ヒーローだかヴィランだか知らんがヤクザ舐めんじゃねー‼︎   作:アンパンくん

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第3話

 

 雄英高校ヒーロー科……例年、倍率300倍を超えるプロヒーローの養成校。『正義の象徴』オールマイトや『燃焼系ヒーロー』エンデヴァーなど多数の偉大なヒーローを排出している。

 

 俺たちは今、そんな学校の実技試験を受けようと正門の前にいる。

 

「さて、分かっていると思うが刃…お前がこの学校に受かるためには⁇」

 

「オッス若、見えた敵を全てぶっ壊す、ですね」

 

 ドスッ

 

「それは合っているが、若と呼ぶのやめろと言わなかったか?」

 

「……は……い…」

 

 4回ぐらい注意したにも関わらずまだ間違えるので、つい足が出てしまった。まぁ、いいか。

 それよりも時間がそろそろヤバいので早くいかなくては。

 

「よし、いくぞお前ら」

 

「はい大山君」 「………」

 

 俺は同じ制服を着た黒髪の短髪少女、仁比山音無(にいやまおとな)と、前屈みの姿勢で足を内股にしてプルプルしながらも頑張ってついて来る坊主、刃山刃(はやまじん)を連れて試験会場に入って行った。

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜

 

 

 

『今日は俺のライヴにようこそー!!! エヴィバディセイヘイ!!!』

 

 シーーーン

 

 メッチャ可哀想だ。

 

 こんな広い講堂いっぱいに入っている受験生全員に無視されるなんて……

 

 俺たち受験生の前に立っているのはボイスヒーロー『プレゼント・マイク』。おそらく彼が俺たちへの受験内容の説明係なのだろう。しょっぱな全員に無視されているがそこはプロヒーロー……切り替えの早さは流石である。

 

 だがこちらも流石ヒーローの卵たち……目の前のヒーローの呼びかけに一切答えず無視し続ける。どちらも流石である。

 

 肝心の試験内容の説明はと言うと、入口で貰ったプリントに書いてある事と殆ど変わらない。途中でガッチリとした七三メガネが質問していたが知ってようが知ってまいがそう大して変わらん内容だった。

 

 説明会も終わり、同じ学校での協力を避けるため三人とも違う会場だったので別れたが、その時も刃の奴、足が産まれたてのバンビの様にプルって内股歩きしていた。

 

 あいつはもうダメかもしれん。

 

 さて、服装は自由だったので、途中でいつもの和服に着替えて、決められた試験会場に行ってみると太い尻尾の付いた空手着の奴や、厨二臭く自分の影と喋っている奴、身体をカチンコチンにして如何にも硬そうな奴など様々なのがいた。

 

 みんな、それぞれ準備運動したり、精神統一したりと試験に対する気負いはないみたいだ。確かにこの程度でびびってる様じゃ入試に受かる事も、ましてや合格する事も出来ーーー

 

『ハイ、スタート!』

 

 まい、っていきなりスタートかよ!

 

 着替えに時間が掛かって来るのが遅かったか?

 

 他の奴らもいきなりなのでビックリしていたが、プレゼント•マイクに一言二言言われすぐに敵のいる方向に走って行く。

 

 おかげで出遅れてしまったが、まぁ大丈夫だろう。とりあえず個性を使い手を赤く変化させていきながら受験生が走って行った方に歩く。

 

 試験会場は建物がいくつも立ち並ぶ街の様になっていて、この様な場所をいくつも持っているというのは流石国内最高峰のヒーロー科のある高校だと思う。

 

『標的捕捉‼︎ ブッ殺ス‼︎』

 

 おっ、わざわざ(ポイント)がこっちまで来てくれた。こりゃいい。

 俺は個性で赤く『鬼の手』の様になった右手をデコピンの形にして(ポイント)に向ける。そしてそのままこっちに向かってガチャガチャとなかなかのスピードで近づいてくる(ポイント)に放つ。

 

 ドカァアアン!!!

 

 力を込め過ぎたのか(ポイント)はバラバラになりながら後ろのビルを貫いていった。

 

 まぁ、いいか。目指せ4位から7位の間‼︎

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜

 

 

 試験から一週間が経った。試験結果はまだ来てないが、見た感じ受かりそうなカチンコチンの奴と同じくらい(ポイント)を壊したので、おそらく受かってるだろう。

 

 音無も大丈夫ですと言ってたし、刃の奴は言われた通りやりましたと言っていた。受かってるかどうかは別として……

 

 まぁ、ゆっくり待つさ。

 

 それよりも今は飯食わんとなぁ、腹が減り過ぎてヤバイ。

 

「おい、飯の用意を頼む」

 

 俺は廊下を歩いていた若い組員に声をかける。

 

「へい、ただいまお持ちします」

 

 若い組員は早歩きで台所の方に向かった。

 

 そう言えば、親父によるとオールマイトは今年から雄英高校の教師になるらしい。やはり、あれかな。自分の後継者が雄英にでも入ってくるのかな?

 

 悪の親玉と会った後、親父からオールマイトの真実を聞かされた。何でも、今海外に住んでる御隠居と先代ワン・フォー・オール所有者が犬猿の仲だったらしいので、俺はもし居たら、後継者となるべく仲良くしたいな。

 

「若、お食事の方をお持ちしました……それと雄英高校からお手紙が届いてますが……」

 

「……今読む。寄こせ」

 

「へい、それでは失礼しやす」

 

 ちょうど今来るとは……。少々驚いたが早く結果が知れる事にこしたことはないだろう。

 

 中を開けてみると何枚かの紙と小さな丸い機械が入っていた。

 

 ブォッン

 

 小さな丸い機械から映像が投影される。

 

『やぁ、僕が投影されたよ!』

 

 投影された映像にはエンターテイメント番組の様な背景に哺乳類らしき手が映っていた。

 

『ん、あれ……これカメラに映ってないなぁ。(…ガチャン……ガラガラガラ…)よし、これでオーケーだ』

 

 自分が映ってなかったのか、カメラを移動させると二足で立っている小さな哺乳類らしき動物が立っていた。

 

『(ゴホン)改めて、僕が雄英高校校長の根津だよ。ヨロシク』

 

 これが雄英の校長か……。人が個性で動物になってるのか、それとも動物だ個性を手に入れてハイスペックになったかわからんが、後者だったら凄いな。しかし何の動物だ、これ⁇

 

『本当は新しく教師になってくれたオールマイトがこうやって発表してくれる訳だが、訳あって僕が発表する事になったのさ、ゴメンね。さて大山(おおやま)鬼一(きいち)くん、試験の結果だが……筆記、実技ともに十分…合格だ。おめでとう』

 

 ……よかった、受かってたか。やはり大丈夫だと思っていても少しは緊張するもんだな。

 

『……と言いたかったんだけどね』

 

 ん、なんか雲行きが怪しいぞ。

 

『さて、ここからはオフレコで頼むよ。あと仁比山音無くん、刃山刃くんの通知にはここから先の話は録画されてないから君から伝えて欲しい』

 

 うん、俺の他にあの2人の名前が出たということは、まず間違いなくウチの組に関する事だ。いったいなにを言うつもりだ?

 

『君たちの素性についてはある程度知ってるつもりだよ。関東(かんとう)任侠(にんきょう)一家(いっか)総元締(そうもとじめ)大山組(おおやまぐみ)。でね実は、雄英の先生方から君たちの入学を反対されているんだよ』

 

 そりゃそうだ。ヒーローを育てる高校にヴィラン予備軍の奴を入れるなんて元も子もないだろ。けど、それでも俺らは入らんといかんのだからバカみてぇだ。

 

『それに更に困ったのが僕の上……言ってしまうと理事会や国の方からは入れさせろと来てる事だよ。まったく、これじゃあ僕がストレスで毛が抜けてしまうよ。

 ……だからね、僕なりに色々考えた結果、いくつかの条件をつけての入学を許可する事にしたんだ。条件とか詳しい事は同封した紙に書いてあるから。

 それじゃあ、願わくは僕たちにとっても君たちにとっても最良の選択をする様に』

 

 録画が終わった。取り敢えずまずやる事は……長話で冷めてしまった飯を食べる事だな。


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