意識が高すぎて魔法科高校に入学したが劣等生だった。   作:嵐電

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入学編 7

担当さんから八卦さんが十師族の八代家ゆかりの人物だと誤解されているとの連絡があり長岡さんと書きます。長野さんでも長門さんでもありません。皆、間違えないようにしてね。僕は時々間違えると思うから。

 

さて、僕の中学生でもわかる魔法妨害魔法の説明は皆さんの心に映らなかったようだ。しかし、長岡さんのヤル気スイッチは入った。

 

「白石くん、なんでも良いから攻撃魔法使ってみて」

今迄、出来るだけ存在感を無くそうとしていた白石が長岡さんから突然声を掛けられてしまい彼は落ち着きを失った。これは、不味かった。彼は以前から長岡さんを苦手にしていた。と言うより恐れていた。長岡さんの経歴を下手に知っているのが原因だろう。

 

それにしても、今日の長岡さんは特別だ。目が青く光り始め金粉一粒一粒がまるで刃物か何かに思える。白石は、狼に睨まれた羊のように、蛇に狙われた蛙のようになったと思ったらいきなり窮鼠猫を噛む状態になってしまった。

武術家、特に本門が八卦掌である人物に殺気を向けるのは非常に危険だ。八卦掌の使手は早くて速いので殺気を向けて来た相手を文字通り瞬殺してしまい取り返しのつかない事態に発展する事が多いのだ。故郷に居れなくなって北京に逃げたりされた方も過去におられる。

 

白石の殺気を感知したと同時に僕は彼を突き飛ばそうとした。

 

しかし、何故か目の前に朝田さんが迫って来ている。彼女も白石に向かって、白石のCADに向かって突撃している最中だった。このままでは、白石が負傷する。腕の脱臼、骨折は免れない。一瞬、迷ってしまった。

 

朝田さんも僕と同じだった。眼前に迫る僕をどう扱うかで迷い、動きが鈍くなった。つまり、二人はお見合いしてしまったのだ。

 

「すまん。お前が殺されるのを止められなかった」

と僕は思ったが、長岡さんの蹴りは白石を襲わなかった。また、白石の攻撃魔法も発動しなかった。

 

満面の笑みを浮かべながら長岡さんが言った。

「実験大成功ね!」

朝田さんは、わざとらしくその場に倒れた。そして、足が滑っちゃたなどと言って照れ隠しに笑っていた。

 

朝田さん、もしかしてプロのボディーガードか何かですか?森何とかくんより絶対頼りになると思うよ。とは言わない方が良いのだろう。僕は意外に空気を読む質なのだ。

それと、白石のCADの操作の速さにも驚かされた。頻繁に比べて申し訳ないが森何とかくんと同じくらいの速さのマックドロー(?)に思えた。

 

八卦掌は地の気を良く感じその霊も良く感じるようになる。だから、天の気でサイオン波を豊富にして地を通して敵に作用させるとなれば八卦掌の掌門クラスならやり方さえわかればすぐに実行出来ると予想していたが実際その通りだった。

 

更に、この実験で朝田さんと白石は意外に実力が有るとわかった。今度から白石くんと書くとしよう。

 

それと僕の実力もバレてしまった。出来るだけ隠しておきたかったが仕方ない。どうせ、いつかはバレるのだから。

 

その後、複数人で長岡さんを囲んで一度に妨害魔法が発動出来るか試してみた。彼女曰く「8人までなら一度に出来そう」

 

涼爺様まで実験に参加して、CADが本当に機能しないのを体験されるととても喜んでくれた。

 

多分、涼野さんは、本物のお嬢様で爺さんは偉い人なのだろうと確信し表現を変えてみた。しつこいようだが僕は空気を読む質だ。モットーは長いものには巻かれろ!だ。あくまでもモットーだが。

 

◇◇◇

 

 

 神に至る道は無数に有る。その中で、一番手軽で才能が要らない方法は『神になる為に神頼みする』だ。旧約聖書に登場するアブラハムはその方法を歴史上もっとも早く実践したと有名だが、我国では歎異抄の法然が有名だ。(二人が本当に最初に「神頼み」したとは思えないが、有名なので取り上げてみた。)

 

ネットから拾って来た法然についての情報だ。

 

>もっとも、こうした法然の教えは自らを三学非器の凡夫とする強い意識から、自らの娑婆世界での解脱を諦めて浄土往生を志すようになった。だが、既存の宗派のやり方では往生は極めて難しいと考えて確実に往生できる教行を求め、その結果として専修念仏にたどり着くことになる。

 

一生かけて念仏を唱え死後に神の修行を始めれば良しとするならば、一日一回でも南無阿弥陀仏と唱えれば充分なのだ。念仏を唱えるのだから心が仏に向かわなければならないが、毎日やれば死ぬまでにはそのコツも掴めると断言出来る。ただし、天寿を全うするまで続けるのが前提となる。(もう少し期間を短縮できるが、今回それは延べない。)

 

ただし、これは一般人に当てはまる事柄だ。魔法師となれば話は違ってくる。目の黒い内に神の修行に入るベきだ。

一般人がトチ狂って何かを仕出かしたところで単独で出来ることはたかが知れている。しかし、魔法師は違う。未だに気付かれてないが大した魔法師でなくてもその命を上手くかけてしまえば戦略級魔法師と同じようなとてつもない現象を起こせる。

 

したがって、魔法師は人生の比較的早い時期に『心の欲する所に従えども矩を越えず』の境地に達するべきなのだ。

 

では、どの様に比較的早くそのような境地に至れるのか?

 

ネット情報が正しいとすれば法然は生前道を得ていなかったとなる。如来の本願に気付きそれを頼みに他力本願で進めれば浄土往生、つまり、死後神の修行を始められる。これを生前に開始するには、本願を自分がする方に回ることに気付けば良い。

何のことか良くわからない方は、新訳聖書の福音書の中のキリストのセリフを参考にすると良いだろう。彼は、迷える衆生に神の国に入るために自らが聖霊を遣わすと公言している。キリストは本願を立てる立場になることで娑婆世界での解脱を完成して行こうとして

 

!!!

眼の前に突然、司波兄が現れた。

 

「ああ、すまない」

自分の考えに埋没して呆けて廊下を歩いていた僕が100%悪いのだが、司波兄は即座に謝罪した。良い人だ〜。今度から、司波くんと書いてあげよう。

 

魔法演算領域は、無意識だとされその解析や研究は困難と言われている。凄腕の魔法師でさえ魔法演算領域の自覚は限られた範囲になる。

仮に、その無意識の領域を自覚出来るようになったとすればどうなるのだろうか?道を得るとか、輪廻の輪から脱する等は無意識の領域の開発を言い換えたものだ。興味深い事にこの領域を開発した人がどうなったのかの記録は少ない。世に聖典と呼ばれている書物には、それらが散見される。

 

もっと、身近な例をあげると今しがた僕とぶつかりそうになった司波くんがそうであると僕は確信している。

 

「名人は名人を知る」へっへっへっへっ。今、自分は下品な笑みを浮かべているかも知れないがお許し願いたい。

 

というのも、一連のこの流れで無意識の動きを試していたのだ。僕は、曲がり角の向こうにいるのは司波くんだと感じていた。

一方、彼は僕を感じられなかった!ふふふふ。

 

「あっ、戻って来た!」

涼野さんと朝田さんがEクラスの前に立っていた。彼女達は、長岡さんを昼食に誘いに来ているのだ。本来、一科生と二科生の棲み分けはハッキリしていて彼女達のように堂々と二科生を誘いに来る一科生は両方から目を付けられてしまうらしいのだが、全く彼女達は気にしてない。長岡さんの武徳と司波くんの影響力は本当に凄い。

 

「長岡さんなら、先に食堂に行ったと思うよ」

「ねぇ、師匠くんは、四葉の関係者?」

不覚にも返答に詰まってしまった。絶対に動揺したのがバレた。無邪気な質問を涼野さんにさせて反応を朝田さんに観察させる。なかなか高度なコンビネーションだ。そこで僕は、

「一体、何の話?」と何のひねりもない返答をした。

 

涼野さんの話によると、みんなが師匠と呼ぶのは(みんなではなく白石くんだ。長岡さんもだった。)苗字が四象とか四条だと思ったそうだ。僕が京都出身というのもそう思った原因らしい。京都は一体どんな所だと思われているのだろうか?

「それとね。魔法を使えるのを隠したでしょう?」

いえいえ、隠していません。入学してから真剣に考えて使えるようになりました。『3日で出来る現代魔法(基礎編)』をよろしく!ちなみに『10日あればいい!現代魔法(応用編)」も近日発売予定!

 

「だからね。もしかしたら、師匠くんって四葉の諜報機関の人なのかなぁと思ったの」

どう?私の推理凄いでしょう!的な顔になっている涼野さん。

 

これは意図的なのか、それとも本当にお嬢様にありがちな頭お花畑なのか?どちらにせよ涼野さんにもわかるように説明しておかなければならない。

 

 


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