アフターひだしん越後屋大戦(凍結)   作:越後屋大輔

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アフターの更新も久し振りです、今回は恵梨香視点でお送りします


第17話恵梨香妄想する

 私こと西沢恵梨香は空を飛んだ事がある。勿論夢でも嘘でもないし飛行機に乗った訳でもない、尤も正確には空を飛ぶ人間に担がれて空に浮かんだというのが正しい。

 

 それは8年前、私が小学4年生の頃に遡る。当時通っていた双葉小学校に転校してきた神幸太君が私達と同じ通学班になったので班長の持田さんらと迎えに行った時だった、初日は本人に会えず彼の伯母さんから既に登校したと聞いたので私達もそのまま学校に向かった。

 2日目は迎えにきた途端、神君は人間とは思えないスピードで玄関から走り去り私達はやり過ごされた。そして3日目にようやくちゃんと顔を合わせられた、見た目は至って普通の男の子だったけど左目の下や腕のあちこちにある傷痕がやけに痛々しかった。後に人づてに聞いた噂話ではお父さんからDVを受けていてそれを知った伯父さん夫婦がひきとったらしい。

 

 その日はいつもの通学路で工事をしていて別ルートを行く事にしたがそっちの道も緊急事態で使えなくなっていた。頭をかきむしる持田さんを見かねて神君は私達を担ぎ上げるとなんと空をかけ上がって学校の上空まで走り出した、おかげで遅刻は免れたけど代わりにしばらく空に対してトラウマが残った。

 

 「えっ?じゃ恵梨香ちゃん双葉小学校だったんだ」センター試験を終えた私は以前同じアパートに住んでいて何かとお世話になった破嵐ゆのさんと喫茶店でコーヒーを飲みながら何とはなしにそんな事を話した。

 「は、はい。そうですけど」普通こんな話信じてもらえない。頭がイカれたか、いい年齢した中二病なのかと思われるかのどちらかだ。ところがゆのさんはまるで予想してなかった事を聞き返してきた、それも私が真実を語っているのを前提にしている。

 「はい、そ、そうですけど。あの、ゆのさん?」

 「何?」

 「私の話信じてくれるんですか?」

 「うん、だってそれ多分私の知ってる子だもん」私はアゴが外れそうなくらい口をアングリさせた、更にゆのさんはトンデモない事を言ってきた。

 「幸太君、今友達連れてウチに逗留してるけど会いにくる?」

 

 助手席に私を乗せたゆのさんのテアナは超が幾つも付くような豪邸に入った。そういえばこの人大財閥の会長と結婚したんだよね、扉が開かれると頭は薄いが中々に渋い執事さんと綺麗なメイドさんにお出迎えされた。

 「初美さん、レイカは?」

 「レイカお嬢様ならお休みです、お客様はどちらへご案内致しますか」初美と呼ばれたメイドさんがゆのさんに伝える。

 「私の部屋でいいよ、幸太君はいるの?」メイドさんに代わり執事さんが言葉を繋ぐ。

 「はい、あのバカなら…」

 「伯父貴、バカはないだろ!俺、一応万丈さんの客人だぜ」数十メートルは先にあるドアから筋肉質な男子が現れた。神幸太君だ、随分大きくなったな。背も伸びたし、まあ今は高校生になってるハズだから当たり前か。

 「ウルセー、お前なんざバカで充分だ!」

 「ギャリソンさん、地が出てます。それにお客様の御前です」メイドさんが間に入る、この執事さんが神君の伯父さんだそうで当時流れていた噂もデタラメでご両親が単に仕事で海外へ転勤したのでその間伯父さん夫婦に預けられてただけだと後で本人から聞いた。

 

 「ゆの、お客さんかい?」ここの家主(ばんじょうとか言ったっけ)が現れたようだ。どんなオッサンか見てやろう…と思ってた時期が私にもありました。その人は見た感じせいぜい30前、年齢的にゆのさんと釣り合いはとれてるし何よりこれまた超が幾つも付くイケメンである。

 「幸太?」さっきの部屋からもう1人、ゆのさんの旦那様とは違うタイプのイケメンが現れた。

 「ああ、2人は初対面か。こいつは同じ高校の友達で織斑一夏です、こちらは万丈さんの奥さんのゆのさん。ン?あれ?」ここでやっと私に気付いたみたい。

 「西沢さん?小学校の時、同じ通学班だった4年生の…」

 「そうそう!覚えててくれたんだぁ」

 「二学期の終わりに俺と入れ替わるように転校しましたよね、それが却って印章に残ってたんで」

 「ほう、意外な繋がりだね」万丈さんが微笑みを見せる。こんな顔見せられたら大抵の女は惚れるわね、他の女に取られないようにゆのさん気を付けないと。

 「俺だけアウェイなんだけど」織斑君は苦笑しているがそれが妙に可愛い。お金持ちの年上と憂いある年下、あぁどっちも捨てがたい!って私に選ぶ権利なんてないわよ!思わず自分突っ込みしてしまった。

 

 その後、娘のレイカちゃん(0才)にも会った、メッチャ可愛かった。夜には夕食をご馳走になり素敵なゲストルームに泊めて頂いた、正に真夏の夜の夢だった。

 翌日ギャリソンさんの自動車で駅まで送られてそこから電車でアパートに帰ってきた私はポストを開けた、センター試験の結果がDMで知らされている。成績は上位、一安心してから両腕を広げ大きく伸びをする。

 「さて、9月からは受検本番。センター試験の結果に油断しないで勉強に本腰入れなきゃ」来年は合格する、私は更に気合を高めた。

 

 

 




本作と「スーパーひだしん~」にサブタイトル付けました、お気が向いたら確認して下さい。

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