意識が高すぎて魔法科高校に入学したが劣等生だった。   作:嵐電

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九校戦前夜18

「少佐は、演劇をされていたのですか?」

 

少佐は、キョトンとしている。そこは、「はぁ?」と睨みを効かせて欲しかった。それは置いといて、

 

「吉田くん、じつはしかるべき方法で僕らは吉田くんと司波くんの活躍をリアルタイムで見ていたんだ。決して、青少年保護法に引っかかる様ないかがわしい行為の最中だったわけではないので安心して欲しい」

とは言ったものの同衾していたから詳しく話せない。

 

「だったら、余計に気になるじゃないか‼︎」

 

「吉田くんも、似たような魔法を使えるだろう?少し違うが大体似たようなものだ」

と僕は、フォローしておいた。

 

吉田くんは、黙ってしまった。精霊を使って覗き見る魔法を使えば彼にすぐバレる。昨晩、僕らが使ったのは無系統魔法どころか魔法の範疇から逸脱している現象なので吉田くんには探知できない。彼は、そこに気付いた。さすが新吉田家の神童は違いがわかる男。ゴールドブレンドだ。

 

「幹比古、己の限界を自分の力だけで突破しようとするのは時間の無駄だぞ。頼れるものはなんだって頼って問題を解決すればいい」

少佐が、もっともらしいことを言った。これも演技だったら主演女優賞だ。

 

「昨日も、似たような事を言われたよ」

吉田くんが、溜息を漏らした。誰に言われたのか知らないがこの際誰でも良い。

 

「僕らは、今から練習するから吉田くんはそこで休憩してるといいよ」

グダグダ言ってても始まらないので朝の練習を始める。

 

「じつは、早朝のほうが健康に良いとは限らない」

 

少佐も、吉田くんも信じられないと言いたそうな顔になっている。

 

「練習によって、ふさわしい時間帯があるし、個人にも適した時間帯があるから早朝が必ず良いとは言えないんだ」

 

少し表現を変えると二人とも、多少納得してくれたようだ。

 

「手っ取り早く元気になるには、太陽に当たるといい。でも、当てる場所がある。こことここだ」

僕は、場所を示しながら太陽に当たるための姿勢になった。

 

「ちなみに、顔は当てない方がいい。太陽のエネルギーがきつくて不安定なので脳にはきついから」

僕は、顔が木陰にに隠れるように移動した。

 

「魔法師みたいに、大量のサイオンを使う者はこれをしてエネルギーを取り入れた方がいい」

似たような修行法を二人とも知っているようだ。しかし、太陽に向かったままエネルギーを取り入れる修行のようだった。

 

「練習時間が極短い場合は、太陽に向かってエネルギーを取り入れる方法もありだが、それを長めに練習すると脳に悪い。ちょうどいい頃合いがわかると良いが、最初のうちは判断がつかないから太陽に顔を当てるのを避けた方がいい」

吉田くんは、あまり興味がなさそうだった。心を強くするにはもってこいの方法なのだが、彼の心には映らなかった。

 

そこで、今度は光を露骨に取り入れて即席に元気になる練習方法も紹介した。これは、エイドスから情報を引き出す練習も兼ねている。

 

「雲でも、空でも、山でも構わないが、例えば雲から先ほどの要領で雲の光を取り入れると意図する」

僕は、空に浮かぶ適当な大きさの雲に身体を向けた。

 

雲からの光を取り入れる。そして、雲と一体化して行く。雲のエネルギーを感じる。雲のど迫力を実感する。

「雲のように、雲のようにやるから、雲手」

僕は、腕をくるくるとユックリ回してみせた。太極拳の雲手だ。

 

『』

と頭にあると雲をふわふわとして頼りのないものと捉えてしまう。

 

他人の解釈を信仰せずに、雲を自分で直覚するのが肝心なのだ。

 

「師匠。こうか?」

少佐が試している。

 

「腕は動かさなくても構わない」

 

少佐が、動きを止めた。数秒後。

 

「あっ?!」

少佐が、身を縮めた。

 

「どうした?」

 

「雲に押し潰されるかと思った…」

そう言いながら、少佐は嬉しそうだった。そこは、「雲に押し倒されるかと思った」とボケて欲しかった。

 

吉田くんは、驚いていた。彼は、精霊を使って見ていたのだろう。どんな景色が彼の目に映ったかわからないが衝撃映像(閲覧注意!)だったに違いない。

 

今、起きた現象を現代科学風に表現してみる。

 

【夜、男と一緒に一晩を過ごし何らかの原因で寝不足になった少女が、早朝に太陽の光を浴びて熱中症で倒れそうになった。】

 

といったところだろう。じつは、大間違いとも言えない。熱中症の本当の原因は、エネルギーの取り入れ過ぎだからだ。現代科学では原因が解明できないので100年以上前はなぜか日射病と熱射病と分けて対処法も異なっていたらしい。

 

〜症と書いてあれば治療法はないと考えると良い。〜病とあれば治療法が一応あると考えて良い。同じ症状なのに分けていたり治療法があると考えていたのにじつはなかったと後に明らかになったり、随分いい加減なものなのだ。

 

さて、熱中症の原因は、

 

『視床下部の温熱中枢まで障害されたときに、体温調節機能が失われることにより生じる。』

 

ここでも、視床下部が出て来た。誰かさんはここを精神干渉魔法で弄くって莫大なエネルギーを取り入れても体温調節機能が失われない細工をしているのだろう。

そうしておけば、サイオンを大量に消費しながら補充も大量に行える。何の細工もなしに光を取り入れ過ぎると熱中症の軽い症状と同じような症状が出る。頭痛は、もっとも起こり易い。

 

吉田くんは、横で見ているだけなのに今度は要領を得たようだ。腕を回して運手をしている。ただ取り入れ過ぎて明日明後日は頭痛に悩まされるかも知れない。

しかし、彼ならそのうち慣れるだろう。吉田一門の代表者の一人なのだからそれくらいはこなせる。

 

さて、気になるのは今朝も頑張っている光学迷彩の人だ。我々のような薄着でも少し暑いのに頭からマントを被ればその暑さはかなりのものに違いない。熱中症にかかりはしないかと見張られているこちらが心配になる。

 

ただ、発想はなかなか良い。姿を消すのに魔法を使用すると多くの魔法師にバレてしまう。そこで、姿を隠すのは現代科学に頼り、気配を消す等の必要最低限の魔法だけを使用して隠れる方法は素晴らしい。現に吉田くんは、光学迷彩の人に気付いてないのだから。

 

少佐も少し休ませた方がいい。そこで、僕は吉田くんに向かって言った。

 

「同じ要領で山にやってみたらいい」

 

僕は、山に向かって光を取り入れた。山と一体化してくる。

 

理屈を伝えて、見本を見せただけですぐに吉田くんは僕と同じように再現して見せた。

 

「どう感じた?」

 

「雲が凄い迫力だったのに、山はなぜか柔らかく感じたよ。でも、これって、合っているのかい?」

 

「感じ方は、人それぞれだからそれが吉田くんにとっての正解だよ。ただ、その感覚を次回に再現しようとしたら進歩し無くなる。コツは、感じ方は行う度に異なることがしばしばあるのを念頭に入れて行うことだ。もちろん、同じように感じる時もあるよ」

 

少佐をホテルに連れて帰った方が良さそうだ。そこで、最後に吉田くんにサービスした。

 

「ハートを強くしたり、腹が座るようになりたければ、光を取り入れる場所を工夫したら良いよ。取り入れる身体の部位は、だいたい想像がつくだろう」

 

「ああ」

吉田くんは、即答した。吉田家に似たような訓練法が伝承されているのかも知れない。

 

「じゃ、僕らはこれで」

 

「師匠」

 

「何か、わからないことがあった?」

 

「いや、ありがとう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 




引用箇所が運営様から盗作に該当すると指摘されたので削除しました。雲の科学的説明です。

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