意識が高すぎて魔法科高校に入学したが劣等生だった。   作:嵐電

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サブタイトル変更しました。


一部、書き換えました。


九校戦編11

「宇宙飛行士に魔法師…」

少佐は呆気に取られている。僕の話に付いて行けなくなりつつあるようだ。

 

「でも、この知恵は少佐のおかげだと思うよ」

 

「?」

 

「少佐を助けた見返りのあの世からの知恵だから」

 

「そんな事あるの?」

 

「『君子危うきに近寄らず』は、何もしないで実現はしないよ。人知れず『徳を積む』から『危うき』から離れられる」

 

◇◇◇

 

第一高校、三日目の成績は男女ピラーズブレイクで優勝、男子バトルボード二位、女子バトルボード三位 。第三高校が男女ピラ ーズブレイクで二位、男女バトルボ ードで優勝という好成績を収めた為、両校のポイントは前日よりむしろ接近していた。

 

服部副会長と小早川さんは、妨害されなかった。しかし、総合得点で一位と二位の差が縮まった。新人戦の得点が重要になり、新人戦でも妨害工作が行われる可能性が強まった。少佐は、日中に考えた新人戦でも一高の得点を増やして優勝を確実にする方法(司波くんに出来るだけ多くの選手をアシストさせるや、負傷した委員長の代わりにミラージュバットに司波さんを出場させる等)を会長達に伝えに行ったと思う。

 

実際に少佐が会長達に言ったかどうかはわからないが、一高が三連覇を達成しなければ少佐達はかなりの損失を被る。その規模はわからないが相当なものだろう。一高優勝の為に、僕を九校戦にテキトーな理由をデッチ上げて連れてきたくらいだから。

 

「あいつら、使えん」

少佐が毒づいている。口をもぎゅもぎゅしながら。よく噛んで食べないと大きくなれないよ!

 

作戦スタッフ達の事だ。

 

新人戦を犠牲にして、本戦のミラージバットに力を入れようとする作戦が少佐の気に入らなかったのだ。

 

少佐は、ディナーのサービスとほぼ同時に僕の部屋に来た。一緒にディナーしようというのだ。当然のことながらワゴンを運んで来たのは『馬頭さん』、ワゴンに潜んでいたのは光学迷彩のQちゃんだ。

 

「もしかしたら、一高の優勝に妨害工作が行われていると彼等は知らないのでは?」

 

「考え過ぎだと鈴音に言われたのよ。あの女、馬鹿だわ」

鈴音とは作戦スタッフの代表者である市原鈴音生徒会会計のことだ。

 

「でも、司波くん達が詳しく調べてバトルボードのアクシデントは仕組まれたものだとハッキリさせたのでは?」

 

よく考えたら、司波くん達の調査は非公式に行われ、その結果を非公式な方法で知り得た少佐の話を理詰めで考える市原会計が信用する方がどうかしている。しかも、大会役員の中に裏切者がいるとする結論は更に受け入れ難い。

 

少し整理しよう。

 

大会四日目で本戦は一旦休みとなり、明日から五日間、一年生のみで勝敗を争う新人戦が行われる。ここまでの成績は一位が第一高校で三百二十ポイント、二位が第三高校で二百二十五ポイント、三位以下は団子状態の混戦模様。一位と二位の差が九十五ポイントとここまでは一高が大量リードを奪っている。

 

しかし、新人戦の成績如何ではまだまだ逆転もあり得る点差だ。新人戦で大差をつけて優勝すれば三高にも逆転優勝の芽が出て来るし、逆に新人戦で優勝できなくてもポイントで大差をつけられなければ一高は総合優勝に大きく近づくことになる。各校の第一目標は総合優勝だが、この様に新人戦のポイントも二分の一とはいえ総合順位ポイントに加算されるのだ。

 

それに、出場する一年生にとっては新人戦優勝こそが自分達の栄誉になる。気合の入り方は本戦に劣るものではないのだ。

 

「優勝はスタッフにも、恩恵があるわ」

 

それは、知らなかった。

 

「師匠も、一応公式なスタッフの1人だから一高が優勝すれば成績に加点されるよ」

 

それを最初に言って欲しかった。試験で0点にされた分を多少取り返そうと頑張ったかも知れないのに…

 

冗談はさておいて、得点状況から次に狙われやすいのはモノリスコードだ。

 

「今後は、預言?」

 

「残念ながら推理だよ」

 

モノリスコードは本戦優勝ならば100点、新人戦でも50点だ。頻繁にアクシデントが起きれば、大会役員側も不審に思い何らかの手を打つだろう。なので、得点が1番大きい競技をノーヘッドドラゴンは狙うだろう。

 

「それだけ?」

少佐は僕が預言をしなかったので、少し残念がっている。昼間に預言の実演を見せたのにそれだと認識できなかったようだ。以下のやりとりが天啓を得た瞬間、つまり預言が降った瞬間だ。

 

「あッ!」

「どうしたの?」

「今、降りて来た」

「何が?」

「知恵が」

 

少佐があからさまに落胆した。預言や異言や天啓にロマンを求め過ぎているようだ。

 

『異言(いげん)は、グロソラリア(英: glossolalia < 希: γλωσσολαλιά = γλῶσσα(glõssa 「舌、言語」)+ λαλιά(laliá 「声;言語、言葉、発話、説明、意見」)=「舌から発せられる声」)あるいはゼノグロッシア/ゼノグロッシー(英: xenoglossia/xenoglossy < ギリシア語で「異国の言語(聞き慣れない言葉)を話すこと」)の訳語で、いずれも、学んだことのない外国語もしくは意味不明の複雑な言語を操ることができる超自然的な言語知識、およびその現象を指す。

 

英語では、 glossolalia は主に宗教の分野で、xenoglossia/xenoglossy は主に超心理学の分野で使われる。日本では、超心理学に関する文脈で、区別の為に後者の異言を「真性異言」と訳す場合もある。当項目では、前者の宗教的な意味で用いられる狭義の異言について主に取り扱う。後者の超心理学的な異言については項目「真性異言」を参照のこと。』

 

まあ、こんな説明をされたらたいそうなものだと誤解するのも仕方ない。3分あれば習得出来る類のものだ。ちなみに預言は、

 

『預言prophecy

 

広く人類の種々の文化圏にみられる宗教的現象で,それぞれの文化によって多くのニュアンスの相違があるが,ある人物が一時的にその人格性を停止し,神もしくは神霊などの道具となって,その「神意」を民衆に告げること。突然,あるいは舞踏などの準備行為ののちに忘我状態となり,多くの場合幻想を伴って,いわゆる憑かれた者として,行為,言葉,音声など種々の媒介で「神意」を告げるが,これには多くの場合「解釈」が必要である。未来の出来事を予告する場合も多いが,必ずしもそれがすべてではない。前者は特に「予言」と記される。既成の政治,社会,宗教体制のなかでも行われるが,これと鋭く対立し,批判する場合も多い。預言の歴史的,典型的実例はユダヤ教にみられる。』

 

「神意」を告げる程度で忘我になっていたら、そのうち統合失調症になりそうだ。しかも、一々解釈が必要なら役に立たないと思う。これも、出来ない人が理解しないまま説明しているものだろう。

 

話を元に戻す。

 

「得点だけではないよ。森崎くんは非百家だろう?だから報復の恐れも少ない」

 

少佐は釈然としない様子だ。

 

「しかも、予選でアクシデントを起こせば三人を入れ替えて次の試合に臨まなければならない。三人を入れ替えるのはまず不可能だから棄権に追い込める。得点は0点だ」

 

突然、携帯端末が鳴った。

 

「美波ちゃん、元気?」

 

『あんた、明日暇?』

 

「報道だから、試合観戦でそれなりに忙しいよ」

 

『フーン…』

 

二高の河村美波さんは、僕が中学三年の時のクラスメイトで、魔法科高校を目指し寝食も共にしたりした間柄だ。彼女が何を言いたいかわかっているのに僕はいたずら心で気付かない振りをしている。

 

少佐が気を利かし、小声で囁いた。端末が拾えないくらいの小声だ。

「彼女、見に来て欲しいのよ」

 

『もしかして、そこに女の子達がいるの?』

 

僕は、肯定も否定もしなかった。

 

『まぁ、いいわ。明日、あたしスピードシューティングに出場するから見に来てね』

 

「わかった。でも、美波ちゃん。近くに彼氏がいる時に電話するのはやめた方が良いよ」

 

『余計なお世話』

 

少佐が、驚いている。光学迷彩のQちゃんも姿は見えないが動揺している。

「どうして、私がいるって彼女はわかったの?それに師匠はどうして彼女が彼氏の近くで電話しているとわかったの?」

 

「預言の賜物です」

 

 

 

 

 


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