意識が高すぎて魔法科高校に入学したが劣等生だった。   作:嵐電

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サブタイトル変更しました。


九校戦編17

前回からの続きの話(ただし、シンゴジラではない。個人的にはゴジラが出現したら自衛隊は防衛出動ではなくて災害出動になると思うがこの話は次の機会に)

 

一条くんみたいな魔法師になるためには一条くんみたいな100年以上は持ちそうな背骨に自分の背骨を育てて行けばいいのだ。ここで、世間でいわれてそうな背骨の育て方を一つ紹介しよう。予め言っておくが、この方法では全く効果がないか身体か精神を壊す。

 

 クンダリニー半覚醒(小周天)法

 

 1 静坐し、軽く目を閉じて黙想すべし

 2 丹田に意を集め、腹式呼吸にて煮え立つ鍋を観想せよ

 3 下腹部に渦巻く熱と圧力が生じ、煮え立つ湯が湧き出すが如く感じるまで続 くべし

 4 沸き出す湯を会陰、尾閭、背中へ導くべし

 5  背中に昇りくる湯に意を集め、しばし瞑想すべし

 6 さらに上へ導き、泥丸に集めるべし

 7 泥丸にて煮えたつ湯気が渦巻きながら冷え、冷露となるまで瞑想すべし

 8 澄みわたる露を全身に降ろすべし

 9 熱となり、湯となった露が全身に染み入り満たすまましばし瞑想すべし

 10 丹田に意を集め、煮え立つ湯の泉にしばし瞑想すべし

 

 この法を行じる者は、たとえ身を損ない自らの熱に焼かれるも可也の決意を持つて臨むべし

 稀に3にて火龍が目覚め、大周天に至ることこれあり。

 

では、何が足りないのか?↑が可能になる『元気な肉体』にまずしなければならないのだ。太陽光に当たって体温をわずかに上げるのはその第一歩であるし、これをさぼるとエネルギーの循環しない箇所が体に多数残ってしまうので小周天が可能になる『元気な肉体』になれない。

 

ちなみに、簡単に『腹式呼吸』と書かれているが、これも自動運動での呼吸のことであり意図的に『腹式呼吸』をすると逆に緊張して体内に熱が生じなくなる。

 

『丹田に意を集め』の意を意識と解釈するのも危うい。どちらかと言えば心にニュアンスが近い。

 

一応つづきも載せておく。

 

 クンダリニー覚醒(大周天)法

 

 1 静坐し、軽く目を閉じて黙想すべし

 2 丹田に意を集め、腹式呼吸にて燃え上がる炎を観想せよ

 3 腹全体を渦巻く熱と圧力が満たし、燃え盛る火龍となつて動き出すを待つべし

 4 目覚めた火龍を会陰、尾閭へ導くべし

 5 尾閭にて火龍は渦巻く蛇に転じ、命の蛇として目覚めるべし

 6 荒らぶる蛇を御すは不可なり。ただ自ら天に昇るを待つべし。

 

 この法を行じる者は、たとえ身を焦がし死すとも可也の決意をもちて望むべし。

 

もっと言ってしまうと、準備ができたとハッキリとわかる現象がいくつかじつはある。一つは、「三時間程度座禅ができる」だ。部員や少佐とその仲間達に座禅を教えることになったので、おいおいこの私小説の中でもそれらを紹介して行くつもりだ。

 

まずは、自分の背骨を木に見立てて大木を育てるつもりで取り組まなければならない。すぐに功が成ると考えないほうが良い。草花を育てるわけではないのだ。

 

まずは、以下のようなレベルを目指そう!純陽の状態だ。その状態を詳しく書いているのが易経だ。

 

周易上經から

 

 乾下乾上 乾

 

 乾、元亨。利貞。

 【読み】

  乾は、元[おお]いに亨[とお]る。貞[ただ]しきに利[よ]ろし。

 

 初九、潜龍勿用。

 九二、見龍在田。利見大人。

 九三、君子終日乾乾、夕惕若。厲无咎。

 九四、或躍在淵。无咎。

 九五、飛龍在天。利見大人。

 上九、亢龍有悔。

 用九、見羣龍无首。吉。

 【読み】

 初九は、潜龍用うること勿かれ。

 九二は、見龍田に在り。大人を見るに利ろし。

 九三は、君子終日乾乾し、夕べに惕若たり。厲[あや]うけれども咎无[な]し。

 九四は、或は躍りて淵に在り。咎无し。

 九五は、飛龍天に在り。大人を見るに利ろし。

 上九は、亢龍悔有り。

 用九は、羣龍首无きを見る。吉なり。

 

 〔彖傳〕大哉乾元、萬物資始。乃統天。雲行雨施、品物流形。大明終始、六位時成。時乘六龍以御天。乾道變 化、各正性命、保合太和、乃利貞。首出庶物、萬國咸寧。

 【読み】

  〔彖傳〕大いなるかな乾元、萬物資りて始む。乃ち天を統ぶ。雲行き雨施し、品物形を流[し]く。大いに終 始を明らかにし、六位時に成る。時に六龍に乘りて以て天を御す。乾道變化し、各々性命を正しくし、太和を保 合するは、乃ち利貞なり。庶物に首出して、萬國咸[ことごと]く寧し。

 

 〔象傳〕天行健。君子以自彊不息。

 【読み】

 〔象傳〕天行は乾なり。君子以て自ら彊めて息まず。

 

 潛龍勿用、陽在下也。

  見龍在田、德施普也。

  終日乾乾、反復道也。

  或躍在淵、進无咎也。

  飛龍在天、大人造也。

  亢龍有悔、盈不可久也。

  用九、天德不可爲首也。

 【読み】

 潛龍用うること勿かれとは、陽下に在ればなり。

 見龍田に在りとは、德の施し普[あまね]きなり。

 終日乾乾すとは、道を反復するなり。

 或は躍りて淵に在りとは、進むも咎无きなり。

 飛龍天に在りとは、大人の造[しわざ]なるなり。

 亢龍悔有りとは、盈つれば久しかる可からざるなり。

 用九は、天德首爲る可からざるなり。

 

『潜龍用うること勿かれ。』とあるように、みだりに龍を使うのはよした方が良い。ちなみにこの状態は『道を得て』いる。なので、最低でも『道に入って』ないと読んでもさっぱりだろう。易経のこの箇所が上記の周天法の直前であるのがわかるのも準備が整った証の一つだ。

 

少佐が青い顔をしている。

「漢文は苦手…」

 

「大丈夫。基本、座るだけだから。理屈はわからなくても『背骨』を育てられるよ」

 

◇◇◇

 

九校戦五日目 、新人戦二日目。少し困った。大会スケジュールは以下の通り。姑息な手段で勝ち上がったと思われている光井さんがバトルボードに、明智さん北山さん司波さんがアイスピラーズブレイクに出場する。司波くんが担当するのはアイスピラーズブレイクなのだが、僕は光井さんの戦い方が気になった。

 

2095年8月8日(月) - 九校戦 - バトルボード(新人戦)の準決勝~決勝

2095年8月8日(月) - 九校戦 - アイスピラーズブレイク(新人戦)の予選~決勝

 

そこで、僕は主にバトルボードを少佐達は主にアイスピラーズブレイクを観戦して後ですり合わせる手配をした。

 

なぜ、光井さんの試合を見たいのか不思議に思う方がいるだろう。光井さんのプロポーションが露わになるウエットスーツが見たいとかではない。(本当は少しある。ただしエロい理由ではない。)

 

彼女の戦い方に注目している。昨日、わざと閃光魔法をカーブの手前で発動されたら魔法では防げないと僕等は公言した。その効果を知りたかったのが一つ。もう一つは、彼女の適応力の高さだ。彼女が僕の予想している通りならば、準決勝は予選より良いタイムを出すはずだし、決勝ではさらに良くなるはずだ。

 

彼女は、決して運動機能が非常に高いわけではない。しかし、目は良い。光学系魔法が得意なだけあってサイオンの流れを的確に読み取れる。なので、他の魔法師を参考にしてなんとなくその雰囲気に身体のサイオンの流れを合わせるのもおそらく得意だろう。

 

予選で、本番のバトルボードの選手達のサイオンの雰囲気をたくさん見れたから彼女はコツを掴めたはずだ。この推論が正しければ、次の準決勝も勝てる。

 

バトルボードの水路では、女子準決勝の第一レースが始まろうとしていた。三人の選手は、色の濃いゴーグルを着用していた。これで、作戦は成功したも同然となった。

 

光井さんは、スタートで出遅れた。閃光魔法は使われなかった。僕には、彼女は意図的にゆっくりとスタートとしたように感じた。おそらく仕掛けて来る。

 

スタンド前のゆるいカーブを通り過ぎて、最初の鋭角コーナー。一番手の選手が切り込んで…行かずにコースの中央を緩く走行する。一方、二番目に鋭角コーナーに突っ込んで来たのは光井さん。コーナーを攻める。減速も最小限だ。

 

光井さんは、あっさりとコーナーで一番手の選手を内側から抜いてしまった。鋭角コーナー直前で光井さんの閃光魔法を警戒して他の選手が慎重な入り方をするのは予想していたが、予想は外れた。

 

彼女は、光学系魔法でも暗くする方を選択したらしい。コーナー内側の進路が見えにくくなった他の選手は明るい水路を慎重に走行してしまう。しかも、幻惑されていると気がついていないようなのだ。

 

三番目の選手も、二番に落ちた選手も全てのコーナーを慎重に走行し続けている。光井さんとの差は開く一方だった。

 

再びの圧勝だ。しかも、姑息な手段で勝利したとみんな誤解している。しかし、彼女はスタートで出遅れた分を挽回して予選よりも好タイムを出している。

つまり、彼女は実力だけでも良い勝負ができる。そして、その事実を誰もわかっていない。決勝は、普通に走れば優勝できる可能性が出て来た。

 

「コーナーで閃光魔法を使わなかったのは、決勝のために温存したのかな?」

と、僕は他校の情報収集中の学生に聞こえるように呟く。

 

他校の情報を盗むのは、一応禁止されている。とはいえ、情報収集はどの学校も行なっている。いわゆる、公然の秘密と化しているのだ。スタッフの中に技術者以外の者が居たら、彼等は情報収集要員でもある。

 

ちなみに、少佐と僕は情報収集と陽動を担っていた。一高が連覇しているのは、実力者が揃っているのが一番の理由ではあるが少佐達のような情報スタッフの活躍も理由の一つなのだ。

 

読者の皆さま。今迄、黙っていて申し訳ありません。もう少し、お付き合い下さい。

 

少佐が、目立つ格好をして目立つ行動をしていたのはこうした理由があったからです。もちろん、彼女の趣味も兼ねていると思いますが。

 

「次こそ、コーナーでの閃光魔法かなぁ〜?」

 

僕は、目立つように大きく伸びをしてアイスピラーズブレイクの会場に移動した。

 

 


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