意識が高すぎて魔法科高校に入学したが劣等生だった。 作:嵐電
まさか今時『全身の筋骨を連動させて作り出した捻りの力を打撃部位に伝え攻防一体の武器とする纏絲勁』等と解釈しているとは予想外だった。軍はどうなっているんだ?軍の特殊部隊は超絶タフな人間を集めて苛烈な訓練を課して選別するのは、今も昔も変わっていないのだろう。
では、纏絲勁とは何か?無理矢理表現すれば『同時に全身の関節を回転させる』だ。
こんな事をああだこうだと言ったところで発勁できるようにはならないので早速練習だ。
「というわけで、両足を肩幅の二倍程度に開いて」
部員と部員でない人も混じって足を開いた。
「足は、平行です。膝も前に向かせて下さい」
女の子は膝が内向きになりやすい。
「体力的にきつい人は、歩幅を少し縮めても構いません」
誰も歩幅を改めようとしない。みんなタフだね〜。
「両掌の労宮を開いたら自動的に上がりますが、上がらない人は気にせず掌を前に向けて肩くらいまで上げて下さい」
これは、一人しか自動的に上がらないと思っていたが、白石くんや涼野さんまで出来ていたので少し驚いた。
「次に丹田を感じて下さい。丹田の動きに合わせて身体が上下・左右・前後に動きます」
以前から太極拳の特徴的な丹田を□に動かすのをみんなそこそこ出来るようになったから、今日からあからさまに発勁出来るようになってもらおうと考えてこの基本を紹介している。
「師匠。これ、もしかして形意拳?」
長岡さんが、小声で尋ねた。その通りです!正解。
この基本の練習は、比較的に丹田の動きと身体の動きが一致している。だから、取り組みやすいのだが、誤解もしやすい。
「意念」で丹田を動かす。すると自動的に身体が動く。多くの誤解は、意念とイメージを混同して起こる。イメージでは、身体の自動運動は起きない。むしろ、脳が緊張して身体は動きにくくなってしまう。
ちなみに、現代魔法が魔法科高校に真面目に通っても劇的な進歩につながらないのも同じ原因だ。魔法発動のコツを今までも教員がイメージを作る方法を学生に進めている。
サイオンもエイドスも此の世と彼の世の間に視える極めて抽象的な現象だ。なので、個人によって視え方が違うのはもちろんのこと、同じ人物でも日によって視え方が違うのだ!(⇦ここ重要。実戦で役に立つ。)
であるからして、今日いい感じで事象改変が起こった良い感じのイメージを覚えておいて、後日同じイメージで良い感覚と事象改変が起きる可能性は低いのだ。むしろ、何も考えずにCADに頼り切った方が良い。
皮肉な事だが、デバイスに頼り切ってエレメンタルサイト的な視覚を一切考えないほうが事象改変力が上がる。特に現代魔法に使えるサイオン量が多くない魔法師は。
そして、武術や座禅にもこれが当てはまる。今日観えた丹田は明日は同じ様に観えないと考えた方がいい。もしかしたら観えないかも知れない。今日上手くいった丹田の動かし方は、明日はあまり上手く機能しないかも知れない。ならば、技を技術を師を信じて敵を撃つ!と単純に行動した方が技が切れるのだ。
さて、今回の練習の説明に移ろう。丹田を上下に動かすと「意念」する。すると身体は上下する。丹田を左右に動かすと意念すると身体は左右に動く。ここから問題だ。身体を前後に動かす、一方の片手が前に反対の手が後ろに動くように丹田を意念するのだ。
ここで個人差が大きくなる。前方からのエネルギーの流れを丹田辺りで感じるだけでも前後に手が動く人もいれば、丹田を前後に伸ばしてたり縮めたりすると上手く行く人もいる。丹田の中に自分の分身がいてそこで動くと身体も動く人もいる。書いて行くとキリがない。
これに慣れると「発する」いうわずかな「意」で発勁できる。チョーカンタン!
「師匠。ちょっと…」
森崎くんが小声で呼んでいる。
「丹田に仏がいた?」
僕が尋ねると、森崎くんが目を見開いた。その後、黙って小さく頷く。
「それも、森崎くんの本当の自分の一形態です」
僕も森崎くんにだけ聞こえるように小声で喋った。
中には、無反応な部員がいる。おそらく丹田が自分なりに掴めないと感じている。
「どうも、良くわからない人もいると思いますがご安心下さい。座禅や八卦掌は、そのような人のほうが取り組みやすいですから!」
これは、嘘や方便ではない。視えるあるいは観える人は、座禅をすると見え過ぎて落ち着いて座れないケースが多い。偏差*に悩まされたり最悪魔境*に入ったりすることも多い。
*偏差:自律神経失調症と捉えて構わない。
*魔境:統合失調症と捉えて構わない。
見えるタイプの人は、太極拳や形意拳の方がいいと思う。
とはいえ、やはり丹田がわかるに越したことはない。
「丹田や意念がしっくりこない人は空想や妄想で身体を動かしても構いません」
これも、現代魔法の訓練において良くないとされている方法だ。空想や妄想の中に入り込む方法は、西洋魔術の修行の一つでもある。タットワ*だ。幾何学模様を空想して、その中に入り込む。その中に入り込んだあとに何が見えるかはあまり言われない。指針として本当の自分に出会うとか、自分にアドバイスをくれる導き手が現れる等は事前に与えられる。
興味のある方は参考にすると良い。
『異世界へ行く方法 タットワの技法のやり方と効果
あなたは「タットワの技法」というものを知っていますか?
上記の図形を並べた画像を使い異世界に行けるという内容で、インターネット経由で広がった一種の都市伝説です。しかし、これには元ネタがあり、魔術結社「黄金の夜明け団」創設当時まで遡ります。今日はタットワの技法について説明していきたいと思います。
タットワって何?
世界を構成している5つの元素「火」「水」「地」「風」「金」の5つを象徴化した図形であり、正しくはタットワの潮と言います。画像では全部並べているけど、元々は1つ1つバラバラのカードであり、タットワのカードを使い魔術の基本訓練となる瞑想を考案したのが黄金の夜明け団と言われています。
インドの考え方である5つの元素という要素と、西洋魔術が組み合わさりタットワの基本形が完成しました。魔術としてのエネルギーソースは十分ありますね。
タットワの技法のやり方
ただ見るだけでOKと教えているところもあるけど、もう少し魔術的にやる方法を紹介します。
1.上記画像を5分くらい凝視する。
凝視と言っても力を入れてはいけません。体の力を抜いてリラックスしならがぼんやりと画像のみをしっかりと見つめます。
2.目をつぶり心の中のスクリーンに投影する。
図形の残像がある程度しっかりと出来上がるまで画像凝視を何度でも続ける必要があります。
3.投影が出来るようになったら、ドアのサイズまで引き伸ばし、ドアを開けて内部を観測する。
どのような世界が広がっているかドアの向こうをしっかりと観察します。あえてドアの中には入らずに、あくまで観測者としてのぞくような気持ちで観察すると良いでしょう。ドアの向こうには異世界が広がっているので、違う世界を垣間見ることが出来ます。
注意点
エネルギーがある分、あまり多用しない方が良いでしょう。また、本来の形はドアを等身大に引き伸ばし中に入り異世界に移動するというものだけど、本当のタットワカードの形から少し崩れているので、この方法はあくまで遊び程度にとどめるべきです。
まとめ
ネット上で有名な方法ではあるけど、エネルギーソースがはっきりしている分危険が伴うので異世界へ行く方法として使うのではなく、異世界を見る方法として使う方が良いかと思います。
中国仙道には入異境の術とか言って、似たような方法で異世界へ入る術があります。国や考え方は違うけど、話を突き詰めていくと結局は似たような内容になるのが異世界ものの面白いところですね。』
「頭の固い西洋人には、こんな方法が良かったのかもしれません。タットワは今回詳しく説明しません。ただ、妄想や空想に入り込むのから始める方法もあると覚えておいたほうが良いと思います。それから、丹田で身体を動かしづらい原因がもう一つあります。これは日本人が陥りやすいものです」
僕がこう言うと桐原さんが身を乗り出して来た。丹田でうまく身体を動かせないのだろう。
作品で紹介している練習は、意外な事に動画がネットになかった。比較的有名な練習法だと思っていたがそうではなかったようだ。