アフターひだしん越後屋大戦(凍結)   作:越後屋大輔

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すみません、話が飛びます


第3話大谷慧の日常

 「こういう時、在宅の仕事でよかったとつくづく思うな」ゲームシナリオライターで兼業主夫の金本慧はひとりごちる。自分の仕事を切り上げて夕食の支度を始めた。

 小説家として世間に名を馳せる妻、橘文こと本名金本沙英。彼女に食事ができたと声をかける、今も机に向かって新作の案を練っているだろう。

 「あまり根を詰めさせないようにしないとな、体の方が大事だし」かつて自殺未遂を起こし半ば自棄になっていた彼を立ち直らせてくれた妻、そんな彼女に惚れ込んで結婚を申し込んだが本名の金本姓を失いたくないからと一度は断られた。では婿になればいいのか。そういう慧に対して渋々ながら二度目のプロポーズを受けてくれた。ただし互いに在宅仕事なので稼ぎのある沙英に変わり自らがこうして家事を引き受けている。

 

 「ピコリーノがこんなトコ見たらなんていうだろうな」異世界からやって来て一時期慧に取り憑いていた霊である、彼らの世界は未だ男尊女卑が色濃く残っているらしく沙英が小説家と知って驚いていた、(あちらでは男の仕事らしい)しかも妻に代わって掃除洗濯してるなんて知ったら何を言われるか分かったモンじゃない。そういえばあいつ無事天国へ行けたのかな、そんな思いに浸っていると

 

 ピンポーン!インターホンのチャイムが鳴った。こんな時間に誰が来たのだろうと慧はカメラを覗く、沙英の妹金本智花がケーキの箱を抱えて立っていた。

 「お義兄(にい)さ~ん、差し入れ持ってきたヨ~。ついでにお姉ちゃん達の顔見に来たぁ」

 「ついでって何よ?ついでって!」顔を紅潮させて赤ん坊を抱えながら玄関にでてくる沙英、慧との子供を授かり現在生後7ヶ月目を迎えている。

 「お姉ちゃ~ん、怒ると子供の教育に良くないよ」ニヤニヤ

 「煩いわね!アンタこそいい加減結婚相手見つけなさいよ!(`ヘ´)」

 「まあまあ」慧は2人を宥める。

 「ねえ、ご飯食べに行かない?」唐突に切り出す智花。

 「イヤ、もう用意してあるから。今度にしないか?」

 「お義兄さん!今度とお化けは来た試しがないんだよ」俺ントコには来た事あるんだが、とは流石に言えない慧。

 「せめて明日にしなさい、どうせ今日は泊まってくつもりでしょ?」何だかんだ言っても仲のいい姉妹だと慧は思った。

 

 翌日3人で出掛ける支度をした後、慧の運転する自動車(くるま)に乗り途中で宮子の家による。あのあとたまたま電話がかかってきて今日の事を話したら赤ちゃんを預かると言ってくれた。

 「行くのが旦那の勤務先でしょ?なら私も何か貢献しないと、子育ては慣れてるし」せっかくなので任せる事にした、やがて一軒のレストランが見えた。駐車場に自動車を停めて中に入る。

 「沙英、慧さんいらっしゃい。智花ちゃんもよくきてくれたわ」親友の燈馬ヒロが出迎えて席に案内する、テーブルに着いたらヒロの夫でありこのレストランのオーナー、(はじめ)が食前酒とグラスを3つ持ってきた。

 「すみません、自動車できてますので自分は酒は…」いいかけた慧に、

 「帰りは僕がお送りします、自動車は駐車場に停めたままで構いません」慧も呑む事になりこの3人では初めての外食を楽しんだ。

 店が閉まって沙英達と燈馬夫婦だけになるとヒロがこんな話を切り出した。

 「沙英、覚えてる?双葉商事の近くにあったじゃない、アーケード街の小さい食堂」

 「うん、懐かしいね。でもあのお店もう廃業してるでしょ?」

 「それが再開したらしいわ、しかも結構人気店だそうよ」

 「同業者としては気になってましてね」一が話に入ってきた。

 「それで今度偵察に行こうと思ってるの、定休日も重なるらしいわ。そうなると主人がここを動けないから代わりに付き合ってほしいの」沙英は少し悩んだ、あのお店には間接的とはいえ恩がある。でも

 (青山先生のお話じゃ当時の店主さんは亡くなってるそうだし、本店も今は遠くにあるのよね。ならいいか)

 「いいわよ、っていうか私がヒロの頼みを断る訳ないじゃない」

 「ありがとう、沙英大好き❤」沙英に抱きつくヒロ。コホン、慧が軽く咳払いをする。

 「お義兄さんもまさか女性に嫉妬するとは思わなかったよねぇ」智花がクスッと笑いからかう。

 「細かい日取りはこちらで決めさせてもらってもいいですか?」一が話を起動修整する。

 「ええ、我が家は2人共在宅仕事ですから、そちらのご都合に合わせられます」こうして沙英とヒロは越後屋2号店に出向く事になった。

 

 

 

 

 




高坂メガボーグ後始末編はしばらくお待ち下さい

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