意識が高すぎて魔法科高校に入学したが劣等生だった。   作:嵐電

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九校戦前夜2

「武術の練習場所を確保しようとして小野先生に相談してたんだ」

白石くんは、そんな事を考えいてくれていたんだ。白石くんエライ!彼の言う通り、我々はゲリラ的に構内で勝手に場所を占拠して練習をしていた。学校非公認団体という点ではエガリテと同じだ。

 

「それで、部活動として申請してはどうかとなって」

白石くんは、申請書を部員(?)に見せた。僕等は司波グループよりはその目立ち方はかなりスケールダウンしているが、先日のテロ未遂事件でテログループを掻き回したトンデモ一年生集団とみなされる様になった。テロからほんの少ししか経ってないのに学校裏サイトでもあるのだろうか?

 

それと、長岡さん。あの時、テロリストが僕等を追い掛けて来なかったのは長岡さんが三人を蹴って動けなくしたのを僕は本当は見ていたんだからね。ダメですよ。八卦掌の人はそれでなくても宦官董海川とか眼鏡屋程とか古着屋梁などと言われ他門派から何故か畏れられてないのだから。

 

どうして、他門派に嫌がられているのかは実はハッキリしている。比較的早く功夫が積める為、黒社会で活躍している者が多いからだ。他にも理由があるがそれらはまたの機会にしよう。

 

「まだ申請書を出してないのに部室が用意されていたんだ!」

確かに、それは凄いと言うより変だ。部活連や生徒会にも根回しどころか挨拶さえしていない間に新しい部を作るのは不可能と思われる。

 

「何か条件を出されていない?」

僕は、学校の意図が大体読めたが念のため尋ねてみた。

 

「非魔法系の部活動と申請書に記載済みだった」

やはり、そうか!エガリテの様な連中に侵入されて大事には至らなかったがあまりに無警戒過ぎたと学校側は判断したのだろう。学生の実戦経験を積ませる為とはいえ、国の機密を流失させては元も子もない。

 

「一科生と二科生の軋轢を少しでも和らげようとする学校の配慮だろう」

と最もらしい事を僕は言っておいた。テロ決行の数日前に連中の狙った場所を当てた僕の能力を学校側も利用したいのだろう。ただし、出来るだけ目立たない形で。

 

次に、クラブ名をみんなで決めようとなった。

 

「隣人部」友達が欲しいと真剣に悩んでいる方が来られたら魔法で作れよと即答してしまうのでボツ。

 

「奉仕部」好きな男子に手作りのチョコレートを渡したいと相談に来られたら魔法で作れよと即答してしまうのでボツ。

 

「SOS団」武術家も導士も魔法師も間者もいるのだから、宇宙人や未来人とか今更要らない。よってボツ。

 

「ラノベ部」面白いが人気が出なさそうなのでボツ。

 

「中国武術研究部」この高校で仮想敵国名を連想する部名はエガリテと同類と思われかねないのでボツ。

 

(たまに、話を盛っています。ご了承下さい。)

 

◇◇◇

 

 

「入れ」

「失礼します」

十文字会頭だけかと思っていたら、部屋の中には七草生徒会長と渡辺風紀委員長までいた。僕は新部創設で部活連に呼び出された。学校が創部に積極的になっているので十文字会頭は不審に思っているのだろう。

 

「この「軽妙小説研究部」の創部理由は申請書に書いてある通りだな」

「はい。そうです」

「不勉強で申し訳ないのだが、軽妙小説とは何かね?」

十文字会頭は、知らないのは当然だろう。

「100年程度昔は、ジュブナイルあるいはライトノベルと呼ばれイラストが充実して文字数が少なくて読みやすい少年少女向きとされた小説です。最近は、これが小説の主流となっています」

「文芸部とはどの様に違うのか?」

「文芸部は建前として今は完全に形骸化した純文学を主に扱う活動です」

「どうして、わざわざ新しく創部する必要があったのか?」

どうも十文字会頭には、「軽妙小説研究部」がお気に召さない様だ。

 

「ふふ。本当は、自分用の仕事場を校内にも持ちたいのでしょう?氷室雪絵先生」

七草会長は、個人情報保護法を知らないのか?これまで、クラスメイトにもこのブログの読者にさえ隠していた事をバラしやがった。

 

意外なことに、氷室雪絵と聞いて十文字会頭と渡辺風紀委員長の意志が僕に集まって来た。僕の視野が狭まる。ここで、太極拳的に相手の意志を受け流す。相手の心が良くわかる。二人とも氷室雪絵を知っているし、興味がある。

 

(この様な現象は、普通の人にも起きている事がある。しかし、自分の意見や考えを表現するのにこだわってしまい相手の心がわかる機会を失ってしまうのだ。)

 

小学生の時、昔の少年少女漫画や小説を読んでこれなら僕の方がもっと面白いものが書けると思い上がり「魔女っ子メグミちゃん」なるバカバカしい短編を書き上げた。困った時は、ホモネタ!これで絶対にウケると本気で考えていたりした。当時は、偉大な発見をしたと喜んだものだ。若気の至りである。

 

小学生の時に売国奴を外患罪等で刑事告発をして問題児扱いされ急場しのぎに両親がこれは小説のネタです等と学校に説明した話を以前書いた。中学生になって何となく小説家デビューとなったのだがブログを面白おかしく書いているだけでは格好がつかないと出版社も思ったらしく処女作として小学生の時に書いた作文を書き直してとりあえず出版した。

 

これが予想に反して評判が良かった。魔法科高校入学を目指すおバカな女子中学生が主人公の話だ。同じクラスで実際に魔法科高校を目指していた河村美波さんを大いに参考にしたのが良かったのかも知れない。(参考にしたのがバレて彼女を大いに怒らせてしまったが。)

 

魔法科高校入学は厳しい受験戦争をくぐり抜けなければならないと一般的に考えられている今、全く逆の雰囲気を醸し出す僕の処女作(?)は、本当に魔法科高校を狙っているあるいは狙っていた層だけに限ぎればかなりの普及率らしいのだ。恐ろしいことだ。

 

会頭や委員長は読んだ事があるのだろう。

 

「これは失礼した。氷室先生の希望というなら部活連も出来るだけ協力して行こう」

「十文字くん…」

会長は会頭の急変した態度に驚いている。

「風紀委員会も出来るだけ氷室先生の創作に協力する。取材等の個人的な協力も惜しまない」

「摩利?」

会長は委員長の不可解な態度を訝しんだ。

 

七草生徒会長は、「魔女っ子メグミちゃん」を読んでないか全く興味がないかのどちらかであるのがわかった。

 

◇◇◇

 

学校が用意した部室は、かなり広かった。余裕で武術の練習が出来る広さだ。しかし、至る所に隠し監視カメラが設置されている。学校側は、長岡さんの八卦掌も研究したいのだろう。こんな事をしなくても謝礼を払って彼女から習えばいいのに。

 

部室の隅には端末があった。これも、部員が何を閲覧したかどこと通信したか全て学校側に筒抜けになっているのだろう。それを差し引いても学校の図書館の蔵書にアクセス出来るのは素晴らしい!一々図書館に行く手間が省ける。

 

長岡さんが、早速練習を始める。練習場所が決まり気分が良い様だ。

「今日は、八卦掌の立禅をします」

彼女が見本を見せる。指先と手のひらがどこに向いているのかに注目だ。一般的に行われている太極拳とも形意拳とも言えない中途半端な立禅とは、明らかに違う形であり雰囲気も違う。監視している方々はそこら辺に注目すると良いだろう。あと、指と指の間がどれくらい離れているのかも良く見て研究して頂きたい。

 

皆んなの立禅の姿勢がほぼ決まった時に、長岡さんが紙コップを部員の肘の内側に置いてまわった。今まで気楽に立っていたが紙コップを落とさないと思うと緊張してしまう。そこで、筋力で頑張ってしまうとかなりの負担となる。

 

白石くんの顔色がおかしい。真っ赤になっている。紙コップを落とすまいとして筋力で姿勢を保とうと頑張ってしまっている。

 

朝田さんは、息を潜める様にして紙コップを落とさないようにしている。

 

涼野さんは、すでに落としていた。

 

僕は、気楽に姿勢を保って紙コップを落とさない。

 

約2分でその練習は終了した。

 

長岡さんから、詳しい解説があるのかと思ったが何も無いまま前回同様に走圏の練習を彼女は始めた。

 

部員には、後で僕がフォローしておこう。

 


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