夢から始まる君とのLIFE   作:U.G.N

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 どうぞ



ぶる~べりぃ とれいん

『本日のゲストは先日アイドルを引退した、矢澤にこさんでしたー』

 

「ありがとうございました~」

 

「お疲れ様でーす」

 

「あ、プロデューサーさん。また呼んでくださいね」

 

「おお、にこちゃん。こちらこそよろしくねー」

 

「もう、ちゃんなんて歳じゃないですよぉ」

 

「ははは、まぁ若い頃から知ってる仲なんだからいいじゃないか」

 

「今でも十分若いですよぉ」

 

「……ベテラン扱いして欲しいのか若手扱いして欲しいのかどっちなんだい」

 

「真ん中でお願いしまぁす」

 

「はぁ、まったく、にこちゃんには敵わないな」

 

「プロデューサーさん。今後ともうちの矢澤をよろしくお願いします」

 

「お、マネージャー君もよろしくね」

 

「はい。では我々はこれで失礼します。にこ、次のラジオ少し急ぐぞ」

 

「はいはい。では失礼しまーす」

 

「はいよ。頑張ってね」

 

 

 

 

 

 ふぅ。

 今日の夢もなかなかハードだったわね。

 

 …………いやいや、おかしいでしょ。

 

 何で私は夢の中でガチな仕事してんのよ。いや、これが本当に正夢というか、予知夢なら確かに忙しいのはいいことなんだろうけどさ、夢の中でまでこんなに疲れたくないわよ私。

 

「……ったく。今何時よ」

 

 時計を見る。

 時計の短針がもうすぐ9を指そうとしていた。

 

 そこで昨日のメールの内容を思い出してみる。

 

『明日は私が千葉に行くわよ。10時に千葉駅でいい?』

 

 もう1度時計を見る。

 あと5分ほどで短針が9を指す。

 

「…………やべぇ」

 

 勢いよく布団から飛び出ると、隣の部屋の襖を開ける。

 

「こころ! ここあ! 起きなさい、朝よ! ……あれ? 誰もいない?」

 

 部屋はもぬけの殻だった。

 

「こたろー? あれー、誰もいないのかしら」

 

 リビングに行くと机の上に1枚の紙が置いてあるのを見つける。

 

『遊びに行ってきます。お昼には帰ります

          こころ、ここあ、虎太郎』

 

「わお、更にピンチ!」

 

 ただでさえ自分の準備に時間がかかるのに、こころ達のお昼も準備していかないと。

 

「…………ごめん妹たちよ!」

 

 にこはお湯をポットに移し、カップラーメンを3つ机に置く。

 

 あの子たちにはちゃんとしたものを食べさせたいのに。夕飯はご馳走を作ることにしよう。

 

「さあ、急がないとヤバイわよ」

 

 顔を洗い、歯を磨く。朝食は……なし!

 直ぐに髪にドライヤーをかけ、櫛を通し、いつものツインテールに、ツインテールに

 

 …………今日は下ろしていこうかな

 

「べ、別に意識してるとかじゃなくて、結ぶ時間がないだけなんだから」

 

 誰に言い訳してんだろ。

 

「はぁ、服は昨日のうちに選んでおいてよかったわ」

 

 シンプルに白のワンピースにピンクのカーディガン。

 

「うん。着るのも早いし、昨日の私ナイスチョイス!」

 

 ぱぱっと着替えて最後に薄いピンク色のリップを塗ると準備完了。

 

 はい時間!

 

 9:30

 

 おうふ、絶対無理じゃん。

 

「はぁ、急ごう。あ、でもその前にメールしておこ」

 

 やんやん遅れそうです~たいへん駅までだっしゅ~ってか? 確かに急ぎはするけど、ダッシュはしないわね。遅れるって謝罪メールはしたし、ダッシュしたら汗かくし、髪も乱れるし。だいたい、遅れそうなのに連絡もしないで相手の遅刻を願うとかなかなか大物ね。

 

「あ、私も書き置きしておかないと」

 

 そして、こころ達に書き置きを残すと、私は家を出た。

 

 

 

 10:25

 

 千葉駅の改札を抜けると直ぐのところに見覚えのあるアホ毛を見つける。

 

「ごめん、完全に遅刻したわ。待たせたわね」

 

「いや、ホントマジ待ったわ。メールが来たときはいつも通りドタキャンだと思っ、……たし」

 

 比企谷がそんな男の風上にも置けないようなことを言いながらこちらに振り返ると、途中で動きが止まった。何か悲しい言葉が聞こえた気もしたが気のせいだろう。

 

「……? 誰?」

 

「……はい?」

 

 何故かキョトンとしている。ていうか、誰とか何言ってんのこいつ。

 

「うん? あれ、もしかして矢澤先輩?」

 

「もしかしなくても矢澤先輩よ」

 

「ツインテじゃないからわからなかった」

 

 どうやらこいつは、私のことをツインテールの人と認識していたらしい。

 

「女の子の格好を見て、第一声がそれ? ほら、あんたにはできる妹がいるんでしょ? その妹に口うるさく言われてるんじゃない? ほらほら、こういうときは何て言うの?」

 

 私は両手を広げてクルっと1回転。

 

「……馬子にも衣装?」

 

「ぬぅわんでよ!!」

 

 失礼極まりない。

 

「はぁ、まあいいわよ。それで? どこ行くの?」

 

「は? いや決めてないけど」

 

「は? 何で?」

 

「いや、そっちから誘ったんだからそっちが決めてるものかと」

 

「にこはネズミの国以外、千葉に来たことないのよ」

 

「俺は俺が楽しめるところは知ってるが、女子が喜ぶようなところは知らねーぞ」

 

「うーん。じゃあとにかく、どこかゆっくりできるところに入りましょ」

 

「なるほどサイゼだな」

 

「……いや、サイゼなら東京にもあるんだけど」

 

「流石サイゼだな」

 

「いや、そういうことじゃなく」

 

「不満か? サイゼ。何でもあるぞ? しかもイタリアンでお洒落だ」

 

「いや、知ってるけど……。まぁそれでいいわ」

 

 というわけで、到着早々サイゼに行くことになった。

 まぁ、いろいろとゆっくり話したかったからいいんだけどさ。

 

 もうちょっと、ねぇ?

 

 




 寝坊にこにーでした
 次回、どう見てもデートします。しかし、そんな2人の後を追う2つの影が……
 お楽しみに
 

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