俺は古参プレイヤー   作:サンデイクローズ

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さわりだけ


AIDA

「ちょっと話しがあるんだけど、いい?」

 

 思いつめたような表情で揺光が聞いてきたのはレベル上げが一段落した時のことだった。今日はいつもよりキレが無かったから悩んでいるんだとは思っていたけど何かあったのだろうか。

 

「あぁもちろん。で、どうしたんだ?」

 

「うん実はね、今日ライがインするまでの時間に天狼とタウンで会ったの。……でもその時の天狼の様子がおかしくて、普通じゃないって言うのかな。とにかくヤバい感じだったの」

 

「そうなの?俺は接点ないから何がおかしかったのか教えてくれるか?」

 

「私が声かけただけで『お前も“アレ”を狙っているのか』って言い出してさ、それでちょっと怯んだスキにどこか行っちゃうし。それにヤバイ薬でもやってるみたいな感じで心配で」

 

「アレ……か。何かの力とかそういう感じか?」

 

「分かんない、でもきっとそういう事だと思う。あんなに天狼が執着するものって言ったらそれぐらいだと思うから」

 

 力、力ねぇ。正直レア武器とかなら揺光と天狼はジョブが違うからそんなに強く言う必要もないだろうし。……まぁ仕様外の力に詳しい二人が来るのを待った方が良いだろう。

 

「まぁ、とりあえずは」

「うん二人が来るのを待つ、でしょう?……うん、二人の方が知ってそうだもんね」

 

 最近心読まれすぎじゃないか?……まぁ読まれて困るような内容でもないからいいんだけど。

 

 

 先に@HOMEに入ってきたのはエンデュランスだった。

 

「お疲れ様、二人共」

 

「おう、お疲れさん」

「なんだエンデュランスかー。ね、欅とクビア見てない?」

 

「見てないよ、ゴメン」

 

「お前ちょいちょいエンデュランスに当たり強いよな?」

「えへへ、あっそうだライとエンデュランスにも話しておいた方がいいかな?天狼のこと」

 

 それから揺光が教えてくれた天狼は正々堂々としていてチャンピオンになるべくしてなった奴だと思った。

 

「──でも、今天狼が組んでる二人が現れてから天狼は変わってしまった。あんなの、あんなの天狼じゃないっ!」

 

 揺光の聞いたエンデュランスが少し考え込んでいるように見える。何かわかったのだろうか。

 

「エンデュランス、何か分かったか?」

 

「……うん。ボクとは少し違うと思うけど多分、彼には黒い斑点みたいなものが取り憑いてると思う。ボクもそうだったから」

 

「黒い斑点?……アレってただのグラフィックのバグでしょう?!そんなのに何が出来るって言うのよ!」

 

 

「落ち着いてください揺光さん。エンデュランスさんが言ってることは強ち間違ってないと思いますよ?」

 

「おっ、来たな訳知りコンビ。で、黒い斑点の正体は分かるのか?」

 

「残念ながら、今はまだ何も分かっていません。……でもどうやら彼らは『何か』を知りたがっている。そのせいでPCに取り憑くのではないか?って僕は思ってるんですけどね〜。あっ、彼らは『AIDA』と名付けられていますよ」

 

「AIDA、ねぇ。そのAIDAがどうやって天狼をおかしくしたか、までは流石に分からないよな」

 

「う〜ん、そうですね大体の予想はついてますけど、あんまりボクらには関係ないかなって」

 

「でも、天狼はっ!お願い、教えて欅!」

 

 そう欅に縋るように頼み込む揺光。……根負けした欅が揺光に話そうと口を開いたが、そのタイミングで今まで傍観していたクビアが参加してきた。

 

「どうして揺光ちゃんはそこまで天狼って人に拘るの?……別に今は関係ないでしょ」

 

「でも、知り合いなのっ!知り合いを見捨てるなんて出来ない!」

 

「じゃあ、お話します。でも、本当にくだらない理由ですよ?──彼は、力が欲しかったんです。そうして目の前に力が転がってきた。そう、上手く使えば誰にも負けることがなくなる力『AIDA』が。そして、AIDAも彼を知りたがったのでしょう、彼が力を求める根底にある『恐怖』を知り、そしてその傷を抉った。するとどうでしょう、彼は更に力を求めAIDAと混ざりあって行ってしまいました〜。めでたしめでたし」

「なんて、どうでしょう?面白かったですか?」

 

「面白くなんてないわよっバカ!」

 

「まぁまぁ揺光、落ち着けって。取りあえずは全部欅の妄想だろうしさ、すげぇ気になるけど」

 

「それは、そうかもだけど。でもそんな言い方ってないじゃない……」

 

 揺光の言うことも尤もだし、欅が脅かしすぎたっていうのもあるだろうけど、欅が言ってることは多分合ってると思うんだよな。

 AIDAか、面倒なやつが敵と言えばいいのかThe Worldはアクシデントに事欠かないと言うことなのか。

 

「まぁ、揺光この件についてこれ以上首を突っ込むのはギルマス権限で禁止させてもうな」

 

「なっ!なんで!?ライなら分かるでしょ、知り合いがこんなことになってるのになんで動いちゃいけないのよ!?」

 

「……んなもん決まってる。お前が未帰還者になったら嫌だからだよ」

「でも……」

 

「でもじゃねぇ!お前がいなくなったら、俺は……」

 

 そう言うと悲しそうな顔で分かった、と言ってくれた。正直揺光の気持も分かるし、俺だって同じ立場なら助けに行くって走り出しそうだけどそれでも、揺光を失う可能性があることを許可することは出来ない。

 時計が午前を指しているのに気が付き、もう寝ないといけないと思い、今日はこれで解散という流れになった。揺光は少し考えてから寝ると言っていたから、おやすみ、と言ってから落ちた。

 

 

 

 

 ライは時々詰めが甘い。まぁ、そういうところも面白いんだけど今回のはちょっとダメだよね〜。ライの友達としてここは僕が一肌脱ごっか。

 

「AIDAに感染したプレイヤーにキルされると本当に未帰還者になっちゃうから気をつけた方がいいよー?揺光ちゃん、ライの目がない時に天狼?だっけを助けに行こうとしてるでしょ?ライが悲しんでもいいんだ、揺光ちゃんは?」

 

「だって、天狼がっ!」

 

「どうしてその人にキミが執着するのかよく分からないんだけど……あぁ、なるほど不安なんだね」

 

「そうよ、不安、不安よ!だってつい最近まで一緒にいた人がAIDAとか言うのに感染しておかしくなってっ!怖いわよ!」

 

「世の中には絶対なんてことは無いってライは言ってたけど、そうだね揺光ちゃんが危険な目にあったらライが守ってくれるのは絶対だと思うよ?」

 

「えっ、それってどういう──」

 

「まぁそれでもやるって言うなら、僕はもう止めない。好きにするといいよ。でも君のせいで悲しむ人が居るってことも知っておいた方がいいと思うよ?……君が未帰還者になったらライはどうなるのかな?闇に染まってしまうのか、それとも力を求めてAIDAに憑依されちゃうのかな?あぁそれはそれで楽しいかもね」

 

「あぁもう、許して!私が悪かったわよ!もう馬鹿なことしようとしないからその話、やめてちょうだいっ!」

 

 うん、きちんと反省してくれたようだからこれで十分かな?それにしても揺光ちゃんって本当一途でわかり易くて面白いなぁ〜。

 

 




押し間違えて投稿しちゃったテヘペロ(๑>؂<๑)♪

G.U.の資料集が明後日あたりに届くので次回更新は届いてからになりそう。

あぁ〜ミミルかわいい

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