意識が高すぎて魔法科高校に入学したが劣等生だった。   作:嵐電

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誤字脱字修正。


入学編 4

さっきの話、続きます。本当は、下心もあって解決法を出し渋り少し八卦さんと下校デートをしばらくの期間楽しもうとしていた。しかし、紳士(八卦さんの背後に控えていた方)が僕に憑いて来たのでそうは言ってられなくなった。解決策を何とか捻り出し一刻も早く帰ってもらわなければ。

 

 そこで、走圏(円周を歩く練習)と単換掌しか知らないが、先ずは八卦掌の練習をしてみた。いきなり少女漫画の一コマ花々を背負ってヒロイン登場金粉現象ができてしまった。しかも匂い付き!尹福すげ~。めでたく解決法もわかりました。

 

紳士はいつの間にか消えていた。解決法は明日、八卦さんに伝えるとして余った時間と行数をどうしようか?

 

そこで、「三日でわかる実践現代魔法(基礎編)」を企画してみた。

 

とりあえず、剣術なら兜割りができる程度、中国武術なら伝人クラスを対象にした。今時、魔法科高校で石を投げれば当たってしまう程度に存在する極平均的な人物のレベルに合わせてみた。

 

まず、太陽光に当たる。休憩しながらで構わないので熱中症にならない程度に当たる。木々の多い公園などでやれればなお良い。余談だが、熱中症は百年前からある急性の病気だが未だに原因がわからないとされている。

原因は、光の取り入れ過ぎだ。通常の身体のエネルギーレベルよりも高くなりすぎてブレーカーがトリップしたと考えばいい。なので涼しい場所で休んで水分補給をすれば収まる。

 

それを、三日間続ける。本人に自覚があろうがそうでなかろうがこれで先天の気が増えサイオンも沢山使える身体になった。あとは、できるだけ工程の少ないと感じる単一系魔法を実践すると良い。ありあまるサイオンが技術の未熟さや生来の欠点などを覆い隠してしまうだろう。

 

だいたいこんな内容だ。自分の経験と八卦さんに明日説明する解決法の基ずいている。

 

 

                ◇◇◇

 

 

「おはよう!」いきなり背後から挨拶された。今日も全く気配のない八卦さんだ。登校途中にこれは心臓に悪い。「第一高校前」とは全くひねりのない駅名だと思っていたところだった。昨日のように路傍の石扱いされるのは癪だが気配なく声を掛けられるのも勘弁してほしい。

 

「解決法、思いついた?」昨日、彼女から人生相談を受けて帰宅後五分で思いついた解決策を期待に胸を膨らませた彼女に僕は披露することにした。彼女は意外に巨乳だった。あの切れやすい眼鏡娘と同じボリュームだ。「どこみてんのよ!」とは言われなかった。彼女は予想以上に男慣れ、もっと言えば男の視線慣れしているとハッキリした。それはそうとして、まずは返答しなければならない。

 

「うん。今度の実習で、実習室のCADに触れないか指先だけ触れるようにしたらいいと思うよ」

「?」

傍線とそれに接する黒点の目で彼女が首をかしげる。

 

路上でああだこうだと説明するのが面倒臭くなって来た。このまま二人で昨日の茶店に行こうかと思った。

 

「八卦さ~ん」

「おはよう~」

二人の女子が近づいて来た。

「あれれ~、お取込み中だったかなぁ」

片方のモブキャラ子(美少女だけど)がくだらない質問をしてきた。僕は急いで否定しようとしたその時、後ろから花の香が漂って来た。

「違うよ。A子、失礼だよ」

少女漫画版花々背負ってヒロイン登場の八卦さんに変身して即答した。今回は睫毛も長くなっている。

「邪魔しちゃ悪いよ。A子」

残りのモブキャラ子(こいつも美少女だ。しかも可愛い。なんか癪に障る)が余計な気を回している。

「邪魔じゃないよね。僕くん?」

君の瞳は1万ボルト!反論を許さない瞳の輝きで八卦さんに同意を求められた。絶縁をしなければ電気事業法違反だぞ。30ボルトを超えれば絶縁しなければならない。相槌を打つだけでは能がないので僕は真面目に答えた。

「問題ない。八卦さんと今「三日でわかる実践現代魔法(基礎編)」について話し合っていたんだ」

と大真面目に僕は答えた。モブキャラ子達に笑われた。

 

「彼は道士よ」と八卦さんが呟いた。その途端、モブキャラ子達の態度が変わった。そこで、僕は手短に現代魔法を古典魔法に近づけるために必要な魔法演算領域、エイドス(イデア)と道を得る、解脱、神の国との関係を話した。

モブキャラ子達は真剣に聴いていた。

 

彼女達に理解はできなかったと思う。しかし、心に写ったと信じたい。一科生が一過性だと困る。死の床で私を求めてくれれば浄土往生させよう。アーメン。

 

 

             ◇◇◇

 

 

「驚天動地だ」

教室に座るや否や声を掛けられた。モブキャラ男だ。大げさな奴だ。関東大震災が再び起こるとでも言うのだろうか?

「おっと、いきなりボケでかえすか?さすが関西人は笑いの才をナチュラルに発揮するな。俺の魔法科高校でのトリックスターの座は三日で陥落だ」

こいつは一体何が言いたいのか?

「どうやって、1-Aのあの二人と知り合いになったんだ?」

どうもこうもない。二人は八卦さんの知り合いだ。

「もしかして、あの二人のことを知らないのか?」

 

段々、煩わしくなってきた。モブキャラ男の話をまとめると1-Aの鈴何とかさんと朝何とかさんは光何とかさんと北何とかさん並みの有名人らしい。どうして有名なのか色々説明してくれたがもう忘れた。興味のないことは、すぐに忘れる。これが僕の「ノイマン方式」だ。

 

「でも、あいつは止めとけ」

もう話は済んだと思っていたがまだ続いていた。しつこい男は嫌われるゾ!早過ぎるのもダメだが。

「そこで下ネタ!参ったよ。でもこれはマジな話。可愛いから仲良くなりたい気持ちはわかるが、八卦さんは魔法師を殺めてしまったからここに入らされてい」

僕は話を遮り尋ねた。

「何人、殺った?」

「く、詳しくは知らないけど、八人だったかな。おい!ちょっとまてよ」

僕は、席を立って八卦さんのほうに歩いて行った。

 

「八卦さん、人を殺してもその影響を受けない方法を知っている?」

「姿を視せないでやればいいの」

彼女は平然と答えた。僕は礼を言って席に戻った。

 

「白石、始業時間だぞ」

「お、おう」

顔面蒼白になった白石が自分の席によろよろ戻って行った。

 

白石、お前スパイに向いてないよ。まずは、殺気を正しく感じることから始めたら良い。

 

 

                ◇◇◇

 

 

 朝の一件で白石は僕に近寄らなくなると思っていたが、性懲りもなく話しかけて来た。

「師匠。昨日の『模擬戦』の話知ってる?」

何故か、白石は僕を師匠と呼び始めた。本人曰く「関西人には笑いでは敵わない。だから、学ぶことにした。俺って向上心の傾きが大きいから」だそうだ。確かに笑いの才能はあまりないようだ。

 

「知らない」と僕が答えると白石は、入学以来無敗の副会長服部半蔵(影の軍団?)が司波兄に瞬殺されたと言った。僕があからさまに興味を示すと彼は得意げに語り始めた。

 

 ことの発端は司波兄が風紀委員長に指名されたのに副会長が反発して司波妹の悪口まで言ったらしい。切れた司波兄が模擬戦を副会長に申し込み生徒会長が承諾、そのまま第三演習室での非公開試合となった。

 10メートル離れた距離で始まり5秒で勝負が付いたそうだ。

 

「10メートルを5秒?」

「おうよ!」

「だったら、副会長は対人戦闘はかなり苦手だな」

「はぁ!?」

 

納得のいかない白石に僕はサルでもわかるように説明した。100メートルを10~12秒程度で走れるなら10メートルは1秒で移動できる。その走力があればスタートにかかる時間は0.2秒以内。敵に視認されたと感じた瞬間に姿勢を低くするなり跳躍するなり走路を変えるなりしても、ロスタイムは0.2程度。合計1.4秒。残り3.6秒で至近距離から攻撃魔法を放てば余裕で勝てる。たとえ、魔法を使わなくても刃物で刺すなり銃で撃つなりしても勝てる。簡単な理屈だ。

 

彼は、頭を抱え込んだ。

 

「腑に落ちないのなら今から副会長か司波兄に本当の事を聞きに行こうか?」

白石は朝の僕の行動を思い出したのか止めてくれと唸った。

 

白石。そこはわざとあおって僕と一緒に司波兄か副会長に訊きに行くべきなんだよ。諜報活動したいなら。それで、僕を含めた三人の実力がハッキリするだろう?だから、僕はここで話を終わらせるつもりはないよ。

 僕は、顔色が土色になった彼を八卦さんの前まで引っ張って行き「模擬戦」の話をさせた。

 

「で、八卦さんなら10メートル離れた相手を何秒で倒せるかな?」

僕は明るく質問した。

「そうね。手加減無しなら1秒かからないよ」

彼女は明るく答えた。いつもより金粉が余計に降ってます。

 

白石はその後気分が悪いと言って保健室に行った。良かったな、白石。これで、副会長と司波兄と八卦さんと僕の対人戦闘能力があらかた判明しただろう。きっと上司に褒められるよ。

 

ただ、非公式の「模擬戦」の内容を第三者がどのようにして知り得たのか?そこを突っ込まれた時、奴はどう対処するつもりだったのかを試すのは勘弁しておいてやる。色々貴重な情報をくれたしな。これからもよろしく!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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