アフターひだしん越後屋大戦(凍結) 作:越後屋大輔
「…という訳なんですが」夫婦は越後屋を探している理由を話す。あれから諸事情あって越後屋にはずっと行けなかった夫婦、今日は孫に会う為この県に住む一人娘の嫁ぎ先にきたので自分達があれからずっと夫婦でいられた事を伝えて是非一言あの人にお礼を言いたくてその店を探しているという。
「当時の店主は私の友人でしたが既に天に召されました」タカヒロから聞かされがく然とする夫婦、2人共しばし啜り泣く。
「仕方ないですな」夫が泣くのを堪えようとため息を吐きながら諦めの言葉を吐く。何せ30年近くも前の事だ、店がなくなっていてもおかしくない。
「残念だったわね、でもお店がもうないのがはっきりしただけよかったわ」妻も涙を拭い悲しい微笑みを浮かべる
「「どうもお騒がせしました」」夫婦はタカヒロに詫びてラビットハウスを出ようとドアの方に体を向ける。
「ちょっと待って下さい」大輔が夫婦を引き留める。
「香風さん、キッチンをお借りできませんか?」タカヒロは小さく笑顔を見せて
「構わんとも、材料はウチのを使ってくれ」
「ありがとうございます」大輔はタカヒロに一礼すると早速調理を始めた。
「料理ができるまでこちらをどうぞ、お代はいりません」タカヒロが水割りを提供した。
「お待たせしました、越後屋特製の開花丼です」夫婦の目の前に丼を並べると時計に目をやる。
「明日も日本で仕事がありますので、これで失礼します。今日はありがとうございました」大輔は香風親子に礼を述べラビットハウスを後にした、キョトンとする夫婦。
「彼は先代の養子、今の越後屋店主ですよ」タカヒロが夫婦に説明する。
「美味しいわね、あなた。それにあのお店自体は続いてたのね」
「ああ、俺達の思い出の味だ、でもなんでお店が見つからなかったんだろうな」夫婦は久し振りの開花丼を口にしながら喜びを分かち合う、そしてタカヒロからヤミ金や親不孝な熊実の兄弟について聞かされた。
「じゃあ今は新しい土地でお店をやっているのね、でもなんでこっちで再開しなかったのかしら?」
「彼、大輔君は事情があって今その国を離れられないようです。詳しい事は聞いてませんが」
「きっと俺達には想像できないくらい悩んだ上での選択だったんだろう、お礼が言えなかったのが残念だな」
「連絡先は聞いてますから彼には私から話しておきましょう、お二人の気持ちは伝わってると思いますがね」
ラビットハウスを後にした2人は話に聞いた連中に憤慨しつつ愚痴り合いながら宿泊先へ向かう、娘婿の万丈に破嵐財閥傘下にあるホテルを手配してもらった。あの豪奢なお邸は立派すぎて落ち着いて寝られない、ゆのは随分慣れたらしく我が子即ち2人の孫を抱きながら邸内を色々案内してくれたが。
「どちらも許しがたい奴らだな、ヤミ金はもう捕まってるらしいが」
「ねえあなた、ゆののご主人にお願いしてみない?」
「よし、万丈さんに社会的な制裁を与えてもらおう。奴らも破嵐財閥に目の敵にされたら最後、もうお仕舞いだ」誰も見てないのをいいことに物騒な会話をする木村夫婦。しかしある人物、もといある神様はしっかり見ていた。
「破嵐万丈、彼も中々見どころのある男なのよね。いいわ、アタシも少しお手伝い❤下界の情報をちょこっといじっちゃいましょ♪」この後万丈の手を借りるまでもなく熊実の兄弟達には不幸が次々に押し寄せ、文字通り天罰を受けるハメになるが当然真相を知る者はいない。
地球の神様出てきちゃいましたね(笑)。