【停滞】湖の騎士 異聞録 (旧題偽・湖の騎士伝)   作:春雷海

14 / 35
投稿が遅れた理由=ドラクエ11、最高!
名作過ぎる、マジ最高!


島到着,洞窟でのランスロット語り

ネロたち、ローマ軍一行はカエサルを討伐後。

 

帰路の最中に「地中海の古き神」の話を聞き、ロマンが聖杯の可能性と探求心を言葉にし、またネロも行く気満々となったので、急遽船を使って向かうことが決定した。

 

その為、ガリアをブーディカに任せ、地中海沖にある島に訪れたが。

 

「うむ! かつて無い程に攻め攻めな船旅であったな!」

 

ネロが意気揚々と両手に腰を添えているのを尻目に、彼女の後ろにいるローマ兵たちは呻き声を上げたり、肩で息をしたり、口元を抑え込んでいるのが多い。そして無論、ローマ兵たちだけでなく。

 

「うぅ、気持ち悪い」

 

『あはは……こちらも君たちのバイタルを見てなんとなくどんな感じかは察したよ。あまりに自信満々だったから物凄く上手いのかと思ったが、そうでも無かったみたいだね』

 

「ネロさんの操縦は、ドリフトが凄まじくまた宙に浮いたりとすごい操縦でした……兵士の方々も船から降りれないようです」

 

「うぅ、あれが船というもの……今後は気を付けて乗らなければいけませんね」

 

ジャンヌが間違った知識をついてしまったようだが、あえて触れないランスロット。

 

「いやー、中々よかった……船が急に曲がったり跳んだりするなんてよ、柄にもなく興奮しちまったぜ」

 

「あの王様もいいセンスしてるわねっ、――っううん! いえ、とても気持ちが良いものでしたね」

 

体調不良を訴える三人と異なる様子を見せるのは、興奮を隠せないパロミデスとマルタ。

マルタは猫を被るが如く即座に聖女としての表情を浮かべるも口元は笑みが浮かび、パロミデスは隠す様子もなくウキウキとして活気あふれる様子を見せている。

 

流石は竜を操るマルタと、生前には馬を常時襲歩させては襲い掛かり円卓の騎士たちの殺意を気にも留めなかった悪役時代を持つパロミデスであった。

 

そんな二人を横目にランスロットは三人の元へ行こうとしたとき――。

 

「むっ」

 

腰のファルシオンを抜いては即座に腕の筋力と、抜刀した勢いに任せて射出した。

 

『ちょっ、ランスロット卿!? 一体何をっ』

 

「いやなに、気配を感じ取ったのでな……それと急に寒気を覚えたのでつい」

 

強い気配を感じ取ったのもそうだが、それよりも感じたのが身の毛がよだつ程に嫌な気配だった。

それは、神秘の時代で嫌が応にも感じたランスロットにとって苦手意識が強いもの。これを齎す者は自らが知る中で一人しかいないのだ。

 

(まさか、モルガンじゃないよな。 勘弁してほしいな、あの姉ちゃんの雰囲気というか性格がどうにも苦手だったし)

 

あの時代に自分という戦力を奪おうと考えたのか、モルガンに付き纏われたことを思い出し、少々萎えてしまう。

あれほど女が恐ろしいという感情を植え付けたのは彼女が初めてだ……更にはドレスを着崩れして誘惑されそうになった時はまず興奮よりも恐怖が強かったのは秘密だ。

 

メリハリの利いた女性の魅力的な体型ではあったものの、己を見る目が肉食動物が如くだった為にランスロットはモルガンから距離を取っていた。あの恐怖は魔獣をも超える程だ。

 

(いやもう、本当に勘弁……あの姉ちゃんは)

 

それを思い出して、憂鬱げになりかけたところに一人の少女が現れた。

 

「物騒な方ね、しかも失礼なことを考えて、嫌になっちゃうわ。 まあいいわ、ようこそ私の仮住まい『形ある島』へ。どうやら、勇敢な勇者様だけでなくサーヴァントも混ざっているようですが……歓迎しましょう。私はステンノ、ゴルゴーン三姉妹が一柱よ。古き神と呼ばれるのはあまり好きではないのだけど、貴方達から見たら私は過去の神であるのも事実。お好きなようにお呼びください、私の美しさは時間に拠るものではないですから」

 

彼女を見てランスロットは遠い目をして、大きくため息をついた――目の前にいるステンノという女神がモルガンをも超える面倒な存在であることを感じ取って。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

洞窟内は迷路の様になっていて、寧ろ褒美という餌に惹かれた獲物を始末するが如くスケルトンが徘徊していた。

 

「この世界に本来無い物をご用意してますわ」というステンノの言葉に、ランスロットを除いた六華たちとネロは、彼女が用意したという洞窟に入った。

 

また何故ランスロットが居ないのか、それは――。

 

『だって、見知らぬ相手に武器を射出するという所業を見逃せないですわ……それに一人だと退屈ですもの、話し相手になってもらいたくって』

 

言葉はそう紡いでいたものの、表情は拒否を許さないと云わんばかりの笑顔を浮かべたステンノ。

それに反抗できず六華たちはランスロットに謝罪しながら了承した……その時の彼が助けを求める目を今でも忘れられない。

 

しかし、彼女の欲求を否定すれば自分たちにどんなことが起こるか分からない。彼には申し訳なかったがそうするしかなかった。

 

「しっかし、あの女神さまとやらはモルガン様によく似てたぜ……まぁ恐ろしさは女神さまの方が強いがな」

 

「? モルガンというと、あのアーサー王のですか?」

 

アーサー王伝説の中でも有名なアーサー王の姉。先王ウーサーの娘で、決して欠かせない人物。

 

「そうだぜ、マシュ嬢。 王を憎み、その王位を狙い、更にはあの叛逆の騎士:モードレッドを産んだ妖妃さ……そして、健気に恋をしていた女でもある」

 

『えっ、あの悪女としても有名なモルガンが一体誰に?』

 

「……もしかしてだけど、あの人かしら?」

 

「正解だ、マルタ姐さん。 恐れ多くも、モルガン様は我らが最強の円卓の騎士(ランスロット)に惚れちまったのさ」

 

円卓騎士の一人であるパロミデスの言葉に、その場にいた全員が驚愕の表情を浮かべる。歴史上に記されていない出来事――まさかの恋慕話がここで聞けるとは思わなかった。

 

「まあ最初は陛下の嫌がらせと王位を狙う為に蛾のように擦り寄ってきたんだが、あの野郎の騎士としての生き方や愚直なまでの真っ直ぐさに次第に惚れた……けどなぁ」

 

「やはり、何か問題でも?」

 

ジャンヌの言葉を「そうじゃねぇ」と否定するパロミデス。歯切れが悪い様子を見せる彼に、訝しげに見つめる彼女たちとロマン。

それを感じ取ってパロミデスは頭を抱えて語りだした。

 

「聖女らと、麗しい少女たちと皇帝の前で云うのもなんだが――モルガン様は男を誘惑するのが得意すぎて、逆にあいつが引いちまったんだよ」

 

『……は?』

 

一瞬、彼女たちはパロミデスが何を云ったのか解らなかったのか唖然とした声を出す。

 

『つ、つまりどういうことだい?』

 

「モルガン様が誘惑した今までの男だったらその魅力的な身体で迫れば堕ちたさ。だがランスロットは全くそれが通用しない上に逆に怪しんだ……露骨すぎなんだよ、目が野獣の如く鋭くって、あいつの身体に触ったり、豊かな胸を押し付けたりと――あれほどあいつに同情したことはねぇな、うん」

 

羨ましさはなかったと断言できるくらいだ、それほどモルガンは凄まじかった。

更に言えば、それを彼に懐いている円卓の騎士らが発見してしまい、大変なことになった事も覚えている。そしてそれを機に学んだことは……女は怖いということ。

 

今でもそれは変わらないのだろう、何故なら。

 

「……ふうん」

 

「……」

 

「へぇ、良い御身分――ううん、いえ大変羨ましい立場だったのですねぇ」

 

それを聞いた六華とマシュは不機嫌さが入り混じった拗ねた表情を浮かべ、マルタは若干の怒気を放っているのだから。パロミデスは三人から目を逸らした。ジャンヌの姿が目に入ると、彼女は前者の三人とは違った様子で苦笑していた。

 

「? どうしたんだ?」

 

「いえ、聞いていた通りだなと思いまして」

 

一体どういう意味だろうか詳しく聞きたかったものの、それよりもまず――凄まじい咆哮が聞こえ、それと対峙しなければならないために武器を構えた。

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。