「か~ぼすか~ぼす空飛ぶウサギ」
「モコ、こんなところに連れてきて何の用?」
放課後コンクリート製のでっかい蒲鉾のような建物の前にマキは連れてこられていた。
モコはニヤリと笑うと、
マキちゃんが一番欲しいもの♥️
と言いながら建物の大きな鉄の扉を押し開いていく。
建物の内部に光が差し込み中にある大きな金属の塊が光の下に晒される。
「私たちのヒコーキ」
マキは口をあんぐりと開けて固まったその顔の前でモコは「おーいマキちゃーん」とおどけたような感じで手を振っている。
「どーしたのコレ!?」
「拾った」
笑顔でピースをしながらマコが返す。
「入学式の日にここで見つけてさー、今までコツコツ直してたの」
「それでモコ部活入ってないのに帰りが遅かったんだ」
「そう、ここら辺のパーツ屋、ジャンク屋を遠坂さんに教えてもらったり手伝ってもらったりしながらね」
「だから、あんなに仲よさげだったのか」
「そうだよ、そしてそのお陰で憧れのヒコーキ通学ライフが手にはいるのだ~!」
「……」
あまりの事にあきれたのかかけることばも見つからないのか目を点にしながらマキは押し黙る。
「マキちゃーんテンションひくいぞー、最後の仕上げもあるんだから」
と言いながら、モコはカバンから抱える程の大きさの機械を取り出した。
「何?それ?」
「照準器……ヒコーキの眼よ」
モコは手慣れたようにヒコーキのステップを使い翼に上がるとコックピットの中に手を入れ照準器の取り付けを始めた。それを見てマキも翼の上にぎこちないながらも上っていく。
「見つけた時この部品だけなくてさ」
「前の持ち主がはずしてたんじゃない?」
「う~ん、その可能性もあるかーっと、よし、取り付け完了……あとは試験飛行何だけど~……マキちゃんお願いね♥️」
「なしか!?」
「免許とるの忘れてた」
「
「でも~……飛びたいんでしょう?」
マキは体をビクッと震わせた何の事はない、自分の本心を当てられたからだ。
「も、もうしょうがないなぁ~でもコレどうやって格納庫から出すの?」
「あ~……」
「もしかして考えてない?」
モコは頬を掻きながらうなずいた。
side お蛍
ドンっと苛立ち混じりにお蛍が乱暴に扉をしめる。
「話にならん!」
「やはりダメでしたか」
「このままでは護衛の戦闘機が足りないのに生徒会の腰抜けどもめ」
歩き出すお蛍について行こうとみやびが動きだした時にふと外を見てみると何人かの生徒が機体を押して滑走路へと移動させているのが見えた。
「石神のエンブレムと尾翼に電光マークの紫電改?……どういうこと?」
みやびはこの学校で自分達の他に戦闘機に乗っている人は知っているものの紫電改に乗っているのは見たことが無いし、石神新撰組の電光マークは護衛ボランティアをやっている人たちの機体にしか描いていない、石神のエンブレム(白ラインの赤丸にイと書かれたもの)を入れて良いのは学生や先生のみで一般人の機体にはそれこそボランティアの人たちの機体では石神のエンブレムは使えないのだ。
みやびが思わず足を止めたのをみてお蛍はみやびを呼ぶ。
「みやび?いくわよ」
瞬間、紫電改のエンジンがかかりその唸り声は回りに響きわたる。
「この……エンジン音は……」
お蛍は聞き覚えのあるエンジン音に顔をしかめて走りだしエンジン音の元凶の元に向かうために階段を駆け降りる。
「あっお姉さま!」
みやびは呆気にとられてしまい立ちすくんでしまった。
聞こえるエンジン音が唸るような音から吠えるような爆音を叩き出し始めた時にやっと建物の外にお蛍は飛び出した。
「そこの紫電改とまれ!」
叫びも虚しく紫電改は目の前で飛び立ち高度をあげていく。
「なんて事!」
お蛍は息もつかぬまま紫電改の飛び去った方向を確認する。
「あの方向は……吉祥寺方面!」
確認が終ると共に滑走路脇防空格納庫に走りながらスマホを取り出しどこかへ連絡をかける、幸いすぐに携帯は繋がった。
「もしもし!?栗原さん!」
「うん?お蛍ちゃんかどうした緊急か?」
「そうです、今どちらにいますか!?」
「社用機で高縞平上空、石神方面に飛行中」
「吉祥寺方面に向かっていただけませんか!?」
「いいけど、何事か説明して」
「今石神から紫電改が飛び立ち吉祥寺方面に向かっています、多分生徒がここら辺の墜落機をレストアしたものなのか石神新撰組のマークが入ったものです」
「なんだと!?そりゃあヘタすりゃあ……」
「そうです、最悪の場合こちらから喧嘩を売りに来たと思われる可能性があります」
「つまり、そいつらが吉祥寺のやつらに補足される前に見つけて帰還させなきゃいかんのか……わかった吉祥寺に向かう」
「こちらもスクランブルして追いかけます荒事になった場合は栗原さんは社用機ですから無理はしないで下さい」
「了解!」
電話を切ると素早く飛燕に乗り込みエンジンをかけてすぐにスロットルを開き防空格納庫から自走して滑走路へと機体を移動させているときにやっとみやびが追い付いてきた。
「お姉さま!」
「みやびはスクランブル準備、管制塔と連絡をとってレーダーに注意するように伝えて、緊急事態にそなえなさい」
「わかりました」
みやびが走り去り。
お蛍は方向舵をきって滑走路に沿うように走り出した所でスロットルをいつもの離陸で使う出力より更に大きく開いて半トルクで進行方向を変えようとする機体を方向舵で無理やりおさえ、飛燕を空へと飛び立たせた。