意識が高すぎて魔法科高校に入学したが劣等生だった。   作:嵐電

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サブタイトル変更しました。


九校戦編2

おい待てよ!遠方から魔法による攻撃はどう対処するんだい?とツッコミが入りそうだ。実は、僕も近接戦闘に古式魔法の技術を応用するのは有効だと考えていたが距離があるとその有効性は失われると考えていた。

 

司波くんは、服部副会長との模擬戦で純粋な体術によって距離を縮めてその問題を解決した。しかし、それが可能だったのは明らかに副会長の油断だ。相手が、最初からこちらの身体能力を念頭に入れてそれなりの対策を講じて来たら体術で距離を縮めるのは難しくなる。

しかし、長岡さんが中学時代に複数の魔法師に囲まれて闘って撃退(多分、殺した。)できたのは、敵魔法師の遠方からの攻撃が彼女になぜか効果がなかったからだ。

魔法師は、現代科学の知識、この場合は古典物理学の知識に基づいて攻撃や防御の魔法式を実行している。

 

『古典物理学の法則が通用する範囲は、宇宙の大きさからせいぜい原子や分子の大きさのレベルまでである。原子内または原子間では古典物理学の法則は破れており、現象の正確な記述ができない。』

 

実行される魔法式には、その対象を長さや質量や時間や電流や温度や物質量や光度を持つものであるとして事情改変する。ところが、対象が、それらではなくなると組み上げられる魔法式から対象がなくなる。この世にあるから座標を設定して表現できる。この世の者で無くなればその実態の無い者の位置や運動を表現することは不可能なのだ。

敵魔法師は、硬化魔法系の防御も施した。しかし、長岡さんに破られている。彼女が使ったのが暗勁だ。古典物理学で表現可能な剛体や流体の状態変化でこちらのエネルギーを敵に伝える攻撃ならば、敵魔法師は完璧に防御できた。

ところが、この世のエネルギーではない、いわば死のエネルギーで彼女が攻撃したので、敵魔法師の防御魔法はほとんど機能しなかった。

 

暗勁を攻撃に使えば来年のモノリスコードは、優勝確実だ。今から、森崎くん達に教えてあげたいくらいだ。

 

仕事がひと段落したのでホテルの茶店に出掛けることにした。多分、誰かには会えるだろう。

 

◇◇◇

 

ホテルの茶店で座っていると、声をかけられた。

「お邪魔していいかな?」

懇親会で、少佐と一緒に取材したカーディナル・ジョージだった。確か名前は吉祥寺真苦労だったかな?それにしても一回取材しただけなのに随分と親しげに接してくるとは意外だった。元々フレンドリーな性格なのだろうか?

 

「取材は、捗っているのかい?今日は、1人みたいだけれど」

ジョージの関心事がわかった。少佐だ。

 

「今日は、疲れて寝ていますよ」

 

「妹さんかい?随分と聡明な人だったけど」

 

聡明な子ではなく、聡明な人とジョージは言った。そこに彼の彼女に対する関心の高さが現れている。

「妹ではないです。彼女が聡明なのは僕も賛成です」

 

少し、会話が途切れた。少佐が僕の妹でなければ彼女と僕の関係をジョージは気になるのだ。そこで、ジョージの関心事に迫って行く。

 

「彼女は、同僚です」

少し、間を開けてみた。

 

「彼女は、飛び級なのかい?魔法科高にはなかったはずだけど」

 

「ええ、飛び級ではないです。彼女は僕達と同じ年代です。なので、同僚です」

 

「そうなんだ」

少し、ジョージの返答のタイミングが遅い。どうしても、僕と少佐の関係が気になるのだ。そこで、

 

「吉祥寺さんが出場されるモノリスコードが行われるまでにまた彼女が取材したいと言ってますが構いませんか?」

 

「もちろん、大歓迎だよ!」

 

僕はジョージのアドレスを教えてもらった。彼は、上機嫌で去って行った。

 

ジョージの使えるサイオン量から見ても森崎くん達に万に一つの勝機はないだろう。(ちなみに、一条選手はもっと多く使えそうなのだ。)

 

あえて弱点なのはジョージはロリコンであるくらいか?(笑)

 

それと、あとで少佐に勝手に約束したのを謝っておかなければならない。

 

「柴田さん!奇遇だね。応援?」

さっきから、こちらをチラチラと僕らの様子うかがっていた柴田さんに声をかけた。

 

「エッ?!はい?!」

急に声をかけられて彼女は慌てた。

 

「どうして、わかったんですか?」

慌てても、しっかり突っ込んでくる辺りはさすが司波くんの取り巻きのレベルは高い。確かに、柴田さんは僕の後ろに居た。

 

「報道ですから」

 

「?」

 

冗談は、通じなかったようだ。というか、僕とジョージが話し込んでいるのをじーっと見つめていたら普通の人でも気付くと思うぞ。

 

「ところで、柴田さん。僕に何か用?」

 

「サイン下さい!氷室先生!」

少し、躊躇ってから単刀直入に用件を言った。ここら辺も覚悟を決める早さと行動に移す早さはさすがだ。柴田さんは、実戦も行けるクチだと思う。惚れたら告って寝技に持ち込み勝負有り!だ。

断る理由はないので気前よくサインして、その代わりと言っては何だが市場調査をさせてもらう。

 

「九校戦では、誰が一番人気なんですか?もちろん、同人的なあちらの方の意味で」

 

「それは、エルフィン・スナイパーこと七草会長さんです!」

 

「渡辺風紀委員長は?」

 

「摩利様も大人気です!」

変な方向に舵を切った柴田さんは、堰を切ったようにあちらの方の九校戦の見所を熱く語ってくれた。しかし、摩利様とは…

 

「ところで、柴田さん。人気がある男子選手についてはご存知ですか?」

僕は、声のトーンを落として彼女にしか聞こえないように言った。

 

柴田さんの眼光が変わった。その質問を待ってましたと言わんばかりだ。水晶眼をそんなふうに使って良いのか?柴田さん。

 

「あっ!柴田さん」

演説中の柴田さんの後ろから、光井さんと北山さんが声をかけて来た。僕の視野に彼女達は当然入っていたのだが、面白いことになりそうなのでわざと黙っていたのだ。

 

「柴田さんが、司波くん吉田くん西条くん以外の男子と話し込んでいるのは珍しい」

北山さんが、ボソボソと核心を突いて来た。

 

「えと、それは、そうで、あの、急用を思い出しました‼︎それじゃあ、皆さん、お先に失礼します!」

893ではなく801話を始めたところを2人に見られたかも知れないと柴田さんは思ったのか慌ててこの場から離脱した。誰が見ても不自然なくらいの流れブチ切りだった。所謂、強制終了。KJだ。

 

「どうしたのかな。柴田さん」

光井さんは首を傾げている。

 

「急用を思い出したと思う」

北山さんは、頭が良いのか悪いのか判断に困るタイプのようだ。ボケをかましているのなら試験の結果の通り頭が良いのだろう。

 

柴田さんは、腐女子である事がバレるかも知れないと焦って逃げたのですとは口が裂けても言えない。でも私小説には書かせてもらいます。柴田さん、ごめんなさい。今度、吉祥寺くんの隠れた趣味を教えてあげるから。それで、チャラにしてね!

 

なぜか、北山さんが僕の座っているテーブルに座ろうとする。光井さんが慌てる。僕も驚く。この二人とは面識こそあるものの喋った事もないのだから。

 

「大会初日の注目は、七草会長のスピード・シューティング。優勝は間違いないけど、今回はどんな戦い方をするのか注目される」

 

「ちょっと、雫?」

 

「僕は、構わないですよ。どうぞ、続けて下さい。北山さん」

 

「エルフィン・スナイパーとファンが会長を呼んでいるけど、魔弾の射手のほうがが言い得て妙」

 

このあと、延々と九校戦注目の一高選手のマニアックな話を聞かされた。光井さんが恐縮しまくっていた。北山さんは、語らずには居れないのだろう。

 

「最後に、大切な事が」

北山さんの話は、いよいよ大詰めを迎えたのだろうか?!

 

「サイン下さい。氷室先生」

 

光井さんが、イスから転がり落ちた。

 

 

 

 

 


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