『MUGEN』大の世界を   作:HI☆GE

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書き溜めが無くなるので初投稿です


第六話『実はの話』

「それでは、この時間はクラス代表を決めたいと思う」

 

 唐突に紡がれるその言葉に、俺はやっぱり面倒な事に巻き込まれるのかと、分かっていながらも頭を抱えざるおえなかった。

 何せ俺はIS操縦者(この手の業界)の中では世界第二例……いや、正確には一夏とほぼ同時だから初の操縦者と言っても過言ではない。

 そして周りは既に標的を定めているらしい、全く素直で可愛いから責める事も出来ん。

 

『私は織斑くんが良いかな!』

 

『あ、じゃあ私もさんせーい』

 

『織斑くんの……織斑くんのユニフォーム姿が見たいんです……!』

 

「うへぇ、マジかよ……」

 

「仕方あるまい、イケメンたるものこう言う運命になるのは定めだったのさ……そして勿論俺も」

 

『私はアナスターシくんを推そうかな』

 

『まあ織斑くんと激しい戦いしてるところは見てみたいよね、イケメン同士の熱い戦い』

 

『うんうん、あのちょっとお調子者なイケメンが魅せる戦いの時の顔……!!』

 

『絶対良いに決まってる!!』

 

 俺は顔に笑顔を貼り付かせたまま、人生で最大の面倒事に苦笑せざるおえなかった。

 しかしこうなってくると黙っていないのがオルコットだろう、まあここはオルコットの立場とプライドを尊重して、一夏に推薦させてみるとするか。

 

「なあ一夏よ」

 

「……んだよ」

 

 かなり不機嫌そうだ、まあ一夏は剣道を続けたせいか、少し実力主義者思考が入っていたりする。

 だが、だからこそ焚き付けやすい。

 

「お前、自分が推薦されて不満なんだろ? だったら自分が実力者だと思ってる奴を推薦したらどうだ……例えば、英国のご令嬢とか」

 

「……それだ!」

 

 本来原作ではオルコットは自推と、本来実力で選ばれる代表に対して実力者にしては少しばかり可哀想な扱いだった。

 それだけならまだしも、国家代表候補であり、メインヒロインなのに展開が進むに連れ勝率は悪化の一途を辿るばかり。

 あまりにもな扱いの為、ここでは少しくらい立場を良くしても、と言う俺なりの配慮だ。

 

 原作改変については、一夏をメインヒロイン五人全員と付き合わせるのが目的だし今更だろう。

 それに、他にも原作とは違う点も幾つかあるしな。

 

 と、そうこう考えてる内に一夏の手が挙がる。

 

「それなら俺は、セシリアを推すぜ。このクラスの中の二人いる代表候補生だし俺もセシリアの実力は知ってるし、みんなも知ってるだろ? だから推薦されるのは自然だよな?」

 

「……成る程、と言ったところですわね」

 

「ぐっ……確かに理解できるが、何とも言えぬ悔しさが……」

 

 クラスのみんなも納得と言った形で同意する、やはりイケメンの影響力と説得力が兼ね合わさると最強だな。

 そして予想通りオルコットからの評価は上がったか。

 箒は……まあ、もう少し待っていただくより他ない。

 

 まあそれはさておき。

 

 この流れなら俺も推薦する流れだろう?

 

「それなら俺はフィナを推そう、二人いる代表候補生の内一人が推薦されたなら当然。それに俺の自慢の彼女だしな! 寧ろそっちがメインだ! フィナの実力をみんなに見てもらうチャンスなんだからな!」

 

「ま、まあそこまで言われたらやるしかないじゃなあい?」

 

 

 流石は俺の彼女、チョロい、チョロ可愛い。

 

 そしてこれで四人と言う一クラス内ではかなりの多さでの代表決定戦となる訳だが、ここで問題になるのはIS自体の性能差である。

 

 フィナ、オルコット、一夏の三人にはそれぞれ前者二人が代表候補生上位勢だから専用機持ち、一夏にもそろそろ白式が届く手筈となっているが、実のところ俺には専用機を動かす実力は無かった。

 実は俺が動かせたのは打鉄とその後束さんのところで実験してみて動かせた鉄だけ、ラファールすら起動しない謂わば俺のIS適正値は最低基準となっているのだ。

 

 そう言う事で一度ゲーニッツにも尋ねたのだが、曰く自身はISを動かせる様に運命操作をするだけの存在であり、その後の適正値云々に関しては文字通り神頼みしか無かったらしい。

 

 全くもって不幸だが、打鉄を打鉄の範囲内で改造、基装備をソードから自立型AI搭載カートリッジに変更した。

 このカートリッジは、夢の中で修得した能力をISにインストールする役目を果たしており、打鉄に差して俺が乗り込めば勝手に記憶を覗いて使える様にしてくれるらしい。

 カートリッジの性能はそのまま、修得した能力、引いては攻走守にスタミナの多さまで修得した分コピーしてくれる能力だ。

 

 ここまで、その能力を使いまくれば問題は無い様に思えるが、それはあくまでIS内の事であり俺自身に貫通するダメージは打鉄の性能そのままである。 

 何が言いたいか……それは、最悪俺が死んでもISだけは機能し続けるゾンビになりかねないと言う事だ。

 

 全くとんだ欠陥持ちになってしまったものだ……前世に比べれば、有り余るくらいの優良な身体だが。

 

 そんな訳で国家代表候補生+主人公補整で全敗必至の俺は、今から既に三人に対抗出来る能力構成に躍起になっていた。

 

「ならばこの四人で一週間後、総当たり戦を行う。良いな?」

 

「やってやるぜ! 一度どころか三度も強敵と戦えるんだから燃えない訳がない!」

 

「……手加減は出来ませんわよ。目指すべきライバル(フィナ)が見ている前で無様な事なんて、出来ませんもの」

 

「あらあ? 嬉しい事言ってくれるじゃなあい? それなら私も、全力でイカせてあげるんだから」

 

「あーあ、沢山の美少女の前で恥はかきたくないんだがなあ……やれやれ、参ったね」

 

 一夏含め三人は乗り気らしい、こっちの気は知らずに。

 

 取り敢えずは、何とか勝負になる様にこっち(リアル)での修行も増やさないといけないかな、と呟くより他なかった。

 

 

 

 

 

 

「んで、取り敢えずは箒と一戦やってから方針を決めると。一夏にしちゃ随分と計画的な」

 

「ああ、まずは自分がどの程度力があるか確かめてからじゃないと、練習が無駄になりかねないからな。あと一夏にしちゃは余計だ」

 

「ハッ、お前はそろそろ専用機が用意されるだろうし良いさ……俺は、俺なんてなあ……」

 

「だから私が色々教えてあげるって言ってるのにい……」

 

「まあ、いくら女の人のほぼ専売特許のISの事と言えど、男の方は女の人に教えを乞うのを嫌がる傾向がありますから」

 

「そんなものなのだろうか……」

 

 昼下がり、午前で授業は終わり俺、一夏、オルコット、フィナ、箒でのんびり昼食をとっている。

 で、やはり五人中四人がクラス代表戦に出るとなれば話は自ずと今度の代表決定戦になる。

 

 そこで話題になったのはやはり、俺と一夏の師匠役になった。

 まあどっちも女性に教えを乞うのは嫌と言う断固たる決断に至ったのだが、そうなるとどうやって鍛えるか……待てよ、確かもうすぐ七夜死貴とあと何人か七夜一派が来れるって言うのとジョニーがこっち側に来れるとか聞いた覚えがあるな。

 

 七夜は短剣……と言うよりナイフ主体で白式の雪片弐型とはスタイルが違うが、そこはまあナイフをサブウェポンとして持たせてしまえば良いだろう。

 問題は一夏が暗殺術を好まないと言ったところだが、そこは何とか説得して修得させるか。

 

 そしてメインのジョニー、しかもゴールドオーラ。

 こっちは正に一夏の零落白夜と金ジョニーの超火力ミストファイナーで、同じ一撃必殺型の師匠としては最適だろう。

 

 

 まあ、それはそうとオルコットは流石良く分かっている、男はちょっと見栄っ張りなのだ。

 女の子の事は守りたい存在ではあれど、守られるのは格好が付かない、そう言うのが男である。

 

「全くオルコットの言う通りだ、男として少しは格好付けさせてくれって話さ」

 

「応ともさ、しかも今、何となく龍仁が秘策を考え出した様な気がしたし」

 

「秘策、ですの? まあ何はともあれ、その秘策ごと吹っ飛ばすのが私の役目ですわ」

 

「……私には皆目検討が付かんな」

 

「あらぁ、私はすーぐ思い浮かんだわよぉ?」

 

「だろうな……」

 

 MUGENの住人に指導してもらう……そんな事露知らずの二人とは対照的なフィナ。

 同じMUGENの住人であるならばバレるだろうとは想ったが、一瞬でとは……流石はフィナ、俺の嫁である。

 

「なあに、にやついちゃって」

 

「いや、流石は俺の嫁だなと」

 

「ブッ! ゴホッゴホッ……りゅりゅりゅりゅりゅりゅりゅりゅ龍仁はいきなり何を……」

 

「あれ? いやだっていつも言ってるだろ、『俺はフィナとしか付き合う気は無いし一生涯俺の全人生を持ってお前と添い遂げる』って」

 

 何時の間にやら話を聞いていた外野が大歓声に包まれていた。

 全学年の殆どの学生が今いるのだから当たり前だろうが、そんなに沸き立つ様な事だろうか。

 

「……ま、良いか」

 

 隣であたふたしてる可愛い彼女を見つめながら、そう思った桜満開の日の昼下がり。

 

 

 

 

 因みに、後で顔真っ赤にしながらフィナに説教を受けたがそれもそれで可愛かった事を追記しておく。


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