魔導師のヒーローアカデミア   作:北方守護

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約束と本気……

武昭が相澤と根津に〔ある事〕を話した後……

雄英内に幾つかあるトレーニング室の一つに来た。

 

そこのトレーニング室は個性を自由に使う事が出来る場所であり

その中央では体操服を着た轟が待っていた。

 

「悪いな轟、ちょっと相澤先生に話したい事があったからな」

 

「いや、俺から頼んだ事だから気にするな………

ウォーミングアップをするなら早くしてくれ」

 

「大丈夫だ、どんな時でも行動出来る様にはしてるからな」

 

「じゃあ始めるけど……勝敗はどうする?」

 

「簡単に どちらかが戦えなくなったらで良いんじゃないか?

開始の合図は、このコインが地面に落ちたらで良いか?」

 

「俺は構わない………って、どうして俺に?」

武昭はコインを出すと轟に投げ渡した。

 

「あぁ、俺が出したコインを轟が落とせば公平だと思ってな」

 

「そうか……なら、やらせてもらう………」

轟がコインを空中に弾くと同時に2人は軽く構えた。

 

(前に創史は俺の氷を食いやがった……だから……)

 

(へっ……こうしてると、直ぐに服を脱ぐ氷の魔導士の事を思い出すぜ……)

 

チャリン

コインが地面に落ちたと同時に轟が氷で攻撃してきた。

 

「幾ら何でも、この速さなら直ぐに対処は無理だろ!」

 

「へっ!先手を取ったと思ってるけど、ソイツは悪手だ!」

武昭は向かってきた氷を素手で殴り壊した。

 

「チッ!どんな個性を使えば、そんな事が出来るんだよ!!」

 

「オッ!俺が氷を壊すと同時に向かってきたか

なかなかいい感じだ けどな!」

武昭は向かってきた轟を蹴り飛ばした。

 

「どうした、轟?まだ終わりじゃないだろ?」

 

「当たり前だっ!(くそっ!創史の奴、こんなに強かったのか)」

 

「ホラホラ!攻めるのも良いが守りが薄くなってるぞ!」

 

「ガハッ!ケッ、重いパンチしやがって!!」

 

「確かに轟の個性は強力な能力かもしれない……

けどな、どんな個性であれ自身の地力が弱かったらダメなんだよ!」

 

「何だよ、その言い方は……俺が弱いって言ってるのかよっ!?」

 

「いや、違うよ轟は弱いんじゃなくて弱くしてるんだよ………

自分で自分をな!」

 

「どういう……事だよ?………」

殴り飛ばされた轟は口の血を拭いながら睨みつけた。

 

「確か轟の個性は【半冷半燃】つまり氷と炎が使えるんだよな?

けど、今の今までお前は氷しか使ってないだろ……

だからお前は弱くなってるんだよ!」

 

「うるせぇ……テメェに何が分かるんだよ!!」

 

「あぁ、俺には分からないよ!火竜の煌炎!!」

轟が氷塊を飛ばして攻撃してきたのを武昭は両手に作り出した火の玉で相殺した。

 

「俺には轟が炎を使わないのも氷だけで戦おうとするのも分からないよ……

けどな、どんな個性であれ轟の力じゃねぇのか!?」

 

「そうだとしても、俺は炎を使おうとは思わねぇよ!」

 

「あぁ、そうかい………だったら()()()()()()()()()で行かせてもらうぞ」

轟の態度に武昭の雰囲気が変わった。

 

「本気って………今まで手加減してたって事なのかよ!?」

 

「まぁ手加減と言えば手加減だな、けどな、俺からすればそれは仕方ないんだよ……

俺の信念と言っていいのか分からないけど……仲間には本気で戦えないんだ……

俺にとって仲間は守るべき者で家族みたいな物だって思ってるからな……」

 

「そうなのか………」

 

「けど……ここからは、轟……お前の事を倒すべき(ヴィラン)として相手をしてやる」

 

(くっ……なんだよ……この気迫は……これが創史の本気だって言うのかよ……?

何か大気が震えてるみたいだ……)

 

「どうした?向かってこないのか………」

 

「チッ!そこまで言うなら乗ってやるよ!!(くそっ!何で体が動かないんだよ!?)」

轟は武昭に向かおうとしたが一歩が踏み出せなかった。

 

「どうやら、体が無意識に戦う事を拒んでるみたいだな……

だったら、これで終わらせてやるっ!」

 

「なっ!しまった!氷が間に合わない!!……」

武昭が殴りかかってきたのを轟が目を閉じて堪えようとしたが衝撃が来ないので目を開けると

武昭が顔の寸前で拳を止めていた。

 

「この勝負は俺の勝ちみたいだな」

 

「あ、あぁ……完璧に俺の負けだ………」

 

「轟………お前が炎を使わない理由は俺には分からない。

けど言える範囲で言うと、どんな個性であれ轟自身の力だ。

それを使える様になれば轟は今よりも強くなれる筈だ」

 

「炎を使えれば……だろ?」

 

「そうだ、これから先ヒーローになった時に氷が効かない相手をする事になったら

どうするんだ?それで人を助ける事が出来なかったら………

その時に心が傷付くのは轟自身なんだぞ………」

 

「心が傷付く……創史、その話し方だとお前にも、そんな事があったみたいに感じるぞ」

 

「どんな力があっても、助ける事が出来なかった事もあるんだよ………

それが、家族なら余計にな……悪いけど先に帰らせてもらうよ……

()()()()()()()()()とは言え疲れたからな」

 

「あぁ、悪かったな……こんな事を頼んじまって……

さてと俺も帰るか……そういや何か言ってたみたいだけど………嘘だろ……」

轟は帰ろうとした時に武昭がいた場所を見ると()()()()から動いてなかったのが分かった。

 

「完敗だな……確かに俺は自分で弱くしてるんだな……」

轟は右手を見て何かを考えていた。

 


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