『MUGEN』大の世界を   作:HI☆GE

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主人公の師匠の中に然り気無くいるカオスとネタの権化


第三話『俺の彼女は可愛くて純情乙女』

 ――日の光が差す、どうやら朝らしい。

 

 ふと目覚まし時計を見るがまだ午前六時前である、余りに今日が楽しみで早く起きすぎてしまった様だ。

 もう一眠りしようか……そう思考を巡らせると、俺の隣がモゾモゾと動いた。

 

 ああ、今日も俺の布団に入ってきたのかコイツは。

 言葉だけなら鬱陶しそうに、声質も含めると実に優しく愛おしい者に語りかける様に。

 

 布団をソッと捲ると、そこに見えたのは紅い髪の毛に赤い可愛らしいパジャマを着こんだ見た目十代前半の女の子、もとい俺の彼女こと『アナザーブラッド』が可愛らしい寝息をたてて寝ていた。

 

 まあ例の如く彼女はその呼び方を嫌っているので、以下はこの世界で使っている名前の『フィナ』で通させてもらう。

 

 彼女は知っての通りMUGENの住人である。

 デモンベインの存在とはまた違う存在に値するので、その点はご留意願いたい。

 

 気を取り直すが、出逢いは俺が十歳の頃、近中遠と基本型と師達の大体の得意分野を覚えた俺は次に当身……つまりはカウンターアタックを磨く為当身の上手いキャラで真っ先に浮かんだ彼女に頼みに行ったのだ。

 

 意外にもすんなり引き受けてくれた彼女は、毎日の様に気の抜けた様な猫撫声で殺しに来ていたから肝の冷える様な地獄だった。

 だがそのお陰か、当身に関してはものの二ヶ月で彼女に認められるまでになりその頃には親交も他の人達より深まっていた。

 

 それで何だかんだと過ごし、いつの間にか恋人という関係になり今に至る。

 

 因みにだが、何故フィナが(うつつ)の世界に存在出来るかと言うと、ゲーニッツ曰く絆が深まったMUGENの住人は現の世界に呼び出す事が出来るらしい。

 五歳の頃から師として仰いできたゲーニッツや七夜一派や上条さん、ジャギやジョニー、HIGE、高野レンと言った人達より早く絆が深まったのは、まあ何処か不思議だとは思ったがそれが運命の出逢いと言う事だろう。

 

 まあ、不思議ではあるが俺は彼女と出逢えて良かったと思っているし愛している、フィナも俺の事が好きで仕方ないらしいので、何時までも気にしている方が野暮と言うものである。

 

「ったく、滅茶苦茶に可愛い寝顔をしよってからに」

 

 間近で見れば分かるが、やはりフィナも人間の女の子と変わりない。

 きめ細やかな柔肌、ふわりと良いシャンプーの香りが漂う綺麗な髪、胸は無いがその分密着率の高い柔らかくて暖かい身体……いや、寧ろ俺は貧乳の方が好みであるから俺にとってフィナという少女はまず見た目からして完璧美少女なのだ。

 

 そして肝心の性格はと言えば、元のエロチックな雰囲気の言動は健在なものの、意外にも純粋な乙女な部分もあり、それが上手く混ざり合った結果性格も俺が求める絶妙なポイントにフィットしている。

 

 正しく俺の好みそのものの美少女が彼女という事だ。

 まあこの十年間日々欠かさず鍛練を積んできたのだ、それくらいのご褒美があってもおかしくはないな。

 

「……さて、もう少し寝てるかな」

 

 起きるまであと一時間も無い、何なら起きても良い時間でもあるが折角愛しの彼女が横で寝ているシチュエーションがあるならそれに甘えてしまっても許されるだろう。

 

「……実は起きてたりして。なんて、まあ起きてても良いか……もう少しだけ、お休み」

 

 頬にキスをして、目を瞑る。

 

「~~ッ!」

 

 ……どうやら狸寝入りしていたらしい、俺の服をギュッと掴んでくる感触を覚えた。

 きっと今のフィナの顔は、いつも来ている深紅のドレス……のスケスケを無くした改良品以上に真っ赤だろう。

 本当に起きていたのは予想外だったが、いつも可愛い顔してエロチックな事を言う割にすぐ赤面するところが可愛すぎるので良しとしよう。

 

「……寝てる、わよねえ~?」

 

 狸寝入りしていた本人が狸寝入りしている俺に気付かないとは、攻めるのは好きでも攻められるのは弱いサドスティックキャラの典型だろうか。

 しかしここで反応するのも無粋だ、フィナが何をするか見てみるのも一興というものだ。

 

「えいっ」

 

 等と面白半分に思っていたが、予想以上にフィナは乙女らしい。

 そそっと俺の方に身体を寄せたかと思えば、ギュッと俺の背中を抱き締めてきたのだ。

 いつもは胸を気にしてなのかあまり抱き着いてくると言う事は無かったのだが。

 俺としては、貧乳の方が身体の密着率が格段に上がる上に貧乳を気にしていると言う仕草が好きなタチだから何時でも抱き着いて来てくれて構わんのだがな。

 

 ま、兎に角今は役得ってやつを堪能しておきますかね。

 

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 

 

 結局あの後、あまりに愛おしくなってしまった俺がフィナを抱き寄せてしまい狸寝入りがバレ、一悶着あったがただの痴話喧嘩染みた事だったので割愛させてもらった。

 

「フィナぁ、狸寝入りしてたのは悪かったから多少は気を直してくれって」

 

「だってえ……龍仁に私の貧相な胸の感触を知られたからあ……」

 

「あー……その、俺言ってなかったけど俺は胸が大きい女より、抱き着いた時身体の密着率が上がる貧乳の方が好きなんだが」

 

「……え?」

 

「やっぱり気付いてなかったか……」

 

 実のところ、俺はフィナに自分が貧乳派だと言う事は出逢ってから今まで完全に伏せていた。

 と言うのも、貧乳の女の子に『それはステイタスだ』『需要はある』『俺は好きだ』と言った感じでアピールしても逆に傷を抉るだけだとラノベやアニメを見て知り、敢えて言わなかったのだがそれがどうにも災いしてしまったらしい。

 

「そ、それじゃあ私が今まで気にしてた事って……」

 

「だからあまり抱き着いて来たり、情事をするにしても肌を積極的に見せなかった訳か……それが可愛かったから全く気にしてないけどな!」

 

「もう……じゃあ今度からはぁ、積極的にえっちな私を見せてあげるんだから!」

 

「おう楽しみだな」

 

 とは言っているものの、情事に関しては毎度毎度この子は純情で『エロ本』と呼ばれていた彼女の姿は無かったりする。

 意外にも現在彼女が激しく痴女化するのは主に戦闘時だけで、俺と恋人になって以降それ以外でのエロチックな発言はまあ普通にあるものの、痴女と言う程の事には至っていない。

 

「それよりも今日は入学式なんだからあ、もうそろそろ出た方が良いんじゃないかしらぁ?」

 

「ん、それもそうだな。何よりフィナには代表候補生としても余裕を持った態度でいさせてやりたいしな」

 

 そしてフィナは、今言った通りISの代表候補生だ。

 国籍としては、これもまた後で細かい説明はするが一応家の養子になっているからイタリアの代表候補生と言う事になっている。

 この世界に来てからまだ三年も経ってないと言うのに代表候補生になるとは、やはり俺の彼女故だろうか。

 代表候補生としての強さも加筆しておくと、今のイタリアの全パイロット含め四番目の強さらしい。しかもこの時点でほぼ独学な上にイタリアは日本と並び候補生が世界最高峰のレベルと謳われている。

 取り敢えず三年未満でその世界最高峰の一つイタリアのNo.4と言うのがどれくらい凄いかと言うと、原作の一年代表候補生なら涼しい顔で倒せるくらいであり、代表候補生就任の時には大々的に全世界に向けてニュース報道されるくらいの凄さ。

 

 因みに一年どころか三ヶ月足らずで代表候補生になり、半年経つ頃には代表候補生の強さとしても既に中堅だった事も追記しておこう。

 

 兎に角だ、俺の彼女は可愛くて強くて天才、そう言う事だ。

 

「さて、じゃあ行きますか」

 

「あ、龍仁ぃハンカチ持ったぁ?」

 

「はいよ」

 

「ティッシュはぁ? それと髪の毛少し跳ねてるわよぉ? 制服の襟も少しまがってるしぃ……ほらこっち来て。んもう、私の彼氏なんだからもう少ししっかりしてよねえ?」

 

「わりぃわりぃ、でも献身的な彼女を持てて俺は世界一の幸福者だな」

 

「そ、そんな事言ったってキスくらいしか出ないんだからぁ……」

 

 何やらフィナが俺の母親みたく見えてしまったが、献身的な彼女と言うのもまた可愛いので良しとしておく。

 因みに親父と母さんはいつも朝早くから一流企業で働いてるから俺達が起きる頃にはもういなかったりする。

 ただ今日は書き置きで『二人共入学おめでとう。暫く会えなくなるのにその当日にいられなくてごめんなさい、でもメールはちゃんと一日三回は送るから許してね 母と父より』と相変わらずの溺愛っぷりで安心していたりする。

 

「じゃあそのキスを下さいな」

 

「うぅ……分かったわよぉ……チュッ」

 

「うんうん、やはり三度の飯と睡眠よりフィナのキスに限るな」

 

「もうっ、本当に恥ずかしい……」

 

「こっちとしては入学式の朝っぱらから糖分過剰摂取でぶっ倒れそうだわ」

 

「んお……何だ一夏か。まあそれは良いが一夏くん、地獄へ逝く覚悟は出来たかな?」

 

 フィナにキスをしてもらう、それにより甘い空間に俺達はいたが偶然来た一夏によって一旦お預けとなった。

 

 何かしらの文句でも言ってやろうかとも考えたが、ブルーな雰囲気を醸し出していた為に多少からかう程度に収めておいた。

 何せこれから君には原作で構成していたなんちゃってハーレムを、本物のガチハーレムにしてもらうのだからな、と心の中で黒い笑みを浮かべながら。


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