【停滞】湖の騎士 異聞録 (旧題偽・湖の騎士伝)   作:春雷海

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番外編として作成致しました。
本編がなかなか進まないので、ちょっとしたネタとして考えてみました。

この番外編にはオリジナルヒロインがいます。
また彼女は所謂囚われの姫様的立ち位置として存在してもらっています。


本編での設定? 気にするなっ!
頭を空っぽにして読むんじゃい!
そして、一時的に円卓騎士とランスロットの会話をしていますが、本編とは全く関係ありませんので、そこはご注意を。


【番外編―特異点L 騎士理想国 ナイトユートピア―】

その特異点は過去から現在まで繋がっている中で、その時代は最も神秘に溢れていた。

 

どんな世界が広がり、なにが待ち受けているのか全く予測できない。

 

それでも彼女たちは――カルデアのマスターたちは向かう……人類を救うために、そして未来を懸けた過去への挑戦に挑む。

 

『神聖円卓領域 キャメロット』という特異点を解決した彼女たちは、新たに生まれた次なる特異点に挑む。

 

「ここの最大の歪みは騎士たちの理想国が存在していることだ」

 

どこの国家にも属さず自由な身分での騎士として活動をする中での楽園。

国家に捨てられても、生き続けられる国の実現――居場所を失った騎士たちにとっての楽園。身分も関係なく、己が剣を振るえる最高の国、騎士たちにとって天国であり理想国。

 

しかし、それは本来の歴史に存在していない国。

 

「理想国……?」

 

「聞いたことがないわ……」

 

カルデアのマスターである藤丸六華と、もう一人のマスター候補生で青みが掛かった銀髪少女――メリアが首を傾げる。

 

「うん、そうだろうね。 僕も初めて知ったんだ。そもそも騎士は時代と共に廃れていき、やがては食文化を管理する立場になる存在になる。でもこの特異点によって、騎士たちは繁栄していき、傭兵という存在がなくなり、厄介なことにその国は騎士たちを派遣する立場になって戦争を統治したり国を亡ぼしたりする――歴史に大きくかかわる国も、だからこそ」

 

「ロマンの代わりにダ・ヴィンチちゃんが云おうかな。 君たちがやるべきなのはその国の王を討伐、そしてその国を絶やさせることさ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アーサー王ッ、円卓騎士ども! 貴様らの所為で、我らは国も居場所を失った――だがあの方が、卿がッ、我々に居場所をくださったのだ! それを奪われてたまるものかっ、喩えあの方の思想と違えても、我らはここで貴様らを討伐する!」

 

「っ待ちなさい! その国の王はもしや――!」

 

「問答無用! 往くぞぉおおおおおおおおおおおおおお!」

 

アルトリアの問答に応えず白銀の鎧を纏う騎士が叫ぶと、背後にいる彼の部下たちも雄たけびを上げて武器を抜き放って突っ込んでくる。

 

六華とメリア、マシュ、そして今回の特異点で同行したサーヴァントであるアルトリア、ガウェイン、モードレッド、ガレス、トリスタン、ベディヴィエールは即座に武具を展開し構える。

 

「お兄様……あのっ」

 

「ガレス。 貴方の考えていることは分かります……ですが今は戦いに集中を、兵士である筈の彼らの腕は下手すれば英霊である我々を倒せる程に凄まじい」

 

 

マシュそして騎士たちの脳裏にはある男が過ぎっていた。

 

国を創り上げ、騎士たちにこれほどまでの忠誠を捧げられている人物は唯一人しかいない……。

 

だが本当に彼なのだろうか。

そもそも彼は英霊の座にいないことが確認されている。更には特異点を引き起こし人理を滅ぼそうとするなど彼がするはずがない。

 

燻る思いを胸に、戦いに集中する――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……懐かしい顔だな」

 

漆黒の甲冑に外套を纏う騎士が六華たちの目の前に現れた。

細身ながらも偉丈夫で腰に一振りの剣を差し、彼から溢れ出る存在感と姿にマスターである六華とメリアが気遅れてしまう。

 

そして、それはマシュやアルトリアたちも同じだった。同時に、自分たちの予想が外れてほしかったとも考えた。

 

その中で特に戸惑いを隠せず、震える手でエクスカリバーを持つアルトリアが思わず叫ぶ。

 

「な、ぜっ。 なぜですっ、あなたがなぜそこにいるのですかっ! 騎士として人々を護ってきた貴方がっ、人々に害する立ち位置にいるのです!?」

 

騎士――ランスロットは嘗ての王であるアルトリアに頭を下げて、語った。

 

「王よ、再びあなたと会えたことを嬉しく胸に響きます……ですが私は別に人々を害しているわけではありません。

時代と共に消えてゆく騎士たちの居場所を創り上げているだけです」

 

「それはっ、それは違うのです! ランスロットッ、貴方のしていることは歴史を大きく変えてしまうのですッ、このままでは私たちは貴方を討伐せざるを得ないのです!」

 

「ならばそれも運命。 私は居場所のない騎士たちの為に戦わねばらない」

 

嘗てキャメロットの伝説を創った輝かしい英雄であるランスロット。

 

そんな彼が敵となってしまったことに戸惑いと絶望を感じながらも、歴史修正と人理修復のために刃を彼に向ける――。

 

「……なぜ、貴公ほどの男がっ、何を考えているか!」

 

「ガウェイン……答えを聞きたくば剣で聞け」

 

 

「ランスロット、私は悲しい……なぜあなたは」

 

「相も変わらず竪琴を奏でるのは上手いな」

 

 

「ランスロット卿」

 

「……相も変わらず、騎士には似合わぬ綺麗な顔立ちだな、ガレス」

 

 

「っあ、強い……流石は最強の騎士」

 

 

「褒めても何も変わらんぞ」

 

 

だがその刃は鈍く、また円卓騎士最強と謳われる剣の腕を持つランスロットには到底及ばない。

アルトリアのエクスカリバーが、ガウェインのエクスカリバー・ガラティーンも、トリスタンの弓も、ベディヴィエールとガレスの剣技も、マシュの盾も全て――ランスロットによって受け流されていった。

 

そして、マシュと対面した際には。

 

「…………立派になったな、――よ」

 

「っ、父う――」

 

「だが、まだ未熟だな」

 

ランスロットの正拳突きによって吹き飛ばされた。

 

呆気なくランスロットの手で全滅したマスターとアルトリアたち。一時撤退を狙い、メリアは特異魔術の一つであるガンドを放って目くらましに使うも。

 

「逃さん」 「きゃあっ!」

 

メリアはランスロットの手によって捕まってしまう。

 

「メリアさんッ!」

 

「六華、にげてっ! 私なら大丈夫だからッ、早く!」

 

メリアの叫びに六華たちは苦渋の選択をしてその場を撤退した。

残されたのはランスロットとメリアのみ。彼女は震える身体で彼を睨みつけようとするも、すぐにその力は抜けた。

 

「……強いな」

 

ランスロットの顔が先程の闘いの表情とは打って変わって微笑み、彼女の頭を撫でているからだ。

 

「安心しろ、酷い眼には合わせんよ……だが捕虜としての立場になってもらう」

 

そう云って彼は口笛を吹いて、馬を呼んでそのまま彼女ごと乗り合わせて、その場を去っていった――。


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