意識が高すぎて魔法科高校に入学したが劣等生だった。   作:嵐電

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入学編 11

「そこで、皆さんに耳寄りな情報です。先程長岡さんが言われた5年は、四段階から六段階に近い五段階に上がるのを想定した年月だと思います。しかし、皆さんは既に五段階であるので5年も必要ではなく2年で充分だと思います」

まるで、怪しい商品を安いと主張して視聴者に買わせるセールスマンの口上の様になって来た。ただ、長岡さんが僕の主張を否定したらダメだが。

 

「師匠が協力してくれたら出来ると思う」

長岡さんが同意してくれた。これで、まともな方法だけを提示してこの場を収められそうだ。

 

しかし、涼野さんと朝田さんは考え込んでしまった。白石くんはこの流れに乗るつもりのようだ。

 

「もっと、短期間で出来ない?」

涼野さんは、勘が鋭った。ありますよ。どれも危ないですが。僕はお勧めしません。でも、訊かれれば答える。その為に僕はここに来ているのだから。

 

「有ります。いきなり座禅を3日から一週間続けるのは、日本で昔から密かに行われて来ました。うまく行けば六段階に手が届きます」

「失敗したら?」

「運が良ければ痔疾と自律神経失調症いわゆる偏差ですみますが、運が悪ければ統合失調症いわゆる魔境です」

さすがに、涼野さんが頭を抱えた。

 

「この前、師匠くんが『神になるのに神頼みする』と言ってたよね?」

今度は、朝田さん。選手交替のようだ。

 

「はい。一生をかけて神頼みして死後、神の修行を始める方法です」

「それを、もっと早く出来ないのかな?」

「出来ますよ。頼む神を抽象的あるいは異国の神や仏ではなく、具体的な生けるしかも身近な神にすればいいのです」

「どの神にすればいいの?」

少し、朝田さんが声のトーンを落とした。

 

「陛下です。天皇陛下です」

 

一瞬、時間が止まった感じがした。そこで、僕から沈黙を破る。皇宮警察関係者の前でこのような話をするのは気がひけるが、関係者でさえも天皇陛下が神であると知らない人が多い。

 

「これは、日本で生まれ日本で育ち日本国籍を有する人には絶大な効果が有ります。海外の方でも前世で日本と深い関係があればかなりの効果が期待出来ます」

この条件は、意外に厳しい人がいる。前世が異国と関係深いから魔法力を持って産まれこの学校に来ている人物が比較的多いからだ。

 

「自分と縁がある神に頼れば効果が大きいのは当然です」

皆さんの理解は今一つのようだ。

 

 天皇としてこの世に来る魂は生まれながらにして神になるのを義務付けられている人生を受け入れて生まれて来る。なので、仮に彼が仏(生まれながら神)として生まれなくても人生の比較的早い時期に神の修行に入る。天皇家がそれをサポートしているので今は必ずそうなる。

 

 神の修行に入いると普通はその時点で天命がわかりそれに沿って生きて行く。しかし、天皇陛下は違う。日本の中心たる存在であり続けるのを義務づけられているので神の修行もメシヤ型になる。なので、天皇陛下は日本国民に頼られるのが自己の神の修行に適っている。

 

 魔法師でない一般人なら、死期が近付くとお迎えが来るのがわかり自分と一番縁のある陛下が現れる。

 

突然、白石くんが話を始めた。

「うちの爺さんが、臨終の時に家族が水をあげようとしたら爺さんが『わしはいらん。陛下に差し上げてくれ』と言ってから死んだ。生きている間、熱心な愛国者でもなかったから皆意外に思った」

 

 すでに五段階の意識である魔法師が毎日たとえわずかな時間でも天皇陛下に心を向ければ白石くんの爺様よりも早く神の修業が始まるのは明らかだ。

 

「でも、それは比較的長くかかりそうな気がするのだけれど」

天皇陛下が神と聞いても否定しないのはさすがです。朝田さん。普通は尊い、神性を有する等は認めるが神ではないと言い出す人が多い。

 

「六段階になるには時間がかかります。しかし、一日当たりに費やす時間はわずかです。また、五段階の上、六段階の一歩手前にはそれよりも早くなれます」

 

これで、毎日神頼みをしたうえで走圏も練習すれば死の淵に到達できる。それを超えて行くのは本人次第だ。さぁ、早速明日から長岡さんに八卦掌を習って下さい。お三方。僕は、時々アドバイザーとして参加させて頂きます。

 

「師匠は、何段階?」

長岡さんが突っ込んで来た。少し、嫌な流れになっている。

 

「六段階です」

「道を得ているのね」

「はい」

「じゃあ、師匠を頼る。座禅を教えて」

 

長岡さんは、さすがだった。自分と縁がある神に頼るのが良策ならば、太古の神よりも異国の神よりも日本国の神よりも目の前の神(ただし、修行中)に頼るのが一番良い方法になる。

 

 僕は、喋るのは好きだし書くのも苦手ではない。でも、人に教えるのはあまり興味がない。とはいうものの、メシア型神修行が自分にほどほど合っているのはわかっていたし、この学校に来たら『教える』ことになるのもうすうす感づいていた。

 

 

 

 


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