武昭達が中学2年生の夏休み………
「よいしょっと……到着したけど………武昭は……」
「何とか………大丈夫………ウップ……」
新幹線から武昭と唯が降りたが武昭は乗り物酔いをしていた。
「今は強がらなくて良いよ………ほら………肩貸してあげるから………」
「あぁ………悪いな………唯………」
「気にしないで………武昭の
うーんと……確か………あっ、百ちゃん………」
「唯さん!武昭さん!……どうしたんですか!?」
唯が待ち合わせをしていた百を見つけて声をかけると近くに駆け寄って来たが
武昭を見て驚いた。
「うーんとね……武昭は、ちょっと乗り物酔いしちゃったんだ……」
「そうですか!では、すぐに私の家へ向かいましょう!こちらです!!」
武昭と唯が百に連れて来られた場所には黒いリムジンがあり、それを見た武昭と唯は軽く顔を引きつらせた。
「えっと……百さん?………ここから歩いて行くと言うのは………」
「大丈夫ですわ!この車は最高級の衝撃吸収機能を備えているので快適な乗り心地となってます!!」
「ハハハ……じゃあ………お言葉に甘えて………乗ろう?武昭………」
「あ、あぁ……そうだな………」
武昭と唯は観念した様な表情でリムジンに乗った。
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その後、暫く車に乗ってると大きな屋敷に着き、そのまま中に入っていった。
「えっと………百……ちゃん?……もしかして………ここが百ちゃんのお家……なの?」
「えぇ、私の家ですが……何か不都合でも?」
「ううん、何でもないよ……(そっか…百ちゃんからすれば、これが普通なんだ……)」
唯は百の態度を見て納得した。
「それよりも………武昭さん………本当に大丈夫なんですか?」
「あぁ……少し休めば………治るから………」
百は顔色の悪い武昭を見て心配していた。
「おぉ 君たちが百が言っていた友達か」
3人が話してると白髪混じりの黒髪の恰幅のいい男性が傍に来た。
「えぇ、そうですわ、お父様」
「初めまして……小大唯と言います………」
「こんな感じですみません……創史武昭です……」
「私は百の父親の八百万 千(やおよろず せん)だ。
ハハハ、気にしなくても良いよ、気分が悪いのなら部屋を用意させるから」
「はっ、かしこまりました。それではコチラヘどうぞ」
「どうも、すみません……お言葉に甘えさせてもらいます……」
千が何か合図をすると1人の執事が現れて武昭を連れて行った。
「それでは、唯さん私の部屋へ案内します」
「うん………分かったよ百ちゃん……」
唯は百に連れられてその場を離れた。
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それから、しばらくして……
「あぁー だいぶ具合が良くなって来たか………」
「私だが、入って構わないかね?」
「あっ、はい どうぞ」
武昭が休んでると千が入って来た。
「ありがとうございます、こんな豪華な部屋を用意してくれて」
「いや、この位は大した事ないよ、それよりも……」
千は近くにあった椅子に座ると鋭い視線を武昭に向けた。
「君の事は軽く調べさせてもらったが………単刀直入に聞こう………
君はうちの娘……百の事をどう思ってるんだね?」
「は?どう思ってるって……百は俺の友達ですけど………それ以外に何かありますか?」
武昭がそう言うと千は真っ直ぐ見た。
「ふむ……どうやら、君は正直な様だね………変な事を聞いて済まなかった……
私にとって百は大切な娘なのだ………だから………」
「分かりますよ………大丈夫です………
俺は何があっても百の友達です……
武昭が服の上から紋章を触ったのを千は黙って見ていた。
「さてと、そろそろ乗り物酔いも治ったんで2人の所に行ってきます。
ありがとうございます、部屋を用意してくれて」
「気にする事は無いよ、部屋はこのままで良いから……」
千にお礼をした武昭は部屋を出て行った。
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一方、唯と百は百の自室で話していた。
「家も凄いけど、部屋も凄いんだね………」
「はぁ……私は生まれた時からこの部屋でしたから思いませんでしたが……
唯さん達からすれば、その様に見えるんですね……」
「けど……そんな事気にしなくても良いよ………だって百ちゃんは友達なんだから………」
「ありがとうございます、唯さん………所で武昭さんは、大丈夫なのでしょうか?」
「ハハハ……武昭の乗り物酔いは仕方がないからね……
あっ、それよりも百ちゃんてどんな個性を持ってるの?」
唯は話題を変える様に話し出した。
「えぇ、私の個性は【創造】と言うものですわ。
私の体から生物以外のあらゆる物を作り出せるんですの、この様に」
百は服を捲るとお腹から幾つかのマトリョーシカ人形を作り出した。
「そうなんだ………けど、それは男の人の前じゃやらない方がいいよ………
今は私だけだからいいけど………」
「はぁ………唯さんが、その様に言うのなら……」
百は頭を捻りながら服を着なおした。
「それで唯さんの個性はどの様なものなんですか?」
「うん……私の個性は【サイズ】って言うんだ………こうして……ほら………」
唯は百の目の前で同じ位の身長に大きくなった。
「その様な個性だったのですか、かなり融通性がありそうですね」
「そんなに凄くないよ………変えるのに、それなりに時間が掛かるし………
それよりも百ちゃんの方が使い勝手がいいよ……」
「その様な事はありませんわ………
私が創造する時には、その作る物の分子構造まで理解してなくては作り出せませんのです」
「そうなんだ………どんな個性でも何らかのデメリットはあるって事なんだ………」
2人が話してると誰かがドアをノックしたので百が開けると武昭だった。
「武昭さん、体は平気なのですか?」
「あぁ、休んだら大分良くなったよ、それよりも何をしてたんだ?」
「うん……私達の個性について話してたんだ……」
「そう言えば……前に武昭さんが私達を救ってくれた時に………
「あぁー そう言や、言ってたっけ………」
武昭は頬を軽く掻きながら視線を逸らした。
「あの後にフェアリーテイルと言う言葉が気になって調べたのですが
その様なヒーローや事務所などは存在していなかったのです。
フェアリーテイルとは何なのですか!それに魔導士とは一体!?」
「いや、その、それは……」
「武昭……話した方が良いよ……百ちゃんなら無闇に話したりしないから……」
「唯……」
「それに……そのままだったら………何か起きそうだし……」
そう聞いた武昭と百が自分達を見ると百が武昭に覆い被さっている様な体勢だったので
気付いた百は慌てて離れたが顔が赤かった。
「す、すみません武昭さん!わ、私興味を持ったものには、その……」
「別に気にしてないから、落ち着け……」
「は、はい……分かりました………」
「それで、これから俺が話す事は両親と唯しか知らないし………
全て真実だ………どう思うかは百次第だ……
けど、どんな風に思っても百は俺の友達で仲間である事には変わりはない
それだけは信じてくれ………」
「武昭さん……分かりました、どの様な事だろうとも、私は、それを受け入れます」
「そうか、ありがとうな百……じゃあ……」
武昭は自分の事を話し出し、そして百はそれを黙って聞いていた。