今回の話はかなり雑になっています。
篠ノ之神社
「「・・・・・・・」」
『・・・・・・・』
「あ、あなた、一夏君?」
『・・・・・・元だ。』
一同は硬直状態になっていた。
無理もない。束が目の前に出て来た恐竜ロボットを一夏だというのだから。
『・・・・・束、やはり無理があるのではないか?』
「えっ?そう?まあ、私もあんな映像やこんな映像を見なかったら信じなかったかもしれないけど。」
『貴様・・・・・』
ダイノガイストは束を睨みつける。
「って、箒ちゃんは出てこないけど?まだ?」
『無視か。』
束は茂みの方を見ると代わりに四将が出てくる。
『え~、奥方の方は恥ずかしくて出てきたくないそうです。』
「え~!今回は箒ちゃんのために来たのに~!肝心の本人が恥ずかしがってどうするの~!」
束は、茂みの方へ行く。
「箒ちゃん、恥ずかしがらないで出て来なよ~。」
「姉さんがいきなりあんなこと言うから出られないじゃないか!」
「だって、会うなら直接の方がいいでしょう?」
「それは・・・・」
「十年ぶりのお母さんとお父さんなんだから。チャンスはこれっきりだよ?」
「・・・・・うん。」
箒は潔く茂みから出て来た。
「「ほ、箒!?」」
死んだとばかり思っていた娘を目の前に二人は驚きを隠せなかった。
「お父さん・・・お母さん・・・・・」
箒は涙目で両親の方へと歩いて行く。しかし、いつの間にか復活したコウモリが三人の間に割って入る。
「なっ!?」
『娘との再会したいなら神社に収められている魔除けの石を渡せ!っと、ダイノガイスト様が仰っておられる!』
コウモリはそう言うと箒を掴んで二人の前に見せる。
『さあ、どうする!?早く魔除けの石を・・・・・・』
『もう、バレているからやめろ。』
『へっ!?』
ダイノガイストの一言にコウモリは唖然とする。ダイノガイストはロボットモードに変形し、コウモリから箒を受け取ると二人の前に置いた。
「箒!」
母親の方は嬉し涙を流しながら箒を抱きしめた。柳韻も少し離れて後ろを振り向いていたが隠れて嬉し泣きしているようだった。
「よかった・・・・生きててくれて・・・・・」
「お母さん・・・・・・」
箒は、十年ぶりの母の顔を見て嬉しそうだった。ダイノガイストは無言でそれを眺めていた。
『・・・・・・・』
「今までどうしていたの?」
「・・・・・・・話すと長くなるんだけど・・・・・」
箒は、隠さずに両親に自分に起きたことの全てを話した。
一夏と共に誘拐されたこと。
そこで彼のかつての因縁を持つドライアスの実験に巻き込まれ、一夏がダイノガイストなったこと。
自分は自分の意志で彼と共にいること。
IS強奪で引き起こされた宇宙海賊ガイスターにまつわる真相(一部を除く)。
「これが今まで私の身に起きたことなんだ。」
箒は二人の前で話を終える。ダイノガイストは親子だけにしておこうと思い、外では、ダイノガイストが大人しくしていた。四将たちは・・・・・束が作った持ち運び式にテレビでアニメを見ていた。
「とにかく・・・・・・もう会っちゃいけないと思ったんだけど・・・・どうしても会いたくて・・・・」
箒は両親の顔を見ながら言う。
両親もかなり複雑だろう。
自分の娘が幼馴染の巻き添えで実験台にされて訳の分からない体にされ、さらにその幼馴染が元宇宙海賊の首領で今世間を騒がせている上に共に行動している。
普通の家庭なら速攻で警察に連絡して引き渡しているところだろう(最も警察でダイノガイストを取り押さえるなどほぼ不可能ではあるが)。
柳韻は黙って立ち上がると外で座っているダイノガイストの方へと向かって行く。
「お父さん・・・・・」
箒は、まさか柳韻がダイノガイストに向かって自分のことを言うのではと心配そうに見ていた。柳韻はダイノガイストの隣に座る。四将はそれに気がつくと柳韻の方を見る。
『この親父、ダイノガイスト様の隣に座るとは!?』
『貴様、そんなことをしていいと思っているのか!』
『人間にしてはいい度・・・・・』
『・・・・・・お前たちは黙っていろ。』
文句を言おうとした四将をダイノガイストは睨みつける。すると四将(サンダーは除く)は下がって行った。ダイノガイストは隣の柳韻の顔を見ずに話しだす。
『娘を変な体にされたことで文句でも言いたいのか?』
「・・・・・・・そのことについては何も言わんよ。君自身が引き起こしたことではないのだからな。」
柳韻は厳格な態度で言う。
「それに箒があそこまで明るくなることができたのもあの時の君の一言のおかげだ。」
『事故で足が動かなくなった時か。』
「私たちはバラバラにされてその姿を見ることはできなかったが政府を通じてのあの子の手紙から君の一言があの子の心の支えになっていた。もし、あの一言がなかったらあの子はあのままだったのかもしれない。」
『・・・・・・だが、今は宇宙海賊の副官のようなものだぞ?』
「海賊だろうが何だろうが悪いのもいれば良いものもいる。私から見ても君はそこまで言うほどの悪ではないと思うがね。」
『・・・・・・』
柳韻の一言でダイノガイストは黙る。
「それにもし君が悪だというのなら箒も君と共にいたいと望まないはずだ。」
『・・・・・・・フッ、そうか。』
「・・・・・君は箒をどう思っているんだ?」
『あいつは俺の「宝」だ。それ以上もそれ以下もない。あいつが俺について行くというのなら嫌になるまで傍に置いておく。それだけのことだ。』
「・・・・ならいい。そこまで言うのなら私はもう何も言わん。」
柳韻は納得したように言う。二人の後姿は大きさはともあれ、もし、ダイノガイストが一夏の姿でいたのなら親子に見えてもおかしくない光景だった。
「必要だというのなら、石ぐらい譲ろう。だが、これだけは約束してくれ。」
『なんだ?』
「あの子を・・・・・箒のことを悲しませるようなことだけはしないでくれ。あの子は君のことを心から大事に思っているからな。」
『・・・・・・無論、一度手に入れた「宝」を手放す気はない。おそらくこれから先もな。』
「フッ、逞しいものだ。」
柳韻は満足そうな顔で一言言った。
その日の夜のガイスター基地
『・・・・・・コレが神社にまつわる魔除けの石か。』
柳韻たちと一日を過ごして帰ってきたダイノガイストたちは柳韻から受け取った魔除けの石を見る。あの後、ダイノガイストたちは箒と束の薦めで篠ノ之神社で短い時間ながらもダイノガイストと箒、束にとっては懐かしい時間、四将にとっては初めての一時を過ごした。母親の方は最後に「孫が出来たら写真ぐらいは送ってね。」と言われたときの二人の顔をきたら・・・・・・
話はともあれ、ダイノガイストの手にはパワーストーンと思われる魔除けの石が握られていた。
『しっかし、これ本当に本物なんですかね?』
プテラガイストは疑わしく言う。
パワーストーンに似た宝石はこれまで何度か見たことがある。しかし、今回は箒の実家の神社のもの。偽物だとは認めたくない。そう思うと四将の顔色は悪くなる。
ダイノガイストは魔除けの石を上に掲げで復活の呪文を唱え始める。
『黄金の力守りし勇者よ、今こそ甦り我が前に現れ出でよ。』
『『『『・・・・・・・・ゴクリ。』』』』
四将は息をのんで様子を見る。すると魔除けの石は、光りはじめダイノガイストの手から離れると一気に光に包まれ濃い緑のドリルタンクのようなものへとなる。
『チェーンジッ!ドリルシルバー!!』
ドリルタンクは変形をし始め、北欧のバイキングのような姿をした勇者へとなる。
『『『『オォォォォ!!!』』』』
四将は驚くあまりに叫ぶ。
『自分は大地の騎士、ドリルシルバーであります!我が主よ、何なりと命令を!!』
ドリルシルバーは、ダイノガイストに向かって言う。ダイノガイストは椅子に座りながら黙っていたが代わりに束が命令をする。
「はいはい、じゃあ、ちょっと君のことを調べるからちょっとラボに来てね~。」
『?りょ、了解したであります。』
ドリルシルバーは、不思議そうに束の後に着いて行く。
翌日 廃船
「・・・・・・・・・」
千秋は目の前の段ボール箱を見て黙っていた。差出人には「みんなのアイドル 束さん♡」と書かれている。朝、ポストを覗きに行こうとしたら玄関の前に置いてあったのだ。
「そして、中身が・・・・・・」
「パワーストーン・・・・・」
「ラッキ~・・・・・・って言ってもいいのかな~?」
一同は箱の中に入っていたパワーストーンらしきものを見ながら言う。
「手紙にはこう書いてある。『愛しのちー君へ 元気にしているかな?束さんは毎日元気爆発さ!今日はちー君の誕生日プレゼントにお守りとして、私の実家の神社の魔除けの石をプレゼントしま~す!私のせいでいろいろ苦労しているようだけどめげずに頑張ってね~! 追伸 これはちーちゃんには内緒だよ! 束さんより』っていう内容だ。明らかに本物かどうか怪しいぜ。」
「でも、実家の魔除けの石をお守りにっていう訳なんだから別に本物なんじゃないの?」
「でも、万が一って言う事もあるな。試しに外で復活の呪文を唱えてみようぜ?」
弾の一言により、一同は外に出て、復活の呪文を唱える。
「黄金の力護りし勇者よ!今こそ甦り我が前に現れ出でよ――――!!!」
千秋が呪文を唱えるとパワーストーンが光りはじめる。
「おぉ!?」
「やっぱり本物!?」
そう思った直後パワーストーンから大量の煙が発生する。
「わっ!?な、何だこりゃ!?」
「前が見えないよ~!?」
「虚さん大丈夫ですか!?」
「私は大丈夫です。」
一同は咳き込みながらも目の前を見る。煙が晴れるとそこにはドリルシルバーが立っていた。
「おぉ~!やっぱり本物だったのね~!」
鈴は思わず喜ぶ。
『じ、自分は大地の騎士、ドリルシルバーであります!』
「ドリルシルバーか。ってことは、これでこっちの勇者は五人目か。」
「でもあと三人ってわけですし、喜ばしいことですね。」
『・・・・・・・・・』
一同が喜んでいる中、ドリルシルバーは少し複雑そうな顔で廃船から見える崖の方を見る。
そこには束とダイノガイストがこっそりと様子を見ていた。
「作戦は成功!偽パワーストーンの演技でうまくドリ君をあちら側に紛れ込ませたよ!」
束は双眼鏡で観察しながら言う。
『奴らの元においておけば他の勇者が復活したとき、いつでも情報を送るように言いつけている。それにあのデータが正しいのなら試すにはあそこに送るしかないからな・・・・・』
ダイノガイストは腕を組みながら喜んでいる鈴たちを眺めていた。
その頃、ワルターは・・・・・
「何故だぁ!?何故、小娘たちの元に知らぬ間に勇者が増えているのだぁ!?」
かなり騒いでいた。
ドリルシルバーのスパイ大作戦。
次回、ワルターは悪夢を見る。