意識が高すぎて魔法科高校に入学したが劣等生だった。   作:嵐電

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入学編 5

司波兄は強い。彼は、相手の副会長にも周りの会長や風紀委員長に自分の実力を見せつけた上に副会長に怪我をさせないで勝ったのだ。八卦さんが言ったように手加減なしなら司波兄はもっと早く片付けられたはずだ。実戦の方が早いし速いし威力も大きくなる。つまり、実戦の方が簡単なのだ。

だから、実戦で敵を侮ってはいけない。実力が発揮しやすいのは敵も同じなのだ!

 

話が横道に逸れてしまった。兎に角、司波兄は強い。たくさん人を殺している。ただ、何か違和感が残っていた。

八卦さんもそうだ。白石情報によれば彼女は八人殺している。しかし、僕には数人に観えた。

しかし、八卦さんが教えてくれた「正体を視られないで殺せばその影響を受けない」でその謎が解けた。司波兄も八卦さんも敵に視られないで殺していたのだ。なので、彼女は殺した敵数人に視認されたことになる。

 

それならば、僕は人を殺してないと観られる!これで、あの霊視眼鏡っ娘の視野に入っても大丈夫だ。今日はなんて素晴らしい日なんだ!

 

         ◇◇◇

 

 新入生獲得活動なるものが始まっていたそうだ。二科生の僕は、ものの見事に無視されていた。Eクラスのトップスター司波兄は、さぞかし引く手数多だろうと思っていたが風紀委員になってまた一つ武勇伝を作っていた。まさにそこに探偵がいるから事件が起きるだ。

 

 Eクラスのトリックスターは、司波兄の武勇伝を事細かに報告してくれる。もはや、自分の正体を隠すつもりがなくなったのかも知れない。あるいは、白石本人または彼の上司が、このブログの有料会員かも知れない。それにしても、剣術部次期エースは情けない。殺す気がないから、やすやすと腕を取られる。美少女剣士の言う通り魔法無しで剣技を磨いた方が剣の腕は上がる。

 

 しかし、それを言うなら柳生や示現流を習った方が良い。最初の一太刀で敵を必ず斬る練習を徹底的にさせられるからだ。敵が近くても遠くてもとにかく一刀両断する。そんな練習を多く積めば、それなりに上手になるさ。

 

それと、司波兄の反撃の仕方も気になる。まるで、剣術部次期エースの魔剣が無効化されているとわかった上での対処をしている。文字通り触れただけで切れる刃物なら一秒でも早く敵の手から奪わなければならない。敵が手首をあらぬ方向に向ければこちらにその魔剣が届く可能性があるからだ。

なので、本来なら敵の武器を避けながら攻撃するか、敵の武器あるいはそれを保持している手を攻撃して武器を無効化するのがセオリーだ。何かカラクリがある。だから、セオリー無視の危険な対処ができたのだ。

 

「すげぇ~」白石が感嘆した。

「確かに、司波兄は凄い」僕は相槌を打った。

「いや、その師匠の解説というか分析が」

「これくらい京都なら当たり前の知識だと思うぞ」

「マジすか!」

「マジ、マジ、大マジ」嘘に決まっているだろ。*

 

*担当から

 

この小説の著作者は、実際は関西弁で話しています。しかし文字にそのまま起こすと読みづらくなります。その為、自動日本語翻訳ソフトを利用しています。ご了承下さい。上記の会話は、実際は以下の様なものです。

 

「ちゃう、ちゃう。合気道の初めに習う技はほんまにえぐいねん。柔道が禁止した相手の片腕を自分の両手で持ってぶん投げるんや。むちゃくちゃやろ。そやから、毎年どこかの大学の新入生が死んだり大怪我しとるわ」

「合気道って、凄いんだね」

「教えとる方がようわかってないのに教えとるのがあかんのや。バイタル合気道(投技編):当社より好評発売中:でも読めちゅーねん」

 

以上、担当からのお知らせでした。内容まで変化している?それは気のせいです。では、本編をどうぞ!

 

 部活動はどうしようかなと思いながら放課後1人でブラブラしていた。当初、帰宅部一択と思っていたが面白いクラブがあれば入っても良いかと考えていた。

魔法科高校だけあって、魔法競技を念頭に入れたクラブが多い。普通高校ならお馴染の野球部やサッカー部がここではどこで勧誘しているのかわからないほどだ。「目指せ!甲子園」とか「今年こそ、国立へ!」みたいな現実的な目標なのか儚い願望なのかわからないが、精一杯部員達が叫んで新入生を勧誘している姿を見かけても良さそうなものなのだが。

 

 魔法科高校のクラブ活動に限らず最近、スポーツが一般的に人気がなくなった。まず、スポーツに教育的な効果がないと統計的に明確になったこと、スポーツが健康に良いとする科学的な根拠がないと明らかにもなったのが原因の一つだ。

 これらが世に出たのは、日本では文科省の売国官僚がスポーツ関連団体を作って天下り先にしてた問題が第三次世界大戦前に徹底的に糾弾された時だ。世界でも東側陣営、特にロシアのドーピング問題を西側、特に米国が問題視して国際競技からロシアを追放していた。なので、極端な証明となっている。しかし、スポーツと教育と健康はリンクしていないのは事実だ。

 

それと、魔法が世に出てから今までのスポーツ、特にプロスポーツが陳腐に見られるようになったのも原因にあげられる。例えば、魔法を使えばもっと速く走れると観客が承知の上で陸上競技を見るのだから冷めた目で見てしまうのは当然だ。

 

 先日、たまたま野球中継を見て僕は思ってしまった。絶対に打てない豪速球を投げれば魔法を不正使用しているとすぐにばれる。しかし、自分の汗の摩擦係数をボールのリリース時にだけワセリン並みにすれば絶対にばれないスピットボールが投げられる。どうして誰もしないのだろう?

 

そう、このようなうがった見方をしてしまう視聴者が魔法が広く知れ渡った為に増えたのだ。これでは、昔のような熱狂はない。視聴者、観客には真似できない超人的なプレーが画面あるいはスタンドの向こうで繰り広げられていたからかぶりついて見ていたのだ。

 

 スポーツに限ったことではなく、人類の歴史を現代魔法は大きく変えた。産業革命の影響で王侯貴族や教会以外の資本家という新たな権力者が現れ、彼等が自分達の権利を主張して市民革命が起きた。今、同じ社会革命が起きつつある。新たに頭角を現した魔法師達だ。彼等は昔の資本家という市民の様に愚かでないから社会革命を起こして自分達の権利を拡大しようなどと企んではいない。(一部にはその様な不逞の輩が存在するのも事実ではあるが。)

社会革命と言ったが実際は権力の単なる移動なのだ。王から貴族、貴族から教会、教会から再び王、そして王から金持ち、金持ちから魔法師だ。

権力が移動する時に社会に混乱が生じる。犠牲者も出る。騙すもの騙されるもの。

 

今だ。僕は、闘技場に入る。剣道部の美少女剣士が1人になる機会をうかがいながら徘徊していたのだ。

 

「新入生ですね。入部希望者の方ですか?」美少女剣士が声を掛けて来た。

僕は観る。彼女を。オンリーマイレイガン。観ながら会話を開始する。

「実は、先日の壬生先輩の活躍を聞いて」僕はもじもじしながらたどたどしく喋る。

「剣道はした事ないのですが」

彼女の視線が僕の無印のエンブレムに向かう。彼女の心に司波兄が浮かび上がる。ビンゴ!僕は要領の得ない会話を打ち切る。

「司波くんは僕と同じクラスなんです。是非その時の事を教えて下さい」

彼女は、先日の出来事を話してくれた。何故か乗り物酔いの様な状態になった事まで。これで、わかった。司波兄は魔法無効化魔法を使えると。

 

僕は、適当に話を切り上げて闘技場を去った。

 

◇◇◇

 

「師匠、剣道小町こと壬生先輩をナンパしたってのは本当?」

一瞬、何のことか僕にはさっぱりわからなかったが昨日の事を白石は言っているようだ。ちなみに僕はナンパしたことはないが、ハニートラップには遭ったことがある。

「ナンパではなくて、調査をしていた」

白石がどこから昨日の僕の行動を知り得たのかを突っ込まずに、説明というか解説を始めた。白石は正体が僕にばれているのと自覚しているようなので一々それを問いただしたところで仕方ない。

 

 司波兄が10人以上の魔法師を相手にして、しかも死人を出さずに済んだカラクリだ。明らかに彼は剣術部の連中の魔法が発動しないとわかった上で戦っていた。その前に知りたい情報がもう一つある。

「白石。模擬戦で副会長が負けた時、司波兄はどんな魔法を使ったか知っているか?」

白石は一瞬迷った。これは部外者が知るはずのない情報だ。明かせば自分の正体は明らかになる。

「うわさでは、波長の違うサイオン波を同時に発して副会長を気絶させたとか聞いたけど」

と言って彼は少し不安そうな表情になった。

「ありがとう。司波兄はサイオン波を比較的自由に発せられるとわかった。これは、サイオン波に敏感な魔法師に浴びせれば気絶させられるし、使い方を変えれば魔法式がエイドスに作用するのを阻止もできる。」

「つまり、彼は妨害魔法を使える!」

白石の目が見開いた。言葉が出せなくなっている。

「そんな馬鹿な。信じられない」

白石の三枚目路線から外れたおふざけなしでの嘆息だった。

 

「信じられないなら、実験してみようぜ!」

「ちょっとまてよ。そんなことが簡単にできるのか?」

「僕ではないよ。サイオン波を広範囲に多量に発生し続けられる人に頼むんだ」

「師匠は知り合いに、そんな凄い魔法師がいるんだ?!」

「白石も知っている人だよ」

 

 

 

 

 

 


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