?知ってたか?」

「ハハハ何言ってるかわかんないやー」

 

 

 

 

 

 

 

「それで、なんでエンデュランスと戦っちゃいけないわけ?」

 現在、ギルド内でちょっとした口論が発生していた。議題は『エンデュランスと戦うかどうか』という極めて重要な議題だ。

 俺はもちろん戦わない派で揺光が戦う派、そして俺達の口論をニコニコしながら見ているクビアと何故かギルドに立ち寄った欅というよく分からない空間が出来上がっていた。

 

「いや、だからな、お前を一瞬で屠ったアレな、ヤベェんだって。詳しくは言えないけどヤバイから、かなりヤバいよヤバいよだから」

「なんで某リアクション芸人みたいな言い方したのか疑問だけど、どうしてそんなにヤバイのよ?……あれって只のチートじゃないの?」

「その辺の説明はこちらのクビア先輩からしてもらおうか」

 

 そう言い、クビアを連れてくる。途中、欅がクビアの名前を聞いて少し驚いた顔をしていたからどこかで会ったことがあるのかもしれない。

 

 

「えぇーライが説明しなよー僕面倒なこと嫌いなんだけど」

「お前の方が詳しそうだから俺がするよりいいだろ?」

「それはそうだろうけどさー」

 

「早く説明する!」

 

 クビアと押し問答をしたせいで揺光の機嫌が悪くなってしまった。きっとこれはクビアのせいだ。俺は悪くない、悪くないよな?

 取りあえず、気を取り直して俺が分かる範囲のことを説明した。

 

「エンデュランスがお前を倒した時な、俺が意識不明になった時と同じ感じがしたんだよ。だから、戦っちゃだめだ」

「……それで?私が未帰還者になるかもしれないってこと?」

「あぁ、だからな出来れば戦ってほしくない。というか、エンデュランスと戦うなら先ず俺を倒してからにしろ」

 

「はぁ、じゃあエンデュランスのことは諦めるわよ。アンタに勝つなんてとってもじゃないけど、無理よ無理。で、話は変わるけどソイツ誰なの?」

「ん、よろしい。……こいつはクビアだ」

「まさか、それだけ?名前しか知らないような奴をギルドに入れたの?」

「ハハハ……流れで?」

「……バッカじゃないの!?私、もう寝る!おやすみ!」

 

 ブツっと音がしそうな勢いでログアウトしていった揺光を見送り、ついでに時計も見る。もう24時に近くなっており、そろそろ寝ないと明日が辛くなりそうだ。

 

「はぁ〜全く……。そろそろ俺も落ちるけどお二人さんはどうするよ?」

「ボクはクビアさんと少しお話したいことがあるので、もう少しやってます」

「僕と話したいことかい?……あぁ、僕もキミとは話しておきたいね」

 

 どうやら二人はメンバーアドレスの交換を済ませていたらしい。仲が良いことで大変結構。

 

「そか、じゃあ二人ともおやすみ」

 

 そう言い残し、The Worldからログアウトする。……こっからがまた少し長くなる。掲示板で怪現象などの書き込みがないかチェックし、あるようなら後日の探索のためにそのエリア名もメモって置く。それらが終わったらようやく眠れる。

 

 今日は揺光からのメールが届いていた。さっきは言いすぎた、ごめん。と綴られたメールを読み、相変わらずこういうちょっとした所で可愛いよなって思った。

 そう返信したら「もう知らない!バカッ!」っていう何とも可愛らしいメールを頂き、おじさんは少し嬉しくなった。……このことをメールに書いたら揺光にキモいって言われたから今のような発言はもうしないようにすると心に誓った。

 




一人称のかき分け
クビア→僕
欅様→ボク

一日中The Worldのことしか考えていない主人公
八咫さんかな?


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