意識が高すぎて魔法科高校に入学したが劣等生だった。 作:嵐電
新規読者獲得のためと飽きて離れてしまった読者を引き戻しすためにホモネタを扱ってみた。反響はあったが、評判はさほどではなかったようだ。『秀吉』とか『戸塚』みたいな学生は現実には存在しないので架空の人物を登場させるわけにも行かない。それで、苦し紛れに取り上げたのが前回のホモネタなのだ。
さて、真面目な話に戻る。第四次世界大戦についてだ。第四次世界大戦は、魔法師と非魔法師との戦争になると以前書いた。また、第三次世界大戦は反同盟と同盟(元大日本帝国と元大英帝国との同盟)との戦争だったし、世界大戦前の経済制裁で同盟側の勝利が確定していたとも書いた。
そして、僕は日本が第四次世界大戦でも戦勝国になるのを助ける為に行動しているとも以前話した。今、魔法師を軸にして国を再興し復讐を果たそうとしている国と魔法師はあくまで特殊技能のを持つ人物だとみなす国の色分けが始まっている。
米国は後者であり、魔法師をあまり信用していない。なので、魔法無しでも魔法師と戦える準備を常に怠らない。光学迷彩や盗聴や顔面認証はその準備の一環だ。
一方、我国は同じく魔法師を心から信用しているわけではないが、米国のような無限の予算はないのでいざとなれば魔法師を処理できる研究を深めている。ただ、単に魔法師を一括りにして敵とみなすだけでなく一個人と扱えるような体制を整えようとしている。
ようは、心から日本を愛する魔法師を増やすのと非魔法師(魔法を全く使えない人物を意味していない)でもA級あるいは戦略級魔法師を殲滅できる方法の開発だ。
これを一度に実現する方法の一つが、神になって行く過程を経てA級あるいは戦略級魔法師を凌駕できる魔法師になる方法を開発すればいいのだ。
別に誰かに頼まれたわけでもないが、僕が道を得た時に運命がその様になった。だから、魔法科高校しかも一高を選んだ。A級魔法師や戦略級魔法師レベルの魔法師に直に会えるからだ。誰がそうなのかは、想像にお任せする。
さらに、将来魔法は多少使えるが魔法師にはなれないであろう人物もたくさん存在する。いわゆる二科生だ。神系魔法師育成に相応しい人物が多く存在するのも好都合なのだ。
今回は、割と詳しく話したが少佐の反応は、少し薄かった。何か気になる事があるようだ。
◇◇◇
選手・スタッフ用テントの中は、慌ただしくしかも重い雰囲気だった。
「男子クラウドボールの結果が思わしくないの」
少佐は、すでに知っていたようだ。桐原さんの二回戦敗退は、関係者に少なからずショックを与えていた。
「男子は、全体的に戦前の予想より成績が良くないのでは?」
「そうなのよ」
少佐の口調も重たい。
一高の戦歴が悪いと少佐まで、大人しくなってしまったのは意外だった。そんなに九校戦に彼女が入れ込む理由が良くわからないのだ。愛校心?
少し、何かが引っかかる。
「何かいい方法はない?」
「ありますよ」
「あるの?!」
少佐が、食い付いてきた。
新人戦で頑張れば良いのと(当初、新人戦は計算に入れてなかったはずだから)司波くんに出来るだけ多くの選手の面倒をみさせる(七草会長が快調になったように「ゴミ掃除」だけでも効果が期待できる)と良いと僕は伝えた。
「それと、服部副会長に頑張ってもらいます」
僕は、少佐が気にしている人物の名前を出した。少佐が、目を丸くしている。
「師匠は、人の心が読める人?」
「読むつもりはなくても、結果的にそうなる事がしばしばあります」
「わかった。範蔵を復調させる方法を教えて!」
◇◇◇
どうも、少佐の副会長への入れ込み具合が気になる。純粋に選手を応援したい気持ちだけではなさそうなのだ。
『服部 刑部少丞 範蔵(はっとり ぎょうぶしょうじょう はんぞう)
百家支流ではあるが、無名に近い家の生まれ。実家は忍術の名門である服部とは別の服部家。学校には「服部刑部(はっとりぎょうぶ)」で届が受理されている』
とりあえず、副会長のプロフィールをもう一回読んだ。
『身長175cm、体重67kg 横幅はやや細身』
これは、あまり関係なさそうだ。
『本人の知らないところで密かに「ジェネラル(GENERAL)」と囁かれ、数字を持たない同級生から将来のリーダーと期待されている』
おっ‼︎これか?
少佐は、十師族のシステムに良い印象を持ってない。魔法師は、血筋に影響されるからと言って血筋で魔法師を固めてしまうのは新たな貴族階級を作り上げることにつながり兼ねないからだ。実際に十師族の日本社会に対する影響力は警察と軍中心に大きなものになっている。
荒いたとえになるが、第二次世界大戦前の日本の状態に近い。軍が日本の神から離れた為に負けてしまった戦争の前の状態だ。
少佐は、なんとなくナンバーズの危うさに気づいている。なので、ナンバーズ以外の有力魔法師(正確に表現するなら魔法師候補)に肩入れしている。
うーむ。どうも、それだけでもなさそうだ。単に副会長が少佐の好み?それも、違うなぁ。
◇◇◇
九校戦三日目。九校戦前半のヤマだと言われている。そして、少佐が気にしていた服部副会長のバトルボードの決勝が行われる日でもある。結果から書くと準優勝だった。
直前に七草会長が司波くんを呼んでいたので、例の「ゴミ掃除」をしたのだろう。
よほど、嬉しかったのか少佐が饒舌だ。昨夜、会長と副会長に個別に連絡して副会長から会長に泣きつくようにアドバイス(脅迫?)したそうだ。一方、会長は、「ゴミ掃除」をどうして少佐が知っているのか訝しがったようだが、副会長の復調につながると聞いてすぐに手を打った。
副会長は、これを機に女性に甘える術を学んで欲しい。なんでもかんでも男である自分が女性をリードしようとするのはどだい無理な話だ。それと、副会長は自分のルックスにもっと頼るべきだ。ハッキリ言って彼はモテる。ソースは1-E女子。それは、特技の一つあるいは才能の一つと自覚するべきなのだ。ぶっちゃけると可愛い顏だから会長が弄ってくる。ほぼ同じ実力の桐原さんを会長は、弄らない。
「それと、昨夜『自動運動』が初めてできたの」
少佐が、恥ずかしそうに教えてくれた。昨日、一緒に練習した太極拳の動功のことだ。
「これ、いつ悟れるの?」
「自動運動や自発動功は、すぐに六段階の境地になるものではありません」
ここからは、慎重に説明するべきなのだ。
「気を取り入れやすい身体になったので、自動運動が始まります。さらに気に慣れてくるとそれが総合的に捉えられるようになります。最初はエネルギー的な感じ方しかできないのですが、情報もわかるようになります。そして、全体的に把握し始めると聖霊や守護神や天使と呼ばれる人格的なものと捉えるようになります。さらに進めば、あの世の自分、つまり孔子の言った朋が来ます」
短くすると、自動運動がスタートだ。
「なるほど。ところでこれ、人に教えても良い?」
「吉田くんですか?良いですよ」
「……」
「どうかされました?」
「心を読まれるのは、あまり気持ち良くはないわね」
「そのうち慣れますよ!」
「そういうものなの?」
「そういうものですよ」
◇◇◇
次は、渡辺風鬼委員長のレースだ。バンダナで纏めたショ ートボブの髪を揺らし 、委員長は既にスタート姿勢を取っていた。準決勝は一レース三人の二レース。それぞれの勝者が一対一で決勝レースを戦うことになる。他の二人が緊張に顔を強張らせている中、委員長だけが不敵な表情でスタートの合図を待っている。
他人に弱味を見せないのが良いと彼女は思っているのだろう。少し気になるのは副会長もそうなのだがナンバーズではないが魔法力がかなりある人物達の心の余裕の無さだ。十師族等とそれ以外の血筋の違いなどは、実は大したことはない。ただ、幼い頃から魔法に慣れ親しんでいるだけの事なのだ。それが後年大きな違いを生んでいるのも確かではあるが。
用意を意味する一回目のブザ ーが鳴る。
どうも、変な感じがして僕は居心地が悪い。