意識が高すぎて魔法科高校に入学したが劣等生だった。   作:嵐電

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誤字等若干修正。


九校戦前夜12

新聞部が、選手達に連絡を付けた時には事件は解決していた。

 

新聞部によれば、渡辺風紀委員長の指揮の元、十文字会頭と司波書記の活躍で自爆テロは防げたそうだ。ただ、かなり際どかったらしい。

 

重要な事なので、このブログ小説に三回注意喚起しておいたのだが軍の警備はなかった。どういうつもり?

 

少佐達と別れて、僕は予約されていた部屋に移動した。とにかく、一刻も早く部屋に引きこもりたかった。『彼方の自分』からのリクエストが来ているのだ。座禅を組むには良い時間帯ではなかったがすぐに始めた。

 

◇◇◇

 

現場に『彼方の自分』は、立っていた。『彼方の自分』は距離も時間も関係ない。まず、テロの感知が遅れた理由を知りたい。彼方の自分はすぐに選手達のバスに突っ込んで来た自動車の運転手に注目した。

 

自爆テロだ。車内から、探索不可能なくらいに弱いが、必要最小限の魔法を三回組み合わせて車体をバスに突っ込むように操作している。自爆テロにも関わらず、犯人に強い意志がない。といより、生きている意志そのものがほとんどない。生きる屍、ゾンビ魔法師と表現できる。

 

なんと!自爆テロ開始の時空に見に来ている他の存在を感じた。あちらは全体を見ている。時空に入り込むのはできないようだ。解析能力で補っているのだろう。彼方の自分は、あちらの全体観察者に見つからないように時空を移動した。

 

今度は、選手のバスの中だ。七草は寝てる。異変に早く気付いた者から我先に魔法を発動しようとしている。渡辺が相剋を起こしそうな多数の魔法の発動をやめさせる。しかし、彼女は焦っている。

 

無秩序にサイオン波が発生している状態では事象干渉が起こりにくいからだ。それでも十文字に魔法発動を要請する。ただ、十文字もその事象干渉力が小さいと自覚し彼女と同じように焦っている。

 

一方、冷静に司波妹は、火消しを志願し魔法を発動。その前にサイオンの混乱状態が急に収まり彼女の魔法は正常に機能し火は消えた。サイオン波の混乱状態を消したのは司波兄だ。

 

彼の目は、今、バスの外の現場を調べている。彼の目はある程度時空を超えられる。ただ、その時点に入り込んでその時空の人の心まで掴む事はできない。

 

彼方の自分は、これで満足しなかった。すぐに選手のホテルに移動した。時空は今現在の少佐達が集まっている部屋だ。

 

馬頭は、『僕』に恐怖している。

 

石川は、興味深々だ。

 

戸枝は、『僕』の協力を得たい。なんとしてでも。

 

少佐は、こちらを一瞥した。彼方の自分の存在を感じている。少佐の後ろに居る守護天使が『よろしくお願い申し上げます』と伝える。彼方の自分は『諾なり』と応じる。

 

◇◇◇

 

召喚魔術

 

召喚魔術 (invocatory magic) は、神格に請願し、その力を自らの内に呼び降ろし、そして一時的に自分が神の乗り物と化すことを図る魔術作業である。要するに、自分が神と一体化する、もしくは自身に神を憑依させる技法である。アレイスター・クロウリーは、その方法を「祈りながら汝自身を燃え上がらせよ」「頻繁に召喚せよ」の二語に要約している。聖守護天使の召喚は魔術師が目標とするもののひとつである。

 

一般的に召喚魔法やその類の降霊は、上記のような説明をされる。このような説明には、神は一体何?あるいは、神と一体化に成功したあとはどうなるのか?とう言う疑問に答えていない。

 

クロウリーは「四の五を言わずに成功するまで召喚せよ!されば、自ずと解る」と言いたいのだろう。

 

とう言う事で、召喚魔法に成功した後にできるであろうことの一例を書いておいた。学徒は参考にして日々祈り給え!

 

僕は、彼方の自分で得た情報を忘れないうちに書き出した。かなり多量の情報だったので小一時間かかった。妙に腹が減った。昼食を取ってないからだ。中途半端な時間になってしまった。食事どうしようか。

 

「今晩、懇親会があるから」

と呟いた時、備え付けの回線からコールがあった。

 

新聞部の戸枝からだった。どうやって僕のルームナンバーを知ったのかは訊かなかった。僕の作業が終わった頃合いをどのように見計らったのかも聞かなかった。5人しか運んでないマイクロバスの後ろにはたくさんの機材が置かれていた。その機材をどのように使っているのかは聞かないことにしたのだ。

 

「今から、そちらに少佐が訪れる。馬頭に土産を持たせた。よろしく頼む。急な話で申し訳ないが」

 

回線を切って程なく、ドアがノックされた。僕がドアを開けると、

 

「師匠ーー!」

 

「幼女、キターーーー!」

と僕は言わなかったが、度肝を抜かれた。背格好に応じた服装の少佐がいきなり抱き付いて来たからだ。

 

フリルフリルした白いワンピース。と言うより、ちょっとしたドレス。ロリータを意図的に強調しているとしか思えない。

 

馬頭が、泣きそうな顔でテーブルの上に軽食を用意し始めた。動きに不自然さがない。ポーター経験者?準備が済むと一礼して彼はそそくさと部屋を出て行った。

 

おい!この状態を放置かよ‼︎

 

「ねえねえ、師匠。お話、いっぱいして」

これが、少佐の存在Xと一体化した姿だった。少佐が存在Xを嫌がっていた理由がわかった。

 

僕は、少佐の胸に付けている赤いブローチ型のウインドウズ95ではないエレニウム95に向かって挨拶した。石川が見張っているからだ。

 

少佐がティーカップを手にした。

「冷めちゃうよ」

 

僕もティーカップを取った。白湯だった。思わず笑ってしまった。

 

「本気のようだね。じゃあ。全開でいきますか!」

 

少佐は、目を爛々と輝かせた。

 

         ◇◇◇

 

 ちなみに、青少年保護法に違反するような行為は一切行わなかった。期待にそえなくて申し訳ありません。

 

とはいうものの、、モニターの前で馬頭は卒倒しているかもしれない。

 

一番簡単な伝授の方法を取ったからだ。要は、身体接触をしていたのだ。はたから見ればきわどい行為だろう。「百聞は一見に如かず」「百見は一触に如かず」という理屈なので仕方あるまい。

 

もちろん、理解中心に教えるのも有りなのだが前頭葉で処理するよりもはるかに上回る情報量を我々の身体は扱える。

 

少佐は、それを知っていた。僕が「神になるには、ひたすら慣れろ」と言った意味も正確に理解していた。なので、手取り足取り教えた。

 

 ここまでは、良かった。

 

        ◇◇◇

 

 まさか、懇親会にまで少佐が付いてくるとは思わなかった。目立つ。計り知れないほど目立つ。他校の学生が見て見ぬ振りをしてくれるのがせめてもの救いだ。存在Xに慣れすぎだろう。少佐。

 

遠巻きに、新聞部のメンバーが僕等を見張っている。彼等はいつでもプロになれそうだ。

 

「あんた、どういうつもり?」

僕を「あんた」と呼ぶのは河村さんしかいない。そう言えば彼女は選手に選抜されていた。

 

「よう!選手でもスタッフでもないんだが、アシスト要員として九校戦に参加しているだ」

 

「そうじゃない!その子は…」

 

「パパ、この人怖い」

少佐は、僕の後ろに隠れた。彼女のブラックユーモアのセンス抜群だ。

 

「どういうこと!説明して!」

河村さんは、少しお疲れのようだ。イライラすると競技に差し障るぞ。

 

「それより、お隣の好青年を置いてきぼりのままで良いのか?河村さんの大切なパートナーではないの?」

 

ようやく河村さんの怒りが収まったようだ。隣の好青年は新しい彼氏なのだろう。

 

「師匠、私が河村美波さんに話をしよう」

幼女版少佐が、少佐に戻っていた。しかし、衣装はそのままなので違和感が半端ない。

 

この変身には、河村さんも驚いた。いきなりフルネームで呼ばれたのも手伝って。『公安9課もどき(新聞部)』の情報収集能力は予想外だった。

 

 

 

 


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