意識が高すぎて魔法科高校に入学したが劣等生だった。   作:嵐電

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サブタイトル変更しました。


九校戦編29

お!そうだ。吉田くんに伝えておこう。少佐!端末貸して。

 

「吉田くん?決勝進出おめでとう!感覚同調ができるなら地球の芯に感覚同調して太極拳等の練習をすればすぐにうまくなるよ!じゃあ、決勝頑張って」

 

少佐が呆気にとられている。

 

◇◇◇

 

「小野先生!どうしたんです?こんなところで」

僕は、会場ゲートの近くで偶然に小野教員を見かけて声を掛けた。

 

「へッ?!」

小野教員は、必要以上に驚いていた。何か後ろ暗い事でもしているのだろうか?公務員だから、副業禁止ですよ!お小遣い稼ぎもバレたら怒られますよ。

 

「偶然ね!預かり物を手渡しに来たのよ。河原くんは、取材?」

彼女はすぐに気分を立て直した。ナイスリカバリー!?

 

「はい。そうです!」

 

「ご苦労様。実はね。司波くんに頼まれた新アイテムよ。だから、内緒にしておいてね」

 

「そうなんですか?だったら誰にも言いません!」

 

着信した。少佐からだ。

 

「出なくていいの?」

音は消しているのに、小野教員は気付いた。なかなかやるな。

 

『ピー何とかを練習してたら、白い鳥の羽がたくさん見えたの!天使の羽かな?』

 

「うん、天使の羽だと思うよ。また後で。一旦切るね」

 

いつの間にか小野教員は姿を消していた。なかなかやるな。まるで忍者だ。

 

でも、少佐から学び取った「水晶眼」で視るとあ~ら不思議…

 

「師匠。こんなところでどうかしたのか?」

背後から司波くんが声を掛けて来た。絶妙なタイミングだ。僕が何かに集中し始め周囲に注意を払えなくなるのを見計らったのだ。

 

「取材だよ。特ダネを追いかけているんだ」

 

「そうか、まあ頑張ってくれ。ところで、目の調子が悪いのか?片目を隠したりして」

 

「人工水晶眼で、探っているんだ。天然の柴田さんみたいにハッキリは見えないけどね」

 

司波くんが少し固くなった。やはり、水晶眼を警戒している。柴田さんの前で司波くんがほんの少し不自然な態度を取っているように観えたのは正解だった。彼には隠さなければならない何かがあるのが決定した。

 

「師匠も、古式魔法が得意なのか?幹比古や吉田先輩みたいに」

 

「僕は、古伝だよ」

 

「古伝?初耳だが、古くからの伝承があるのか?」

 

「古伝の宗教や禅や武術や魔術を現代魔法に活かした古伝魔法を今作成中だから、僕が初代。これはその成果の一つ、アストラル視力の強化、つまり人工水晶眼だ」

僕は、片目を隠したままドヤ顔になった。

 

「そりゃすごいな。期待しているぞ。古伝魔法。ところで、つけて来たのか?」

話が転がって来た頃合いを見計らって司波くんは突っ込んだ質問を出した。

 

「?」

僕は司波くんの「つけてきたのか?」の言葉の意味を理解できない態度を取る。彼の質問は意図的に省略されており何を答えても誰かを尾行して来たかそうでないかがばれる質問だ。うまいね。

 

「わからなければいい。取材頑張ってくれ」

そう言って、司波くんは会場に戻っていった。

 

僕は、姿を消した小野教員を探った。司波くんがまだ視ているからだ。油断も隙もない器用な人だ~。ほどなく小野教員は車で去ったとわかった。司波くんはもう僕を視てなかった。

 

これで、会場ゲートに僕が来たのは偶然で小野教員との約束通り司波くんが次の試合で使う新アイテムのことを秘密にしておく約束を律儀に守ったと司波くんも小野教員も思っただろう。二人ともなかなかの手練れだったが。

 

ようやくテンションが普通に戻ってきた。観戦に戻ろう。

 

公安と内情だけならノーヘッドドラゴンはやりたい放題だ。公安と内情は監視が主な任務だから。(攻撃は別動隊がするのが一般的。)しかし、もっと短気な連中が動けば状況は変わる。九校戦には国軍、しかも軍人魔法師。彼等はどう動くのか?とても興味深い。

 

それと九重先生って誰だろう?

 

◇◇◇

 

 三位決定戦が終わった。決勝は草原ステージだ。司波くんを徹底マークしている一条・吉祥寺組は勝率が上がったと喜んでいるだろう。

 

しかし、三高の残り一人の存在感なさ過ぎる。これが三高の弱点だ。三人しかいないのに一人が空気なんて有り得ない。もし秘密兵器として決勝に取って置いたなら逆に一条・吉祥寺組が断然有利となるが。

 

一方、司波くんはまだ本気を出していない。九校戦の前夜にテロリストが夜襲をかけて来たのを防いだ時に使った探知能力を決勝まで使ってないし、もっと凄いのを隠し持っている筈だ。陽気を目一杯取り入れた吉田くんは、地球や天心の力を借りれればもっと凄い力を発揮できるし、アスリート並みのフィジカルを持つ西城くんはゾーン*にまだ入って戦ってない。

 

以下「ゾーン」についての一般的(?)な説明。ちなみに流星人間とは何の関係もない。

 

[「気がついたら2時間も勉強していた」

「練習に熱中していたら日が暮れていた」

 

このように時間の感覚がなくなるほど、ある行為に没頭した状態を『フロー状態』(flow=流れること)と呼びます。

 

流れに乗っている状態、ということです。

 

フロー状態では、常時高い集中力を維持できているので、高いパフォーマンスが行えるだけでなく、勉強や練習であれば、身につくスピードも非常に高いのです。

 

『フロー』⇒『ゾーン』

 

「周りの人間がゆっくり動いて見える」

「ボールが止まって見える」

 

このような極限の集中状態を『ゾーン』と言います。

 

『ゾーン』に入った時に、多くの人が体験するのが、自分以外がゆっくり見えたり、視覚や聴覚が非常に鋭くなることです。

 

一流のスポーツ選手は意識的にこの『ゾーン』に入ることができると言われています。

 

一般人でも、交通事故に遭ったときなどに『周りの景色がゆっくり流れる』体験をすることがありますが、一流スポーツ選手は自分からその状態を作り出しているのです。]

 

要は、アスリートが競技中に経験する至高体験*の事だ。

 

至高体験  

『「至高体験」とは、個人として経験しうる「最高」、「絶頂=ピーク」の瞬間の体験のことです。それは、深い愛情の実感やエクスタシーのなかで出会う体験かも知れません。あるいは、芸術的な創造活動や素晴らしい仕事を完成させたときの充実感のなかで体験されるかも知れません。  

 

ともあれそれは、一人の人間の人生の最高の瞬間であると同時に、その魂のもっとも 深い部分を震撼させ、その人間を一変させるような大きな影響力を秘めた体験でもある といわれます。そうした体験をすすんで他人に話す人は少ないでしょうが、しかし、マズローが調査をしてみるとこうした「至高体験」を持っている人が非常に多いことに気がついたというのです。  

 

ここで大切なのは、いわゆる「平均的な人々」のきわめて多くが「至高体験」を持っており、その非日常的な体験が、「自己実現」とは何かを一時的にではありますが、ある程度は垣間見せてくれるということです。何らかの「至高体験」を持ったことがある 者は誰でも、短期間にせよ「自己実現した人々」に見られるのと同じ多くの特徴を示すのです。つまり、しばらくの間彼らは自己実現者になるのです。私たちの言葉でいえば、 至高体験者とは、一時的な自己実現者、覚醒者なのです。』

 

凄くたいそうな状態のような記述だが、座禅を一年程度練習するとできる。寝入ったわけではないのにあっという間に30分程度経っているのは、座るたびに体験出来る。毎日『ゾーン』あるいは、毎日『至高体験』だ。

 

「それより、天使の羽根…教えて」

少佐が、僕の袖を引っ張っておねだりして来た。

 

「背骨の上の方が伸びて来ると天の父とか天使に会えて、背骨の下の方なら母なる大地とか女神に会える」

少し乱暴な説明だがまあ良いだろう。

 

「やっぱり、天使の羽根だった!」

 

「少佐の頸椎が伸びて来たんだよ。ピーチェンがうまく打てた影響だね」

 


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