意識が高すぎて魔法科高校に入学したが劣等生だった。   作:嵐電

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横浜騒乱編25

「どない?」

僕は勝手に選手控室(?)に入っていけしゃあしゃあと司波くんに声を掛けた。

 

「いつも通りだ。それよりも何か用か?」

 

「陣中見舞いや。15:30からドンパチ始まるで。そっちは。頑張ってくれ」

僕が15:30ドンパチと言っても司波くんは眉一つ動かさない。大した胆力だ。鈍いだけかも知れないが。情動がほとんどないだけだったかな?

 

「そうか。俺は師匠が廿楽先生と交わした話の内容の方が気になるな」

え!そっち?何話したっけ?そういえば、小野さんの婚期は藤林さんのそれよりも早いのを多面体理論で証明するだったかな?

 

「神は、無から有を作るから微分方程式を解いたくらいで未来は予想できんちゅー話や」

 

「先生の多面体理論を否定したのか?!」

 

「間違いや。しゃーないわ。ほな、頑張って戦ってくれ!」

 

「随分と忙しそうだな」

 

「神の見えざる手も借りたいくらいや」

 

「師匠様!」

意を決したかのように司波さんが、僕を呼んだ。何でしょう?

 

「師匠様は、人の結婚相手がわかるのでしょうか?」

司波さんのこの質問には、僕も司波くんも驚いた。なお、司波くんのはリアクションはわずか過ぎて誰にもわからない。おそらく本人にも。

 

「深雪。師匠は忙しそうだ。次の機会にできないのか?」

 

司波さんは、何か危機的状況が我々に迫っているのを感じている。だから、一番気になることをつい口にしたのだ。彼女は、自分が誰と結ばれるのか気にしているのだ。そこにある危機で自分達が生き残れるのは当然だと思っている。

 

『あなたは、あなたの意に沿わない結婚はしない』

 

チョット本気を出しました。可愛い女の子の為だ。本人の前での未来を言ってしまうのは、良くないのでこれがギリギリだ。

 

「ありがとうございます!」

司波さんは、美しく深々と上品なお辞儀をした。

 

◇◇◇

 

まだ認められていない魔法理論だが、魔法師が理解出来ていない(腹に落ちていない)事象の改変は起こり得る確率が著しく低い。

 

例えば、魔法師が核融合爆発を起こそうとしている時に一番必要とされると考えられるものは莫大なサイオン量であったりその事象改変を促す起動式や魔法式だと信じられている。

 

だったら、戦略級魔法師の起動式や魔法式をパクり、並の魔法師を集めるかソーサリーブースターや薬等でアシストさせれば戦略級魔法師が行う大規模魔法を再現できるはずである。

 

マテリアルバースト!

 

しかし、未だにそんなお手軽に戦略級魔法を再現した話を聞かない。

 

結論から言ってしまうと、実現したい事象改変はその理屈を魔法師がどれくらい理解しているかにかかっているのだ。

 

局所的に突発的な核融合反応を起こすには、質量欠損や特殊相対性理論や量子力学の理解が必要になる。(試験で合格点を取るのとは違う。)

 

一応涼音さんも理解はできているだろうか実際は腹には落ちていない。一方司波くんは腹まで落ちている。これはどういうことか?

 

『 … …核融合発電の実用化に何が必要となるか。この点については、前世紀より明らかにされています 』

鈴音さんの抑制が効いた濁りの無いアルトが国際会議場の音響設備から淀みなく流れ出してた。一高の発表が始まっている。

 

難しい理論や見たことのない理論は脳が緊張してしまい、それでもがんばって理解しようとすると自分の脳がストレスを受ける。そこで脳はストレスを受けないような手前味噌な理解をしてしまうのだ。

 

一番簡単なのは、結論の丸暗記だ。

 

逆に間脳が緊張しない、つまり脳がストレスを受けない体質ならば、本当にわかるまで考え続けることができる。要は納得できるまで、腹に落ちるまで考え続けられるのだ。このように量子を理解できれば核融合反応を魔法で起こすことも可能になる。

 

マテリアルバースト!

 

『核融合発電を阻む主たる問題は、プラズマ化された原子核の電気的斥力に逆らって融合反応が起こる時間、原子核同士を接触させることにあります』

感情の起伏が、見かけ上司波くん並みに小さい鈴音さんだ。しかし、脳の働きが違う。

 

おそらく当初意図したものとは違う方向に能力が開発されてしまったのであろう。情動を抑える為に脳の真ん中を緊張しないように施したのだから。とは言うものの脳の学習力強化のために脳改造するなんて失敗したらパーになってしまいそうなのでやめておいた方が良い。

 

座禅や武術で十分脳の開発はできるのでそちらをお勧めする。

 

え?誰が誰の脳を改造したのか良くわからない?それは、鈴音さんと同じ事に興味を持ち彼女とは違って量子を理解できた人物だ。

 

マテリアルバースト!

 

ユニバース!ではありません。

 

『しかし、電気的斥力は魔法によって低減することが可能です。今回私たちは、限定された空間内における見かけ上のクーロン力を十万分の一に低下させる魔法式の開発に成功しました』鈴音さんは、クーロン力を低下させるのと核融合を起こさせるのは同じレベルの魔法だと気付いてない。重力制御も実は同じレベルの事象改変なのだ。

 

あ〜言っちゃった。(≧∀≦)

 

ちなみに鈴音さんが開発せんとしている重力加速度系魔法を利用した熱核融合発電は、その発想そのものはただの4サイクルのエンジンだ。ガソリンやガスが爆発する際の体積膨張を回転運動にする1900年代に流行った自動車の原動力と同じだ。

 

彼女の言葉から、彼女自身は電磁気学で理解が止まっているのがわかる。距離の二乗に比例してどんどん大きくなるクーロン力(この場合は斥力)をどうこうしなくても、核融合は起こせる!実際やっている人物が存在する。しかも遠隔で。

 

まあ、あまり難しく考えずに「どうやったら爆発するの?」と量子に尋ねれば良いだけの事だ。隻手音聲ができれば可能なのだ。鈴音さんが知りたいと言ってくれば、いくらでも教えてあげよう!

 

月謝5000円で。

 

九校戦の壮行会以来 、——Eのクラスメイトには妙なノリが染みついたようで、今回も「皆で応援に行くぞ ーっ! 」みたいな勢いで多くのクラスメイトがこの会場に駆け付けている。

 

武装型CADや武器を携帯して。よく見ると他校の一部の学生も『妙なノリ』で会場入りしている。

 

気合いの入ったバッチリメイクの三高のギャル子さんも三高応援団席にいた。すぐにギャル子さんは僕に気づいた。しかし、気がつかないふりをしている。

 

彼女の名前を書いても良いのだが、どうも情報関係の人物のようなので名前は書かないことにした。

 

彼女の横には、一色 愛梨(いっしき あいり)、十七夜 栞(かのう しおり)、四十九院 沓子(つくしいん とうこ)が並んで座っていた。いずれも三高の超有名人たちだ。九校戦では彼女たちがあまりに濃いキャラクターなので意図的に省いた。一応これはブログ風私小説なので、事実と多少は違っても良いだろう。

 

それにしても、ギャル子さんは大したものだ。説得の仕方を教えたとは言え本当にあの3人のこの会場まで引っ張り出すのに成功している。(この私小説に三人を登場させるのが参戦の条件だ。)これで、三高の学生は負傷者なし確定だ。

 

四十九院さんが、僕に気づいた。僕は(この戦いは)大丈夫か?とアイコンタクトしてみた。すると彼女はにっこりとサムアップで返事した。さすがは、神道の大家「白川家」につながるとされる四十九院の娘だ。

 

実戦経験がほとんどなく、しかもカンの鈍いジョージを頼むぞ四十九院!

 

『…円筒内に充塡した水素ガスを放出系魔法によってプラズマ化し、重力制御魔法とクーロン力制御魔法を同時に発動します。クーロン力制御魔法によって斥力の低下した水素プラズマは重力制御魔法によって円筒中央に集められ、核融合反応が発生します。…』

 

不思議に思うのは、エネルギーや電気を得るのにわざわざ核爆発を使って熱エネルギーや運動エネルギーを取り出した後にそのエネルギーで発電するという面倒臭い工程をしようとするのだろう?電気が欲しいのなら、雷を起こせば良いではないか?地球から直接もらっても良い。

 

ちなみに形意拳の劈拳が出来るようになれば、雷は起こせるようになる。

 

しかも劈拳は道を得れば余裕で習得出来る。どうだ?とてつもない福音だろ?世界中に宣べ伝えよ!




参考資料としてKindleで購入。ただし、全部中国語で記述されています。以後、参考資料を出来るだけ紹介して行こうと思います。

鄭志鴻 他1名
天経 甲骨文字啓蒙
発売日: 2018/7/17
出版社: 龍門書院
言語: 日本語

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