意識が高すぎて魔法科高校に入学したが劣等生だった。   作:嵐電

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横浜騒乱編7

「四摂(ししょう)、ちょっといいか?」

森崎くんが真剣な表情をしている。Eクラスの教室は、彼にとっては完全アウェーだと思うが単身乗り込んで来た。

 

「フラッシュ・キャストはムズイか?」

 

森崎くんは、一瞬たじろいだがすぐにうなづいた。

 

少し前までなら彼の悩みはすぐに解決できた。司波くんに頼んでクイック・ドロウかドロウレスの魔法式を見直して出来るだけ短くしてもらい、その短くなった魔法式を森崎くんが暗唱すれば良いのだ。

 

何回も繰り返せばそのうち高速で唱えられるようになる。

 

がしかし、司波くんが全国高校生魔法学論文コンペティションに参加すると急遽決定され、その準備で忙しくなってしまった。テーマは「重力制御魔法式熱核融合炉の技術的可能性」だ。どうして司波くんが常駐型重力制御魔法式熱核融合炉を研究しているのを市原さんは、知っていたのかは定かでないが、これでは司波くんも断れない。

 

ともう一つ。敵がまた攻撃して来た。今度は超遠方からの狙撃だったそうだ。ということで彼にこれ以上の負担をかけるわけにいかない。森崎くんの悩みは僕が聞くほうが良いだろう。解決できるのかはわからない。

 

「ああ、ただ俺も焦り過ぎてたと思う。だから、何か武術でも取り組んだ方が良いかと考えているんだ」

 

「丸腰だと戦闘力がガタ落ちなんは確かに問題やな」

 

森崎は、再び頷く。彼は、何かその様な状況に追い込まれた経験をしたのだろうか?まぁ、その辺りの事情を詮索するのはよそう。しかし、新しい魔法式の開発が難しいのと同じで実用に耐えうる武術を身につけるのも時間がかかる。そこで、一工夫。

 

「野球をやったことある?」

 

「少年野球なら少ししてたけど…」

 

◇◇◇

 

「これは?」

森崎くんが、真ん中に上下にスライドする箇所が二つある野球のバットを不思議そうに見ていた。

 

「カウンタースイングや!」

 

前回、太極拳の□の動きを部員達や桐原さんとやってみたがあまり好評ではなかった。わかりやすいと思って紹介した「フリチン打法」も長岡さん以外全然だった。そこで、フリチン打法習得用アイテムを用意したのだ。部費で。

 

先ずは、丹田の動かし方の説明をする。

 

『フリチン打法』の復習だ。

 

①↓

②→

③↑

④←

 

となる。④で元の位置、つまり①のスタート位置に帰って来る。

 

『フリチン打法』で説明すると①でバットを振る準備をする。(今回はステップなしの打撃フォームで説明する。)②でバットをボールに向かって振る。③でバットとボールが衝突する。④でバットを振り切る。ちなみに②の終わりにチン◯が内腿に当たるから『フリチン打法』と呼ばれる。

 

結論から言うとフリチン打法が出来ているかどうかは自覚しにくい。全裸でバットの素振りをしたらわかりやすいが、それでは変態だ。しかし、このカウンタースイングを使うと出来ているか出来てないかすぐにわかる。

 

僕は、カウンタースイングを比較的緩やかに素振りして見せた。 カチ。

 

次に、森崎くん。比較的速くて鋭くカウンタースイングを振った。 カチカチ。

 

「なるほど!」

一人うなづく長岡さん。そして、彼女はカウンタースイングを手にして素振りをした。 カチ。

 

今度は、他の部員も気づいた。成功スイングは、音が一回。失敗スイングは音が二回するのだ。

 

「メジャーリーガーのスイングに似ているな」

 

さすがは、少年野球経験者の森崎くんはすぐに見破れた。しかし、わかるのと出来るのは違う。

 

白石くんが、できた。彼は元々スポーツ万能なのでスポーツの動きなら微妙な違いを表現できる。

 

今回は、二回目だったので全員出来た。森崎くんも出来たので一安心した。

 

「これって、ピッチングにもあてはまらないか?」

 

森崎くんは、掴んだ様だ。その通り!太極拳の□の動作でバッティングだけでなくピッチングも説明できる。

 

①↓

②→

③↑

④←

 

①で左足を上げる。(右投げで説明する。)そして、左足をバッターの方に踏み出す。なので、左足を上げた時に丹田を右に移動しておかなければならない。

②で着地した左足に丹田が移動する。直線的に。

③でリリースする。

④で丹田が元に戻る。戻る位置で右足の形や動きが変わる。一例は、爪先まで後ろに向く。俗に言う『速球は右足で投げる』だ。

 

「四摂。もしかして、そのフォームで拳銃を投げたのか?」

 

「そやな!クイックモーションで、拳銃型CADを投げた。拳銃ちゃうで!」

 

「クロムモリブデン鋼は重いから拳銃型CADには向いてないぞ!拳銃には適しているが」

 

森崎くんは、僕がモブ男くんに投げつけた拳銃型CADが本物の拳銃だと疑っているらしい。森崎くんは、拳銃に詳しいようだ。(☜こういうのも伏線回収と言えるのだろうか?言えるのかも知れない。)

 

「拳銃のことは目をつむるとして、このスイングを実践に活かすにはどうしたらいいんだ?」

 

森崎くん。拳銃ではなくて、拳銃型CAD。お堅いぞ!風紀委員。

 

そこで、世間で良く見られる太極拳の技の見本を示した。攬雀尾 (らんじゃくび)だ。相手の攻撃をかわして転倒させるなどと説明されるが、実際にやってみると相手のバランスが崩れないので力任せか体当たりとなってしまう。

 

口で言っても伝わりにくいので、長岡さん相手に実演した。

 

「おお!」

後ろにひっくり返りながら、長岡さんは感心している。制服なのでラッキースケベ的なイベントは発生しない。パンツももちろん見えない。

 

「…」

森崎くんは、女の子を転倒させた僕に呆れている。そこ、注目するところじゃないから。

 

「師匠。試して良い?」

長岡さんは一回で掴んだらしい。

 

「ええよ」

僕は、比較的ゆっくり彼女に縦拳で中断で突いていった。

 

彼女は、僕の外側に移動して時には僕の突いた腕を取って、僕の腰背部に手を添えた。そのまま後ろから僕は前方に回されて投げられた。さっきの攬雀尾と逆方向だ。

 

「今のは?」

森崎くんが、思わず尋ねた。

 

「白鶴亮翅(はっかくりょうし )❤️」

可愛く言っても駄目ですよ!長岡さん。それ殺し技でしょ。どさくさ紛れに点穴をサービスしてくれている。

 

森崎くんは、何回か試したが今一つだった。すぐに端末を取り出す。

 

「カウンタースイングだな」

僕が頷いた時には、彼は注文していた。即断即決だ。値段の確認さえしない。社長の息子はさすがだね〜。

 

「10月30日の『護衛』頼むで!」

部室を出て行こうとする森崎くんに大切な事を念押しした。

 

「マテバでよければ!」

ニヤリと森崎くん。

 

彼は、あのシリーズが好きだったのか。

 

◇◇◇

 

「ふ、普通だったわよ!」

その夜に美波さんから着信があった。

 

「何が?」

 

「あんたが、どんなんやってしつこく聞いたんでしょっ!このヘンタイ!」

 

そういえば、僕は夏休みの終わりに彼女に◯ンコの状態を確認するようにアドバイスしていた。

 

「異常がないんなら、断食して欲しいんや」

僕は、真面目に答えた。

 

「わかったわよ」

彼女も怒りが収まった。

 

「月に一回か二回でもええから」

 

「…」

 

「お菓子もあかんよ」

 

「また、人の心読んだん?」

 

心を読むのは、それほど難しくない。むしろ道を得たあとはそれが当たり前となる。なので、悟りを開いた人物と付き合う人は一々反応しない方がいい。疲れるからだ。

 

そのうち、遠隔でも普通にわかるようになる。これは、道を得た人へのアドバイスだ。わかるからといって逐一伝えようとするのは控えた方が良い。本当に伝えなければならない事はあまり多くないからだ。

 

そして、道を得た師を持つ弟子になった人へのアドバイスでもある。自分の心を師に読まれるからと言って固くなる必要はない。師本人は、それが当たり前であり何ら特別なことではないからだ。

 

女子高生の◯ンコが、どうであろうと興味はない。ただ、断食ができる身体の調子かどうか知りたいだけなのだ。

 

 

「ところで美波ちゃん。10月30日に二高では…」

 

 

 

 

 

 

 

 




カウンタースイングはようつべでクーニンとかトクサンを見たりすれば把握しやすいと思います。

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