意識が高すぎて魔法科高校に入学したが劣等生だった。   作:嵐電

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サブタイトル変更しました。


九校戦編6

ノーヘッドドラゴンは、幹部が魔法師だ。魔法師の数は限られているから非合法な仕事に従事するより合法的な仕事に従事したほうが普通は報酬が良い。

 

たとえが悪いが闇金で儲けるよりも、行員になった方が生涯賃金は多い。短期間に大きく利益を上げられたとしても、一回失敗するとその利益が消し飛ぶのはもちろんのこと自分の命さえ危なくなる。それが裏稼業の宿命だ。

 

それでも、実力のある魔法師は非合法組織に集まるというのなら何らかのインセンティブが必要となる。今のところ、ノーヘッドドラゴンの幹部になるとどのようなインセンティブがあるのかわからないが、まずはかなりの収入があるはずだ。

 

とはいえ、そのバックを調べて資金を枯渇させれば割に合わない活動となり活動自粛に追い込まれる。シーシェパードと同じように。あるいは取り締まりを厳しくして危険度を高めてやればリスクに見合わない仕事になり、やはり活動停止に追い込める。これも、シーシェパードと同じだ。

 

「師匠は、ノーヘッドドラゴンのバックはどこだと考えているの?」

 

「日本の魔法師が潰れて喜ぶのは、日本に敵意を抱いている国だよ」

 

「大亜とか新ソとか?」

 

「そうだね。他にもあるけど。第三次世界大戦で戦敗国になった国は多かれ少なかれ同盟を敵視しているよ」

 

シーシェパードとノーヘッドドラゴンの関連を一通り話し終えた。

 

「師匠、見たい競技があるの」

少佐が、席を立った。

 

◇◇◇

 

抜きつ抜かれつの接戦で会場は、大いに盛り上がった。特に女生徒の歓声と悲鳴は凄まじかった。男子バトルボード予選だ。一高は、服部副会長が何とか勝ち残った。

 

会長や委員長の圧倒的な試合を観戦した後で、服部副会長の試合を観戦すると勝てて良かったとしか言いようがない。あのサイオン量では、司波くんに秒殺されるもの納得だ。いや、今の副会長なら瞬殺だろう。おっとこれはオフレコだった。

 

少佐は、押し黙っている。

 

「まずいな」

彼女は独り言のように言った。

 

確かに、一高の男子の調子が上がらない。バトルボードで勝ち上がったのは副会長だけなのだ。しかも全くの余裕無し。

 

少佐が、服部副会長に熱い(?)視線を送っている(?)

やはり、少佐も年下が好きなのだろうか?会長と同じように。

 

「……」

少佐が水晶眼まで駆使して服部副会長を視ている。どうも、好意とは無関係のようだ。

 

「師匠、服部は何をあんなに悩んでいるの?」

 

少佐があまりに熱心に視ているので僕も観てみた。

 

「女でしょう」

 

「はァ?!」

 

「今回は、深く観れてないのですが彼の心に負担をかけているのは女です」

 

副会長は、プライドが高く自信過剰な性格だが意外に謙虚な面もある。模擬戦で負けた司波くんの技量を認め技術スタッフに司波くんを推した一人になっている。

 

しかし、それは同性に対してだ。彼は典型的な男尊女卑だ。(一応、いい意味で捉えて欲しい。)なので、男性は女性を守るのが当たり前なのだ。

 

副会長が好きな会長はA級魔法師レベルだが、少し抜けたところがある(ように見える)のでたとえ、魔法力で劣っていても守ってあげなければと思える。

 

実際に一高選手団を乗せたバスがテロに遭った時、会長は寝ており、まさに守られる立場になっていた。委員長が、指揮を執って難を逃れているが実際にバスに突っ込んでくる乗用車を止めたのは会頭だった。

 

「師匠。話しの途中で悪いけど、まるで見ていたように話しているけど、あの時私達と一緒のマイクロバスに乗っていたよね?」

 

「ちょっと分身してました」

 

「師匠、もしかして何でもありの人?」

 

「分身は、過去に戻れれば結果的に同じ時間帯に意識体が複数存在したことになっているだけだよ」

 

「それって、すごくない?」

 

「少佐も、そのうちできると思うよ」

 

「本当に?」

 

話を戻そう。突っ込んでくる乗用車を止めたのは会頭だった。しかし、それを可能にしたのは司波さんだった。颯爽と名乗り出て乗用車の炎を消して会頭が止めやすくした。

 

副会長は、会長に代わって現場指揮を執れなかったし決定的な仕事もできなかった。彼のいい意味での男尊女卑は崩れ、同時に自分に自信がなくなりつつあるのだ。

 

「服部は、どうしたら立ち直れるの?」

 

「女が原因なら、女に解決してもらうのが一番」

 

「師匠は、何でもわかるのね」

 

「何でもは、わからない。観てわかることだけだよ」

 

◇◇◇

 

分身について補足しておこう。以前、八卦掌の長岡さんと話していたときに虚数で死のエネルギーを表そうとしてアインシュタインの特殊相対性理論を用いたことがある。

 

『複素数の平方根は複素数だから、T=t/√1-v²/c²において分母の平方根がマイナスになるようなvを取るとTはマイナスになる。つまり時間を逆転できる。極端な場合、死んでも生き返る。』

 

上記は、身体ごと全てで時間を逆行した場合を想定している。これを意識だけ時間を逆行して過去に移動するとしよう。その時間には、過去の自分も存在している。

 

具体的に話すと、ホテルに着いて僕は自分の部屋で座禅をした。そして時光トンネルを通って少し前の過去に移動した。移動先は、一高選手団がテロに遭った時点だ。

 

その時点の僕は少佐達と一緒のマイクロバスに乗っていた。つまり、その時点では選手団のバスに存在する意識体だけの僕とサブスタッフ用のマイクロバスに居る肉体を持つ僕が同時に存在しているのだ。

 

この作業を繰り返せば、とある時点に複数の僕が存在するのも可能になる。実際にそれを実行している人がそこそこ存在する。

 

読者の知り合いのおじさんが、たまに影が薄くなっている時があるかもしれない。その人はその時間帯に分身して人知れず悪の秘密結社と戦っている可能性だってあるのだ。ほとんど0%と言っていいだろうが。

 

それと、読書の皆様にお知らせがあります。出版社との契約を確認したところ期限は三年でした。これで、留年しようが放校されようが三年はこの日記もどきの私小説は続きます。いわば『余命三年時事日記』となったわけです。(『中学生日記』で書こうとしたら大人の事情で変更となり『中学一年時事日記』、『中学生二年時事日記』、『中学三年時事日記』となった件は以前書いた。)

 

これからも、好き勝手できることになりました。途中で主人公の僕は高校生から社会人になっているかも知れません。それでもこの私小説は続きます。ただし三年間の期限がありますが。

 

今後とも、「河原真知』をよろしくお願い致します。ついでに『氷室雪絵』もご支援の程よろしくお願い致します。ありがとうございます。皆様の暖かいご支援、心から感謝しております。

 

このまま、選挙に出ようか?今から、種を撒いておけば被選挙権を得る頃には当選可能な支援者が集められそうだ。

 

「師匠。もし、食うに困ったらウチに永久就職するのも考えてね」

珍しく少佐が視線を合わさないで言った。

 

「ありがとう。考えておくよ」

 

 

◇◇◇

 

 

九校戦二日目。司波くんが急遽、七草会長の出場するクラウドボールのサポートをするとの情報を得て僕は観戦しに来た。会長が勝つのは見なくても良いくらいだが、司波くんがどのようなサポートをするのかはすごく興味があった。

 

突然、彼方からのリクエストがあっても応じられるように比較的空いている観客席に座った。少佐は来ていなかった。珍しい。司波くんの会長サポート情報は、少佐からだった。なので、少佐も観戦に来ると思ったのだ。

 

司波くんと会長の会話は聞こえない。この距離では当然の事だ。会長がクーラージャンパーを脱いで司波くんに手渡した。司波くんが会長に何か言っている。「そんな格好で出場されるのですか?」的なことだろう。

 

会長が、普通のテニスウエアのような格好だったからだ。テニスと違ってクラウドボールは九つボールがコート内に入る。僕は、過去の試合の動画を見た程度の知識しかないが、かなり過激な競技だと認識している。会長はプロテクターを着ける様子もなかった。

 

それどころか、会長はラケットも用意していなさそうだ。

 

のんびりと柔軟体操を始めた。背中を司波くんに押してもらっている。柔軟体操が終わると司波くんに立たせてもらった。

 

一体、何のサポート?

 

司波くん、いらなくね?

 

 


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