意識が高すぎて魔法科高校に入学したが劣等生だった。   作:嵐電

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入学編 9

昨日は、久しぶりに独演会をやってしまい調子に乗り過ぎた。反省である。僕は、あまり目立つのは好まない。話題欲しさに自作自演するライター、旧朝日新聞の記者のような真似はしたくないのだ。

 

もし、昨日の彼女達との昼時食堂ミーティングが他の学生の顰蹙を買い彼女達に迷惑がかかり僕との距離を置きたがるとしたらそれに合わせて僕からも彼女達との距離を置いて行こうと考えている。

 

とんだ自意識過剰だった。

 

翌朝、みんなの話題は剣道小町こと2年E組壬生さやか(字がわからない。判明次第お知らせする。)を我がクラスのトップスターから学校のトップスターになりつつある司波達也くんが言葉攻めで翻弄したというどこまで本当なのかわからない噂で持ち切りだった。

 

僕等の話題は、どこにもなかった。これで一安心。ただ、少し悔しい気持ちもある。そこは察して頂けるだろう。

 

我がクラスの司波達也くんが活躍するにつれてEクラスの彼とほぼ接点のないクラスメートまで生き生きとし始めたのには笑った。

「俺、Eクラス。大活躍の司波達也も同じEクラス。司波達也凄い、俺も凄い」

と錯覚しているのが丸分かりだ。

ただ、自信は無いよりあった方が良い。たとえそれが根拠が無っかったとしてもだ。現代魔法と言えども精神的なコンディションはとても大切なのだ。僕は大胆に予想する。このEクラスは大化けする人物を多く輩出すると。自信が大物を育てるのだ。

 

これとは反対のことをやったのがキリスト教の『原罪』だ。人は産まれながらにして罪人で有り、唯一無二のイエス・キリストによってその罪を赦されなければ死後、神の国には入れないと人々にデマを流した。

目的は民衆の支配だ。罪悪感を植え付けて自信を喪失させる。自信を喪失して大人しくなった民衆はコントロールしやすいのだ。しかも、救いは教会が独占している。民衆は教会の思うがままだ。

1000年も前の話だろうと思われるかも知れないが、ローマにそんな美味しい目を独占させるのは許せん!と1500年頃に宗教改革がドイツで始まったのだから、そんなに大昔のことではない。

 

教会の支配力を弱めようと当時の王侯貴族が反教会の聖職者で影響力のある人物を保護して教会と支配権を争った。要は権力闘争だった。ご存知のとおり支配権はその後、王侯貴族から市民と自称する金持ちに、一部の国では労働者の扇動に成功した者達に権力は移動して行った。

 

なので、民衆をコントロールする方法そのものは変化しなかったのだ。『原罪』では、騙せなくなったので何かにつけて罪悪感や不安や危機感を煽る情報を流す様にした。

 

他人ごとではない。我国でもスペインの宣教師が来日して布教と称してこの『原罪』詐欺を開始したがその悪巧みは日本の支配層にすぐにバレたのと民衆レベルでの正しい神の認識があったことで巧く行かなかった。無知で迷信深い人々を配下に置いて日本を間接支配し、その後武力行使し直接支配に持ち込むつもりだった。

 

「御先祖さんも、みんなも『地獄』に行くんなら、おらだけ『天国』に行けねえ」こんな感じだったのだろう。心に平安があれば霊感もはたらく。地獄なんて無いと感じてしまうのだ。

 

同じような試みは、第二次世界大戦で敗戦した後に米国が仕掛けた罪悪感の植付けによる日本弱体化だった。かなり巧妙に実施されたが元々、天皇陛下を中心とした精神的に安定した物質的にも安定していた社会なので70年程度では何も変わらなかった。キリスト教の信者は、在日大亜連合朝鮮自治区人が多く、当時でさえ普及率は1パーセント程度だった。今は、ほぼゼロパーセントだろう。

 

とはいえ、全員が精神的に安定しているわけではない。原罪はともかく、差別や不公平や不安や怒りや劣等感を煽って心理的に追い込まれてしまば、比較的簡単に宣教師(敵工作員)のいうままになってしまう者もある程度はいる。

カルト宗教は、我国でも残念ながら今も根絶出来ていない。もし、怪しいカルト宗教を見掛けたらこの出版社まで教えて頂きたい。そんな組織は、法的に追い込んで潰すべきなのだ。

他人の目から見れば、不安や劣等感がほとんど無いと思える人物でも、怪しい組織に取り込まれて行くケースがある。

 

我国では高学歴者がオウム真理教に入ってサリンテロを起こしFBIまでそのメカニズムを知ろうと躍起になった。百年前は、その様な現象を説明するのに苦労しストックホルム症候群等とテキトーな現象をたくさんあげつらって説明した気にもなっていた。

 

もっと簡単な話なのだ。人間も生物なので生物が生き残る為の本能的な行動、奪う、殺す、犯す、騙す、などは誰にでもある。普通の生活ではこれらの衝動はある程度抑えられている。その様な衝動に従って行動すればやがて社会から追放され割りに合わないと学習しているからだ。

 

なので、まともで優秀な人物をテロリストあるいはテロ協力者に仕立て上げるには、心理的に追い込んで精神的に弱らせてこちらの都合の良い救いを与えるとコントロールできる様になる人物を見つけると良いのだ。本人にも他人にも心の中はわからない。なので多くの優秀な人物に工作を仕掛けて引っ掛かった人物だけ洗脳して行けば良い。

 

どうしてこんな話しているのかを説明する。我がクラスのトリックスターである白石くんがなぜか昨日の壬生沙耶香さんに対する司波達也くんの言葉攻めの内容を詳しく僕に教えてくれた。どの様にその内容を彼が知り得たのかは、この際問わない。

白石情報からわかったことは壬生さんは精神的に意外に弱い。いくら司波くんが精神的肉体的にタフだとしてもいくらでも対応する方法はあったはすだ。

 

彼女の主張を彼が聞き入れてくれなかったとしても、まずは仲良くなるだけに目標を変更し付き合いを続けて行けば、達也くんでもそのうち愚痴の一つや二つは吐いてくれる関係にはなれるはずだった。少なくとも彼女達の考えを彼が否定することはない関係は作れただろう。

 

僕も壬生さんと少し話をしたとき彼女の目の動きが不自然に止まってしまうのが気になった。彼女は、少し変だ。健康的に健康的な学生運動に参加しているのか疑わしい。今日は、その学生運動自体もかなり怪しいと見た。通報と訴状の用意だ。

 

 

   ◇◇◇

 

「ブランシュ?」

「おうとも!反魔法国際政治団体だぜ」

なぜか明るい(多分、公安協力者の)白石くんが教えてくれた。

「連中は、公安にもマークされているそうなんだ」

公安が絡む情報はやたらに詳しい白石くんだ。

 

僕は、少し気が重くなった。

 

 以前、我国には日本共産党と名乗る政治団体があった。もちろん、今は共産主義による政治結社の設立は法で禁止されている。信じられないと思うかも知れないがテロリストとほぼ同義語の共産主義者が大手を振って国会議員バッチを付けていた時代があったのだ!しかも米国やドイツでは同じ時期に共産党は禁止されていたのにも関わらずだ。

 

第二次大戦後に連中は日本各地でやりたい放題に不法行為をしたが、日本政府は米国の圧力で取り締まるわけには行かなかった。仕方なく当局は日本共産党を公安監視対象にして長期間監視し続けていた。70年以上も。まったく息の長い話だ。

 

 さて、似たような団体にシーシェパードとかグリーンピースという国際的にテロ活動を行う団体もあった。(100年位前は文字通りモラル崩壊時代だったのだ。)クジラは人間の友達とか人間の生産活動が地球を滅ぼすとか、意味不明の主張で頭の軽い金持ちから寄付金を集めて海賊行為や市民運動をテロ予備軍に仕立てていた。これらは、活動が過激化してテロリストそのものと扱われ撲滅された。

 

 しかし、このような危険な団体が禁止されたり滅ぼされたりするまでかなりの期間野放しにされていた。当局に泳がされていたのだが、その間にこのような連中に騙されて人生の一部あるいは全部を浪費する者が増えてしまう。だから、僕はこのような連中は徹底的に弾圧するべきだと強く主張する。

 

「で?」

何時の間にか、長岡さんが話の輪に入っていた。神出鬼没だ。

白石くんは固まっていた。よほど彼女が苦手なのだろう。

「続きをどーぞ」

長岡さんは、冴えない普通人顔で白石くんに話を続けるよう促した。

 

「その危険な政治団体『ブランシュ』の学生版が『エガリテ』です。表向きには無関係とされてますが」

白石くん。どうして急に丁寧語?彼女怖くないよ。現代魔法なしで人(魔法師を含む)を瞬殺するけど。

 

厄介な展開だ。危険な団体とわかっていながら公安が監視を続けているのなら隠された目的があるのだ。僕が、外患誘致罪等で両団体を刑事告発しても受理すらしてくれない可能性大だ。少し作戦を考えておこう。

 

 

 

 

 

 

 


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