意識が高すぎて魔法科高校に入学したが劣等生だった。   作:嵐電

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横浜騒乱編21

今日は、自主休講。本番に備えて心身を休ませたい。とう言う事でここから先は代筆を部員に頼んだ。

 

◇◇◇

 

「白石。四生≪ししょう≫は休みなのか?」

森崎が不躾に尋ねて来た。早朝から登校していた1-Eの他のクラスメイトも何事かと森崎と白石に注目した。もちろんそんな素振りを見せないで。

 

「師匠は私用で『自主休講』らしいっす」

白石は、森崎の態度に多少ムッとしたがそれをおくびにも出さずに極めて自然に返答した。と同時に一科生も白石が頼りにしている師匠を同じ様に頼りにしているのを目の当たりにして嬉しくもあった。

 

「師匠は、まだなのか?」

司波達也が今度は尋ねて来た。彼はすでに風格が漂っている。何でもない日常会話の中で何でもない質問をされただけで白石は緊張する。言うまでもないが、これは白石に限った話ではない。

 

「はい。私用で『自主休講』と聞いてます」

直立不動にはならないが、白石は他部門の上長に応える平社員のごとく畏まって応える。

 

「ありがとう」

白石の緊張した様子にわずかに苦笑いをして司波達也は礼を言った。

 

白石は、司波達也も、師匠を気にしていると明らかになり自分の事の様に嬉しくなった。

 

「白石くん。ちょっと良いか?」

 

「何っスか?」

 

森崎駿は、司波達也が離れると質問して来た。最近、長く座ってられないそうだ。白石もその様なスランプがあるのか?そのスランプに魔法を使って解決しても良いのか?矢継ぎ早に森崎は巻くし立てて来た。

 

「疲れていると長く座れないです。そんな時は横になって寝ても良いと習ってます。ただそれは、以前は自覚出来なかった深いところの疲れを自覚して治そうと心身が反応し始めている良い兆候らしいです。なので、ある程度座禅に習熟すると座る時間よりも質を重んじる方がいいとアドバイスを受けてます。座禅中に魔法を使うの絶対ダメらしいです。理由は座禅の『何も考えない』がまず出来なくなるからです。何も考えなくても答えが自然に出てくる、あるいは自然に治る、あるいは自然に解決するのが本来のスタイルだそうです。特に足が痺れるのを防ぐ為に魔法を使うのはNGです。下半身、特に足の指先まで気血が通るから座禅をしていても足が痺れなくなるのが正解です」

 

森崎駿が、矢継ぎ早に訊いてきたので白石は逐一師匠から習った通りに答えた。

 

「あ、ありがとう。参考になったよ」

少々驚いた森崎だったがわずかに微笑んだ。

 

「今後もよろしく頼む」

 

「こちらこそよろしく」

 

要件の済んだ森崎駿はすぐに1-Eの教室を満足げに出て行った。

 

相手に実力を素直に認めるのはある程度の実力がなければできない。実力がないと自分よりもはるかに高い実力者に出会えてもその実力を推し量ることさえできない。師匠がそのようなことを言ってたと白石は思い出した。

 

白石は、不意に視線を感じた。感じた方向に目を向けると視線の送り主と目が合ってしまった。その送り主はあたふたし始めた。その横にいた男子が白石の方に近づいて来る。

 

「よう!白石。お前も凄いな。それで少し頼みがあるんだけどよ」

 

西城レオンハルトは、彼女(?)の千葉エリカの言いたい事を推し量っている。所謂「忖度」(?)だ。レオンハルトは外見こそ、日本人離れしているが心情は日本的なのだ。千葉エリカにもそれは当てはまるが。

 

「お前達、週末の横浜で何かやらかすつもりなんだろう?俺らも混ぜてくれないか?」

 

「いいッスね!一緒にやりましょう。戦争を」

 

西城レオンハルトの後ろに隠れるようにしてついて来た千葉エリカの表情が明るくなった。ヤル気が漲っている。何のことかわからない学生は、ポカンとし、事情を少しでも知っている学生は、小躍りしたり小さくガッツポーズをした。

 

◇◇◇

 

その日の夜、反日的であると悪名高いとある報道番組で「懲戒請求事件」「外患誘致告発事件」が取り上げられた。

 

全国の小学生、中学生、高校生を中心に大亜連合(特に朝鮮自治区)との関係が噂される弁護士などに大量の懲戒請求申し立てがあり、懲戒請求を受けた弁護士達が「未成年だからと言って黙って見過ごす訳には行かない!魔法使いのガキども!提訴が嫌なら和解金を払い詫び状を書け!」と報道番組のインタビューに答えていたのだ。

 

また、外患誘致等で刑事告発された反魔法師の皮を被った売国奴と噂される代議士は、「知らない。受理され捜査が始まれば対応する」とインタビューで答えていた。

 

 「懲戒請求事件」は、河原真知がネットで呼びかけたのが発端だ。主に河原真知の軽妙小説と日記風私小説の読者に刑事告発や懲戒請求申し立ての具体的な方法をネット上に拡散したのだった。彼のリアルでの知人もその情報拡散に協力している。『少佐』と呼ばれている吉田摩耶とそのチームも参加している。

 

ちなみに「河原真知」は、彼のペンネームであるらしい。また、彼を知る者はなぜか彼を「師匠」と呼んでいる。さらに彼と近しい者は「殿下」と呼んだりしている。要は誰も彼の本名を知らないのだ。魔法科高校には「河原真知」で登録されている。一校がどうしてそのような登録を許しているのかは謎だ。

 

「魔女っ子メグミちゃん」はその河原が著した軽妙小説だ。始まった時は、単なるお笑いスポ根魔法師微エロ少女軽妙小説だったが、連載が続くにつれてシリアスでリアルな描写が増えヒロインは愛国的な魔法師に変わっていった。特徴的なのは、ヒロインが魔法師として魔法で戦うだけでなく、我国の存立を脅かす不届者達を我国の法律に基づいた通報や問い合わせや抗議や告訴等で炙り出し、最新巻には法廷闘争で追い詰める描写まであった。

 

懲戒請求申し立ては弁護士法第58条に「何人も、弁護士又は弁護士法人について懲戒の事由があると思料するときは、その事由の説明を添えて、その弁護士又は弁護士法人の所属弁護士会にこれを懲戒することを求めることができる。」とあり、未成年でも申し立てできる。しかも「懲戒の事由があると思料する」だけで良いのだから法的に正しくなくても申し立てできる。

 

インタビューで怒りをぶちまけていた反魔法師弁護士は多量に懲戒請求したのは違法であると主張していた。しかし、弁護士法の第八章 懲戒 第一節 懲戒事由及び懲戒権者等 56条から71条までに不法懲戒請求や違法懲戒請求なる文言が一切ない。つまり、58条の「何人も、弁護士又は弁護士法人について懲戒の事由があると思料するときは、その事由の説明を添えて、その弁護士又は弁護士法人の所属弁護士会にこれを懲戒することを求めることができる。」が効いて、誰がどんな理由でどのように懲戒請求申し立てして構わないのだ。

 

 それは、いいとしても民事で訴えるなら被告を特定する情報、氏名や住所や連絡先が必要になる。それがわからないと地裁が訴状を被告に郵送出来ない。この反日弁護士はどのようにして懲戒請求者の個人情報を手に入れたのか?合法的手段では手に入れようがないのだ。日弁連や弁護士会から漏れたらとしたらこの反日弁護士と同罪となる。

 

本人承諾なしで、何かに使用する時は本人に通知しなければならないのだ。「提訴すると懲戒請求された弁護士が言ってますが、あなたの個人情報を教えて構わないですか?」と予め承諾を得なければ個人情報保護法違反なのだ。

 

 

日本弁護士連合会(日弁連)ホームページより抜粋。

 

第1 個人情報の適切な収集、利用、提供、委託

1.個人情報の収集に当たっては、利用目的を明示した上で必要な範囲の情報を収集し、『利用目的を通知し』、又は公表し、その範囲内で利用します。

2.『個人データは、次の場合を除き、第三者に提供し、又は開示することはしません。』 (1) 『あらかじめ本人の同意を得た場合』

(2) 『法令の規定に従い、提供又は開示する場合』

(3) 人の生命、身体又は財産の保護のため必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき。

(4) 公衆衛生の向上又は児童の健全な育成の推進のために特に必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき。

(5) 国の機関若しくは地方公共団体又はその委託を受けた者が法令の定める事務を遂行することに対して協力する必要がある場合であって、本人の同意を得ることにより当該事務の遂行に支障を及ぼすおそれがあるとき。

(6) 問合せのあった事項につき、適切な対応をするために、各弁護士会へ問合せ事項を提供し、又は開示する場合

 

3.個人データを第三者に委託して利用する場合は、当該第三者との間で秘密保持契約を締結した上で提供するなどし、また、委託先への適切な監督を行います。

4.上記のほか、『本会における個人情報の取扱いは、個人情報保護法及び下位法令並びに関係するガイドラインの定めるところに従います。』

 

 河原達は既に次の手を準備していた。懲戒請求者提訴をちらつかせ和解金と謝罪を迫った反魔法弁護士達に集団提訴で対抗するのだ。小学生の含む原告団は選定代理人を立てその瞬間から裁判から離脱できる。なので個人情報が公にさらされこともない。選定代理人は、身バレ顔バレ上等の猛者が当事者の中から選ばれる手筈だ。

 

 次に外患誘致罪だが、有事法なのでこれで刑事告発された人物は油断していた。たとえ、告発が受理されても有事がない限り安心だと。しかし、有事は正式な戦争だけを指すものではない。国が有事対応すれば有事なのである。

 

武力攻撃事態等における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律から抜粋。

 

第一条 この法律は、武力攻撃事態等(武力攻撃事態及び武力攻撃予測事態をいう。以下同じ。)への対処について、基本理念、国、地方公共団体等の責務、国民の協力その他の基本となる事項を定めることにより、武力攻撃事態等への対処のための態勢を整備し、併せて武力攻撃事態等への対処に関して必要となる法制の整備に関する事項を定め、もって我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に資することを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

一 武力攻撃 我が国に対する外部からの武力攻撃をいう。

二 武力攻撃事態 武力攻撃が発生した事態又は武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していると認められるに至った事態をいう。

三 武力攻撃予測事態 武力攻撃事態には至っていないが、事態が緊迫し、武力攻撃が予測されるに至った事態をいう。

 

上記の文言にあるように、正式な宣戦布告の有無に関わらず我国は有事対応する義務が国と国民にある。特に『二 武力攻撃事態 武力攻撃が発生した事態又は武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していると認められるに至った事態をいう。三 武力攻撃予測事態 武力攻撃事態には至っていないが、事態が緊迫し、武力攻撃が予測されるに至った事態をいう。』に、注目して欲しい。

 

大亜連合と正式な戦争になっていなくても、有事対応し有事法である外患誘致罪が適応されうるのだ。ちなみに今は『武力攻撃事態には至っていないが、事態が緊迫し、武力攻撃が予測されるに至った事態』であり、3日後に『武力攻撃が発生した事態』となるのだ。売国奴は有事外患誘致罪で死刑だ。

 

刑法第81条外国と通謀して日本国に対し武力を行使させた者は、死刑に処する。

 

 

 

 

 

 


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