意識が高すぎて魔法科高校に入学したが劣等生だった。   作:嵐電

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横浜騒乱編27

『そもそも帝国軍人は死ぬ。死ぬために我々は存在する。だが帝国は永遠である。つまり‼︎貴様らも永遠である! 故に、帝国は貴様らに永遠の奮戦を期待する』

 

何て事は言いません。こんなことを言って洗脳したらダメですよ。

 

『続きはwebで!』何て事も言わなかった。

 

「国軍が到着するまで時間がかかります。我々は国軍を待っておられません!直ちに避難と正当防衛を開始して下さい!学校関係者に避難誘導のマニュアルを送信しました」

ちゃんと国内法に則った指針を皆様に伝えた。 Seach and destroy!なんて煽ったりしませんから。

 

「見つけた!」

朝田さんが小声で叫んだ。

 

「撃て」

僕は、彼女にお願いした。89式から二発の弾丸が発砲され軌道を変えて学校関係者ではない一般参加者を襲った。

 

「ただ今、一般人に紛れていたテロリストを射殺しました」

 

ざわめく学生達。

 

「我々には、正当防衛の範囲内でテロリストの無力化が認められています!敵に遭えば躊躇せずに正当防衛して下さい!では、すぐに行動に移りましょう!」

 

僕等が各学校に予め根回ししておいた人達が国民保護措置に係る職務等を行う者が付ける特殊標章を取り出した。いずれの集団も対人戦闘が得意な人物を加えている。

 

 避難経路は、基本的に地下通路だ。狭い地下通路で重火器の使用は自分の身を危うくする。魔法師が無力化できないくらいの威力のある爆発物等を使えばテロリストは自分の身をどのようにして守ればいいのかと考えてみればわかるだろう。

 

長岡さんは、いつの間にか鴛鴦鉞≪えんおうえつ≫を取り出している。白兵戦で彼女に勝てるテロリストはいない。すでに大亜連合軍特殊工作部隊に所属する「人喰い虎(The man-eating tiger)」(笑)と言われる(誰が言ったの?)呂 剛虎≪ルゥ ガンフゥ≫を瞬殺している。さらに毒腿京の噂はすでに流している。敵ゲリラ兵には名前を聞いただけで震え上がる者も多いだろう。ここら辺の感覚は日本人には理解しがたいものだが、大亜の民兵には絶大な効果を発揮する。

 

魔法科高校の優等生三人娘+ギャル子が、顔色の悪い吉祥寺くんを引っ張っている。彼が戦うと言って会場に留まろうとしているからだ。邪魔だからやめて欲しい。有事では、魔法力以外の能力が必要なのだ。目の前で、人間が脳天から銃撃され即死しても平気でおれるかだ。

「師匠!ここは任せた」

司波くんは、苦戦中とみられる正面出入口に移動する。司波組構成員もだ。千葉さん西城くんは楽しそう。有事にも強そうだね。意外なのは柴田さんや光井さんや北山さん(彼女は元から感情の起伏が外見に出ないが)も楽しそうに司波について行く。司波組は鉄火場耐性があるようだ。

 

予想以上に学生達は冷静だ。中条さんに先日プレゼントしたロザリオがかなりの効果を発揮した。むしろロザリオを僕が渡す時に、周りの人がその行為を勘違いし中条さんも大いに勘違いしたのをフォローするのほうがよほど苦労した。

 

「河原少尉。ちょっと良いかしら?」

かなりお怒りの藤林小尉が僕の背後に立っていた。

 

「作業中なので、そのままお話下さい」

僕は、魔改造した絶縁抵抗計(通称メガー)を司波くん達が苦労して制作した機器にあてながら返事した。

 

Bang!

 

小さな爆発音がした。

 

「貴方!何をしているの?」

声を荒げる藤林さん。

 

「アーク放電で中のデータを焼いてます。敵に貴重なデータを渡すわけに行かんでしょ?暇なら、市原さん達を手伝ってもらえます?他校のも消しますんで」

 

「わかったわよ!」

電子の魔女は、不機嫌のご様子だが、そこら辺を外したりはしない。彼女は情報の重要性をよくわかっているのだ。

 

「ところで、河原くん演説中に何をしたの?」

 

「精神干渉計魔法を使っただけですやん。学生も落ち着いてくれて良かったです」

 

中条さんの能力を勝手使う刻印入りのロザリオ型無電源他励式CADを使ったとは言わなかった。

 

「精神干渉系魔法ね?それは良いでしょう。それよりも」

 

いいも悪いもあんたの爺さんがいつもどさくさ紛れに「我を崇めよ」とやってるのに比べれば僕がやったのは百万倍マシだ。

 

「真言は『陛下は神である』でした。藤林さんは何を感じました?」

 

「えっ?そうだったの?だってあの人は」

 

僕は藤林さんの心に映った人物を観た。

 

「聖徳太子が出て来たんですか!藤林さんは親鸞みたいですね」

 

「どういう事なの?」

 

心を読まれても動揺しないのはさすがだ。

 

僕は、作業をしながら口笛を吹く。『続夕陽のガンマン』だ。黒の棺桶型キャリーバックが開く。110mm個人携帯対戦車弾が出てくる。手に取り構える。

 

「後方の安全良し!」

 

凄まじい爆発音がしてロケット弾は壁をぶち破って飛んで行った。壁の向こうから爆発音が聞こえてくる。

 

「師匠!何かあったのか?」

壁に穴を開けたので警報音が鳴動する中、司波くん達が戻って来た。正面出入口の敵を制圧したのだろう。

 

「大亜が次の作戦を実行したから防いだけや」

 

僕は音響停止を遠隔で密かに実行した。消防法には内緒だよ。

 

「連中の狙いは学生を人質にしての時間稼ぎだったようだな。失敗と判断して爆破による突破に切り替えたか」

 

司波くんは、判断が早い。実戦経験ありすぎだろう。

 

「師匠。戦況を詳しく知りたい」

司波くんは、この場においても藤林さんに戦況を聞こうとしない。律儀だね。

 

「全ての扉はパニックオープンかクローズになっとるから、中央監視だろうがサーバー室だろうVIP室だろうがマスターキーで入り放題や。好きに情報収集したらええ」

 

僕はカードキーを司波君に投げた。

 

「了解した。しかし、いいのか師匠?」

 

「かまへん。この建物の電気主任技術者に連絡はとれんやろ。俺が緊急時の代務者を務めれるんは電気事業法で定められとる。それとそこの藤林さんを連れて行ったらええ。何でもよう知っとるで」

 

司波くんはすぐに会場を出て行った。司波組メンバーもあとに続いた。

 

厳密に法律に照らし合わせされると僕のしている事はヤバイ。火事でもないのに勝手に商用電源を落として非常用発電機に切り替えている。

 

ちなみに保安規定のモデルとして以下のようになっている。

 

【電気主任技術者不在時の措置】

第 10条 電気主任技術者が病気その他やむを得ない事情により不在となる場合には、その業務の代行を行う者(以下「代務者」という。)をあらかじめ指名しておくものとする。(←その代務者さえ今ここにいないのだから、電気主任技術者資格を持っている僕が代務者となった。)

2 代務者は、電気主任技術者の不在時には、電気主任技術者に指示された職務を誠実に行わなければならない。(←誠心誠意務めさせていただいています。)

 

【防災体制】

第 22条 台風、洪水、地震、火災、その他の非常災害に備えて…

2 電気主任技術者は、非常災害発生時において、電気工作物に関する保安を確保するための指揮監督を行う。(←真面目に指揮監督させていただいています。)

3 電気主任技術者は、災害等の発生に伴い危険と認められるときは、直ちに当該範囲の送電を停止することができるものとする。(←諸々の事情を鑑みて受電を停止した。)

 

しかしこうでもしないと我々の去った後に大亜が忍び込んで魔法関連重要機密情報を抜き取るのを防げない。シャットダウンした機器から魔法協会までアクセスして情報を短時間で盗むのは彼等には不可能なはずだ。

 

ちなみに戦況は見なくてもわかる。大亜は大苦戦してるはずだ。横浜埠頭に部隊が上陸した途端に情報が寸断されているのと、棺桶型武器収納系CAD(音声起動機能付き)から武器を取り出してわが国の民兵(交戦権のない警察も含む) が速やかに対処しているはずだから。

 

誰もいなくなった会場に五十里さんたちが戻ってきた。他校のデータも消し終えたのだろう。

 

「殿下。お迎えにあがりました」

パイロットスーツに身を包んだ「主任」がいきなり現れた。

 

「「「会長?!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




魔法科高校の劣等生(25) エスケープ編〈下〉

…いざという時 、当てにできないかもしれない 。師匠や風間中佐は 、将来において敵になる可能性を否定できない 」

達也に師匠が警戒されているのがわかるセリフがある。(笑)



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