『MUGEN』大の世界を   作:HI☆GE

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え!?IS世界に転生した!?
メインヒロイン全員一夏ハーレムに組み込まなきゃ(使命感)


第二話『入学前日の夜』

 実に静かな夜更けである。

 桜の仄かな香りがそよ風に乗り鼻孔を突き抜け、ふわりとした空間を作り出す。

 こうも優しい空間にいると、つい自分の第二の人生を思い出す――たかが十五年と幾何か、ではあるが。

 

 とは言え語れるのは五歳の誕生日からの十年程度である、何せあの微睡みの中眠り次に『俺』として目覚めた時が五歳の誕生日だったからだ。

 どうやらそれまでは、平均的な子どもの精神を適当にコピーしていたらしい。

 

 折角だ、少しその時の昔話でもしてやろう。

 

 

 

 

 五歳の誕生日、俺はその日の朝に意識が『覚醒』した。

 産まれた直後以来の自我、しかし俺にとってその五年はほんの少しにしか感じられなかった、否寝たと思って普通に起きる感覚で起きたら五年経っていたのだ。

 

 この現象はある程度検討はついている上、行動が縛られている時間を飛ばせたと言っても過言でない為然程気にしてはいない。

 

 親はと言うと、両親揃って馬鹿かと言う程溺愛してくれている。

 しかし、そこに隔たり……つまりは偽りの気持ちは一切見当たらなかった。

 そう、本物の愛情だ。健康な身体と愛情、たかがそれだけで俺はこの世で生きる、生きていく意味を完結させた。

 俺にはそれだけで十二分、いや二十分に足り得る答えだった。

 

 

 その日の夜、眠りに就いた俺は何時の間にやら知らない場所……いや、前世の俺なら知っていた場所に来ていた。

 それは紛れもなく『MUGEN』の世界、無限の可能性を秘めた闘技場。

 その観客席に俺はいた。

 

 どうなっているのか、それを把握する前に観客席がどっと沸く。

 

 思わず闘技場に目を向けると、そこには黄金のオーラを醸し出すアカツキとそのすぐ後ろにいる聖白蓮のタッグが、楓と雪のタッグと壮絶な死合を行っているのが見えた。

 

 生での試合なんて見てるはずが無いのに、どうしてか高度且つ接戦の死闘の優劣の目星が一瞬で付いていた。

 

 互角の削り合いに見えて、ほんの僅かに楓・雪タッグの方が削られるスピードが早い。

 そのダメージレースに早めに気付きさえすればまだ手の施し様もあったのだろうが、如何せん雪が気付くのがほんのコンマ数瞬程度楓とアカツキ・白蓮より遅れてしまった。

 これがアカツキ・白蓮より早く気付きさえしていれば勝てていたのだろうが、それが命取りになった。

 

「歯を、食い縛れええええ!!」

 

 気付いたと同時に出来た一瞬の焦りを見逃す訳もなく、白蓮がいち早く楓を、体力を犠牲にし押し飛ばしそのまま雪諸ともフィールド脇まで押し込み、待ってましたと言わんばかりにアカツキの神風が炸裂。

 二人纏めて壁に直撃、楓の意識が少しだけ残っていたもののすぐ地面に伏し、楓・雪双方気絶でアカツキ・白蓮タッグが見事激戦を制した。

 

「漸くお目覚めですか」

 

 ふと隣に座ってきた男がそう質問する。

 俺は突然の事に少したじろぐも、声と顔で誰が話し掛けて来たのかを察した。

 

「久し振り……と、言えば良いか。俺にとって空白の五年は数瞬に過ぎなかったが……大方、俺の精神年齢に今の身体が結合出来るまで眠らせておいた、と言ったところだろうが」

 

 ご名答、そう俺の予想に答える笑みを浮かべた金髪で大柄な男は俺をこの世界へ転生させた張本人のゲーニッツだった。

 

「正確に答えるのならば、そこに『違う次元の魂の矯正』も加わりますがね……そうでしょう? 何たって貴方から見た今の私は、アカツキや白蓮達は『二次元』として貴方の目に映っている」

 

「そして俺さえも二次元としてここに居る……成る程、魂の矯正と言うのも上手い事言ったもんだ」

 

 そう、見える光景全て、そして自分までもが二次元の存在なのだ。

 五歳まで眠っていたのは、魂を二次元の世界に置ける、つまりは二次元の身体に魂を入れる為に矯正を行っていた為に眠っていたと言うところだ。

 

「……で、俺はこの世界に来たからにはISに乗って、んで例の『世界情勢に抗っていく為の手段』ってのは大方この『MUGENの世界』ってところか?」

 

「ええ、貴方にはこの世界固有の戦闘兵器……もといISの搭乗者になっていただきますが、その上で変化を持たせる為に就寝中魂を此方の世界に移して各技を当人達から伝授される為の修行と試合、そして交流を行ってもらいます。

 生身でも覚えようと思えば全ての技を覚える才がある様に一応魔改造……もとい魂の矯正を行っていますが、威力や身体への負担が不安定になるのでISに乗り、その技を使おうと念じ動けば使える、つまりISの性能になると言う風になっています」

 

「成る程……」

 

 つまり一回や二回全力全開で闘っても、戦闘スタイルを変えれば相手に攻略されると言う事が無い訳である。

 ただし勿論当人達ではないのでその技はコピーの類い、100%どころか70%使いこなせるかくらいの器用貧乏に落ち着くだろう。

 なので俺の戦闘スタイルは、それを幾つも生み出し組み合わせ、相手に読まれない様に立ち回っていくものになる。

 

「勿論、私を指名して下されば何時でもお教えしますよ」

 

「そうか、それなら遠慮なく教えてもらうぜ」

 

 

 

 

 

 あの日から十年と数ヶ月、 俺は入試の時わざと入試会場を間違え、無事一夏と共に明日IS学園入学を控えている身となった。

 一夏はこの世の終わりの様な顔をしていたが、俺は寧ろ大歓迎である。

 

 何せこの世の絶世の美少女達が集まる場所なのだから、男にとっては桃源郷の他の何物でもないのだ。

 因みに一夏とは小学生の時からの友人だが、一夏の事は昔から女好き(プレイボーイ)なのか男好き(ホモ)なのか判断が付かない。

 女の子に囲まれワイワイしている事が多いが、かと言って恋人を作る事も異性的な意味合いでの好意を抱く事も無い上相手の好意に気付く事さえない。

 

 ……ほら、また一夏から電話が掛かってきた。

 ここ最近どうにもこの手の愚痴を聞く電話が一夏から頻繁に来る。

 まああの鈍感野郎には、女性の好意を全身に浴びながら過ごした方が荒業ではあるが治療になるだろう。

 

「はいはい一夏くん、もう観念しろって」

 

「くっ……俺は共学を諦めんぞ! 俺は共学を勝ち取る為なら世界さえも敵に――」

 

「姉を敵に回すとしたら?」

 

「それは無理がある」

 

 一夏の姉――現在ISを纏った状態でなら人類最強の存在を出した途端にこれである。

 全く、世界を敵に回せる度胸があるなら人類最強が敵に回ろうと似た様なものだろうに。

 

「なら諦めたまえ、そもそも女の園へ行けるなんて人生薔薇色だろうに」

 

「お前はほんっと生粋のイタリア人みたいな事言うよな」

 

「それはイタリアじゃ誉め言葉だぞ、後父親がイタリア人な時点でそれは察してもらいたいのだがな」

 

 そう言えばいい忘れていたが、この話に出てきた様に、俺はイタリアと日本のハーフだ。父親がイタリア人、母親が日本人。

 丁度良い機会でもあるから序でに俺の名前も出しておくが、俺の名前は龍仁(りゅうじ)・アナスターシだ。

 

 親父は生粋のイタリア人男性らしく女好きであり、今でもちょっとばかし冗談めかして他の女の人に口説き文句を言ってるそうな。

 母さんの仏の様な、最後元鞘に帰ってくるならまあ良いだろ的性格のせいだろうが。

 俺もその影響を直に受けたせいだろう、かなりの女好きと化している……因みに加筆しておけば、俺は彼女持ちだ。

 

 そう、幾ら彼女を持っていようとも、美少女や美人にはちょっと話し掛けたくなってしまうのは父親からの遺伝子故だ。

 

 しかしだと言って他の生粋の日本人……例を挙げるなら俺と一夏の友人である弾を筆頭とした多くの人間は一夏の境遇に羨ましいと怨念を送っているくらいには嫉妬される立場にある。

 

 そのせいで弾からの嫉妬めいた愚痴と、箒・鈴から受けた泣き言や愚痴は最早数えきれん。

 こうなれば原作開始と同時に本気で一夏に本当のハーレムを形成させてやるか……ヒロインは原作序盤で全員好感度は上限突破している様なものだ、ちょっとけしかければ直ぐにでもくっつくだろういや直ぐにでもくっ付けさせてやる。

 

 取り敢えず狙い目は初期の時点で既にいる箒とセシリアか、まあどちらかとくっ付けば後はなし崩しだろう、一夏の無駄に鈍感な性格と狭い視野を少しでも直せれば問題ない。

 彼女らの気持ちを多少無下にする様な事も言うかも知れんが、そこはハッピーエンドの代償というものだ、恨んでくれるなよ。

 

 俺はそう思いながら、未だ泣き言を連発する友人を無視し通話を切った。


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