意識が高すぎて魔法科高校に入学したが劣等生だった。   作:嵐電

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入学編 3

我ながら読者の気を引きながら上手く話を終わらせたと思ったが、担当さんから皮肉交じりの連絡があった。昔の週刊漫画みたいな真似はしないほうがいいのではと。と言う事で「賢者の石」とは練丹術です。ようは、丹田がわかれば終了と極論して良い。

そんなに簡単なら、そこら中に「錬金術師」が鋼だの武装だのうじゃうじゃ居る事になる。しかし、実際はそうなってない。

 

ようは、最初から丹田を間違っているだけだ。丹田はこの世とあの世をつないでいる抽象的な存在なのでその感覚は極めて主観的なのだ。ちなみにチャクラもそうだ。よって個人によって捉え方が異なる。さらに一個人でもその感じが変化する。ただ、正しく丹を養っているという確信は得られるので今の状態が横道にそれていないかはわかる。ただし、弟子を取れる師から習っているのが前提である。

 

現代魔法もこれらの技術をそれなりに研究した。魔法力の根本を強化しようとしたのだろう。しかし、良い結果は得られなかった。現代魔法はあの世の力(神の力と言い換えても良い)を神にならないまま使おうとする技術だ。(これって、いわゆる黒魔術と昔は言われて忌み嫌われていたのだが。)古典的な修行をしてしまうとまともに神になって行くから神の力は使えるようになるが、世俗のあれやこれやに興味が薄れる傾向が強くなる。魔法力は強化できるが使うモチベーションが無くなってしまう。

 

もちろん、全員がそうなるとは限らないが。

 

さて、昨日は気持ちがささくれ立った等で書いたがこのような心の状態は生命のエネルギーを使い過ぎるとなりやすい。警備会社の息子もきっと生命のエネルギーの使い過ぎだ。先天の気と言った方がわかりやすいかも知れない。これを取り入れるには、光を取り入れなければならない。植物は光合成として簡単に実行しているが人間が実行するには多少の訓練が必要だ。

 

 養生は得意だが、昨日の魔法実習には参った。先天の気を持って行かれるのだ。使うつもりがなくてもドンドン消費される。途中で気分が悪くなって来たので履修できたらすぐに、引っ込んで他の人の様子を見学していた。

司波組は華やかだ。青春真っ只中だ。あそこだけスポットライトがあたっているように観える。(見えるではなくて観える。)

ただ、意外なのは司波兄も発動の最中に嫌な表情を見せた事だ。彼が違和感を感じるとすれば、あの○人数をどうやって説明すればいいのだろうか?一人○○すたびに気分が悪くなったりしたら膨大な数をどうやって乗り切ったのか教えて欲しい。まぁ、そのうちわかるだろう。

 

とにかく明るい(ように観える)司波兄と愉快な仲間達だった。

 

「ちょっといい?」いきなり声を掛けられた。八卦さんだ。自己紹介で堂々と魔法は使えませんと僕と同じことを言った女子だ。

「良いけど、何?」僕は努めて能天気な雰囲気で答えた。最低点でクリアしただけにもかかわらず満足して緊張が解けてしまった馬鹿者のように。彼女の気配がはとんどわからなかったからつい警戒してしまったのだ。

「魔法、使えなかったと言ってたのに今使えてたけど。どうして?」

 

は~ぁ!!それは、謙遜というものだろう。本当に全く魔法が使えないのではなく、僕は使いたくないし好きではないので上手く使えないのだ。ただし、使えるようになったのはつい先程だ。

ところがなんと、彼女は本当に全く使えないらしい。どうやって、一校に入学したのだろうか?とほぼ同じ内容をできるだけ柔らかい表現で彼女に返答した。

 

「教えてくれる?」八卦さんが恥ずかしそうに訊いてきた。いいですとも!僕も充実したスクールライフと言うものを送ってみたかったところだ。女子の知り合いができるのは願ったり適ったりだ。とそのまえに、

「八卦さん、いつも気配を消しているの?」

「わかっちゃった?これ癖なの。でもよくわかったね。魔法師にはばれるのかな?」

気配を消すのが癖!あんたは暗殺者か?とは言えない。この学校には暗殺者がいてもおかしくないが。

 

         ◇◇◇

 

 

あ、今気付いた。司波兄は仏だ。生れながらの神だ。キリスト教的に表現すればメシアだ。どうりで彼に意識が向いてしまう訳だ。これで、あれだけたくさん人を殺しても彼は何ともない理由がわかった。

「どうしたの?」目の前の八卦さんか不思議そうな顔をしている。

 

おっと危ない。込み入った話だから下校途中の茶店で続きをしようとなった。司波兄のように女子を多数侍らせて駅まで歩く度胸は僕にはない。なので、茶店に八卦さんよりも早く行って彼女を待っていたのだ。それにしても僕は何故、司波兄をこんなに意識しているのだ?と考え込んでいた最中だった。

 

急いで意識を目の前の平凡一般少女に集中しようとした。何と!そこには背景に紅い薔薇だの椿だの芥子だのを背負い天井から金粉を巻いているかのごとく八卦さんが立っていた。

昔の少女漫画の美少女ヒロイン登場か?良く見ると普段は丸い卵形の顔に横線を2つづつ合計4つ描いて、下の2つの線に接するように点を一つづつ打っただけで目と眉が完成しそうなモブキャラ丸出しの顔ではなくて大きな黒い瞳の中に星が描かれているのかと思うくらい眼底からの反射があり、鼻筋は通り、透き通る肌にほんのりと紅い頬と紅をさしたと錯覚する赤い唇での登場だった。リアル金粉現象?

 

どなた?と惚けた質問を危うくしそうになった。僕は慌てて「早かったね。少し考えごとしてたんだ」と取り繕った。

僕の不自然な行動に不信感を表すこともなく八卦さんは向かいの椅子に座った。

 

 今度はじっくりと彼女を観ると彼女の背後に見知らぬ紳士が立っていた。誰かはなぜかすぐにわかった。その紳士は八卦さんの手を指さしている。

 

「早速、話の続きをしたいけど良い?」いきなり本題に入ろうとして来た。さすがは、八卦掌な人だ。

「いいけど、その前に八卦さんの手をみせて」

「いいよ」

と彼女が言った直後に僕の目の前に掌が出現した。まるで、瞬間移動だ。しかし、彼女は平然としていた。

「え~と、手の平じゃなくて手の甲」

「そう?」

さっきと同じように瞬間的に手の平が手の甲に変わっていた。やはり、彼女は平然としていた。わざとだ。さりげなく、自分の功夫をみせつけている。

 

「この斑点はなに?」僕は彼女の指の付け根の関節の上にある茶色い斑点を観ながら尋ねた。ほんの少しの間があってから彼女が答えた。

「鉄沙掌の跡・・・」

 

鉄沙掌は、伝人レベルでも普通はしないだろう。たとえ、破壊力に若干の何がある八卦掌だとしても。と言うことは彼女は掌門レベルだろうか?僕はこのように考えを巡らせてさらに尋ねてみた。

「八卦さんは、弟子を育てる義務を負っている人?」

「うん」

「だったら、鉄沙掌を止めるわけには行かないね。八卦さんが魔法を使えないのは掌でサイオンの流れが乱れるからだよ」

彼女が、あまり魔法理論を学んだ経験がないようだった。そこで、もう少し噛み砕いて説明し直した。ここではその詳しい説明は省略させて頂く。要点は、彼女は莫大なサイオンを使えるが情報体としての機能を全く使ってなかった。サイオンを直接エネルギー体あるいは流れとして使っている。これにて一件落着!と思ったが、彼女の後ろに控えている紳士がまだ居座っておられる。何か足らないのか?

「もう一度手を見せてくれるかな」

八卦さんは今度はゆっくりと手を差し出した。僕を信用してくれたらしい。

「触って良い?」

「いいよ」少し恥ずかしそうに快諾してくれた。可愛いと思いながら僕は彼女の手の平に自分の手の平を重ねた。

いってェ〜!思わず声を上げそうになった。手の平に意識を集中させて敏感にさせていたので痛さ百倍だ。

「八卦さん、もしかして毒沙手もしているの?」

 

今まで、即答していた彼女が少しだけためらいがちに返事をした。

「ええ」

これで、たくさんのサイオンを使えながら魔法が使えない理由がはっきりした。彼女は攻撃時に毒を敵に作用させる一方、自分を毒から守らなければならない。彼女が武術の技を繰り出すときにそれらは無意識に自動的に行われているはずだ。

 しかし、CADなどを使って現代魔法を発動させようと意識すると今まで無意識で出来ていたことが彼女に負担となってしまう。結果的に彼女は、今まで無意識に行っていた古式魔法の発動と新たに現代魔法の発動を同時に意識的に行わなければならなくなる。しかも、制御があまり効かない放出され過ぎるサイオンで魔法の同時使用をしている。

これで、魔法が発動したらそれこそ奇跡だろう。

 

「で、どうしたら現代魔法を使えるようになるの?」

魔法が発動しない理由が分析できても、魔法を使えるようにはならない。八卦さんが解決法を知りたがるのは当然だ。極端な話、理屈がわからなくても使えるようになりさえすればいいのだから。

 

本日はここまで。(本当は、解決策が思い浮かばなかった。八卦さんに「すまない。少し時間をくれないか?」と言って解散したのだった。)

 

 

 

 

 


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