気に召さない方は戻りましょう。
ゴルドラン復活当日
「・・・・・あれは・・・・」
ゴルドランとダイノガイストが対峙していたとき、少し離れていた場所で彼女たちは見ていた。
「およよ~~ロボットだぁ~!」
少女はゴルドランを見ながら言う。しかし、もう一方の少女は別のロボットを見ていた。
「ダイノ・・・・・・ガイスト・・・・・」
少女にはその名前がはっきりわかっていた。
「でも、あっちのロボットは・・・・・一体・・・・・」
アドベンチャー復活二日後 とある港のはずれ
「よっ、お待たせ。」
弾が走りながら鈴たちと合流する。
「遅いじゃないの。」
「悪い悪い、なんせ店の手伝いどうやって抜け出すか考えるのに時間がかかってな。友達の家に勉強会行くとか何度も通じる方法でもないだろう?」
弾は息を切らせながら言う。後ろからは蘭も慌てて走ってきていた。
「はあ・・・はあ・・・・」
「あれ?お前はゆっくり来るんじゃなかったのか?」
「途中でなんか人に見られているような気がして走ってきたのよ!けど・・・・まだなんかついてきていそうで・・・・」
蘭は不安そうに言う。
「う~ん~、誰もいないようだけどな・・・・・」
「そうかしら?」
「蘭も心配性だな。気にすんなよ、第一あの日のことに関しては誰も憶えていないんだからよ。」
「・・・・・うん。」
千秋が言うのは最もだった。
実はゴルドランが現れた日、誰も見ていないというのだ。ダイノガイストの姿でさえもだ。
千冬に関しては酔って眠っていた。
蓮と厳に関しては厳が体調を崩して寝ていたため、店は休みにしていたという。
「確かに不思議よね。数馬にも電話で聞いてみたけどテレビで丁度ワールドカップの実況見ていてそれどころじゃなかったって。」
「明らかにドランたちの存在を全く知らないって感じだったよな?」
「でも・・・・・本当に私たちだけなんでしょうか?」
「まあ、知っているのはあの変な連中(ワルター)とガイスターだけだろう。」
「う~ん~。」
「まあ、気にしたってしょうがないから行くわよ!」
鈴たちは走って行く。その後ろを二人の人影がコソコソと後をついていっていることも知らずに・・・・・。
『新しい仲間?』(鈴の声)
日本 ワルザック共和国 日本大使館
一方、ワルターは表の仕事である在日大使として社交パーティーに参加していた。同時にある人物と接触するために。
「ハッハハハ!では、本国を訪れた際はぜひ・・・・・」
「ワルター様。」
来客と会話を楽しんでいたワルターの元へカーネルが何やら話を持ってきたようだ。
「・・・・・・・・ちょっと、失礼。」
ワルターは一旦席を外し、個室へと移動する。
「何?あの街の人間どもは誰もゴルドランを目撃していないだと!?」
「はあぁ・・・・・偶々ワールドカップ決勝戦、日本対ブラジルのテレビ中継しておりましたので。」
「ふむ・・・・しかし、あれほどの戦闘をしたにもかかわらず、あのダイノガイストの存在にまで気づかんとは・・・・」
ワルターは不思議そうに言う。
「若君、これはもしやレジェンドラの超パワーの仕業では?」
「ん?どういうことだ、じい?」
「おそらくレジェンドラの秘密を守るため、人々の注意を逸らすパワーが働いているのです。」
「レジェンドラの力・・・・そこまでの代物だというのか・・・・」
「しかし、ご安心あれ。我々は既に情報を掴んでおります。」
「カーネル様!」
そこへ部下が一人入ってきた。
「何事だ?」
「はっ。只今、ミス・オータムとそのお供がこちらに到着しました。」
「ここへ通せ。」
カーネルの指示で部下は部屋から下がり、ドレス姿のオータムと一人の少女が訪れた。
「ワルター様、皇帝陛下の仰られた協力者のお仲間、ミス・オータム殿とそのお供ミス・エム殿でございます。」
「何?協力者とはこの女子たちだったのか?」
ワルターは意外そうな顔で二人を見る。エムと呼ばれた少女の方は比較的に大人しくしていたがオータムに関してはかなり不機嫌そうだった。
「あぁ!?女だと何が悪いんだ!?」
「あっ、これは失敬。いえ、別にあなたを馬鹿にして言っているわけではない。」
ワルターは、気を悪くしたオータムに謝罪する。
「オータム殿はかつて亡国機業のIS特殊部隊を率いていた猛者でございます。」
「おう?爺さん、意外に俺のことに詳しいんだな?」
「全てあなた方の上司スコール殿から教えいただいています。」
「ところでオータム殿。」
「殿は付けなくていい。気安くオータムって呼んでもいいぜ?王子様よ?」
「・・・・・そうか、ではオータム、貴殿が我らのパワーストーン探しに協力してくれるというのか?私にはどうも別の目的があるようにも見えなくないが?」
ワルターは気になったのかオータムに聞く。
「あぁ、まあ、俺もスコールもパワー何とかやらレジェンドラとかには特に興味があるわけじゃないからな。興味があるのは数日前、アンタが確認したって言うコイツだ。」
スコールが一枚の写真を見せる。
ダイノガイストの写真だ。
「ダイノガイスト?」
「あぁ、スコールのダチのドライアスが執念深く狙っていてな。この協力を要請していたのも奴の首が欲しいからだ。」
「ほう。」
「なあに、安心しな。スコールからの要請でこちらも協力は惜しまねえ。」
「そうか、その言葉を聞いて安心した。では、改めて協力を求める。」
「任せておきな。」
スコールはワルターから差し伸べられた手を握り、握手を交わす。
「・・・・・・・・」
「・・・・して、そちらのエム嬢はさっきからあまりにも静かなのだが?」
「まあ、こんな奴だから気にしないでくれ。ところですぐにでも出発するんだろ?この服、動きずらくて仕方ねえんだ。更衣室がどこか教えてくれ。何ならここで着替えてもいいぜ?」
「じょっ、冗談は程々にしてくれ!?」
とある港の廃船
「どう?」
鈴は目の前にある廃船を見ながら言う。
「まあ、確かにアドベンジャーの隠し場所にしては丁度いいな。」
千秋は納得しながら言う。実は鈴たちが戻ってきた後、ドランとアドベンジャーをどこに隠すのかでかなり悩んでいた。
特にアドベンジャーに関しては家に置くこともできないため、どこか適当な場所はないかと考えたところこの廃船が丁度いいスペースがあったため、ここにすることにした。
「さあて、さっさと中に入ってパワーストーン探しでも始めるか。」
弾が言うと四人は廃船の中へ入ろうとする。しかし、蘭がその直後に足を止める。
「ん?どうしたんだ蘭?」
「・・・・やっぱり、誰かに付けられている気がする!」
「えっ!?」
「そこに誰か隠れているんでしょ!出てきなさい!」
蘭は後ろの木に指を指しながら言う。思わず四人は警戒する。
「まさか、この間の奴の仲間か!?」
「それともガイスター!?」
四人は恐る恐る近寄ろうとする。すると何か聞き覚えのある声が聞こえた。
「待って待って~。私たちは怪しいものじゃないよ~。」
「・・・・・・もしかしてのほほんさん?」
千秋は何となく言う。
「ピンポ~ン~。オリムーせいか~い。」
すると木の影から少女が二人現れた。
「えっ!?本音と簪じゃない!?なんでここに!?」
「なんだ鈴?お前たちの知り合いか?」
弾は不思議そうに聞く。
「あぁ、弾にはそう言えば紹介していなかったな。え~っと、俺と同じクラスの布仏本音こと通称のほほんさんと四組の更識簪こと簪だ。」
「はは~、要はお前のダチってわけか。って言うか二人とも可愛いじゃんか!俺にも紹介しろよ!」
「えっと・・・・この二人に関してはいろいろゴタゴタがあってな。」
千秋が気まずそうに言う。
簪と千秋、鈴が知り合ったのはIS学園に入学し同じクラスである本音を通じてのことであった。その頃、IS学園生徒会長であり、彼女の姉である更識楯無は代表を務めているロシアから緊急招集が掛けられ不在だった。最もその代行として生徒会会計である本音の姉、布仏虚が仕切っていたが。
しかし、その僅か一月、彼女によからぬ事態が起こった。
楯無はロシアにおいてダイノガイスト率いるガイスターに敗北、専用機を奪われるという失態を被る。
さらに追い打ちを駆けるのかの如く、彼女が密かに送り込んでいた暗部の諜報員が潜伏先であるワルザック共和国で捕まり、国際問題に。
結果、楯無の更識家当主の剥奪と本国からの永久追放、および暗部である更識家とその家に仕えた家も取り潰しとなった。
幸い、簪は実家と縁を切るという方法で日本代表候補生から外されることはなかったが楯無の行方は未だにわかっていない。
千秋たちもなんとか彼女を励まそうかと考えたが焼け石に水、火に油を注ぐことになりかねないため落ち着くまで距離を置くことにした。
「え、えッと・・・・・・どこから言えばいいのか・・・・」
千秋は気まずそうに簪の顔を見る。簪はしばらく黙っていたが千秋たちから話をしそうにもないと判断し自分から話すことにする。
「千秋たちはここで何をしているの?」
「な、何言ってんの?別にそんな怪しいことは・・・・・」
「あのロボットがここに隠れているの?あの金色の恐竜みたいなものと合体した・・・」
「「「「!?」」」」
四人は簪の言葉に驚く。
「ロ、ロボットだって?冗談だろ!?」
「あぁ!それに金色の恐竜なんているわけないじゃねえか!?なあ、蘭?」
「そ、そうよ!いるわけないですよ。」
「・・・・・・」
簪は手提げ鞄から何枚かの写真を見せる。
その写真にはゴルドランとダイノガイストの姿が写っており、鈴たちがいるところも写っていた。
「「「「・・・・・・・・」」」」
「ねえ、千秋たちはあのロボットたちとどういう関係なの?」
簪は真剣な顔で四人に聞く。
四人はこれ以上秘密にできないと判断し、仕方なくドランたちに会わせることにした。
ガイスター基地
『ふむ・・・・・・・鈴たちは第二のパワーストーンを手に入れたか。』
ダイノガイストは椅子に座りながらいつ盗撮したのかアドベンジャーとゴルドランの映像を見ていた。
「と言う事はパワーストーンは残り六つ。このままでは奴らに全て揃えられてしまうぞ?一夏。」
箒が寄り添いながら言う。だが、ダイノガイストの態度は余裕そうだった。
『心配いらん、奴らとてパワーストーンを全てそう易々と発見はできん。ここはうまく泳がせて最後の一つを揃えたところで全ての勇者を葬り、頂けばいいだけのことだ。』
「・・・・でも、あの連中はどうするんだ?」
『鈴たちに関しては日本へ送り返す。それ以外はどうなろうが知ったことではない。』
ダイノガイストは箒を抱きかかえると彼女の顔を見る。
『最も、待っていられないというのなら出てもいいがな。』
廃船
ドランとアドベンジャーに元に連れてこられた簪と本音はドランから残りの勇者が封印されているパワーストーンの存在とレジェンドラのことについての説明を聞いていた。本音は「ほうほう~」と聞いているのか微妙に分からなかったが簪は黙って話を聞いていた。
「・・・・・と言う事はあなたたちはガイスターとは何の関係もないんですか?」
『あぁ、我々も復活したばかりで初めて彼らの存在を知った。』
「そうですか・・・・」
「簪・・・・・お前、まさか・・・・・」
千秋は何かを察したかのように簪を見る。
「まさか、生徒会長の仇でも取ろうって言うの!?いくら何でも無茶過ぎよ!?アイツ等、ガチで強いのよ!?」
鈴は忠告するかのように言う。
「それに夏休み前に千冬さんの教え子だったえっと・・・・・・ラウラだっけ?あの子も部隊が全滅さた責任を感じて帰ったら・・・・・・」
鈴は言いかけるが慌てて口を閉じた。
実は、ISが原因で行方が分からなくなったのは楯無だけではない。
千秋のクラスにいたドイツから千冬のかつての教え子ラウラ・ボーデヴィッヒもその被害者である。
彼女の場合は、専用機は彼女と共に運び込まれて強奪は免れたが彼女が祖国を離れている間、ガイスターがドイツを襲撃、ほとんどのISを奪っていった。
彼女が日本へ来たのは師である千冬に助けを求めてだった。千冬が協力してくれればガイスターでも対応できるはず、それが彼女の判断だった。
しかし、それが仇となり、部隊は壊滅。ラウラはそれに責任を感じ祖国へ戻り、部隊の再編成を行おうとしたが帰国直後に軍に拘束され、軍法会議にかけられて部隊壊滅の責任と無実の罪を着せられ、刑務所に投獄された。
その後、それを知った千冬は自分の無能さと痛覚し、IS学園を退職した。本人に責任はないものの千秋たちには衝撃的だった。故に学園内ではラウラのことは行方が分からなくなった楯無の話ぐらい話すことがタブーと化している。
「ち、違うの!?そういう意味で着いてきたんじゃないの!?」
簪は何か誤解されていると感じて慌てて否定する。四人はきょとんとした顔で二人を見る。
「その・・・・・・・・私も一緒に行きたいの。えっとそのパワー・・・・ストーン探しに。」
簪は顔を赤くしながら言う。
「た、確かにお姉ちゃんを追放した原因を作ったダイノガイストは憎いけど・・・・・・世界各国のIS精鋭部隊を蹴散らす相手になんて私がやっても勝てるわけない・・・・・でも・・・・でも、ドランとアドベンチャーが言っていた八人の勇者八人の勇者を揃えることができれば・・・・・一泡吹かせられるんじゃないかなって・・・・・・」
「かんちゃ~ん、正直に言おうよ~。本当は一緒に冒険してみたいと思ったんでしょ~?」
脇から言う本音に簪は何も言えなくなってしまう。
「えっ!?仇討ちが目的じゃないの!?」
鈴は意外そうな顔で言う。
「かんちゃんはね~こう見えても冒険ものとか大好きなんだよ~。小学生の時なんか『十五少年漂流記』とか『エイリアン』とか・・・・・」
「待て待て、『エイリアン』は冒険ものじゃなくてSFホラーかアクションだろ。」
本音に千秋がツッコミをいれる一方簪は特に否定はしなかった。
「その・・・・・・・いつも家の中にしかいたことがなかったから・・・・・・・」
「な、ならいいんじゃねえか?仲間が多いと楽しさも増えるし。」
弾は匿るように言う。
「でも、相手はあのガイスターと訳わからない連中よ?」
「代わりに二人の専用機のプロテクト解くから。」
「・・・・・・えっ?できるの!?」
鈴は驚いた顔をするが簪は首を縦に振る。
「お姉ちゃんの部屋片付けていたらいろいろ手引書(自作)が出てきて読んでいたから・・・・・・」
その後、五人は目印に似た島に行き、ワルターたちと交戦するのだが残念ながらパワーストーンは手に入らなかった。でも、簪と本音は大満足のようで本音は「今度お姉ちゃんも連れて来るね~。」と言った。
一方、その間の織斑宅では
「・・・・・・・・・・・・・」
千冬は、力が抜けたような顔で目の前にある大量の書類を見る。
『不採用』
「何故だぁ!?何故採用されない!?私に何が問題があるというのだ!?」
千冬は床を叩きながら言う。千秋の一言で再職する気になった千冬は、あちこちの会社の採用試験を受けに行ったのだがどこも不採用に通知しか来なかった。千冬は兎に角あちこちに就職活動をしに行き、なんとAV関係のいろいろ不味い仕事にまで手を伸ばした。
なのにも関わらず『不採用』。
おそらく、どの会社も千冬を雇ってガイスターが襲ってくるのではと考えているのではないだろうか?
ISによって有名になった千冬にとって最大の落とし穴になった。
「うぅ~~!!このままでは私はただニートになってしまう!あぁ~~!!一夏~!助けてくれ~!私に仕事をくれ~!」
千冬は誰もいないことをいいことに泣き出す。
その光景をコウモリを通じて実の弟に見られているとも知らず。
次回があればジェットシルバー登場かな?
連携作品「使い魔勇者エクスカイザー」開始!
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