意識が高すぎて魔法科高校に入学したが劣等生だった。   作:嵐電

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サブタイトル変更しました。


九校戦編4

「渡辺だけ仁王立ちだな」

少佐がため息をついた。僕は、ガンバスターを思い出した。

 

「師匠の言う通り渡辺は随分と肉体を鍛えて来たようだな」

 

「魔法を発動して脾臓を鍛えるのは、頻繁にはできませんから、筋肉を鍛えて血をたくさん循環せざるを得ない状況を作り出したようですね」

 

「渡辺は、知っているのではないのか?」

 

「知らないと思いますよ。委員長は、千葉道場くらいしか通ってないはずですから」

 

「師匠は、千葉道場のレベルを低く見ているのだな」

少佐がイタズラっ子のように笑った。

 

「実際に、低いですよ。柳生や示現に勝てませんから。特に柳生は最近、最終段階の密教まで修める者が出現してます」

 

「密教?」

 

「弘法大師の系統がバックですよ」

しかも…と言おうと思ったが止めておいた。もう直ぐスタートだ。

 

「それは、凄そうね」

 

『用意』

スピーカーから合図が流れる。

 

「始まりますよ」

 

空砲が鳴らされた。

 

試合経過を書こうにも、渡辺風紀委員長の圧勝で書くべきことがほとんどなかった。スタート直後の他校の生徒の妨害魔法をクリアするとあとは独走だった。

 

「色んな魔法を組み合わせている技術は高いが、」

少佐が言い掛けたが、言葉を濁した。

 

「出力と持続力に不安があるのでしょう」

 

「みたいだな」

少佐が自分の脾腹を撫でている。

 

「『創意工夫を凝らした小魔法は、少し工夫しただけの大魔法に勝てない』でしたっけ?」

九島閣下のモノマネをしてみた。

 

少佐が笑った。

 

「サイオン量を増やす話に戻します。サイオンの循環と先天の気の循環と血の循環が関連しており、血の循環を良くする為に脾臓の造血と貯蔵作用を説明しました。本来、造血は骨髄、送り出しは心臓です」

 

じつは、肝臓にも造血機能がある。

 

『骨髄での造血が開始されるまでの間、肝臓と脾臓で造血されている。ヒトの場合、出生後は肝臓で造血されることはないが、何らかの理由で骨髄での造血が障害されると、肝臓での造血が見られることがある(髄外造血)。』

 

「結局、サイオン流量を増やすには骨を含めて全て内臓を鍛え直す必要があるのだな」

 

「ぶっちゃければ、その通りです」

 

少佐が呆れている。

 

「ちょっとしたアイディアを創意工夫と表現したところで単なる付け焼き刃、あるいは奇襲の類です。他を圧倒する本当の実力を身に付けるべきです。たとえ時間がかかっても」

 

「そうだな。あらためてよろしく頼む」

少佐がペコリとお辞儀をした。

 

「よろしく頼まれました」

僕は、胸を張ってみせた。

 

「内臓を鍛えると言っても、きつい運動をしなければ行けないことはない。自律訓練法を例に挙げれば…」

 

『第3公式

心臓が静かに打っている。

第4公式

呼吸が楽になっている。

第5公式

お腹が暖かい。』

 

これら三つができると良い。特に第5公式は脾臓、肝臓、腎臓の機能を高めてくれる。

 

「ところで、師匠はどんな練習をしたの?」

 

「主に、座禅と内家拳」

 

「私に、できるかしら?」

 

「できる!できるとも‼︎」

僕は立ち上がった。

 

そして、大袈裟に身振り手振りを加えて語り、最後にスタンドの最後列の方の空を指差して言った。

「摩耶。戦略級魔法師を目指せ!」

 

少佐は、スタンドの最後列の方に視線を向けた。

「なるほど。わかった。目指すわ」

 

観戦スタンドの最後列の方から、千葉さん達の笑い声が聞こえた。

 

◇◇◇

 

少佐は、疲れたので部屋に戻った。僕は、昼食を取りにホテルに戻った。ホテルの中で体格の良い男性やいかにも企業の秘書でもしています的な女性に出くわした。軍人やスパイだ。彼等にはもう少し正体を隠す術を学んで欲しい。

 

観戦スタンドには、公安らしき人物も数人見掛けた。いずれも魔法師だろう。対魔法師テロリストに非魔法師は太刀打ちができない事になっているからだ。僕には、そう言って逃げているだけにしか見えない。

 

実際に、光学迷彩のQちゃんは魔法を使わないで現代科学の力でその任務を果たした。懇親会で九島のいたずらに引っかからなかった者は五人よりも多かったが、Qちゃんに気付いたのは皆無だった!

 

これが、本当の教訓だ。

 

奇襲や初見の攻撃でやられるのは、ある意味仕方ない。問題はその後だ。直ぐに対応策を講じて同じ手に引っかからないようにする事と敵の使った攻撃を採用してすぐに反撃する事が大事なのだ。

 

すでに、一高選手団のバスと九高戦選手を狙ったホテルにテロを仕掛け、

 

アレっ?

 

あれれれ〜

 

違う。九校戦を狙ったテロの一環で一高を狙ったと思っていたが、そうではない。テロリストの狙いは一高狙いだ。一高に対する悪意や殺気がほとんどないので気付けなかった。それにしてもテロリストの目的がよくわからない。

 

困った事に、悲惨な事件が起こらないとわかってしまっているのでテロリストの動機を探るモチベーションが上がらない。彼方の自分もこの件で訪れる兆しがない。

 

魔法に慣れると魔法に依存し過ぎるようになりやすい。しかし、魔法を使えない時に何もできないのは困る。

そこで、単なる推理を試みる。憎しみや悪意や殺意がほとんどないのに一高を狙うのは、単なる利益の為だろう。つまり、金の為だ。しかし、一高にテロを仕掛けて儲かるビジネスが果たしてあるのだろうか?

 

クジラを守るとうそぶいて日本の船に海賊行為を仕掛けていたシーシェパードみたいな連中は、寄付金や活動資金を集める為のデモンストレーションとしてテロを仕掛けていた。一高を狙って活動資金が集まるとは考えにくい。

 

思考が行き詰まった。

 

◇◇◇

 

「身体、大丈夫ですか?」

 

「少し、寝たから大丈夫」

少佐が笑った。今度は、百年位前に流行ったと思われる女子高生の制服らしき服装だ。スタンドは、満員だった。その中でも彼女の服装は目立つ。本物のニーハイは、僕も初めてみた。ただ、魔法でも使わないとずり落ちてしまう気がする。百年前はどうやってずり落ちないようにしていたのだろうか?

 

「ところで、少佐。一高を狙っているテロリストの事を知ってますか?」

 

「ノーヘッドドラゴンの事?」

少佐は、知っていた。考えてもわからないことは人に訊くのが手っ取り早く答えにたどり着く方法のひとつだ。

 

『』

 

少佐の話をまとめるとざっとこんな感じだ。これおかしいと思わないのだろうか?こんな組織が、多少儲かるからとしても一高にテロを仕掛けるだろうか?

 

「そう言われれば、おかしいわね」

少佐も小首を傾げている。

 

「魔法師は高収入なのに、そんな犯罪組織に就職して何が楽しいのかも今一つ理解に苦しみます」

 

何らかインセンティブがあるのか?それとも裏に何かあるのか?

 

「確かに…。でもね。あなたが一高にわざわざ入学した理由も同じくらい理解に苦しむわ」

少佐が、矛先を僕に向けた。

 

「第四次世界大戦でも日本が戦勝国になる為です」

と、素直に答えた。しかし、少佐は、さらに理解に苦しんだらしい。

 

「第四次世界大戦の前哨戦は、始まっています」

 

「どの国とどの国が戦争するの?」

 

「今の所、どの国とどの国が武力衝突に至るかはわかりません。今度の戦争は魔法師と非魔法師の争いです」

 

第三次世界は、始まる前に勝負がついていたとする見方自体が広まってない。それと同じような考え方で第四次世界大戦が始まる前に勝負をつけてしまおうとするというのは少佐と言えども理解に苦しむものだった。そこで、切り口を変える。

 

『』

 

少佐のコスプレは、おそらくこの小説のメインヒロインのものだろう。

 

 

 




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