アフターひだしん越後屋大戦(凍結)   作:越後屋大輔

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こちらか「越後屋」外伝現在編に載せるが迷いながら書いてた結果こうなりました


第13話莫大な遺産

 長岡初美は娘の楓と息子の祐を連れてある男に会いに行く。待ち合わせしたのは今まで行った事ない蕎麦屋である。

 「あっ初美さん、こちらです」亡夫の親友だった越後屋大輔である。

 「大輔さん、お久し振りです」

 「ご無沙汰してます初美さん、楓ちゃんと祐君も元気だった?」

 「ウン」

 「今日はどうしたんですか?大輔さんの事だから悪いお話じゃないでしょうけど」

 「生前、瑠華さんから預かっていたモノがあったんです。僕が持っているよりお返しした方がいいと思いまして」大輔が取り出したのは有名日本人女性作家の筆でアレンジされた[西遊記]の箱入り文庫本全巻だった、それも大輔の手で綺麗にビニール梱包してある。

 「手元に残すか処分されるかはお任せします、確かにお返ししました」夫の遺品は彼の両親の意向もあり現金に変えられるモノは売りさばきそれ以外は捨ててしまった、この文庫本もそうしようと初美は受け取った、持ち帰ってから両親に事情を話し相談するつもりだ。

 

 「大輔君、こちらは?」知り合いらしき壮年の男性が大輔の隣に席を取った。

 「先代と親しかった香風さんです、こちらは亡き友人の奥さんで長岡初美さんです」

 「長岡です」

 「香風です」互いに自己紹介するとタカヒロは離れた場所へ移動しようとした。

 「あの、私すぐにおいとまするのでご遠慮は無用に」

 「まあお嬢さん、そう言わずウチの蕎麦食っていってくれよ」ここの蕎麦屋の主であろう香風と同年代の男に声をかけられた。

 「俺ぁ、この店のオヤジで磯田鉄平ってんだ、このタカは古いダチでな。今日はクマ公の養子の大輔君に引き合わせてもらったんだ」

 「クマ公?」夫が生きていた頃から越後屋にはよく通っていたので熊実の事は知ってるし何度か愚痴を聞いてくれたりもした、しかし交友関係まで理解している程の仲でもなかった。

 「先代がそう呼ばれてたそうです。すみません、僕が普段日本にいないのでついでみたいな形になってしまって」確かに今の大輔は日本にいない、というか地球にいないのである。

 「タカもせっかくだから同じ卓で食ってけや、蕎麦だけにそばでな」

 「つまらんな」鉄平のサムいダジャレを無視して蕎麦を啜るタカヒロ、初美も苦笑いしつつ楓を膝に乗せて一緒に食べる。

 「やっぱり手打ちの蕎麦は美味しいです」

 「まあ外国じゃ食えないだろうからな」

 「いえ、乾麺なら手に入ります」2人の会話にタカヒロは少しだけ口角をあげるがすぐに真顔になって

 「店では出さないのか?君なら蕎麦打ちができないハズもないだろう」

 「本来パンを主食としていた国ですからね、アレルギーの心配があるので自分の賄い専用にしています」

 「ママ、チュルチュル飽きた」楓が失礼な発言をする。

 「そりゃねーな、オチビちゃん」苦笑いの鉄平だが

 「大輔君、小さい子でも食べやすい蕎麦料理を作ってみたらどうだい?鉄平は厨房を貸してやれ」

 「おう、よそ者ならお断りだがクマ公の跡取りなら話は別だ。俺も興味あるしな」

 「では、ありがたくお借りします。その前に材料を買ってきます」

 戻ってきた大輔は厨房に入ると野菜や豚バラ肉を下拵えしてフライパンで練る前の蕎麦を焼き始めた。できあがったモノは反対側が透けて見えそうなくらい薄く仕上がっている、そこにさっきの野菜達を乗せて蕎麦をフライパンの上で器用に畳む。

 

 「お待たせしました、ガレッタです」

 「ふ~ん、こいつが外国の蕎麦料理かい」

 「正確にはフランスが起源だそうだ」

 「スイーツバージョンは熊実さんもたまに作ってましたが食事用は私も初めてです」和食ではないが生憎この店にはフォークとかはないので3人共箸で試食する

 「蕎麦の風味を生きてるな、これなら下手な和食党もケチをつけまい」

 「こういう洒落たモン、俺は作れねぇが否定はしねえな。実際旨えし」

 「モグモグ…」

 「もう1つ作って下さいって、アラ?」

 「お供えでしょう、明後日祥月命日だし」

 「覚えていらしたんですね」

 

 その日の夜、異世界に帰ってきた大輔は初美の元夫こと長岡瑠華改めルカに電話した。

 「初美も楓も元気か、何よりだ」

 「後、佐吉君も違う女性と結婚するそうですよ」

 「そっか、養子縁組が成立したなら佐吉を縛っておいてもしょうがねえな。アレ(・・)は渡してくれたか?今の俺には他にしてやれる事はねえからな」

 

 同じ頃、大輔から返された箱のビニールを開けた初美とルカの両親。中には文庫本は入っておらず代わりにギッシリと金塊が詰まっていた、腰を抜かす両親、初美は大輔に電話する、その答えは

 「ええ、預かっていたのをそのまま梱包しました。金?僕は中身まで見てません、そういう事なら一応警察に連絡した方がいいかも知れませんね」電話を切った大輔は

 「異世界産の金だから犯罪の痕跡なんか出る訳ないけど、それにしてもルカさん妻子好き過ぎだな」独身の僕には分からないなとひとりごちた。

 

 

 




影山先生へ、鉄平の名字がわからなかったので勝手につけちゃいました。もし違ったら後で直しますね

鉄平の名字直しました

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